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■ PC連携ソフトが付属するワンセグ携帯 ワンセグの本サービス開始からまもなく1年が経過しようとしている。携帯電話やカーナビのオプションなどを皮切りに、ポータブルDVDプレーヤーや、PC用チューナ、さらにはワンセグ専用のポータブルテレビが発売になるなど、機器の種類は非常に豊富になった。 ワンセグ対応携帯電話も、当初は「ワンセグ視聴に特化したモデル」といった扱いだったが、搭載端末が増加し、auの2007年春モデルのラインアップでは、新端末10モデル中7モデルにワンセグ機能を搭載するなど、準標準機能としての地位を固めた印象を受ける。 NTTドコモも、昨年発表の903iシリーズのうち、ワンセグ対応モデルの販売を2007年より開始。その中で、2月23日発売のパナソニックモバイル製「P903iTV」では、microSDカードに録画した番組を携帯だけでなく、PC上でも再生できるソフトを添付する。 これまでのワンセグ携帯では、録画はできても番組再生は録画した携帯でのみ。2006年5月にソフトバンクモバイルのシャープ製ワンセグ端末「905SH」が発売になってからは、外部メモリーカードへの録画に対応した製品が増加したが、録画した携帯以外に再生環境がないという状態が続いていた。 また、録画可能なワンセグ製品は多く発売されたが、PC用ワンセグチューナでは、録画ユニットとPCのセット以外で再生できないなど、録画番組の利用制限が多く、面倒だ。それが携帯で録画した番組を家のPCで再生可能となれば、利用範囲は広がるし、使い勝手も向上すると思われる。 そこで、P903iTVの使い勝手を、PCとの連携機能やワンセグ機能を中心にチェックしてみた。 ■ 大きめの外観だが、意外と軽量な本体 折りたたみ時の外形寸法は110×50×22mm(縦×横×厚み)、重量は約139g。デジラジ/ワンセグ対応端末「W44S」と比較してみると、全体的に少し大きめだ。液晶ディスプレイは、2.8型/240×400ドットだが、画面やキーなどを見ると、液晶のふちが厚めで、キー周辺もゆとりを持った作りになっているのがわかる。 また、液晶部は左右各90度回転できるためか、ヒンジ部がやや大きめになっている。
ところが、手に持ってみると見た目よりずっと軽い印象を受ける。初めて持った時はサイズと重量のギャップに驚いた。この軽さは、常日頃持ち歩く携帯電話にとって魅力の1つだ。
側面にはmicroSDカードスロットや操作ボタン、平型イヤフォンコネクタなどを装備。背面には単色の有機ELディスプレイを備える。搭載するロッドアンテナは2段式となる。 1カ所だけ気になったのは、正面に開いた状態だと、わずかだが液晶が後ろに反っているように感じることだ。横から見ても、ほとんど違いを感じないほどごくわずかでしかないが、ちょっと気になった。
■ ワンセグ起動は液晶回転で。設定項目も豊富
液晶を左右45度に回転させる動作がワンセグ視聴ソフトを起動するショートカットになっており、すぐに視聴が行なえる。ただし、マナーモード時には音声出力の可否確認のメッセージが現れ、これがイヤフォン接続時でも同様に表示されるのがちょっと面倒。イヤフォン接続を検出し、接続時には表示せずすぐにソフトを起動してほしいところ。 ソフトの起動は約2秒と高速。その後受信に4秒、映像表示開始に1秒(マナーモードオフ、NHK選局時)と、受信感度が良好な状態では、約8秒程度で視聴が可能になる。また、エリア的に受信が行なえない局を選択した場合などは約2秒ほどでエリア外である旨のメッセージを表示。もちろん受信感度が原因で切断と接続を繰り返しているような場合には、他のワンセグ製品と同様に受信動作を繰り返す。 ちなみにW44Sでは、ソフト起動に約9秒、その後受信は4秒、映像表示に2秒で、約15秒。また、エリア外の局であっても20秒以上電波を検索し続ける。特にソフト起動が非常に時間がかかるようだ。 左右45/90度に回転した状態では全画面表示となり、普通に縦に開いた状態や、45/90度以外の角度にした場合には、データ放送などが利用可能な「ノーマルスタイル」となる。この状態ではデータ放送のほか、各種機能設定などが利用できる。また、斜めの角度で全画面表示したいような場合には「カメラボタン」を押すことで画面を切り替えられる。 ノーマルスタイル時には、画面は上から映像、字幕、データ放送と3分割されるが、データ放送の枠は非常に狭く、情報がほとんど表示されない。データ放送をよく使うなら、字幕をオフにすることで、データ放送中心のレイアウトに変更できる。ただし、データ放送のみのレイアウトに変更した場合は、一度全画面モードにして再び戻すと、レイアウトがデフォルトの状態に戻ってしまうため不便に感じた。
マルチウィンドウ機能は、ワンセグ映像を下部に縮小表示し、メイン画面でメール作成などのメール機能が使える機能。番組表を表示した端に映像を表示したり、ブラウザなどで情報を閲覧しながらテレビを視聴するといった使い方ができないので、今後対応してほしいところ。 画質は良好だが、全体的にコントラストが強めで、輪郭が強調されている。番組内テロップなどは線がくっついてしまうなど、やや読みにくくなる印象を受けた。また、ワンセグ映像表示時には、映像の周囲に僅かな黒帯が残り、全画面を使用しておらず、全体的に少し映像が小さめに表示される。 W44Sと並べて比較すると輝度は高めで、室内などでも映像がはっきり表示されるのは魅力だ。明るさ調整は3段階のモードを用意するほか、画質モード設定は4種類から選択できる。
■ 直接録画や、番組表アプリからの予約録画に対応
視聴中の番組を録画するには、本体右側面に備える「TV/録画」ボタンの長押しで開始。終了は同ボタンを軽くワンタッチすることで終了となる。 番組表は内蔵ソフト「Gガイド番組表リモコン」と連携し、視聴/録画予約が行なえる。横スクロール型の番組表で、選択した番組が拡大表示されて、詳細情報なども確認できる。最大で6日間まで先の番組表がチェック可能だ。 とは言え、表示されるのは地上デジタル放送用の番組表のため、NHKやNHK教育などは、ワンセグに対応しないマルチ編成の番組表も表示されるのは不便なところ。Gガイド番組表リモコンは、携帯からのリモート録画機能でも利用するため、このような作りになっているのだと思われるが、ワンセグ利用時には不便。サイマル以外の番組は録画予約が出来なくなるように改善してほしいところだ。 予約録画のもう1つの注意点としては、録画中に番組の録画予約が行なえない点だ。 録画中に番組表から予約を行なおうとすると、予約登録前に録画中断の確認ダイアログを表示してから、録画中のワンセグアプリを再起動し、予約を行なう。この再起動時に録画が中断されてしまう。もちろん予約をキャンセルすることで、録画中断は回避はできるが、録画中でも番組予約できれば便利だろう。
また、このような状態で中断してしまった場合、まれに携帯から録画番組が認識されなくなり、再生できなくなる場合があった。 データが消去されるわけではなく、後述のPC接続時にメモリーカード内の番組情報を見るとデータはちゃんと保存されている。こうした状態になってもPC上では問題なく再生でき、メモリーカード内の番組を一度PC側にムーブした後、再度SDカードへムーブし直すことで、携帯電話上でも視聴できた。
■ 著作権保護機能により、携帯なしでも再生/移動が可能 P903iTVの一番の特徴とも言えるのが付属ソフトの「SD-Mobile Impact」だ。同ソフトを利用することで、P903iTVで録画したワンセグ番組をPCにムーブし、PC上で再生ができる。また、音楽再生機能の楽曲転送にも対応する。 接続には別売のFOMA USBケーブルを使用し、PCとP903iTV本体とを「microSDモード」で接続する必要がある。これにより携帯に挿入したmicroSDカードをPCから扱えるようになる。または、著作権保護機能対応のSDカードリーダなども利用できる。今回は松下製SDカードリーダ「BN-SDCGP3」を、SDカード変換アダプタ経由で使用した。
使い方は簡単で、microSDカードがPC側から見える状態にしてからソフトを起動。「音楽」と「動画」のタブが並んでいるので、動画タブを選択し、microSDカードのドライブを選択することで、録画番組の一覧が表示される。あとは番組を選択して、ソフト上部の再生ボタンをクリックすることで、別ウィンドウが展開し、再生を開始する。
録画番組には、EPGからの番組情報が付くため、判別しやすい。また、日付や放送局ごとの抽出が行なえるため、録画した番組を容易に見つけられ、検索性は高い。 microSDカードからPCへのムーブについても、操作は簡単。同様に番組を選択し、右クリックメニューから「ライブラリ(HDD)へ移動」を選択するだけ。複数番組を同時に移動する場合も、移動したい番組にチェックを入れ、ソフト上部の「SD→HDD」ボタンを押すだけ。
ムーブ後は、SDカードの代わりに「ライブラリ(HDD)」を選択することで、録画番組の一覧が表示される。後の操作はSDカード上での操作と同等となる。また、一度HDDに移動した番組を再度SDカードへムーブし直すこともできる。
録画形式は、905SHなどで採用していたSD-Video規格の「ISDB-T mobile Video profile」で、各ファイルの拡張子とフォルダ内の構成は905SHと同等。SD-Videoの暗号化技術を利用して、データ/メモリーカードの間の暗号化/復号化処理を行なっており、他社のメモリーカード録画対応の携帯でもこの方式を採用しているところが多いという。 ■ 受信感度はワンセグ携帯最強? バッテリー駆動時間も良好 受信感度についても、簡単にチェックしてみた。比較対象はW44S。編集部のある東京都千代田区のビル内で、東京MXやテレビ東京など、比較的受信しにくいチャンネルを選択し、2台並べてチェックした。どちらも正常に受信できるが、W44Sはたまに映像が乱れたりコマ落ちするのに対し、P903iTVでは映像の乱れやコマ落ちもなく正常に受信が行なえた。 次にこれまで多くのワンセグ機器を試してきて、失敗してきた板橋区高島平付近の自宅。やはり室内での視聴は無理だったが、室内に入るまでのマンションの廊下などでは、W44Sが何も受信できないのに対してP903iTVでは映像の乱れや音声の途切れが発生するものの、受信できたのには驚いた。
また、電車移動時などでも、手に持って視聴している分には全く問題ない。埼玉県から板橋区を通り池袋まで向かう東武東上線の下赤塚駅から乗車し、池袋までの間の受信状況をチェックしたが、W44Sがややコマ落ちや映像の乱れが発生する場面でも、ほぼ問題なく視聴できた。受信感度の向上は、特徴の1つである「ダイバーシティアンテナ」の効果が大きいのだろう。 また、バッテリー駆動時間についてもチェックした。 バッテリー駆動時間を高めるという「ECOモード」はオフで、明るさ2の状態でテストを開始したところ、約5時間25分でバッテリー残量が低下しているため、ワンセグ視聴を終了するかのメッセージが表示。その後も強制的に視聴を続けた場合、20分ほどでバッテリーが切れて電源がオフになった。トータルでは5時間45分の連続視聴が行なえた。 続いて、最大7時間駆動というECOモードを有効にしてテストした。すると画質/音声設定が選択できなくなり、明るさも一番暗い状態に自動で変更された。この状態では6時間20分でバッテリー容量低下のメッセージが表示され、最終的にはさらに23分後にバッテリーが切れて電源がオフになった。トータル6時間43分で、公称値の7時間には満たなかったものの、十分許容範囲と言えるだろう。 ■ SD-Mobile Impactの一般販売や他社製ワンセグへの添付に期待 以上、一通りP903iTVを見てきたが、やはり注目は新たな機能を備えたPC用ソフト「SD-Mobile Impact」の添付だろう。 録画ファイルを自由にPC上に移動し、再生できるメリットは非常に大きい。もちろんこれまでの外部メモリ録画対応の携帯でも、データのバックアップは行なえたが、バックアップした番組を再生したい場合に、いちいち携帯にデータを戻す必要がないので、効率がよい。 特に携帯電話の場合、メモリーカードはワンセグ録画以外にも、撮影した写真や、音楽データなどを保存するのに使用する。そうなれば録画できる容量の限界はあまり多くはないため、録画した映像のうち、必要なものを携帯に残し、とりあえず不要な録画番組をPC上に移動しておくことで、メモリーカードにゆとりを持たせられるのは魅力だ。 期待したいのは、今後このソフトが単品販売されるか、他社の同仕様のワンセグ携帯製品に対しても添付されるようになることだ。 同じ録画方式の規格を他社の製品でも採用している点からも、今後SD-Mobile Impactが他社製ワンセグ端末に添付される可能性は高い。PCとの連携が可能というセールスポイントが増えることで、携帯のワンセグ利用者の増加にも繋がるように思う。 P903iTVについても、ダイバーシティアンテナの内蔵やバッテリー駆動時間の向上など、ワンセグ携帯にとって何が必要かを理解して強化された製品と言える。ワンセグ利用を中心に考えるなら、PC連携機能も含めて、選択肢の上位に入れるべき製品と言えるだろう。 □NTTドコモのホームページ ( 2007年3月2日 ) [AV Watch編集部/ike@impress.co.jp]
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