- 2013年11月18日 UPDATE
- Reported by 本田雅一
テレビという商品に対するパナソニックの良心とは
一昨年末から登場し、昨年末からは本格的に話題になり始めていた4Kテレビ。今年は各社が50インチ以上の上位モデルにこぞって新製品を投入しはじめたが、こうした競争に水を差す議論も降りかかってきている。しかし、4Kに対して慎重だったパナソニックまでもが4Kテレビ市場へと参入してきたのには理由がある。
4Kテレビがキレイに見える理由
4Kテレビについて書かれるとき、よく“将来はチューナーをつないで4Kネイティブの映像が”といった紹介のされ方がされる。筆者自身、そうしたことを書くこともある。
しかし、現在の4Kテレビにおいて、4Kネイティブ、すなわち放送そのものの解像度やブルーレイの出力解像度が4Kになることを“念頭に”は置くが、しかしそれが“今欲しい”と思う理由の一番手か?と言えばそうではないと思う。単に将来、より良い映像楽しみたいのであれば、確実に放送コンテンツあるいはネット、ブルーレイ、なんでもいいが、4Kでの映像が入手できるようになってから考えればいい。
現在の4Kテレビが欲しい、買いたいと思う理由は、現在主流となっている映像ソースが、フルHDテレビよりも良い画質で楽しめるからに他ならない。筆者の前回のコラムで書いたように、映像制作部分での品質向上や超解像技術の進歩などが、たとえ映像ソースがフルHDでも4Kで見るとより多くの情報が見えてくる根拠となっている。
画質の良し悪しは、結局のところオーナー自身がどう感じるかに依存している。評論家がどんなに素晴らしいと言おうと、オーナー自身がキレイだと思わなければ意味がない。2Kでも4Kでも、オーナーがこれがいいと思うものが良いのだ。そして、年々使い続けるうちに見慣れてくれば4Kで良かったと思うときも来るだろう。まずは自分の目を信じることだ。
画質とはその字にあるように、画の質だ。リクツよりもフィーリングの方が優先されて然るべきものである。実際(現金なものだが)、4Kテレビを多数視聴して慣れてくると、大型のフルHDテレビが粗く感じてしまう。まるで網戸を通して見ているようなメッシュ感が気になってくるのだ。
その理由は画素の境目を形成している黒いマスク(覆い)。画素が大きなフルHDテレビは、ブラックマスクの幅も大きくなる。たとえ元の解像度、映像の情報が同じでも、物理的な見え味として4Kパネルの方がキレイなのだ。
放送規格やブルーレイの規格が4K対応にならなくとも、高精細化が容易という液晶技術の特徴を考えれば、半導体技術の進歩(による超解像技術の向上)にしたがって4Kになるのは必然である。
ただ、それだけでは将来、いつか4Kにしたいとは思っても、今すぐ4Kに買い換えを促す理由にはならない。このあたりが、冒頭にも挙げた4Kに対する否定的な意見に繋がっているのだろう。
4Kビエラを企画・開発したパナソニックAVC社のテレビ部門は、そういった否定的な意見、本当に4Kが必要なのか?といった声を充分に意識した上で、4Kビエラを開発したという。
4K映像を楽しむためのあらゆる可能性を
4Kテレビに関する歯がゆい状況は、業界全体が抱えている悩みだ。
4Kテレビがキレイかどうか?と言えば、間違いなくキレイと言えるところまでトップクラスの製品は達してきている。高級テレビの軸足をOLEDに移そうとしていた韓国勢が、今年は4Kへとシフトしてきたのも、世界的に4Kへの流れがあるためである。もちろん、将来的に4K放送が開始されるということもあるのだが、それは来年以降の話だ。今年というタイミングでは、高画質、プレミアムを探るために4Kが必須アイテムになっている。
ところが、上記のブラックマスクの幅が狭くなることによる見た目の質感も含め、意外に違うものなんだ、ということはあまり知られていない。これは実際に4Kテレビがどんなものか。50インチ以上、60インチ以上といったサイズのテレビで、どれだけ見え味が違うのかといった体験の差が、充分に認知されていないからである。
“しばらく使ってもらえれば、誰にでも感じてもらえるぐらい充分な進化なのだが”と頭を抱えている営業の方は多いのではないだろうか。
そこで“だからこそ”と考えたのがパナソニックである。パナソニックAVC社テレビ事業部長の楠見雄規氏が筆者に4Kビエラを紹介したとき、次のような話をした。
「今、4Kテレビといっても、4Kで楽しめる映像は限られていますよね。4Kカムコーダを使って自分で撮影する。あるいは4K解像度でデジタル写真を楽しむ。しかし、肝心のテレビ番組や映画は2Kです。2Kもよりキレイに映せますが、それだけでは物足りない。将来も不安。だから、今あるベストな4Kパネルを最大限に活用するために、あらゆる方法をユーザーに提供しようと考えてたんですよ」
本誌一連の4Kビエラに関する記事にもあるように、この考え方は徹底されている。4Kのインターネット映像を楽しめること。HDMI 2.0対応で最大限のスペックで外部の4Kチューナー、プレーヤーを接続できること。そしてゲームから動画、パソコンディスプレイ用途まで幅広い使い方を提供できるDisplayPort 1.2aを搭載したこと。
特にDisplayPort 1.2aを搭載したことは、英断といってもいい。これにより、パソコンから4K映像を毎秒60フレームで表示するとき、一切の画素情報を欠落させずに表示できる。他メーカーのエンジニアが「自分たちも搭載したかった」とつぶやいた部分だ。
フルHDの映像を最高の環境で見るための4K。そして将来の4K放送を楽しむための4K。しかしそれだけでは物足りないため、4K解像度を持つあらゆるデバイスとの接続をサポート。こうした全方位での4Kへのアプローチが、4Kビエラ最大の魅力と言える。
この話に「4Kが必要かどうか」というテーマは似合わない。将来、テレビは4Kへとゆるやかに移行していくことは間違いない。そうした中で、“現在”の4Kを最大限に活かそう。4Kビエラにおける4K映像入力端子の充実は、テレビという商品に対するパナソニックの良心なのだと思う。