レビュー

DSD対応したウォークマンとMedia Goの機能強化まとめ

X-アプリもハイレゾ対応、WASAPI排他/ASIOも

ウォークマンFシリーズのNW-F887

 初の“ハイレゾウォークマン”として'13年に発売された「NW-ZX1」と「NW-F880シリーズ」が、4月のソフトウェアアップデートで、DSDファイルの再生に対応した。

 ソニー製品では、オーディオコンポやUSB DAC、AVアンプなどでDSD対応が既に進んでいるが、同じ“ハイレゾ”製品であるNW-ZX1/F880は、発売時点の情報ではDSD対応が見送られたように思われた。しかし、要望が多かったためか両モデルでもDSDをサポートしたことで、ついに現状で一通りのハイレゾファイルに対応した形だ。

 発表内容によれば、DSD再生時は「NW-ZX1/F880内のDSDファイルを内部で176.4kHz/24bitのPCMに変換して再生する」としており、バッテリ駆動時間は「192kHzのPCM再生よりは短くなる」とのこと。ウォークマンのユーザーの一人として、FLACなど他のハイレゾファイル再生時と違いがあるかどうかが、少し気になっていた。

 そこで、今回はウォークマンNW-F887(64GBモデル)をアップデートし、PC用の楽曲管理ソフト「Media Go」を使ってパソコンからウォークマンにDSDファイルを転送。使い勝手などを試した。

 Media GoもウォークマンへのDSD転送対応と同時に、DLNAサーバーにも対応するなど機能が強化されている。さらに、もう一つのソニー製ソフトである「X-アプリ」も4月21日、ついにハイレゾファイルにアップデートで対応。そこで、これらソフトのアップデート内容も合わせて、ウォークマン周辺のハイレゾ対応の現状をまとめてチェックしていく。

Media Go
X-アプリ

ウォークマンへのDSD転送と再生を試す

ハイレゾ対応のNW-ZX1(左)とNW-F880シリーズ(右)

 ここ2、3年のウォークマンの歩みを簡単に振り返ると、'11年にAndroid搭載ウォークマンのZ1000シリーズが登場し、'12年のF800シリーズでFLACにも対応。ハイレゾ対応への準備が着々と進み、ついに'13年のZX1/F880で、待望の192kHz/24bitまでサポート。今回のアップデートにより、DSDファイルの再生にも対応した。

 最初に注意しておきたいのは、DSD対応といってもファイルそのままのネイティブ再生ではなく、前述した通りWAV(リニアPCM)に変換してからの再生となる点。楽曲管理/転送ソフト「Media Go」も最新のVer.2.7でDSDファイルのウォークマンへの転送に対応したため、これを使ってDSD楽曲を転送するのが基本的な使い方。

 ウォークマン本体のソフトウェアアップデートは無線LAN経由または、Media Go/X-アプリ経由でダウンロードして実行する。パソコンに一旦アップデートプログラムをダウンロードして、ウォークマンに適用するという方法もあり、詳細はアップデートページ内で案内している。今回は無線LAN経由でアップデートした。

無線LAN経由で本体ソフトウェアをアップデートした
Media Go 2.7

 続いて、パソコン側のMedia Goもインターネットから最新バージョンをダウンロード/インストール。ウォークマンをPCにUSB接続したら、DSDファイルを転送する前に、まずMedia Goの転送設定を確認する。ユーザー設定メニューを開いて、接続したウォークマンへの転送設定で、[機器で必要な場合のみオーディオをエンコードする]にチェックを入れ、その下のプルダウンメニューで[ハイレゾ・オーディオを変換しない]を選択しておく。他の項目にしてしまうと、転送時に自動でFLACやAACなど他の形式に変換してしまうので、注意が必要だ。

 設定を終えたら楽曲転送を実行。手順はFLACなど他のファイルと同じで、複数選択してまとめて転送することもできる。Media Goの左側メニューにある[ビュー]を開くと、[ハイレゾ・オーディオ]の項目があり、DSDやFLAC/WAVのハイレゾだけを絞り込める。既に手持ちのDSD楽曲などが多くて、これまで転送していなかったという場合は、ここを選ぶと転送する曲を選びやすい。

 なお、転送して再生できるDSDは2.8MHz(DSD 64)のみで、拡張子は今回試した限りではDSF/DFFどちらのファイルも再生できた。一方、5.6MHz(DSD 128)は転送はでき、ジャケット画像も表示できたが再生はできなかった。なお、ウォークマン転送した後でも、PCにUSB接続してMedia Goからウォークマン内のDSD 5.6MHzファイルを再生すことはできていた。

ウォークマンへの転送時の画面
転送機器の設定
転送時にハイレゾ楽曲を自動変換しないように設定しておく

 Media GoとウォークマンがDSD非対応だった時は、Media Go側で非対応のファイルと判断されるとDSDでも何でも自動で対応ファイル(AAC/MP3など)への変換作業が発生、特にファイルサイズが大きいDSDだと長い時間が掛かってしまって不便だった。DSD対応により、この変換時間が不要になったのはうれしいポイントだ。

 転送したファイルをウォークマン本体で再生すると、特に待たされることも無く、他のファイルと同様に再生が開始。ジャケット画像や、ハイレゾを示す[HR]マークも表示されている。画面を右へスワイプしてファイルの詳細情報を確認すると、コーデックの欄にDSDと書かれており、2.8224MHz/1bitであることも表示していた。

DSD 2.8MHzファイルも楽曲として認識
特に支障無く再生できた
5.6MHzの楽曲は、ジャケットは表示できたものの再生はできなかった

DSDがPCM変換されているかどうかチェックしてみる

 再生は問題無くできたが、先ほど書いた通りDSDネイティブ再生ではなく、DSDを176.4kHz/24bitに変換しているとのこと。ウォークマンのヘッドフォン出力で聴いた実感として、確かにDSDネイティブほどの高音質とは感じられなかったが、これだけではDSDではないためか、単にウォークマン本体の音質なのか実際のところは分からない。そこで、今回はウォークマンからUSB DACにデジタル出力して、入力されたファイルが176.4kHzになっているかどうか調べてみた。

UD-301とウォークマンをUSB接続してチェックした

 使用したのはティアックの小型オーディオ「Reference 301」シリーズの新モデル「UD-301」。ウォークマンの別売ハイレゾケーブル「WMC-NWH10」を介してUD-301とUSB接続。ただ、それだけではUD-301がウォークマンをプレーヤーとして認識しなかったため、WMC-NWH10とUD-301の間に給電機能付き(セルフパワー式)のUSBハブを介する形をとった。なお、これはソニーやティアックが正式にサポートしている方法ではないため、あくまで試すのは自己責任だが、この方法で、ウォークマンで再生中のファイル形式とサンプリング周波数/量子化ビット数を正しくUD-301側で認識しているようだった。

UD-301の前面LEDは「176.4kHz」が点灯

 その上で、ウォークマンに転送したDSDファイルを再生すると、UD-301の前面LEDでは「176.4kHz」のランプが点灯。今回の方法で試した限りでは、ソニーのアナウンス通り、176.4kHzにPCM変換して再生していることが確認できた。

 DSDからPCM変換して再生すると、PCMそのままの再生に比べバッテリの持続時間が短くなるとソニーでは案内している。確かにDSDだけを再生し続けていると、画面ON/イヤフォン出力/ボリューム約50%の場合は約2~3分で1%減少(楽曲によって異なる)となり、バッテリの減りが若干早いようにも感じたが、FLACの192kHz/24bitでも同条件下で3分強程度と、実測した限りで大きな違いは無かった。現状で手持ちの楽曲がDSDのみというケースはあまりなさそうだし、混在して再生している中で気になるほど早くバッテリ切れになることも無かった。

 ちなみに、Media Goでの楽曲転送時に、DSDを[高音質FLACへ変換]に設定してから転送すると、192kHz/24bitになる。スペック上は(DSDから再生時に変換した時の)176.4kHzよりもわずかに高音質だが、転送時には変換のための時間が必要となる。DSDをそのままウォークマンに入れるか、FLACに変換するかどちらを選ぶかは、手持ちの楽曲ライブラリによって意見が分かれるだろう。DSD楽曲が多い人は、ウォークマンのメモリ容量を考慮して、FLACなどに変換する方が現実的かもしれない。

 個人的な希望としては、もしウォークマンのWM-PORTからデジタル出力するときだけDSDネイティブで出すことができたら、DSDを外ではPCMで、家ではDSDそのままで楽しめて良さそうだが、ウォークマンはあくまでポータブルプレーヤーなので、ちょっと欲張りな願いかもしれない。

Media Goも強化され、DLNAサーバーとしても利用可能に

メディア共有の設定画面

 Media Goは、これまで説明したDSD転送のほかに、メディア共有(DLNAサーバー)機能を追加し、Media Goで管理しているコンテンツをネットワーク経由でも再生可能になった。これにより、Media Go 2.7をインストールしたパソコンを、DSD音源を含むハイレゾミュージックサーバーとして利用できる。このメディア共有に対応したソニー製品としてアナウンスされているのは、システムステレオ「MAP-S1」のほか、CMT-SBT300W、CMT-BT80W、アクティブスピーカーのSRS-X9、SRS-X7がある。

 DLNAサーバーになるということは、上記の製品以外でもDLNAクライアントまたはレンダラー対応機器であれば再生はできるはず。試しにウォークマンのNW-F887に搭載しているDLNAクライアント機能の「DLNA」を起動してみると、サーバー機器としてネットワーク内のパソコンにあるMedia Goが表示された。これを選ぶと、ウォークマンで再生するような感覚でMedia Goの楽曲を再生できる。試したところ、Media Goで作成したプレイリストもそのまま使えた。また、AVアンプ「SC-LX75」(パイオニア)とiPadアプリ「iControlAV2」を組み合わせたネットワーク再生でも、同様にMedia Goの楽曲を聴くことができた。

 なお、DLNA再生時も、ウォークマンをクライアントとして再生した場合は当然ながらファイルの扱い方はウォークマン本体再生時と同じ。DSD再生は2.8MHzまでの対応で、WM-PORTからの出力をUSB DACでチェックしたところ176.4kHzに変換して再生されていた。例えば家の中でウォークマン用のドックスピーカーを使っている人は、ウォークマン+スピーカーをネットワークプレーヤーとして活用し、ウォークマンに転送し切れていないPCの楽曲を楽しむといった使い方もできそうだ。

ウォークマンのDLNAアプリから、Media Goをサーバーとして選択して再生
iPadのiControlAV2アプリで、Media Goをサーバー、SC-LX75をレンダラーとして再生

X-アプリはハイレゾだけでなくWASAPI排他/ASIO対応も

X-アプリ 6.0

 もう一つ、ソニー製の楽曲管理ソフトである「X-アプリ」も、最新のVer.6.0でついにハイレゾ対応になった。筆者の場合、ウォークマンへの楽曲転送はMedia Goが中心になっていて、X-アプリはもうほとんど使っていなかったのだが、この機会にX-アプリもアップデートした。すると、ハイレゾ対応だけでなくWASAPI排他モードやASIOドライバにも対応していることが分かった。

 ウォークマンに同梱するPCソフトは、'13年秋モデルにおいて従来のX-アプリからMedia Goに移行したが、X-アプリもアップデート自体は続けられていた。最新のVer.6.0ではハイレゾ音源の取り込みと再生に対応。また、ウォークマンへのハイレゾ音源転送も可能となった。また、ソフト内で楽曲配信のmoraからハイレゾ楽曲を購入/ダウンロードしてそのまま利用するといった使い方もできるようになった。

 実際にX-アプリからウォークマンNW-F887へハイレゾ楽曲の転送を試した。ソニーの発表内容では“ハイレゾ”の具体的な対応ファイルフォーマットやサンプリング周波数/量子化ビット数までは書かれていなかったが、試したところFLACの192kHz/24itやDSD 2.8MHzも楽曲として認識し、他のファイルに変換することなくウォークマンF887へ転送できた。なお、ハイレゾ楽曲転送時は通常と一部操作が異なり、ウォークマンを接続後、「そのまま転送」ボタンを押してから、通常と同じように転送楽曲を選び、矢印ボタンを押すという手順になる。「そのまま転送」にしないと、ハイレゾ楽曲が自動で44.1kHz/16bitに変換されてしまうので注意が必要だ。

ウォークマンを接続すると、ハイレゾ楽曲転送時の注意が表示された
X-アプリからウォークマンへの転送画面。右側の「そのまま転送」ボタンを押してから転送する
転送中の画面

 アップデートでは、ハイレゾ対応のほか、「操作について、利便性の向上」と「動作安定性の向上」も行なわれており、ここまでが正式な発表内容。しかし、アップデート後に設定画面を見ると、オーディオ出力設定メニュー内に、通常のDirectSoundに加え、[WASAPI排他]と[ASIO]の項目が追加されていることが分かった。

 WASAPI(Windows Audio Session API)排他モードとASIOについては、改めて説明するまでもないが、Windows PC(Vista以降)を使う際に、Windows OSのオーディオエンジンを経由しないため、元の音質から変化することなく、より低遅延で伝送できることなどが特徴。USBオーディオ機器と組み合わせて使う音楽制作ソフトの多くはASIOに対応しているが、iTunesなどのプレーヤーソフトは、WASAPI排他モード/ASIOどちらも対応していないのが実情。読者には、WASAPIを利用するために、プレーヤーソフトにfoober2000を使っているという人も多いだろう。

 X-アプリでASIOを選択すると、USB DACなど外部機器への出力可能。また、WASAPI排他モード時は、PC本体のスピーカーなどでも利用できる。今回は前述のUD-301や、TASCAMのUSBオーディオ「US-366」を接続してみた。いずれも問題無くWASAPI/ASIO接続でき、ボリュームをX-アプリではなく接続機器側で操作できた。なお、ASIO/WASAPI排他モード時は、当然ながらX-アプリのイコライザは利用できない。また、ASIOでは「ノンストップMIX再生」でハイレゾ楽曲が再生対象外となるといった制限がある。

出力モードでASIOが選べる
ASIO利用の注意事項
WASAPI排他モードも
WASAPI排他モード時の注意事項

ハイレゾ対応が着実に進化。ソフト側の対応強化にも期待

 今回、ウォークマンのDSD対応アップデートに合わせて、Media GoとX-アプリのハイレゾ対応状況など改めてまとめてみた。ウォークマンでもDSDファイルを扱えるようになったのは、最初できないとされていたことなので、素直に歓迎したい。DSDネイティブ再生対応のプレーヤーが「AK240」など高価格な一部の製品に限られている今、比較的手ごろな価格で購入できるウォークマンでも、PCM変換ながら対応したのは、ハイレゾの広がりにも貢献しそうだ。

 一方で、Media Go/X-アプリそれぞれの機能強化の方向性がハッキリと見えにくいのは少し気になる。例えば、X-アプリはハイレゾ対応になったにも関わらず、CDリッピング時には今もFLACが選択できない。X-アプリで対応したWASAPI排他/ASIOモードがMedia Goでは利用できないなど、一長一短という状況が続いており、現状でどちらのソフトがオススメとは言いにくい。既にこれらのソフトを使わず、単にドラッグ&ドロップでウォークマンに転送しているという人も少なくはないだろう。

 これまで着実にアップデートを重ね、不満点を解消しつつ新機能を追加してきた両ソフトだけに、使われなくなってしまうのはもったいない。別々の進化をしてきた2つのソフトを、いきなり一つに統合するというのは無理だと分かるが、ハイレゾ対応を進めていく中で、例えばX-アプリは高音質再生に特化していくといった差別化があってもいいと思う。せっかく2つあるソフトなので、今後のウォークマンの機能強化とともにソフトの進化も楽しみにしたい。

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中林暁