USB HDD対応など進化を続けるブルーレイDIGAを体験

最高の「BD再生機」を目指したプレミアム機も


新ブルーレイDIGA

 パナソニックから6日に発表された新ブルーレイDIGA。地上/BS/110度CSデジタルトリプルチューナを搭載などの特徴を継承しながら、新たに上位5モデルで別売USB HDDへの録画対応を実現するなど、さらなる機能強化や、画質向上などが図られた。

 ベーシック/スタンダードモデルだけでなく、2つの“プレミアムモデル”も用意。より強力なラインナップとなった新ブルーレイDIGA。新機能の詳細と、プレミアムモデルの狙いをパナソニック開発陣に聞いた。


 

プレミアムモデル

品番HDD容量チューナ仕様発売日店頭予想価格
DMR-BZT90003TB3USB HDD録画
専用電源ケーブル
シアターモード
専用筐体
9月15日37万円前後
DMR-BZT9102TB21万円前後

 

ベーシック/エントリーモデル

品番HDD容量チューナUSB HDD録画発売日店頭予想価格
DMR-BZT8101TB39月15日13万5,000円前後
DMR-BZT710500GB11万円前後
DMR-BWT51029月1日95,000円前後
DMR-BRT2101-10月15日7万円前後
DMR-BZT9000DMR-BZT910DMR-BZT810
DMR-BZT710DMR-BWT510DMR-BRT210

 


■ 機能制限の少ないUSB HDD録画

番組表のGガイド広告表示も上に移動し、より広いエリアで番組表表示ができるようになった

 まずは各モデルで共通する特徴から見てみよう。起動については、従来から1秒高速起動(クイックモード:標準)を謳っていたが、新シリーズでは、録画リストの表示も1秒に高速化。さらに、電源OFFからのトレイオープンも1秒にするなど、各機能の起動速度を高めている。さらに、クイックモード(標準)の消費電力も2011年春モデルの約4.8Wから、約4.4Wに低減している。

 また、リモコンに「ワンタッチ録画ボタン」を新搭載。視聴中の番組の録画実行や番組表で選択している番組の予約などをこのボタンのみで行なえるようにした。


リモコンにワンタッチ予約録画ボタンを装備ワンタッチ予約録画ボタンで終了後の動作も指定
録画一覧の左端にUSB-HDDの項目が現れ、USB HDD内の番組を管理できる

 録画については、上位4モデルはトリプルチューナ+スカパー! HD録画の合計4系統同時録画という特徴を継承。DMR-BWT510はダブルチューナ、DMR-BRT210はシングルチューナとなる。

 録画周りで、新ブルーレイDIGAの各モデルに共通する(BRT210を除く)特徴が、USB HDD録画対応だ。これまでは、内蔵HDDのみの録画となっていたが、別売のUSB HDD追加に対応。HDD容量の拡張が可能になる。USB HDDの複数台同時接続はできないが、最大8台まで登録可能となっている。

 ただし、対応USB HDDについては、パナソニック側で動作検証したもののみがサポート対象となり、現時点で対応を謳うのはアイ・オー・データの「AVHD-URシリーズ」、バッファロー「HD-AVS1.0TU2/V」、「HD-AVS2.0TU2/V」、ウェスタンデジタルの「JESN My Book AV」のみとなる。

 これらのHDDでは、パナソニックの要求に基づきAVコマンド(ATA-7 AVストリーミングコマンドセット)をサポート。通常のドライブでは、記録時にエラーがあるとリトライを繰り返すことになるが、AVコマンド対応機器では次々とくる情報を途切れないように記録する。そのため、録画中にエラーが発生した時も、録画中断を起こす可能性が低いとのことだ。なお、パナソニック純正の500GB HDD「DY-HD500-K」も用意されている。

 AVコマンド非対応のUSB HDDについても接続すればDIGAから認識され、録画にも利用できる可能性は高い。ただし、安定した録画環境を実現する意味で、AVコマンド対応HDD以外はパナソニックのサポート対象外となる。


対応のUSB HDDはAVコマンド対応製品に限定。DIGA推奨HDDとして販売するアイ・オー、ウェスタンデジタル、バッファロー、パナソニックの対応HDDアイ・オーは薄型HDDをDIGAの発売に合わせて発表予定

 USB HDD録画で気になるのが、内蔵HDDへの録画との機能の違いだろう。最大で4系統の同時録画に対応するが、USB HDDへの録画は1系統のみで、2番組を同時にUSB HDD録画することはできない。これはUSB HDDの帯域上の問題とのことだ。ただし、内蔵HDD×2、USB HDD×1、スカパー! HD×1といった使い方は可能で、それほど困ることはないだろう。

 もう一つの違いがMPEG-4 AVC/H.264圧縮による長時間モードでの録画ができないこと。USB-HDDへの録画はDRモード(MPEG-2 TS)のみとなる。ただし、録画した番組を後からMPEEG-4 AVC/H.264変換することは可能だ。また、カメラからのビデオ/写真取り込みなどは内蔵HDDのみで、USB HDDに取り込むことはできない。

 録画した番組は、録画リストの左脇に出てくる「USB HDD」の項目からアクセスして、再生できる。また、USB HDD録画した番組を、内蔵HDDを経由せずにそのままBD-R/REにダビングできるほか、DLNA/DTCP-IPサーバーとして「お部屋ジャンプリンク」対応機器に配信することもできる。

 同様にUSB HDDの追加に対応しているレコーダとしては、東芝の「レグザブルーレイ」があるが、動作制限の少なさという点では後発となるDIGAのほうが少ないといえる。なお、USB HDDに録画した番組は、録画に利用したDIGAでのみ再生可能となる。

【DIGAとREGZAブルーレイのUSB HDD録画比較】

機能ブルーレイDIGAREGZAブルーレイ
USB→BDダビング-
(内蔵HDDの
経由が必要)
長時間モード
録画
-
録画後のUSB HDD内
レート変換
-
USB HDD録画中の
BD再生
-
DLNA配信
(ドライブ
切替必要)

 


■ お部屋ジャンプリンクも動作制限緩和

新・スタートメニュー

 操作メニューも「新・スタートメニュー」に一新。「予約する」、「録画した番組を見る」、「撮影ビデオを見る」、「写真を見る」といった使いたい機能のアイコンを選択して、操作する体系に改められた。

 注目番組の呼び出しや、BD/SDメディアの選択などもこのメニューから行なえる。また、アイコン配置を変更して、好みの機能をホーム画面としてカスタマイズできる。カーソルの左右で、2枚目、3枚目のメニューに移行でき、BZT810以上で採用しているタッチパッド付きリモコンのフリック操作でも、このメニュー移動に対応する。

 また、メニュー画面の背景画像の変更も可能で、好みの写真を指定することもできる。

壁紙の変更も可能となったリモコンのタッチパット部のフリック操作で、メニュー画面のページ送りが可能
3チューナ録画中でもお部屋ジャンプリンク配信

 ネットワーク機能で強化した点はDLNA/DTCP-IPサーバー機能となる「お部屋ジャンプリンク」の同時動作の緩和だ。従来は、お部屋ジャンプリンクで対応機器に配信中は1番組しか録画できず、2番組以上録画している場合は配信できなかった(トリプルチューナモデル)。

 しかし、新モデルでは3番組の同時録画中でも、お部屋ジャンプリンクの配信が可能となる。なお、スカパー! HD録画とお部屋ジャンプリンクは排他仕様となる。

 また、放送中の番組をDIGAで録画しながらそのままお部屋ジャンプリンク対応機器に対応する「放送転送」も2011年春モデルでは録画中には利用できなかった。秋モデルでは1番組の録画中も放送転送が可能になった。

【トリプルチューナモデルのお部屋ジャンプリンク機能制限緩和】

-'11年秋モデル'11年春モデル
クライアントからの
視聴時の
録画系統上限
3番組1番組
放送転送時の
録画可能系統
1系統不可

 新機能としては、ビデオカメラで撮影した動画やデジカメで撮影した写真、音楽などを自動でミックスし、スライドショー化してくれる「動くアルバムメーカー」を搭載した。

 周辺機器との連携も強化。新たに、他社製のAVCHDビデオカメラからの取り込みを強化し、差分取り込みや日付別表示にも対応。国内で販売されている多くのAVCHDカメラをサポートしたという。

 加えてAVCHD ProgresssiveのBDダビングや、AVCHD 3Dの取り込み/BDダビングに対応。さらに、XactiなどのMP4ビデオカメラのファイルをHDDに取り組み可能になった。なお、MP4ファイルは取り込み時にTS形式に変換する。

 また、LUMIX用のフォトストレージサービス「ピクメイト」に対応。ピクメイトにアップロードした写真のダウンロードや、DIGAからのアップロードに対応する。

動くアルバムメーカーウィザードに従って動くアルバムを制作ビデオカメラ連携などを強化
ジャンル最適化エンコードを導入

 録画/再生画質の改善も図っている。録画画質については、新たに「ジャンル最適化エンコード」を導入。MPEG-4 AVC/H.264へのエンコード時に、EPGのジャンル情報を照合し、例えばアニメの場合は線画に最適化したエンコードを、スポーツはダイナミックな動きが出る部分に高いビットレートを振る、といった制御を導入。より低ビットレートでもノイズの少ない画質を実現できたとする。

 また、クロマアップサンプリング処理性能も向上。新たに3Dマルチタップの精度を向上したことで、艶や輝きのある3D映像を実現した。さらに、2D/3D変換では「マルチレイヤー3D変換」を導入した(BRT210を除く)。従来はBDの2D-3D変換時にビデオ映像と字幕、メニューを一体で3D変換していたが、新モデルでは映像と字幕、メニューをそれぞれ独立で3D変換する。これにより、字幕やメニューのそれぞれが浮かび上がるように見え、立体感の向上が図れたという。

 また、DVDのアップコンバート画質も向上。クロマ処理と超解像処理を改善することでS/Nと階調性を向上した。BD/DVDビデオ再生時の字幕の位置調整機能も搭載。シネマスコープの映像を16:9ディスプレイで見る場合には、映像にかぶってしまう字幕を黒帯部に移動できる。さらに、シネスコスクリーンでの視聴時に、通常再生だと字幕が黒帯に入っているためスクリーン内に表示できないが、この機能を使うことで画面内に字幕を表示可能になる。

クロマアップサンプリング性能を向上字幕の位置調整機能を追加

 


■ 随所にこだわりのプレミアム機。確かに実感できる音質差

DMR-BZT9000とDMR-BZT910

 基本性能の向上に加え、高音質、高画質設計を行なったプレミアムモデルもラインナップ。最上位モデルの「DMR-BZT9000」は、高剛性&低重心筐体を採用し、不要な振動を大幅に低減。「DMR-BZT910」は回路技術を中心に高画質、高音質を追求したモデルとなる。BTZ9000の実売37万円という価格もレコーダとしてはかなり破格の設定といえる。

 ほかの新DIGAと並べてみると、BZT9000のシャーシは明らかに異質だ。アルミ筐体のシルバーを基調としたカラーリングもさることながら、新開発の「高剛性&低重心筐体」を採用し、不要な振動を大幅に低減。異なる厚みの鉄板を3層に組み合わせた「3層ベースシャーシ」により、重量バランスを低重心化するとともに、振動の低減と安定化を実現。本体の共振ピークを無くし、振動の影響を徹底的に排除したという。

 3.5mm厚のアルミ押し出し材によるトップパネルと、サイドパネルにより本体の剛性を向上。アルミ無垢材の質感を活かしたプレミアムらしい存在感にこだわった。


BZT9000のカットモデル。トップパネルは3.5mm厚のアルミBZT9000の背面。DMR-BZT9000/BZT910は2系統のHDMIを装備。BZT9000金メッキ処理が施されている3層ベースシャーシで共振を排除
3層ベースシャーシにより共振を排除

 また、ドライブ部の振動を抑制する新開発高剛性ドライブシェルターもBZT9000のみ採用。ドライブを3方向からカバーで囲うことで、振動の影響を抑え、回転音も防いでいる。同社のDVDプレーヤー「DVD-H2000」などでも採用していたものだが、“録画機”であるBZT9000でもこうした徹底した振動対策が行なわれている。

 さらに、ドライブシェルターの上部には「Premium Model」を高らかに謳うアルミプレートを配している。実はこのドライブシェルター、筐体を開けないと絶対に見えないので、普通にレコーダ/プレーヤーとして使う場合は、まず見ることは無いはずなのだが、プレミアムモデルであることを密かにアピールしている。


BZT9000の高剛性ドライブシェルター。上部にPremium Modelを示すアルミプレートがあるが、トップパネルを開けない限りは見られないBZT9000のインシュレータ基板裏側にUniphier

 新シャーシの採用にあわせて、BZT9000は電源コンデンサや信号系コンデンサも新規のもの採用。BZT9000のインシュレータはABS樹脂を組み合わせた新セラミックインシュレーター。BZT910のインシュレータは樹脂製。電源ケーブルもBZT9000が10mm径のOFC、BZT910が7mm径のOFCとなっており、いずれも3芯タイプの電源インレットを採用する。従来はメガネタイプの電源ケーブルだったが、交換ケーブルの選択肢の豊富さなどから3芯を求めるニーズも高く、今回は3芯化したという。

アナログ回路も強化BZT9000の電源ケーブル

 2モデルで共通するのは、動作モードに応じて不要な回路ブロックの動作を停止させ、映像や音声に影響を与えるデジタルノイズの発生を抑える「インテリジェント ローノイズシステム」を搭載したこと。

LSIを細かく制御し、音楽のみの再生時は、回路やメモリなどの動作をストップする「ハイクラリティサウンド2」

 システムLSIのUniphierを細かく制御し、使用していない機能を停止させることでノイズ源減を無くすというもので、高音質モード「ハイクラリティサウンド2」では、アナログ映像出力を利用しない場合はアナログ映像回路を停止し、システムLSI内部で発生するデジタルノイズを大幅に低減。従来は映像DACのみを停止していたが、“2”ではデジタル系前処理まで含めて停止することができるようになった。

 音楽CD再生時にアナログ/デジタル映像信号処理回路を停止(従来は映像信号回路とHDMIは動作)するほか、アナログ音声出力を利用する場合には、HDMI回路も停止する。これにより再生時のノイズ源が大幅に抑制できるという。


インテリジェントローノイズシステムの使用前(左)と使用後(右)の基板近傍ノイズ比較

 実際にDMR-BZT9000と従来のフラッグシップ機DMR-BZT900の比較視聴を行なったが、Blu-ray 3D「アバター」では、暗闇の中松明を持つネイティリの表情の陰影やディテール、薄暗い背景の中の植物の色情報などに違いが見て取れた。また、音響面でもすぐにS/Nの向上が感じられ、それに伴いセリフの厚みも増したように感じられた。

 音楽CDについては通常再生と「ハイクラリティサウンド2」アナログ出力以外の回路をOFFにして再生する比較視聴を行なった。正直違いが出るか懐疑的なまま臨んだが、明らかにS/Nが向上し、それによりベースやドラムなどの各楽器の実体感が高まる。もちろん相応のオーディオシステムが求められるが、再生が始まってすぐに違いが分かるほどに、その効果は実感できた。

 CDプレーヤーなどオーディオの世界では、数百万円級の超高級機もあるが、BDプレーヤーはそれほど多くない。DMR-BZT9000の目標は、「世界最高のBlu-ray再生機器を目指した」とのことで、充実の録画機能はもちろん、再生品質にも徹底的にこだわった自信作という。


(2011年 8月 15日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]