レビュー
スマホ動画の音を良くしたい!シュア「MV88 USB-Cマイク」を装着して旅に出た
2026年7月2日 08:00
筆者がバイク(125ccスクーター)に乗るようになって丸4年ほど。すっかりドハマりして、景色のいいツーリングスポットに足繁く通っている。旅先でスマホを使ってサクッと動画を撮ることも珍しくない。別に動画クリエイターという訳ではなく、なんとなく残しておきたい思いで撮る。SNSで共有して、「こんなスポットあるよ」と伝えたい。なんなら一人でも多くの人がバイクに目覚めてほしい。
ただ、気になっていることがある。音質である。スマートフォン内蔵のマイクは大味というか、いい意味でも悪い意味でもデフォルメされた音だ。もうちょっとリアルな音で録れれば、旅先の雰囲気も伝わるのではないか。
そこで、スマホに接続できるUSBマイクに注目した。様々な機種が発売されているが、筆者が重視したいのは“旅のお供”であること。できるだけ小型でサクッと付けてすぐ使えるものがいい。
小型で多機能なマイクを見つけた。シュアの「MV88 USB-C ステレオマイクロホン」だ。発売から4カ月ほどが経過し、実売2万4千円程度で販売されている。外観をパッと見すると、これで2万円オーバーは高くない?と感じる方もいるかもしれないが、このMV88、実は驚くほど高機能だ。
アプリでマイクとしての機能や仕様を大幅にカスタマイズできる上に、マイク自体に設定が保存されるから公式アプリ以外でも全機能が活用できる神仕様。マイク自体にもガジェットファンならときめくようなギミックも仕込まれている。肝心の音質もプロ音響機器メーカーであるシュアらしい、本格的なクオリティだった。
マイクの向きを自由に変えられ、アプリから細かな設定が可能
本機はご覧のとおり、USB-C端子を搭載し、AndroidやiOSデバイスに直接接続できるUSBマイクだ。マイク部分を傾けたり、回転させることで、用途に応じたセットアップが可能。録音シーンから選べる5つのクイックスタートプリセットを使えば、知識が無くても最適なサウンドで音源を残すことができる。
マイクの収音パターンは、ステレオモード、モノラル単一指向性、モノラル双指向性、Rawミッドサイドの全4種から選択可能だ。ステレオモードは、左右の収音範囲を調整し、ステレオイメージを変えてレコーディングできる。
アプリからは他にも幅広いカスタマイズが可能だ。マイクゲイン、5バンドEQ、リミッター、コンプレッサー、ハイパスフィルター、リアルタイム・デノイザー、オートゲイン、左右(L/R)スワップといったポータブルレコーダー並みの機能性を備える。
対応フォーマットは48kHz/24bitまで。外装はアルミニウムで、質量は40g。MFi認証取得済み。付属品は、フォームウインドスクリーンと保護用キャリーケース。
いざ、旅へ
MV88を試用するに当たり、筆者自ら2つのスポットへ足を運んだ。1つ目は山梨県甲府駅前。2つ目は神奈川県の宮ヶ瀬ダムだ。
まずは甲府でのテストから。朝から3時間掛けて下道を走り、甲府駅南口側のバイク駐輪場(無料)へ停める筆者。観光案内所に寄り道し、TVアニメ「mono」の聖地巡礼マップをスマートにゲット。駅の北側にある「第2回やまなしアウトドアまつり ゆるフェス△」の会場へ向かった。
ゆるフェスは、2年ぶりの開催となるイベントで、TVアニメ「ゆるキャン△」のグッズ販売や音楽・トークイベントの開催のほか、アウトドアの魅力を体験できる各種アクティビティも充実しており、幅広い参加者で賑わっていた。
イベントを楽しみつつ、空き時間もあったので、甲府城(舞鶴城公園)へ散歩に行ってみる。最も高い場所である天守台に上って、甲府盆地の山々を見渡すと、なかなかに良い景色だ。さっそくスマートフォンにMV88を接続して録画してみよう。
キャリーケースから取り出すと、ウインドスクリーンが装着されたままのMV88が。実はこれ、密かに嬉しいポイントだ。一般的なマイクのように、毎回ウインドスクリーンを取り付ける手間がない。おかげでケースもコンパクトになるし、外そうと思えば外せるし、良いことずくめだ。
……と、ここで、問題発生! スマホカバーが干渉して、MV88のUSB-C端子がスマホのUSB-Cポートに届かないではないか。筆者のカバーは衝撃吸収のためエアーが入っており、やや厚みがある。ここで存在する選択肢は3つだ。1つ、カバーを使わずに接続する。2つ、接続に干渉しないケース等に新調する(厚さ2.1mmまで対応)。3つ、延長用のUSB-Cアダプターを使う。
個人的には2つ目を選びたいところだが、今回は試用ということもあり、3つ目のアダプター作戦を選ぶことにした。ネット通販で40Gbps/100W 5A対応のUSB-C延長アダプターをあらかじめ購入しておいた。あえて言うまでもないが、USB-Cの延長ケーブルや延長アダプターはUSB規格違反なので使用は自己責任である。なお、筆者が購入したアダプターで試したところ、使用に問題は無く、音質的にも特段支障は無かった。
マイクの設定は、項目を見るだけでワクワクする。シチュエーションごとのクイックスタートプリセットを選べば、イコライザーやリミッター、コンプレッサーなど、最適な設定に一発で整えてくれるが、ひとまず素に近い実力を見たいので自分で設定した。
公式のアプリは動画撮影用の「MOTIV Video」と音声録音用の「MOTIV Audio」が用意されている。MOTIV Videoを使えば、画質も音質もこだわりの撮影が可能だが、本稿では音声録音用のMOTIV Audioでマイクの設定変更だけをやって、あとはiPhoneのカメラアプリを使用した。シュアのアプリを使わなくてもMOTIV Audioで設定した機能面が生きてくる点が本機のすごいところだと思うので、その側面からも結果をご覧いただければ幸いだ。
ちなみに、アプリで設定した内容は、本機に記録されているので、スマートフォンから外して(電源を切って)別の機器に接続しても、その設定でマイクは動作する。
甲府城からの撮影は、景色を右から左にパンする風景動画。そして、適当に自分が同時録音したナレーション動画の2点だ。
声を出しながらマイクゲインで音割れしないように調整しつつ、念のためリミッターをオン。突発的な音で歪まないようにした。編集無しの録って出しするために、コンプレッサーを弱で掛けることにした。用途によっては、もっと音量感を稼ぐために強めに掛けてもいだろう。ハイパスフィルターは、風切り音をカットするべく、強めに150Hzで掛けた。iPhoneの内蔵マイクで録画するときは、iPhone側の設定を「ステレオ」、「風切り音の低減」をオンに。MV88を使うときは、「風切り音の低減」をオフに変更している。
iPhone 17eの内蔵マイクで撮った環境音は、グッと前に出ており、音をじーっと見ているような印象がある。風切り音は、効果的に除去されていた。
MV88で録音した音は、まず空気感が違う。映っている景色と音の奥行き感のマッチングが取れていて、後で見返してもその場にいるような気分になった。電車の音や鳥の声など、段違いにリアルだ。ダイナミックレンジも広く、地面を足が擦る音が急に入ってくるのも明確に分かる。反面、「ゴゴゴ……」という風の音は除去し切れていない。
次に、MV88を付けながら、同時録音でナレーションを入れてみる。適当に喋ったため、話しの内容はご容赦願いたいが、こんな比較をしてみた。
まず、前半は前方にマイクを向けて、モノラルの単一指向性に設定。つまり画面に映っている側の音を主に収音する設定。筆者の口元はマイクの真後ろにいるので、いわゆるオフっている音だ。
本機は同じモノラルでも前と後ろから音を同時に拾うことができる。マイクの向きを変えて、マイク部分を捻ると準備完了。後半は、前と後ろにダイヤフラムがある状態にして、設定からモノラル双指向性を選び、同じようにナレーションを入れてみた。
前半の動画はほとんど筆者の声が聞き取れない。風がちょうど強くなってしまい、風切り音も気になる。後半は、前方の音と筆者側の音(声)、両方がクリアに録れていることが伝わるだろう。これなら正面に話者がいるインタビューなどでも活用が期待できそうだ。ピンマイクでも使っているかのような聞き取りやすさは、小型軽量でもやはりシュアだと感心する。
この日の動画は以上。甲府駅まで日帰りという旅程を組んでしまい、夕飯の味噌ラーメンをしばいたら時刻は21時、そこから自宅まで帰るというもう二度とやらない苦行の大反省会開催、マジでお疲れ自分。
ダムの“観光放流”を撮影
次なるスポットは、神奈川の相模川水系にある宮ヶ瀬ダムだ。宮ヶ瀬湖を囲むコースは、ライダーの聖地でもあり、いつ訪れてもバイクを見かける。宮ヶ瀬周辺に景色の良いスポットはいくつもあるが、今回ロケ地に選んだのは宮ヶ瀬ダムそのもの。ここ最近の水不足により宮ヶ瀬湖も水位が低下。しばらく中止になっていた“観光放流”がついに再開されるというので、愛車を走らせて行ってきた。
宮ヶ瀬ダムは、重力式コンクリートダムとして、コンクリートの使用量が日本一。真下から見上げると、相当な迫力だ。
まずは、甲府で撮ったものと同じシチュエーションで、内蔵マイク・前面モノラル・双指向モノラルをサクッとご覧いただきたい。内蔵マイクは、ある意味で分かりやすい音ではあるが、ちょっと味気ない感じはある。スマホの持ち方をミスると、マイク付近を塞いでしまい不明瞭な音になるのもあるあるだ。MV88の双指向性は、目が覚めるようなハッキリ・クッキリ感。
次に試した機能は、ステレオ収音における範囲調整だ。主に音楽演奏を収録するときのステレオイメージの調整に役立ちそうなこの機能。他にも環境音などを録る際は、ステレオ感の広がりを変えることで、求める音を作ることができる。さらにRawミッドサイドで収録すると、あとからDAWでステレオイメージのリミックスが可能となるが、今回は割愛する。
動画は、最初に内蔵マイク。次に角度を一番狭くした録音、中間くらいの角度、最も広げた角度の順で編集している。
内蔵マイクでは、のっぺりと平面的な音に興醒めだ。小鳥の鳴き声も、ダム下のロードトレイン「愛ちゃん号」の警笛も、ほとんど距離感が変わらない。
MV88になると、風の音が強すぎて、他の音がほとんど聞こえなかった。これはさすがに事故音源だ。角度を広くすると、風の音が左右に散ることでセンターの音の渋滞が緩和され、ダム下の噴水の音がいくぶん聞き取りやすい。角度を最大まで広くすると、風の音がさらに緩和された。この映像のように広い景色を映しているときは、ステレオの角度も広めにするとスケール感がマッチしそう。小型で手軽なマイクでも、数段階に収音エリアを調整できるなんて気が利いている。角度の案配が難しいと感じる方でも、シチュエーションごとに5つ用意されているクイックスタートプリセットを選べば適当な設定に合わせてくれるので、安心である。
MV88は、リアルタイム・デノイザーによる雑音除去にも対応する。動画編集でノイズ除去のエフェクトを使わなくても、録りの段階でノイズに邪魔されない音声を残せるのだ。
主に雑踏でのインタビュー(取材)等に有用だと思われるが、とりあえずダム下で筆者が喋っている動画をご覧いただこう。マイクは筆者側に向けて、モノラル単一指向性で録っている。鳥の鳴き声がたまに聞こえる程度で、かなり強力なノイズ除去が働いていることが伝わるだろうか。ただし、音声は若干劣化するので、生々しさを重視したいときはオフにして後処理する方がベターと感じた。
そうこうしている内に、観光放流の時刻が近付いてきた。ザーッという音とともに、真っ白い水が2つの穴から落ちてくる。時系列の順番が前後してしまうが、動画はiPhoneの内蔵マイク、MV88その1、MV88その2の3パターンで並べてある。その1に比べて、その2は正面から撮影しているが、距離は少し離れている。
内蔵マイクでは、流れ落ちる水の轟音が迫力十分に伝わってくる。MV88はハイパスフィルターを無効にして録っているのだが、内蔵マイクに比べると奥行き感が増した反面、前にグッと出てくるエネルギッシュさは薄まった。しかし、流れ落ちる水のしぶき感というか、轟音以外の成分までよく聞き取れる。遠足の子供たちの声は、内蔵マイクではまったく分からないほどマスキングされてしまっていた。こうした、音量の大きい音と小さい音を同時に正確にキャプチャーできるのも本機のメリットだろう。アングルを変えた最後のカットでは、距離が少し離れた分、周りの山やコンクリートの躯体に反響する音まで感じ取ることができる。
iPhoneのカメラアプリは、音声を可変ビットレートのAACで圧縮して記録している。フリーソフトの「MediaInfo」で解析すると、100kbps~192kbpsの間で自動設定されていた。MOTIV Videoで音声を非圧縮のWAVで設定すれば、さらに没入感のある動画がスマホで残せるということになろう。
最後に自撮りもやってみた。普段、ほとんど自撮りはしない筆者だが、マイクの性能を見る上で省くわけにはいかない。最初はiPhoneの内蔵マイク。自撮りの場合は、音声と環境音含め、まとまりのある整った音という感触がある。このままSNSにアップしても音的にはセーフだろう。
MV88はステレオイメージを広げていきながら3パターン録った。だんだん角度を広くしていくと、センターの音声に芯がなくなっていく。森のざわめきなどの環境音も60度で録った2番目のテイクが一番好みに近かった。
自撮りをステレオで撮るときは、角度を広げすぎると声の芯が抜けて、音の安定感も損なわれてしまう。逆に狭すぎると、自分の声と環境音がセンターに寄ってケンカしてしまう可能性もある。バランスを取ってより良いテイクを目指して遊んでみるのも楽しそうだ。なお、動画中にずっと「ブーン」という音が鳴っているが、発電所の外にある変圧器がうなっているだけで、マイクの故障ではない。
本機はMOTIV Audioを使ってのオーディオ録音も可能だ。録ったオーディオデータは、iPhoneならiTunesを使って転送をするか、オンラインストレージ経由でパソコンへ移す。試しにリビングと自宅スタジオの収録ブースそれぞれで声を録ってみたところ、吸音が不十分で反響の激しい環境ほど、内蔵マイクとの違いが如実に出た。内蔵マイクで録ったリビングの声は、音が遠く散漫で聞き取りづらい。MV88はリビングであっても、ある程度シャープな音が録れている。収録ブースで試すと、両者の違いは縮まったものの、MV88のピュアな音声に「これ、エントリークラスの単品コンデンサーマイクじゃね?」と驚いてしまった。ポッドキャスティングなどの収録も、これさえあれば高品質に残すことができそうだ。荷物の負担にならないから、常に持ち歩いてもいいくらい。
そんなこんなで、筆者の趣味旅に同行してもらったMV88 USB-C。見た目を超えるシゴデキな能力の数々、いかがだっただろうか。アプリでの詳細なカスタマイズは、手軽に使いたい人から、最適な音を残したいこだわり派まで取りこぼさない懐の深さを見せてくれた。
MV88 USB-Cは、スマホと一緒にイヤフォン並みの小型ケースを持って出るだけで、格段にいい音で大切なシーンを切り取ることができる。カバンに1つ、常備したくなるマイクといえよう。

























