「SU-AX7」試聴レポート
まずは「MacBookAir」を付属品のUSBケーブルで前面のPC/充電兼用端子につなぎ、「HA-MX10-B」で試聴。背面端子のINPUT切替スイッチをiPodに切り替える。感想は、とにかく音数の多い、それでいてキレの良いダイナミックなサウンド。低域のフォーカス感が高く、ベースがリアルな音色を聴かせてくれるのと、スネアがはねるようなキレの良いリズムを刻んでいるため、とてもノリの良い、グルーブ感の高いサウンドを楽しむことができる。ヴォーカルはややカスレたイメージだが、これは「HA-MX10-B」もともとのキャラクターとして、分解能や解像度感の高さに支えられたリアルさに目がひかれる。スタジオモニターヘッドホン「HA-MX10-B」ならではの良さが十分に発揮されているイメージだ。ここまで元気で、勢いのある音をポータブル環境で聴かせてもらえるのは、嬉しい限りだ。
続いて、プレーヤーを「AK120」に変更。入力切替スイッチを切り替えて、OPTICAL IN(角型光)端子に接続する。なんと、こちらの相性もかなり良かった。セパレーションは「MacBookAir」に比べるとやや下がるが、解像度の高さ、音数の多さは変わらず良好なため、リアリティの高いメリハリに富んだサウンドを堪能させてくれる。空間的な広がり感も良好。ライブ演奏を聴くと、プレーヤーの立ち位置がしっかりと感じられることに加え、ライブスペースの大きさもしっかり感じ取ることができる。会場の盛り上がりもしっかりと伝わってくる、“熱い”サウンドだ。
さて、プレーヤーは「AK120」のまま、ヘッドホンをウッドドームイヤホンのフラッグシップモデル「HA-FX850」に変更する。こちらの組み合わせは抜群。タップリとした量感を持つ低域がパワフルなベースを奏で、ノリの良い演奏を堪能させてくれる。さらに素晴らしいのが、ヴォーカルの力強さだ。ジャズの女性ヴォーカルを聴くと、まるでマイク無しのダイレクトな声そのものを聴いているかのようなきめ細やかさを持つ、伸びやかで張りのある歌声が楽しめる。特に「HA-FX850」との組み合わせはさすがのクオリティで、音質を優先してやや低域の駆動量を求めるイヤホンに対して、十分なパワー感とともに、ベストプロポーションな帯域バランスをもたらしてくれる。「HA-FX850」ならではのサウンドを存分に楽しみたい人には、これ以上はない“ポタアン”といえる。
続いて、プレーヤー/イヤホンはそのままに、(個人的にはとても気になっていた)アナログ接続も試してみる。こちらは、かなり上質感漂うピュアオーディオライクなサウンドキャラクター。表現が丁寧で細やか、嫌なピークがほとんど感じらない、まとまりの良いサウンドだ。アナログ接続のため、デジタル接続に比べると解像度感は落ちるものの、ダイナミックな表現、グルーブ感の高さはしっかりと保持されているため、聴いていて楽しいのは変わらず。「AK120」でも勢いの増した、それでいて聴きやすい音になるのだから、アナログ部に関してもかなりのクオリティだといえる。
最後に、一番手軽に利用できる「iPhone 5s」を接続して試聴する。お手持ちのiPhoneに付属品のLightningケーブルで「SU-AX7」前面のiPod/iPhone/iPad接続用端子につなぐだけで、これまで楽しんでいた音楽が全く別物と思えるくらい、音質も迫力も異なってくる。また、付属品の傷付き防止スペーサーを使えばかなりの粘着力のため、iPhoneとぴったり固定することができるので安心だ。iPhone5sにピッタリサイズのシートだが、お手持ちのプレーヤーサイズに切って使うことも考えられている。
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最適な長さのショートケーブルが付属されているのがうれしい。確かに市販のケーブルでは若干長すぎる。細やかなこだわり具合だ。 | | スマートフォンにマッチした奥行きサイズとなっているため、iPhoneの収まりが非常に良い。粘着機能付きの傷付き防止スペーサーも心憎いサービス。 |
そして、実際のサウンドはというと、内蔵ヘッドホン出力と比べてしまうのがかわいそうなくらい圧倒的。音の解像感、クリアさが圧倒的に異なり、ステージが全体的にグッとせり出してきたかのような、ダイレクトなサウンドへと生まれ変わっている。特にヴォーカルは、目の前で歌ってくれているかのように、詳細まで聴き取れるようになる。その一方で、高域の伸びやかさもかなり違う。ハイハットの音などが、かなり聴きやすくなっているのに、一段と印象的に感じられるのだ。これに対して内蔵のヘッドホン出力は、メリハリをブーストして印象度を高めているといったイメージ。インパクトの強さはさほど変わらないものの、ずいぶんと濁った、荒い音だということに気がつく。この違いこそポタアンならではのハイクオリティさが存分に発揮されている部分だ。
なお、New 「K2テクノロジー」については、iPhoneとの接続が一番効果を発揮してくれた。音色的な変化はとても自然で、倍音成分が整い伸びやかなイメージになった程度に留まっているが、低域のフォーカス感が高まり音のキレや勢いが良くなったおかげか、より勢いの増したパワフルな演奏となった。演奏全体のまとまりが良くなってくれるため、アコースティックな演奏とも相性が良い。曲調や好みによって、積極的に活用したいところだ。
他にもいろいろ試したが、このように「SU-AX7」は、高級イヤホンだけでなく、高級ヘッドホンの実力をもしっかりと発揮し、iPhoneからハイレゾプレーヤー、PCまで、屋外ではもちろん、室内でも望外の良質かつ“楽しい”サウンドを手にすることができる、貴重なモデルといえるだろう。特に「HA-FX850」との相性はなかなかのもの。「HA-FX850」ならではのサウンドを存分に楽しみたい、という人には最有力候補としてオススメしたい。
さらに、iPhoneだけでなくポータブルオーディオプレーヤーやPCとも接続できることも、ありがたい限り。特にPCとの接続はかなり音質的なメリットがあるため、屋内用のヘッドホンアンプ付きUSB DACとしても充分に活用できる。こと音質面については、太鼓判でオススメできる秀逸な製品だ。
(野村ケンジ)