デスクトップPCでできたことがノートPCに、ノートPCでできたことがスマートフォンやタブレットに……と、小型・高性能化の流れは止まるところを知らない。個人ユーザーとしてもこの流れはうれしいところだけれど、フットワーク軽く動きたいビジネスマンにとって小型・軽量であることは、とりわけ重要なポイントだ。
そんなビジネスシーンで使うことの多いプロジェクターも、今や小型化の時代。一貫してコンパクトさにこだわってきたアドトロンテクノロジーの「QUMI」シリーズは、スマートフォンサイズからB5サイズ弱まで4機種ほどをラインナップし、いずれも持ち運びに苦労しないサイズでありながら、妥協のない性能を誇る製品として人気を集めている。
なかでも2012年に発売された「QUMI Q5」は、カバンに余裕で収まるサイズであるにもかかわらず、HDクラスの画質を実現することなどから、解像度も重視されるビジネスシーンで特に好評を博した。そのQUMI Q5の誕生から2年の時を経て、2014年12月、リニューアルされた新しいQ5「QUMI Q5 Refresh」がついに発売。前モデルのQ5からどう変わったのか、ビジネスにおける活用シーンを想定しつつ紹介しよう。
まずはQ5 Refreshの基本性能と、前Q5からの変更点について簡単に解説したい。
Q5 Refreshは、小型・軽量で高性能のDLPプロジェクター。1280×800ドット、最大90インチの映像を投影できる性能を誇りながら、本体の大きさはほぼA6サイズで、縦横幅は7インチタブレットか、いわゆるファブレットのサイズ感に近いイメージ。本体重量は約480gとなり、もともと小型だった前モデルより10g削り込んだ(ACアダプターを含めると計680g)。
ボディカラーのバリエーションが5色、輝度500ルーメン、LED光源寿命3万時間といった点は前モデルから引き継ぎつつ、コントラスト比は以前の10000:1から30000:1に大幅にアップ。基本性能を受け継ぎ、部分的にグレードアップが図られただけでなく、さらにQ5 Refreshでは機能面で“モバイル化”をより推し進める要素が多数盛り込まれている。
その機能の1つが、MHLへの対応。付属ケーブルを用いて、MHLをサポートするスマートフォンやタブレットなどのUSBポートと接続することにより、端末の画面をそのままQ5 Refreshで映し出すことができるようになった。

MHLについては、スマホサイズのプロジェクター「QUMI Q1」が先がけて実装している。しかし、高解像度のQ5 Refreshが対応したことで、小さな文字の多いビジネス資料をスマートフォンなどの端末からMHL出力する際にも、くっきり見やすく映し出せるわけだ。
PDFやオフィス文書の表示・編集が可能な最近のスマートフォンが、MHLでそのままプレゼン資料の表示・再生に使えるとなれば、それなりにかさばるノートPCを持ち運ばずに済むこともあるわけで、社内外を動き回ることの多いビジネスマンなら重宝するのではないだろうか。Q5 Refreshを一緒に持ち歩くのも、さほど苦ではなさそうだ。
また、PCからプロジェクターに映し出す場合、設定トラブルなどで手間取ることがよくある。PC上ではマルチモニターの設定でプロジェクターに出力する形になるため、OSによっては設定が複雑だったり、PCの調子や相性によって映ったり、映らなかったり、という問題が頻発する。
ところが、スマートフォンなどからのMHL接続であれば、ケーブルを1本つなげて、あとはQ5 Refresh本体側の入力ソースを切り替えればいいだけ。端末側で特別な操作は一切必要なく、すぐに映し出せるシンプルさと確実さが、意外に大きなメリットとなる。大事な会議やプレゼンで手間取ると、周囲の評価もだだ下がり。サクッとつなげてサクッと画面表示させ、サクッと受注を勝ち取ろう(?)。
スマートフォンやタブレットさえも持ち歩きたくない! Q5 Refreshを持ち運ぶので精一杯! なんてわがままっぷりを発揮したい人にも、より手軽に扱える方法があることを訴えたい。なんと、Q5 Refreshでは、本体背面に用意されているUSBポートにUSBストレージを接続し、保存している文書ファイルを読み込んで映し出す機能があるのだ。
たとえば会議資料のPDFファイルをUSBメモリにコピーしておいて、Q5 RefreshのUSBポートに差し込むだけで、本体上面のタッチ式キーか付属リモコンでUSBメモリ内のファイルを選択していける。そのままPDFファイルを開き、リモコン操作でページ送りの操作も可能だ。
これであれば、正真正銘のPCレス、スマホ・タブレットレスのプロジェクション環境が整う。狭い打ち合わせスペースでは、メンバーがそれぞれPCを持ち込んだりすると、それだけで窮屈になってしまうけれど、事前にメンバーにUSBメモリに資料を入れてくるように言っておけば、すっきりした会議室で全員の資料を使いながら打ち合わせでき、集中力が高まって議論も深まるに違いない。
とはいっても、会議やプレゼン中にテキストメモをガンガン取ることもあるし、PCと一緒に使う方が何かと都合がいい、という人もいるかもしれない。モノが小さく、少なくなれば省スペース化を果たせるとはいえ、何もかも「PCレスで」というわけにはいかない場合もあるのが、仕事のつらいところだ。
しかし、そんなPC利用時でもできるだけモノを減らし、カッコ良く使える手段がQ5 Refreshには用意されている。それが、同梱の「QUMI専用Wi-Fiドングル」を用いた“Wi-Fiディスプレイ”の機能だ。
Q5 RefreshのUSBポートにこのWi-Fiドングルを接続し、必要なソフト(MirrorOp LiteおよびPtG Converter)をインストールしたWindows/Mac OSからWi-Fi接続することで、PCの画面をミラーリング(複製)の形で映し出せる。
Wi-Fiドングル自体はUSBメモリのような小さなものなので、有線接続するためのHDMIケーブルを持ち歩くよりははるかにコンパクト。PCからは、Q5 Refreshと1対1で接続して映し出すこともできれば、Q5 Refresh側で宅内・社内の無線LANアクセスポイントに接続し、そのLANを通じてPCから接続することも可能となっていて、使い勝手の面でも優れている。
つまり、社内など普段使っているLAN環境がある場所では、PCのLAN設定を変えることなく、すぐに使い始められる。打ち合わせや会議時にQ5 Refreshを使おうとするたびにPC設定を変える手間は不要なうえ、Q5 Refreshを無線で接続している間、PC側でインターネットや社内LANを利用できないといった問題も発生しない。Surface Pro 3のようなWindowsタブレットも使っている人も多いと思うが、こちらも同じようにスマートに使いこなすことができる。まさしく移動の多いビジネスマンに最適な機能といえるだろう。
最後にもう1つ、Q5 Refreshの面白い使い方がある。Wi-Fiドングルを使ってインターネットに接続できる状態であれば、Q5 Refreshが内蔵しているWebブラウザーを利用してWeb閲覧できるのだ。ブラウジング操作はリモコンでも行えるが、できればQ5 RefreshのUSBポートにUSBハブを接続し、そこにWi-FiドングルとUSBマウス、さらにはUSBキーボードをつなげて利用した方が、使い勝手はずっと良い。
社内の企画会議などでは他社のWebサイトを参考にすることもあるわけで、そんな時でもわざわざPCを用意する必要がなく、Q5 Refresh単体で見ることができる。店頭やショールームなど、PC関連の機材や設置スペース、余計な電源を確保しにくい場面でも活躍するに違いない。
試したところでは、一般的なニュースサイトはもちろん、YouTubeの動画も全く問題なく閲覧・再生できた。なんとなく“おまけ”的な機能に見えるが、実用性は高い。このテクニックをうまく活用すれば、会議メンバーの気を引いて、自分のペースでプレゼンを進めることもできそうだ。
MHLでスマートフォンやタブレットからの画面出力が可能になり、しかも小さなUSBメモリでも文書ファイルを映し出せるQ5 Refreshは、スタイリッシュに打ち合わせや会議を進めたいビジネスマンにとって魅力的。Webブラウザーも内蔵しているので、USBメモリ内の資料を映したり、参考資料としてWebサイトや動画サイトを見せたり、といった内容であれば、PCは完全に不要になってより機動力が高まる。
WiFiディスプレイの機能も、面倒なケーブル接続や無線LANの接続先再設定から解放されるという意味でも、WindowsやMacなどの機種をほとんど問わないという意味でも、メリットは大きい。オプション品の持ち運びが楽な「スマートスクリーン 24インチ」が用意されているので、これと組み合わせることで、もしかすると日常業務で使えるモバイルディスプレイとしての用途も考えられるかもしれない。
QUMI Q5 Refreshは、普段使いのディスプレイから、打ち合わせスペースや大会議室のプロジェクターまで、1台で広範囲の業務をカバーできる可能性を秘めたプロジェクターなのだ。
(日沼諭史)