【VIERA Station】テレビから「ライフプラススクリーン」へ
映画らしい映像を再現できるテレビを目指して

 一昨年末よりテレビメーカーが開発のピッチを上げてきた「4K」テレビ。当初はスペック主義で実利への疑いを持つ消費者も少なくなかったようだが、しかし蓋を開けてみると順調に売上は伸びている。

 調査会社のGfkによると2013年は北米で約5万台の4Kテレビが売れたそうだが、2014年は約50万台に急成長すると予測。2017年には290万台に成長し、全世界での販売台数は700万~800万になると言われている。

 こうした傾向は日本でも同じだ。大手メーカーからの4Kテレビが出揃った昨年末、BCN発表の数値を見ると50インチ以上の大型テレビにおける4Kテレビの比率は15%前後まで上がっていた。売上金額ではその2倍、30%前後まで比率が高まり、メーカーだけが盛り上がっているのではなく、販売店、消費者が揃って4Kに注目していることが確認できる。

 このように4Kに対する期待と実売がともに高まっていく世界的な傾向があるのには、いくつかの理由がある。ひとつは見た目に高画質を体感でき、それを数字の上でも納得してもらいやすいことだ。

4Kテレビに注目が集まっている

 放送波やブルーレイソフトなど映像ソフトでもっとも高精細な規格として存在してきたフルHD。元の映像ソースがフルHDなのだから、それ以上の高精細さは不要という意見も目にするが、実際に我々が目にしているのは物理的に存在している「表示パネル」だ。

 これが液晶ならば、画素ごとに赤、緑、青に光る副画素が並び、それぞれが個別に光っている。十分に細かな画素ならば、確かに4Kの利点はあまり感じないかもしれない。しかし、実際に4KとフルHDのパネルを見比べると、フルHDには網戸を通して世界を見るような風合いを感じてしまう。物理的な画素を感じてしまうからだ。

 電機メーカーは、こぞって大型テレビでは4Kが有効ですよと訴求しているのは、実際に店頭で見比べれば、良さを実感できるからにほかならない。しかも慣れとは恐ろしいもので、何度も4Kテレビを見ていると、見比べていなくとも(それまで高画質だと思っていた)フルHDパネルの表示に違和感を感じるようになる。その“実感”を“画素数が4倍”という数字で後押ししている。

 また4Kテレビそのものが、技術的に熟成してきたことも背景にはある。単純に4Kという解像度スペックを持つだけでなく、高画質な映像を表現できる4K液晶パネルが生まれ始め、解像度以外のスペックでもフルHDパネルと同等以上の素材が入手可能になってきた。そこにここ数年をかけて育てられてきた映像処理エンジンの進化が加わり、“4Kは確かに高精細だけど○○だから”といったエクスキューズがなくなってきている。

 これらは映像機器を自ら調べ、選んで購入する本誌読者に近い視点での視点から見た4Kテレビの良さだが、市場動向も4Kテレビの伸びを示唆している。前述したように大型テレビから順に伸びている4K化の波だが、日本では50インチ以上のテレビ販売比率が急速に伸び、台数の縮小傾向は続いているものの売上金額そのものは、地デジ移行後に落ち込んだ2012年を2013年に逆転したという。

 薄型テレビブームの比較的初期に買い替えた世代に、買い替え需要があることだ。メーカーはかつての42インチテレビの場所に50インチ、あるいは55インチのテレビを置けるようコンパクト化を進めるなど商品設計を工夫しているが、消費者側も買い替え時には以前よりも大きなサイズを選ぶ傾向が強い。

4Kテレビ市場は伸びている

 “4Kテレビ”は、スペック先行型の消費者視点不在な製品ではなく、消費者傾向にも、技術進化の動向にも合致した方向なのだ。これはあらかじめメーカーも予測していたことだが、昨年、“4Kテレビ市場の伸び”という反応が数字としてハッキリ現れはじめたことで、各メーカーの開発にもより一層、力が入ってきている。

 そうした中でパナソニックは、4Kテレビに対しては比較的慎重な姿勢を見せてきた。4K解像度を持つテレビ、ディスプレイには以前から取り組んでいたが、日本・韓国はもとより中国メーカーも4Kへと傾倒している中で、パナソニックが慎重だったのは、“4K”という解像度を活かせる製品でなければ発売する意味がないと考えていたからだろう。

 これは昨年秋に発表されたWT600を見れば明らかだった。WT600には新開発の新たなアプローチで開発した超解像処理を搭載。テレビ放送やブルーレイを4Kパネルで美しく表示するだけでなく、ネット経由での4K動画再生機能や、パソコン画面を4K解像度で毎秒60フレームの高速表示が可能なDisplayPort™1.2aを家庭用テレビとしては初めて搭載。最新のHDMI 2.0が持つスペックに完全対応したテレビも、この製品が世界初だった。

 従来のフルHD映像を高画質に表示するのはもちろん、世の中で使われているさまざまな4K映像をすべて受け止められる製品を作ることで、4Kビエラの立ち上げとしたのだ。4K放送やビデオ映像はその高精細さを活かすため、毎秒60フレームのプログレッシブ映像が基本的なスペックとなっている。フレーム数が多い方が、より映像の精細さを引き出せるためだが、今後、始まる4K放送にもしっかりと対応することで、基礎をしっかりと作っていこうというのが、パナソニックの“昨年の”方針だったと言えるだろう。

 では今年はというと、作り上げた基礎の上に価格帯・サイズのバリエーションを広げ、価格帯ごとに液晶テレビに考えられる様々な高画質化アプローチを盛り込んでいくことにしたようだ。新しい4Kビエラには“AX”というシリーズ名が与えられ、1月のInternational CESでアナウンスされたが、その中核シリーズであるAX800には、これまでパナソニックが作り上げてきた“映画画質”のノウハウが盛り込まれている。

 これまで映画ファンに愛されてきたプラズマテレビの画質。なぜプラズマは映画が美しかったのかを、プラズマをもっともよく知るメーカーであるパナソニックが米パナソニック・ハリウッド研究所と共同で、液晶パネルでもプラズマに近い色再現を実現したという。

 次回はどのようなアプローチで、AX800が“映画らしい映像”再現を得られたのかに話を移していくことにしよう。