第2回:医療現場のリアルな緊迫感!
「ER 緊急救命室 DVDコレクターズセット」

 怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入する価値のあるDVDはどれなのか? 「買っとけ!DVD」では新旧かかわらず、厳正なる“独断と偏見”に基づいて、毎週金曜日に“買い”なDVDタイトルを紹介します。週末の購入プランの参考になれば幸いです。



各シーズとも
ディスク1のみ片面2層
それ以外は両面1層
画面
サイズ
ファースト~サード[4:3]
フォース[スクイーズ(ビスタ)、第1話のみ4:3]
収録
時間
ファースト:約1,203+40分
セカンド:約1,012+14分
サード:約997+15分
フォース:約990+3分
音声
仕様
1.ドルビーデジタル ステレオ
 (英語オリジナル)
2.ドルビーデジタル モノラル
 (日本語吹替)
映像
特典
ファースト:ノア・ワイリー初来日
セカンド:スタッフとキャストのインタビュー、ミュージッククリップ
サード:予告映像(スタッフとキャストのインタビュー)、ミュージッククリップ
フォース:ミュージッククリップ
ワーナー・ホーム・ビデオ
品番:ファースト ER-1
  セカンド ER-2
  サード ER-3
  フォース ER-4
価格:各15,000円
■ 救急救命治療室をドラマにするのは難しい

 今回紹介する「ER 緊急救命室」は、タイトルどおり「救急救命治療室」を舞台にしたドラマだ。医療現場を扱ったドラマは、日本でも数多くある。ただER以前に、救急救命室をメインに据えたドラマはほとんどなかった(ER以降にはいくつか登場したが)。

 というのも、救急救命室治療室は、内科や外科、小児科などと異なり、駆け込んでくる、あるいは担ぎ込まれる患者に“今”必要な処置をし、最適な科に送り出す“通り抜ける”科であるからだろう。

 つまり、「泣かせるドラマ」を成立させる上で必要な時間の経過があまりない。同じ1人が死亡するシーンでも、何週かに渡ってその人となりを説明して、最後に亡くなるという方が感情移入ができることは間違いない。その点で、救急救命治療室を舞台にして、ドラマを成立させるのは難しいといえるだろう。





■ クライトンの実体験をドラマ化

 「ER 緊急救命室」の原作は、「ジュラシック・パーク」や「失われた黄金都市(コンゴ)」などで知られるマイケル・クライトン。それを、スピルバーグが率いるアンブリン・テレビジョンがTVドラマとして制作した。

 良く知られている話しだが、マイケル・クライトンはハーバード大学を主席で卒業したのち、ハーバード・メディカル・スクールに進学し、医学生としてマサチューセッツ総合病院に勤務したという経歴がある。そして、在学中から小説の執筆を開始し、'68年の「緊急の場合は」でアメリカ探偵作家クラブ賞の最優秀長編賞を受賞。小説家としても有名になった。

 こういった、経歴を持ったクライトンが、自分の体験をもとに作ったのが「ER 緊急救命室」である。




■ 舞台はシカゴの総合病院

 「ER」の舞台は、シカゴにあるシカゴカウンティ総合病院のER。ここに働く、医者や看護婦などの医療スタッフと、運び込まれてくる患者とのドラマが繰り広げられる。

 他の医療ドラマにない、ERにしかない特徴。それが、徹底したリアリティ。日本の医療ドラマを見ていると、思わずツッコミたくなるシーンが数多く出てくる。しかし、ERでは、早口で速射砲のように飛び交う医学用語、立ち振る舞い、器具の受け渡しなど、すべてに無理がない。これは、医師や看護婦がテクニカルアドバイザーとしてついているほか、エキストラとしても登場しているからだろう。

 ERは、日本ではNHKがBSと地上波で放送しており、その中で時折メイキングも流された。それを見ていると、本当に口伝えにセリフを教え、手取り足取り、受け渡しの角度、それぞれのスタッフの立ち位置まで指導する徹底ぶりだった。

 また、ERのもう1つの特徴としてカメラワークがある。1台のカメラが、搬送されてきた患者を入り口から処置室までカットなしで追いかける。もう1台のカメラが、患者の胸にメスを入れようとする隣の部屋に突入。まるで、見ている自分もERのスタッフになったかのような、スピード感とライブ感にあふれた映像が展開する。


■ ストーリー

 ERがスタートした当初は、クライトンがモデルと思われる医学生ジョン・カーター(ノア・ワイリー)の成長物語というようなストーリだった。しかし、ジョン・カーターがメディカルスクールを卒業し、レジデントになったころから、ダグラス・ロス(ジョージ・クルーニー)、ピーター・ベントン(エリク・ラ・サル)、マーク・グリーン(アンソニー・エドワーズ)、キャロル・ハサウェイ(ジュリアナ・マルグリース)など多彩な登場人物たちの、医療者として、あるいは私生活での悩みがメインテーマとなった。

 その悩みは、米国特有の問題であったり、国が変わっても、職業が違っても共通の悩みであったりする。そして、その悩みは決して安易に解決されることなく、それぞれが忙しい毎日に戻っていく。それは、とてもリアルであり、だれもが感情移入できるだろう。


■ DVDとして見ると

 現在、ERシリーズのDVDは「コレクターズセット」としてファースト、セカンド、サード、フォースの4セット(各15,000円)が発売されている。ファーストは7枚組みで25話、セカンド、サード、フォースはいずれも6枚組で22話を収録する。ちなみに、本国の米国でもまだDVD化されていない。

 残念ながら単品発売はしていないが1セット15,000円なので、1話あたりに換算するとファーストで600円、それ以外で約682円と、その他のシリーズもののDVDボックスと比べて圧倒的に安い。どのシーズンも、1枚目を除いて、両面2層で片面に2話ずつ収録。できる限り枚数を減らそうと いう姿勢にも好感がもてる。実際、VHSでは11巻(ファーストは13巻)にもなり、かなり場所をとる。DVDの特徴を最大限に活かしているといえるだろう。しかし、1枚に4話も入っているため、1話だけ見ようと思って見始めると、知らぬ間に裏返して4話全部を見てしまうという危険性はかなり高い……。

 音声は英語オリジナル(ドルビーデジタル、ステレオ)、日本語吹き替え(ドルビーデジタル、モノラル)。吹き替えがモノラルなのは残念だが、NHK放送時に音声多重だったので、しかたないところだ。また、字幕も日本語と英語の両方を収録している。映像はTVドラマなのでもちろん4:3なのだが、フォースシーズンからHDTV収録が開始され、フォスシーズンの2話目以降よりスクイーズ(16:9)で収録されているのは嬉しい。画質は特別に高画質ということはないが、テレビで見るときのようなノイズがないため、それだけでもDVDを買うメリットがある。

 なお、上記の4セット以外にも「ER緊急救命室 LIVE EAST&WEST(2,500円)」も発売されている。フォースシーズン第1話「待ち伏せ」は生放送。しかし、米国には時差があるため東海岸向けと西海岸向けに、まったく同じ演技が2回するという離れ業が行なわれた。その東海岸向けと西海岸向け両方を収録したのが「LIVE EAST&WEST」となっている。LIVEならではのNGもあり、どこが違うのか探すのも面白い。


■ お勧めは、日本語吹き替えで日本語字幕オン

 上述したが、DVD版にはオリジナルの英語音声に加えて、NHK放映時と同じ配役の日本語吹き替えが入っているほか、字幕も英語と日本語の両方が収録されている。これはビデオには真似できない利点だろう。しかし、どの設定で見るのか迷ってしまうという面もある。では、日本人としてはどの設定で見ればいいのだろうか? ズバリ、お勧めは日本語吹き替えで日本語字幕オン。

 日本人は、洋画を吹き替えより、字幕で見る派が優勢という、世界的に見れば稀有な存在。しかし、ERはなるべく日本語吹き替えで見て欲しい。というのも、かなり早口で医学用語が飛び交うため、通常の洋画よりも字幕に入っている情報が削られているからだ。

 しかし、なぜ、日本語吹き替えにしているのに、日本語字幕表示が必要なのか不思議に思うかもしれない。これは、医学用語に慣れていないと、日本語でも耳だけで聞き取るのが難しいからだ。たぶん、医療関係者でないと、かいせん(回旋)、かいない(回内)、ぼうまん(膨満)といった単語は、耳で聞くより漢字を見たほうがイメージしやすいだろう。ちなみに、MS-IME 2000ではすべて変換できなかった。



□ワーナー・ホーム・ビデオのホームページ
http://www.warnervideo.co.jp/
□ER オフィシャルサイト
http://www.warnervideo.co.jp/er/index.html

(2001年3月9日)

[furukawa@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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