鳥居一豊の「良作×良品」

徹底して映像を追求した「DMR-BZT9600」でまどマギ体験

劇場版の壮大なフィナーレをこだわりの映像と音で

 今回紹介する良品は、パナソニックのBDレコーダ「DMR-BZT9600」(実売価格33万1,990円)。昨年秋に発売された、同社の最上位モデルだ。この連載でも、高価格にも関わらずこのシリーズを取り上げているが、それは画質と音質に徹底してこだわったその実力の高さが一番の理由だ。個人的にもいつかは手に入れたいと憧れていたモデルで、4Kプロジェクタ導入と合わせてようやく購入することができた。

DMR-BZT9600

 本機の概要を紹介すると、内蔵HDDは3TB、トリプルチューナ内蔵で3番組+スカパー!録画の4番組同時録画が可能なモデル。他のモデルとの大きな違いは、3層構造のベースシャーシ、3.5mm厚のアルミ押し出し材のトップパネル、同じアルミ素材のサイドパネルを採用した高剛性シャーシの採用だ。このほかに、数々の高品質オーディオパーツを採用し、かなりの物量が投入されたモデル。

 DMR-BZT9600では、BD再生時や音楽再生など動作に合わせて不要な回路ブロックの動作を停止し、ノイズの発生を抑える「インテリジェントローノイズシステム」の強化、HDMI伝送時のジッターを低減する「オーディオクロックスタビライザー」の改善などさらに画質と音質を向上するさまざまな進化が図られている。

付属の「USBパワーコンディショナー」。未使用のUSB端子(USB 3.0端子を推奨)に装着することで、電源ノイズを低減する

 極めつけは、最大192kHz/24bitのネットワーク再生機能の対応だ。もとより、CDの高音質再生などでも実力の高さを発揮していたが、ハイレゾ再生にも対応することで、より多くの高品位ソースを幅広く楽しめるようになった。

 ユニークなところでは、オーディオアクセサリーの「USBパワーコンディショナー」が付属する。これは、インド・ビハール州産のルビーマイカを使用したマイカコンデンサーと非磁性体抵抗で構成されたフィルター回路で、未使用のUSB端子に接続することで本体内部の電源ノイズを低減し、さらなる高音質化に効果があるというもの。僕自身も半信半疑ではあったが、実際に試してみるとBDソフトの再生では音のS/Nがよくなり、サラウンドによる空間の広がりがより鮮明になった。ハイレゾ再生でも音場の見晴らしが高まるなど、あなどれない効果があった。

 BDレコーダとして、異例と言えるレベルの画質と音質を追求したシリーズだったが、DMR-BZT9600は、マニアックな側面も含めてまさにピュア・オーディオ機器に迫る実力を備えたモデルになっている。

本体を正面図。半透明のアクリルパネルなどは他のモデルとも共通する部分だが、天板などをはじめ、そのほかの部分はまったく異なる
フロントパネルを開いた状態。ディスクドライブやUSB端子、SDカードスロットなどを備える。表示のためのディスプレイはあるが、操作ボタンなどは一切ない
上面から見たところ。厚みのあるアルミ天板はヘアライン仕上げとなり、質感の高い仕上がりとなっている
側面もアルミパネルが装着される。パーツの接合もすき間なく組まれており、その剛性はかなり高い

 持ち上げてみると、BDレコーダとしては異例なほどずっしりと重い。剛性もかなり高く、片側だけを持ってみてもボディが歪むような感じはまったくない。他のモデルよりは一回り大きいが、奥行き239mmと十分にコンパクトなボディということもあり、鉄の塊のようにも感じる。

BDレコーダとしてはかなり充実した入出力端子を備える。同軸デジタル出力やアンバランス出力の端子は金メッキ仕様

 BDレコーダとしてはオーバークオリティと言えるほどの強靱なシャーシだが、そのぶん、ユーザーの満足はかなり高い。このモデルのユーザーには、アンテナ配線やB-CASカードの装着をせず、純粋なBDプレーヤーとして使用しているというユーザーも少なくないというが、そんなマニアックな使い方をしたくなる気持ちもよくわかる。しっかりとしたAVラックに置いていても、他のオーディオ機器と比べて見劣りするような安っぽさがないというのは、趣味としてのオーディオ・ビジュアルのための機器として重要なポイントだと思う。

 背面はBDレコーダらしいもので、地デジとBS/110度CSデジタル用のアンテナ端子をはじめとした端子が並ぶ。HDMI出力が2系統、外付けHDDなどを接続するUSB3.0端子とUSB端子など装備は充実している。アナログ出力にはバランス出力とアンバランス出力を備えるのは、シリーズ伝統の装備だ。

「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」を4K表示で楽しむ

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」
(C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka Movie Project Rebellion

 これに組み合わせる良品は、「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」。最高級BDレコーダに組み合わせる作品としてアニメを選んだ。これについては何も言い訳しない。良い作品を最高の状態で見たい。ただそれだけだ。

 もはや説明不要と思うが、簡単に作品を紹介しておくと、もともとはTVシリーズとして放送されたタイトル通り魔法少女モノの作品。だが、一般的な魔法少女モノが触れなかった暗黒面に踏み込むことで、可愛らしい絵柄とは想像できない重厚なストーリーが展開。熱狂的なファンを生み出した作品だ。その後、TVシリーズを再編集した総集編が2本劇場公開され、本作はその後の物語を完全新作で描いている。

 さっそく上映と行きたいところだが、そうはいかない。まず入念に画質調整を行なうことが欠かせない。画質面での本機の大きな進化ポイントには、HDMI 2.0に完全対応し、4K/60pのアップコンバート出力機能が加わっている。4Kプロジェクタ ソニー「VPL-VW500ES」と一緒に購入に踏み切った理由がこれだ。

 何度か視聴して確認したところ、DMR-BZT9600で4Kアップコンバートした方が、VPL-VW500ES側で4Kアップコンバートして表示するよりも解像度の高い再現になった。画質的な傾向により、どちらで4K化した方が好ましいかは作品によって異なるのだが、今回は高解像度を優先した。なお、自宅のVPL-VW500ESは4K/60p(4:2:0/24bit)にのみ対応しているので、初期設定で4K/60pを「オート2」で使用する必要がある。

設定メニューにある「4K/60p出力」の設定。4K/60p(4:4:4/24bit)などで接続できる機器ならば「オート1」、そうでない場合は「オート2」を選択する。
HDMI出力解像度の設定画面。4Kテレビなどとの接続の場合、オートを選択すると自動的に4Kアップコンバート出力になる。フルHDのまま出力する場合は、ここで「1080p」に切り替える

 そのほかの初期設定としては、BD再生時にチューナー、HDDの電源を停止し、さらに冷却ファンまで停止するようになった「シアターモード」、動画再生時、音楽再生時に不要な出力をカットしてノイズの影響を抑える「ハイクラリティサウンド出力設定」などがある。これらは主に音に効く設定で、シアターモードでBDを再生すると、音の鮮度、情報量の豊かさに明かな違いがある。以前のシアターモードでは、予約録画が行われる時間帯にBD再生をするには、いちいち初期設定メニューに行ってオン/オフを切り替える必要があったが、現在では再生時にオン/オフの切り替えができるようになったので、より使いやすくなっている。このほか、一般的なBDレコーダでの初期設定と同様だ。

シアターモードの設定画面。単純に「入/切」を選ぶだけ。再生時にシアターモードを「切」にすることもできるようになったので、ここは「入」にしておいていい
音声設定の画面。シアターモードやハイクラリティサウンド出力設定はここから設定を行う
ハイクラリティサウンド出力設定の画面。動画再生時と音楽再生時で異なる設定を登録しておける。基本は使用する出力端子のみにし、不要な出力はすべて「切」にする。本体表示窓点灯は「点灯しない」

 さて、これでいよいよ上映となるのだが、その前に昨今のアニメの画質事情について軽く触れたい。デジタル制作が当たり前となった現在のアニメでは、制作は720pで行なわれることが多いと思うが、実はこれもそれほど単純ではなくなっているようだ。問題になるのは原画をデジタルで取り込むときの解像度だ。画面いっぱいにキャラクターが描かれるようなクローズアップの場面は十分な解像度で取り込みが行われているが、画面の1/4以下の面積で全身が描かれるような引いた画面レイアウトの場合、取り込み解像度の不足が感じられることが少なくない。特にTV放映されている作品の場合は顕著だ。

 この解像度不足がなかなか厄介な代物で、4Kテレビやプロジェクタはもちろん、フルHDテレビでも多くのモデルが備える超解像技術に分類されるディテール感の向上技術と相性が悪いのだ。取り込み解像度の不足で発生したジャギーをより強調してしまい、映像が見づらくなる傾向がある。

 これに関しては元のソースの問題なので、アニメ制作現場の作業環境の向上に期待するしかない部分もあるが、BDレコーダや表示機器側での調整を行なうことでうまく対応することが可能だ。

 これらを踏まえて、画質の調整を行いながら、本編を見ていくことにしよう。

予想と違う? それとも期待通り? 劇場版まどか☆マギカのその後の物語

 TVシリーズや劇場版の総集編を見て、ヒロインである少女の犠牲(?)を持って、すべての魔法少女の哀しみや苦しみを救済して完結した物語の続編とはどんなものになるのかと思っていた人は少なくないだろう。序盤で描かれる物語は、TVシリーズ第1話を思わせる平和で楽しげな世界と、明るく能天気にナイトメアに立ち向かう5人の魔法少女の活躍を描いたもので、「どこが続編? パラレル展開の別の話」という予想を裏切られた感と、それを補ってあまりある期待どおりの展開、「こういうストーリーを見たかった」感が入り交じる。

 劇場版の完結編で初めて描かれるというのも、本作らしい部分ではあるが、5人の魔法少女たちが協力してナイトメアに立ち向かうという展開は、TVシリーズの鬱憤を晴らすものと言えるだろう。

 このあたりで、映像の調整をしてみよう。基本的には、明るさやコントラスト、色合いなどの調整は4Kプロジェクタ側で視聴環境に合わせて整え、DMR-BZT9600では、主に解像感の調整などで追い込んでいくいつもの方法としている。

 まず試したのは、映像詳細設定の「映像素材」。ここには、標準をはじめ、ハイレゾシネマ、シネマ、アニメ、ライブなど、映像ソースに合わせて選べる画質モードが用意されている。本機も映像調整機能はかなり充実しているのだが、基本的にはここで好ましいモードを選ぶだけである程度ソースに合った再現が楽しめるようになる。

映像詳細設定の設定メニュー。ディスプレイの選択(プロジェクター、テレビ)のほか、映像素材、解像感調整やノイズ低減などの調整が可能。2つの設定を登録しておけるので、実写用、アニメ用などと使い分けが可能
詳細設定のメニュー。原画解像度変換の切り替えはここで行なう。その他の映像処理は、基本的に高域周波数を制限するもので、古い作品以外で特に使う必要はないだろう

 もっとも高解像度な再現ができる「ハイレゾシネマ」を選らんでみると、さすがにディテール感が豊かで、見応えのある映像になる。特にナイトメアとの戦いが繰り広げられる異空間の再現が精密だ。実写素材をそのまま取り込んだものや、恐ろしげな童話を感じさせる手描きの切り絵などを巧みに活用した映像は、キャラクターたちのアニメらしい絵柄とのミスマッチが強烈に伝わる。

 しかし、キャラクターの描線が強調されすぎ、輪郭のギラつきやノイズで汚れた印象になる。全身が描かれる場面など解像度不足の場面もはっきりとそれがわかってしまう。

 ならば、と「レトロシネマ」に切り替えてみる。これは、古い映画用のモードで、もともと解像度の高くない、現代の感覚からするとちょっと甘い感じの映像をくっきりと再現するためのもの。過度にディテールを欲張らないため、ノイズ感など悪い部分は目立ち憎いが、輪郭線はくっきりと立たせる方向のせいか、アニメの絵柄とはいまいち合わず、輪郭のギラつきがある。

 最後に「アニメ」を選んでみた。輪郭線はくっきりと力強く描くのに、ジャギー感の強調感なく、すっきりと見やすい。アニメの画質傾向をよくわかっている巧みなまとめ方だ。強いて言うならば、「ハイレゾシネマ」のような精緻なディテール感がやや不足しているくらいだ。当然といえば当然の結果なのだが、画質モードについてはやはり「アニメ」で行くことに決めた。

 もうひとつ、詳細設定にある「原画解像度変換」も試してみたが、結論としては1080p以上の環境で制作された作品に適した「切」が良かった。480i/pではソースに含まれている高域成分までカットしてしまうようで、明らかに映像が甘くなり、720i/pではキャラクターの描線は確かに素直で見やすいのだが、背景画や異空間を演出するオブジェクトのディテールが物足りない。このあたりは、好みにもよると思われるが、720p制作だから、原画解像度も720i/pを選ぶべきというような、教科書的な選択はもう通用しないと考えていいだろう。

だんだん高まる物語への違和感。だんだんまどか☆マギカらしくなってくる

 ひとまず、このまま見ていこう。TVシリーズでは最後の最後まで魔法少女にならなかった鹿目まどかが、他の魔法少女と共に活躍するのを見るのは感慨深い。2人による合体攻撃的なアクションも見応えがあるし、なんと変身シーンまで全員分用意されている。ナイトメアにトドメを指す場面などは、40半ばのおじさんが見ていると恥ずかしくなるくらい、正統派の魔法少女アニメのノリだ。

 一度は見たかった場面だが、見続けていると「これは違うよね?」と思い始めてくる。その違和感に、もうひとりのヒロインと言える暁美ほむらが気付く。隣の町へさえ行けない閉じられた世界を堂々巡りする場面は、わかりやすくモブキャラ化された街の人々の映像や、街並みは現代的なのに妙にレトロな造形の屋上付きバスのデザインなど、違和感というか、ちぐはぐ感に充ち満ちたものになる。

 ついでに、画質的にも違和感がつのってくる。やはりディテールの描写が少々物足りない。ここでさらに画質調整を追い込んでいくことにする。映像調整メニューから「解像感調整」をしてみることにした。解像感(輝度高域)は、特に背景画や異空間のテクスチャーが大きく変化した。最大値まで調整するとさすがに背景画がノイジーになり、映像も硬くなるが、そうならないギリギリまで上げてみた。

 解像感(輝度中域)は、輪郭線などにも多少影響があるようで、キャラクターのほかビルの窓枠のくっきり感などにも違いが出る。こちらを上げすぎると、描線が汚れて見えてしまうので、ほどほどにしている。解像感(色)は「0」のまま、実写作品やフルCG作品ならば効果はありそうだが、アニメでは大きな違いはなかった(4K/60pの4:2:0/24bit出力であることも関係がありそうだ)。

 個人的にも意外だったのが、輪郭補正を少し上げたこと。基本的には輪郭の強調感は不自然になるのでほぼ使わないのだが、輪郭補正による描線に側に白いフチドリが着くオーバーシュートなども出ず、輪郭のくっきりさに加えてよりシャープな印象になったためだ。特にこの作品は、異空間とキャラクターのタッチの違いが良いアクセントになっているので、その違いがよりはっきりと出るようにした方が、映像の魅力が増すと感じた。

解像感調整の画面。解像感(輝度高域)と解像感(輝度中域)は、ともにディテール感向上のものだが、映像的な変化が現れる部分に違いがある。ビルならば壁面の質感が現れるのが解像感(輝度高域)、輪郭や窓などがはっきりと出るのが解像感(輝度中域)
ノイズ低減の画面。ブロックノイズ低減などをはじめ、ノイズの種類別に調整が可能。ここではすべて「0」のままとしている
輝度・色調整の画面。明るさや黒レベルなど、基本的な画質調整を行うためのもの。ここでは、白階調だけ「+2」とし、明るい部分の階調感を少し出すようにした。

 ある程度調整が進んできたら、あえて別の画質設定と見比べてみるのも大事だ。ひたすら画質調整を追い込んで行くと、ディテール再現にこだわりすぎて、映像が硬くなってしまっていることもあるし、その逆もある。DMR-BZT9600では、画質調整は設定1/2と標準を切り替えられるので、確認もしやすい。ディテール優先かノイズ処理優先か求める画質には好みがあるが、やりすぎにならないようにチェックしつつバランスを取るようにすると、違和感のない調整ができるだろう。

 このとき気がついたのだが、アニメモードは、明るく鮮やかな色を再現する傾向が強く、特に明るい方向の階調感が失われやすい傾向がある。そのため、輝度・色調整の画面で白階調を上げ、白側の階調感が出るようにしている。どちらかというとこの作品は暗い場面がかなり多く、暗部の階調の方が重要になりそうに思えるが、全体に暗いシーンだからこそ、部分的に光が指す感じのニュアンスがしっかりと出ないと、映像全体のムードもただただ重苦しくなってしまう。

緊迫の度合いを増す物語を、見応えのある映像で満喫できた

 暁美ほむらによって、自分たちのいる世界が次第に明らかになってくる。しかし、自分を含め、本来居た世界の記憶はあいまいになっており、なかなか理解が得られない。必然的にバトル展開へと突入するわけだが、画質調整が一段落したこともあり、映像の見応えは十分。時間を操る暁美ほむらと、無数のマスケット銃を操る巴マミの戦いは力の入った作画でスピード感たっぷりに再現された。暗い街の中で銃撃が繰り返され、その軌跡が幾重にも重なっていく。息詰まる場面でもあるが、その美しさも随一のものだ。

 DMR-BZT9600の画質は、基本的にはかなりの高解像度指向で、その情報量は極めて多い。それでいてS/Nが優秀なので、極端な画質調整をしなければ映像がノイジーになることもなく、特に暗部のノイズ感が少なく、暗い場面なのに見通しよく描かれるのは見事だ。

 音質についても共通した傾向があり、S/Nがよく細かな音までしっかりと粒立ちよく描かれる。5.1ch収録のサラウンド効果がしっかりと再現され、空間も広々としている。そこに、鋭いキレ味の銃撃音が浮かび上がり、立体感の豊かな音場になる。アニメの大きな魅力である声優の声の再現も実体感豊かで、それぞれの声優の個性をしっかりと伝えるだけでなく、微妙な間や吐息といった「声にならない声」が際立つことで、登場人物としての感情がはっきりと伝わり、心を揺り動かされる。

 ちょっと余談だが、BDの完全生産限定版には、映像特典として、「HOMURA 1st take version」が収録されている。これは、本編のラスト付近での暁美ほむらの声を、没となったバージョンに差し替えたものだが、これの悪魔ぶりは恐ろしい。ネタバレになるので詳しくは書かないが、これはこれでアリというか、暁美ほむらの心情が理解できるような気にもなる(没になった理由もよくわかるが)。

大好きな作品で、最高の画と音を追求する理由を改めて感じた。

 物語は、世界の全貌と陰で暗躍していたキュゥべえの陰謀に気付いた魔法少女たちが、団結して立ち向かうことになる。そしてついに、本来の姿と記憶を取り戻したアルティメットまどか降臨となる。そこでめでたしめでたしとならないのが、この作品らしいところだが、期待通りのハッピーエンドに終わらない、いつまでも心のどこかに引っかかっているような傷痕を残すような作劇は、けっして否定しない。あくまでも邪道な作品であって、こうした作品ばかりになることは望まないが、このあたりも含めてなのだろう。

 ところで、今年の1月末に購入した4Kプロジェクタ「VPL-VW500ES」は、4カ月ほどの稼働で、実稼働時間が800時間を超えた。これには僕自身ちょっと驚いた。毎日映画を3本見ているほどの稼働時間だが、さすがにそこまで映画を見ていない。その理由を考えると、1本の映画を見るために画質調整をしながら1度見て、調整が落ち着いたらもう一度最初から見る。というような視聴を日常的に繰り返しているからだろう。

 我ながらここまで画質と音質にこだわる姿勢には呆れる。時間はもちろんだし、それなりの機材を揃えるためのお金もかかる。だが、そこまでして得られる体験がある。今や、映画コンテンツは、動画配信も活発になり、知識レベルで「見た」ことにするならば、スマホやPCで手軽に済ませてしまうこともできる便利な時代だ。

 それで済まないのが趣味の世界なのだと改めて思う。「魔法少女まどか☆マギカ」をじっくりと見て、作品の面白さや提示された命題に頭を抱える。作った人の思惑や思想信条などにも興味が沸き、同じ作り手のの作品にも手が伸びる。ここまで踏み込めるのも、作品世界に引き込んでくれる優れた映像機器があってこそだ。DMR-BZT9600は、そこまで作品に没入したい人にとっては、欠かせないモデルと言えるだろう。

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臼田勤哉

鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40~60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。