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「僕らはVRワールドの入り口で暮らしている」。レディ・プレイヤー1 主役インタビュー
2018年4月18日 17:00
4月20日から、スティーブン・スピルバーグ監督最新作「レディ・プレイヤー1」が劇場公開される。公開にあわせ来日した、主役のウェイド役を務めたタイ・シェリダンさん、サマンサ役のオリビア・クックさんの2人へのインタビューをお届けする。
VRワールドと現実の関わりについて、1980年代ポップカルチャーを軸とした、徹底的なエンターテインメントとして描いた本作は、1990年代生まれの2人のキャストにとって、どんな印象を与える作品になったのだろうか?(以下、敬称略)
リアルとバーチャルを「演じる」チャレンジ
-「レディ・プレイヤー1」は、リアルワールドとバーチャルワールドを行き来する作品です。演技的にも双方が入り交じるものになりましたが、いかがでしたか?
タイ:まさにそうです。そこが我々にとって大きなチャレンジでした。本物の世界があり、またバーチャルの世界がある。それをいかにシームレスに行き来ししながら、それでいてストーリーをしっかり語らねばならない。そのことが一番の課題でしたね。
オリビア:私にとっては、完成後のビジュアルエフェクトのすごさに圧倒されました。
演技をする時は、広大な白い部屋で、シンプルなセットを置いただけのところだったんです。それが、完成してみるとあんな映像になっていたんですから!
-シェリダンさんはさきほど「2つの異なる体験」とおっしゃいましたね。リアルとバーチャル、異なる人格を演じる上で気をつけたことはなんでしょうか。
タイ:他のキャラクターは、劇中ではオアシス(バーチャルワールド)の中でキャラクターが登場します。しかし、僕が演じたウェイド……オアシスの中では「パーシヴァル」ですが……の場合、まず「現実の世界」で登場します。しかも、現実世界の「ウェイド」とオアシス世界の「パーシヴァル」は、ものすごく性格が違う。パーシヴァルはウェイドより自信にあふれています。ですから、両者の差には、とても気をつかいました。
また撮影としては、モーションキャプチャーの部分、要はオアシスのアバターとしての演技を先に撮影してしまい、それから現実世界の部分を撮影しています。ですからそこでも、「パーシヴァル」と「ウェイド」の違いには気をつけましたね。
オリビア:タイとは違って、私のキャラクター(サマンサ/アルテミス)は、現実とバーチャルとの差がそこまでないんです。
でもこの作品でなにが素晴らしかったかというと、キャラクター同士がリアルワールドで会った時、彼ら同士の欠点なども見えてくる、という部分があることです。
実は、モーションキャプチャーで演技をしている時って、メイクも衣装もないんです。だから抑制もなくなり、アバターになった人物達のように、偽りの自信のようなものが出てくるんですよね。
-日本では最近「バーチャルYouTuber」という人々が活躍しはじめています。まさにこの映画の中で描かれた世界に近づいている印象を受けます。
タイ:アバターになって外に情報を発信するということは、いま我々が置かれている現実の状況、SNSやYouTubeのある世界を反映しています。オアシスというのは、そうした現実世界のアッパーバージョン、さらに加速したバージョン、といえるんじゃないでしょうか。
-そもそも「演技する」ことには、そうした側面がありませんか?
オリビア:そう、まさにその話がしたかったんです(笑)
私達俳優は、アバターのようなキャラクターを使って演じ、自分から離れていく、という体験を日常的にしています。なので、私たちは常に自分から逃げ続けていて、他の人の「生」を演じ続けているんです。
-シェリダンさんはご自身が、「AEther」という没入型エンターテインメントを開発する企業の共同出資者でもあります。「レディ・プレイヤー1」はまさにうってつけの題材だったわけですが、AEtherでは今後どのような活動をしようと考えていますか?
タイ:そのことについて触れてくれてありがとうございます。初期には、私はVR技術をメディアだと考え、没入できる物語体験そのものに興味があったのです。しかし今は、それを生み出すためのテクノロジーへと、興味が移りつつあります。私たちの会社も、インタラクティブな空間での没入体験を生み出す技術を軸にしたものへ進化しています。
今後は体験をどうレベルを上げていくか、そういったところを目指す会社になっています。それが「映画」という形になるのか、それともガジェットを含む別の形になるのかは、言えないのですが。技術を使って、そうした世界を次のレベルへ持ち上げるような会社として、関わっていきたいと考えています。
1980年代は「祝祭の時代」
-撮影についてお聞きします。なんといってもこの作品は「スピルバーグ作品」であり、非常に大きな予算も使っています。プレッシャーや緊張を感じましたか?
タイ:とにかくすばらしい経験でした。子供の頃からのヒーローであるスピルバーグ監督の作品に出られた、ということもそうですし、業界で非常に尊敬される人々……オリビア、君のことだよ(笑)……と一緒に仕事ができたことも光栄でした。
私は映画を作ることそのものに興味がありますが、特に近年は「映画を作る技術」そのものに惹かれています。この映画、「レディ・プレイヤー1」は、映画のビジュアルをひとつ上の段階に押し上げた作品だと感じています。そのための技術を実体験できたのは、本当にすばらしい体験でした。今回の映画は、これまでのキャリアの中でも、一番学ぶところの多い作品でしたね。
オリビア:あれほど巨大なセットの中で仕事をしていると、どこか謙虚な気持ちになりました。なにより、現場にいる方達は業界で一流と呼ばれる方ばかりでした。才能の面でもそうですが、人間的にもすばらしい方々ばかりです。そんな方々が、スピルバーグ監督とずっと何度も仕事をしてきているわけで、油をたっぷり注した後の機械のように、とてもスムーズに物事が進んだのが印象的でした。映画への情熱が、周囲に伝染していくような環境でした。
-スピルバーグ監督はどんな方でした?
タイ:とてもジェントルな方で、寛大で……
オリビア:それに若々しくて。
タイ:そう、すごく若々しくてエネルギッシュで、情熱的。そして、なにより「ものすごい映画オタク」。その頂点にいる方ですね。
-80年代のポップカルチャーがたくさん出てきます。しかし、お二人は80年代にはまだ生まれていない。いろいろ見聞きしたとは思いますが、特に印象的なものはなんでしたか?
オリビア:タイも私も、脚本を読んで80年代に関するだいたいの知識は得ました。それでも、とても奇妙に感じるシーンはいくつもあって……。
映画本編からはカットされてしまったのですが、タイと私である80年代の曲を歌わなければならないシーンがありました。でも、わからないのでYouTubeでビデオを探しまくったりしました。脚本の各ページに20もの80年代に関するレファレンスがついていたりもしたのですが、それでも「これ、どういう意味?」と奇妙に感じるものはありましたね。
タイ:そう、「レディ・プレイヤー1」の原作を読むことが、80年代を知る一番の教科書でしたね。そのくらい、本を読み込むことに価値がありました。
-80年代が好きになりましたか?
タイ:もちろん、好きになりましたよ。スピルバーグ監督も、「80年代はアナログからデジタルに移行する時代」だと言っています。80年代は情熱的で、エネルギーにあふれている。その頃は大きな戦争もなかったので、エンターテインメントや音楽、ファッションからの影響が、政治的な影響よりも大きく反映された時代だと感じています。
オリビア:そういう意味では「祝祭の時代」みたいに思えますね。