レビュー

HDD追加で3番組録画+宅外配信の低価格レコーダ「REC-ON」

約3.3万円のアイ・オー「HVT-RBCTX3」の実力は?

 アイ・オー・データ機器が8月末に発売したテレビチューナ「HVTR-BCTX3」は、実売価格32,500円と比較的安価ながら、別売りHDDの追加によって3番組同時録画のレコーダになり、さらに宅外リモート視聴にも対応するという、魅力的な製品だ。愛称は「REC-ON」で、録画(REC)を重視した製品であることが伺える。早速その実力を検証した。

HVTR-BCTX3

本体は小型。電源内蔵が地味に嬉しい

 基本的なスペックについては発表時の記事をご覧いただくとして、今回は実際の使用感を中心に見ていこう。まず外観は、オーソドックスな横置き型。底面には4つのゴム足が付いている。内部構造上、底面に熱を帯びやすくなっているようだ。また、背面にはファンも備えている。外形寸法は215×185×43.9mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約850g。

 HVTR-BCTX3単体では、あくまでもチューナなので、ボタン/LED類はかなり少ない。特にボタンは前面左方にある電源ボタンだけ。その隣には電源状態を示すLEDなどが並ぶ。

正面はアクリル調
電源ボタンとLED類

 背面の端子類もかなりシンプル。映像出力はHDMIの1系統だけで、アナログ関係の機能はバッサリとカットされている(地デジ終了から4年も経つのだから当然か……)。映像入力端子も一切ない。

 このほか、アンテナ入出力端子が地上/BS/110度CSデジタル用に合計4つ。アンテナケーブルは本体パッケージに付属していない。B-CASカードスロットはミニカードタイプが1つとなっている。

 そして、録画機能を利用するための外付けハードディスク(HDD)接続用USBポート、ネットワーク機能のための有線LAN端子(1000BASE-T対応)がそれぞれ1系統ずつ搭載されている。

 個人的に嬉しかったのは、電源が本体に内蔵されている点。ACアダプタではないので、コンセント周りがスッキリする。なお、電源コードそのものは本体から直に出ている(取り外し不可)。

背面
側面は左右とも何もなし

 リモコンはテレビ(チューナ)用のものとしては相当コンパクト。番組表や録画リストを呼び出すための専用ボタンはあるが、データ放送用のdボタンはなく、番組視聴中にサブメニューから呼び出す方式。また、放送波を切り換えるためのボタンが1個だけなのも多少気になった。ボタンを押すごとに地デジ→BS→110度CS→地デジ……と順繰りになる。BS/CSの利用頻度が高い人にとっては、やや億劫かもしれない。

リモコン。コード登録をすれば他社テレビの電源操作などが可能
単4電池2本で動作

USB HDD追加でトリプルチューナレコーダに。3番組同時録画も

 HVTR-BCTX3をテレビで視聴する際の操作感は、ごくオーソドックスなものだ。チャンネルの切り換え速度などでも全く不満はない。また、番組表や番組説明を表示中でも画面右上に放送が表示され続ける。

 番組表自体の操作性もなかなか軽快。上下左右カーソルキーでの通常スクロールに加え、チャンネル順送り/逆送りボタンと次チャプター/前チャプターボタンでページ単位スクロールができるようになっている。

基本の視聴画面
各種機能はリモコンの「サブメニュー」から実行。データ放送も
番組表

 さて、HVTR-BCTX3を語る上では、別売りHDDを組み合わせての録画機能を抜きにできない。今回は同じくアイ・オー・データ機器の外付け式HDD「AVHD-UR1.0C」(1TB)をお借りし、接続してみた。テレビ録画を想定した高品質HDD採用モデルで、USB 3.0に対応している。

アイ・オーのHDD「AVHD」シリーズと床面積が同じなので設置しやすい

 録画機能を利用するには、機器同士を接続した上でHVTR-BCTX3側から登録作業を行なう。この際、HDDは全領域がフォーマットされ、HVTR-BCTX3専用となる。PCと録画HDDを共用といったことはできない。

 個人的には、録画品質をMPEG-4 AVC/H.264方式を中心とする全10種類の中から選べる点が気に入った。というのも、私物の東芝製テレビに搭載されているUSB HDD録画機能はDRモード録画限定。便利な機能だとは思いつつも、慢性的に容量不足を感じていたからだ。

 HVTR-BCTX3は最高画質のDR(放送画質)モードを筆頭としつつ、1,920×1,080ドット画質のAF/AN/AS/AL/AE、ネットワーク配信向け(1,280×720ドット)のMR1/MR2/MR3/MR4の中から選べる。今回の実機環境(HDD空き容量1TB)で録画可能時間をチェックしてみると、DRでは92時間30分だったが、HD画質5段階の真ん中に当たるASだと368時間17分、MR4では914時間44分であった。

 HDDは最大6TBまで対応。その場合は、DRモードで約555時間(BS/CS放送 24Mbpsで計算)の録画が行なえる。

「ホーム」画面はかなりシンプル。ただ、「番組表」と「録画リスト」についてはリモコンでダイレクトに呼び出せる
録画機能を利用するにはUSB HDDをまず登録する
録画予約時の画質設定。全部で10種類から選べる

 個人的には、42型のテレビで視聴するには、AS画質(約4倍)でまったく問題ないと感じた。AEではさすがに画質の劣化が見受けられるが、用途によっては十分なレベルだと思う。

 同時録画数は3番組まで。ただ、これはUSB 3.0対応HDDへの録画時に限定される。USB 2.0対応HDDの場合は2番組同時録画となるので注意したい。HVTR-BCTX3にあわせてUSB HDDを購入するのであれば、ぜひUSB 3.0のものを選びたい。

 3番組同時録画実行中でも、録画済み番組の再生や、録画中の番組を冒頭から追いかけ再生が可能だ。

 制限事項としては、同時録画3番組のうち1番組は画質がDRに固定される。また、3番組録画実行中は、その他のチャンネルへの切り替えはできない。

3番組同時録画を予約しようとした時のメッセージ
このように1番組だけはDRモード録画となる

 また、HVTR-BCTX3はUSB HDDに加え、ネットワークHDD(NAS)へ番組を直接録画することができる。同様に、USB HDDからNASへ番組をダビングすることも可能なため、HDD容量が足りなくなった場合のバックアップにもNASを活用できる。

 対応するNASについては、「DLNAに対応したNAS」と説明されているが、DTCP-IP対応も必要なようだ。筆者宅の「DS414j」(Synology社製)にDLNA用アドオンを追加しただけでは、HVTR-BCTX3から録画設定を行なえなかったが、アイ・オー製のDTCP-IP対応NAS「HVL-DR2.0」では問題なく録画やダビングが行なえた。

NASへの直接録画も可能
録画リストもUSB HDDのものとは若干違う

 また、HDMIリンクにも対応し、HVTR-BCTX3のリモコンでのテレビ操作(電源・音量・入力切り換え)などが行なえる。今回はあまり試せていないが、ジャンルやキーワードをもとにした「おまかせ録画」についても、高倍率録画と大容量HDDを組み合わせることでかなり実用的なものになりそうだ。

 改めて考えてみても、録画用HDDの選択肢が広いのはかなりのメリット。それこそ最初はHDDレスでチューナとして使い、手元に余っているHDDを流用したり、いつの日か6TB HDDに投資する手もある。コストパフォーマンスは高い。

おまかせ録画機能もある
設定項目の一例

宅外リモート視聴対応! 「テレプレ」で自宅の録画番組再生

宅外リモート視聴をはじめ、ネットワーク機能を利用するにはこの設定をオンにしておく必要がある

 そしてHVTR-BCTX3におけるもう1つの注目点が、リモート視聴機能だ。専用の無料アプリ「テレプレ」を使うことにより、iOS/Android/Windows(ストアアプリ)の端末を使ってネットワーク越しの番組再生を実現している。NexTV-F(次世代放送推進フォーラム)が定める「デジタル放送受信機におけるリモート視聴要件」を満たしているので、宅内はもちろん、外出先からLTE/3G回線経由でも視聴できる。

 アプリの対応OSは、AndroidがAndroid 4.1~4.4.4、5.0~5.1、iOSは、iOS 7.0.4~8.4、WindowsはWindows 8.1/10だ。

 まずはAndroid版テレプレを使って実際の視聴手順を見ていこう。今回はAndroid 5.1.1がインストールされたNexus 6に、Y!mobileのSIMカードを装着した状態にしてある。HVTR-BCTX3側の準備としては、有線LANでネットワークに接続し、設定画面から機能をオンにする。インターネット回線は「エキサイト光」(最大通信速度1Gbps)を使っている。

 必須となる初回セットアップだが、この際はHVTR-BCTX3とAndroid端末を同一ネットワークに接続する必要がある。この状態でアプリを立ち上げると、ペアリング作業のためのシークエンスに移行する。基本的には、メッセージに従って、利用規約への同意などを行なうだけ。完了すると、その日から約91日間は、宅外リモート視聴が許諾される格好となる。

 実際の画面遷移などを見ると一目瞭然だが、この宅外リモート視聴にはデジオンの「DiXiM.NET」が利用されている。認証などは基本的にDiXiM.NET側のサーバーを介しており、メンテナンスによるサービス一時中断なども稀に実施される。DiXiM.NETのウェブサイトはサポート情報などが充実しているので、一度覗いておくといいだろう。

Android版「テレプレ」アプリでメニューを開いたところ
「サーバー」メニュー内にペアリング候補の端末が表示される
宅外リモート視聴機能を利用には、規約への同意が必要。ここにDIXIMの名称が出ている
ペアリングの有効期限は3カ月間。同一ネットワークに接続する度に自動更新される

 実際に宅外リモート視聴を行なう場合は、アプリから「リモートサーバー」を選ぶ。該当する機器名をタップすると、少々の待ち時間の後に「ライブチューナー」「USB1」と表示される。この「ライブチューナー」は、今まさに放送されているテレビ番組を見るためのメニュー。地デジ/BS/110度CSいずれも視聴できる。

トップメニューから「リモート」→「ライブチューナー」と選んでいき…
続いてはチャンネルが表示
宅外リモート視聴時はこんな警告メッセージも出る

 今回の試用では、自宅ネットワーク内に設置したHVTR-BCTX3に対し、Y!mobileのLTE回線でアクセスした。チャンネルを切り換えるたびにサーバーの認証やバッファリングが発生するが、一度見始めた番組の映像ストリーミング自体はなかなか快適だ。画面上のボタン1タップで音声ミュートできるのも助かる。

 映像品質は1.4Mbps(解像度640×360ドット)/0.6Mbps(同320×180ドット)の2種類がモバイル回線視聴用に既定されており、映像再生中にサブメニューから変更できる。フレームレートも若干間引かれているようだが、ニュースやバラエティ番組など、画面の動きが少ない番組であれば特に不満はない。ただ、データ放送が利用できないのはいいのだが、番組タイトルや番組説明は確認したいところだ。

 録画番組の再生も基本的には同じ。放送ライブ視聴の機能に加え、スライドバーによる再生位置変更、スキップなどが行なえる。また、HVTR-BCTX3では番組録画時にチャプタを自動付与でき、そのチャプタ一覧がテレプレアプリからも見られるようになっている。本体での再生時と異なり、リモート視聴時は、追いかけ再生はできない。

リアルタイムで番組を視聴中。録画番組視聴時と異なり、表示されるボタンが少ない。左上には画質選択用メニュー
画質選択メニューを開いたところ
録画番組視聴中はスキップボタンや再生位置表示が追加される
3番組録画時でも、録画番組のリモート視聴は可能

 リモート視聴で注意したいのは、3番組録画時の動作制限について。まず3番組録画実行中は、宅内・宅外ともリモート視聴は録画済み番組の再生だけとなり、放送のライブ視聴はできなくなる。実際、宅外リモートでライブ視聴中に後から3番組録画が始まると、テレプレ側の映像再生はストップする。ただし、3番組録画時でも、録画番組であればリモート視聴は可能だ。

 なお、今回は発売前にテストしているためか、宅外リモート視聴の安定性はやや難ありだった。一度リモート視聴のための接続が確立されれば快適なのだが、接続できなかったときの原因分析がしづらいのだ。

ペアリングの状況を確認

 もう1つの不満は、リモートでの録画予約ができないこと。「近年の録画機ならできて当然」と思っていただけに、盲点だった。

 考えてみると、テレプレにはそもそも番組表という概念がない。リモート視聴のための製品という位置付けからすれば録画予約機能は後回しになるだろうが、例えば「リモートで番組を見始めたけど、この内容だったら録画してあとで見ればいいや」という判断をしたいユーザーもいるはず。ここは、ぜひ機能強化してもらいたい。

快適な宅内ネットワーク視聴。Windows対応も魅力

宅内リモート視聴であれば、より高品質の映像を楽しみやすい

 宅内ネットワーク視聴が極めて快適で、番組のライブ視聴・録画番組とも全く問題なし。操作感は宅外視聴時とほぼ同じだが、ただし、映像品質についてはより高い7.6/5.7/3.8/2.3Mbpsが実用的な選択肢として提示される。

 この4つについては解像度も1,280×720ドットとなるため、見た目の美しさは明らかに向上する。自宅内でタブレットやパソコンでの画質も充分だ。

 ここまでは主にAndroid版テレプレの使用感を紹介してきたが、iOS版とWindowsストア版アプリもリリースされる。スクリーンショットを中心に紹介しておく。

 国内のレコーダメーカーでは対応が少ない、Windows向けアプリ対応が用意されている点はうれしいポイント。家族での「テレビチャンネル争い」が起きても、スマホやPCで裏番組を見られるという意味でも利便性は高いし、Windowsアプリもこなれていて、使いやすい。

iOS版「テレプレ」アプリでリモート再生。Wi-Fiマークがない点にご注目を
録画番組を再生するときは番組名が上に表示されている。なお、この画面で再生品質を設定できないなど、Android版アプリとは仕様が微妙に異なる
とはいえ、基本的な操作感は共通
Windowsストアアプリ版の「テレプレ」。筆者のWindows 10マシンでも動作した
ユーザーインターフェイス。スクリーンショット撮影しても画面が映らないようになっていた
設定画面

価格と対応力が魅力の小型レコーダ

 約32,500円+HDDとすると5万円を大幅に下回る価格で、USB HDDが余っていれば本体がほぼ3万円、トリプルチューナのレコーダが入手できるというコストパフォーマンスの高さはやはり最大の魅力といえる。それでいて、シンプルな使い勝手やHDDの拡張性、リモート視聴などの機能も充実している。

 リビングのテレビに追加すれば、充実した録画機能やリモート視聴を追加できるし、PCディスプレイとの組み合わせなど、パーソナル用途に特化させても面白いだろう。

 Windows機との相性も良く、なによりWindowsストアアプリ版テレプレが十分実用的で、色々と使い道を考えるのが楽しい。価格だけでなく、機能の充実、豊富な対応プラットフォームなど、ユーザーのいろいろな選択肢に応える「対応力」を備えたお手軽レコーダだ。

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HVTR-BCTX3

(協力:アイ・オー・データ機器)

森田秀一