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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第8回:ビデオ編集用のアクセサリーを試してみる
SONY「PCDA-J1」、Canopus「JD-1」、Post-Op Video「EZ Keyboard」


■ 疲れた人にジョグ・シャトル

 ビデオ編集という作業は、突き詰めると要するに、

 使うところを決める
    ↓↑
 順番に並べる

 というたった2つの作業の執拗なまでの繰り返しで成り立っていると考えていい。その中でも特に「素材の使うところを決める」という行為は一度でスカッと決められるわけがなく、[映像再生] ここかな。いや[巻き戻し&再生]ここかな、うーむやっぱり[巻き戻し&再生]ここか? あーやっぱりさっきのほうが[巻き戻し&再生]良かったか? なんて端から見たらイラつくこと極まりないリピート行為を行なった後に、ようやく決定されるものである。

 こういった単純作業の繰り返しをマウスをチョロチョロ転がしながらやっていると、それはそれはもう果てしなく利き手が疲れるわけで、そういうことはなるべく効率化したいと考えるのが人の道であろう。

 そういうビデオ編集で疲れちゃった人のために存在する……、のかどうかは知らないが、とにかく楽に作業できるようにと考案されたデバイスが色々ある。その中でも手軽で効果絶大なのが、ジョグ・シャトルコントローラだ。

 ジョグ・シャトルコントローラは、通常ダイヤル型になっていて、それをクルクル回すと回した分だけコマ送りされたり、映像が速く進んだりする。コマ送りがジョグ、速く進むのがシャトルだ。この2つの機能が一緒になっているから、ジョグ・シャトルと呼ぶのである。ダイヤル型になっているのはつまり、テープのリール部分を手でクルクル回すイメージで使うわけだ。

 民生用のビデオの高級機ではリモコンにジョグ・シャトルが付いているものもあるので、ほとんどの人はなんらかの機会で見たことがあるだろう。ジョグ・シャトルはプロ用のVTRにも付いているし、特に編集機は業務用以上であれば間違いなく付いている。ビデオの操作には、ジョグ・シャトルはなくてはならないものだと言えよう。

 しかしこのジョグ・シャトル、いかんせんかなり用途の限られたものであるため、パソコンで編集するための周辺機器としてショップで誰でも買えるというものは案外少ない。製品自体は存在するはずだがどこにも売ってないというものもある。今回は、その中でも国産メーカー品で、比較的容易に手に入ると思われる2種を紹介したい。


■ SONY USBジョグコントローラー 「PCDA-J1」

SONY「PCDA-J1」
 SONYの「PCDA-J1」は、目下のところ最も入手しやすいジョグシャトルで、大手パソコンショップで2万円台後半で購入できる。本来はもちろんSONYのVAIOシリーズに接続するためのオプション品だが、VAIOといえども普通のパソコンには違いなく、それはすなわち普通のパソコンでも動作するであろうことは十分予想される。ただし誰も保証してないけど。

 というわけで、うちの自作Windows Me機にインストールしてみたところ、問題なく使えた。ドライバはWindows 98以降のWindowsであれば動作するようだ。




■ Canopus ジョグ&シャトルコントローラ「JD-1」

Canopus「JD-1」

 もう1つのジョグ・シャトルコントローラは、Canopusから4月末に発売された「JD-1」だ。一足早く製品をお借りすることができたので紹介しよう。ただしモノは完成品だが、ドライバとアプリケーションが現時点ではまだファイナル版ではないため、正式リリース版とは異なる点があるかもしれないことをあらかじめお断わりしておく。

 最初の製品発表では、Canopusのカードだけがサポートされる予定だったのだが、他社のカードでも動作するよう修正された。製品リリース前の仕様変更は割とダメな方向になりがちなのだが、こういったユーザー側にメリットのある変更はじゃんじゃかお願いしたい。>各メーカーの人。

 動作するアプリケーションは、カノープス製DV編集アプリケーション全種と「Adobe Premiere 5.1」、「Ulead MediaStudio Pro 6.0」となっている。PremiereやMediaStudio Proのような汎用アプリケーションはともかく、カノープス製の特殊な(ある意味クローズドな)アプリケーションにばっちり対応しているのは、同社製品ユーザーにとっては大きなポイントだ。

 まだ発売前なのでストリート価格はわからないが、標準価格が24,800円なので、おそらく2万円前後で入手できるのではないかと予想される。



■ Post-Op Video「EZ Keyboard」

Post-Op Video「EZ KEY」

 さてジョグ・シャトルコントローラ以外で編集に役に立つモノと言えば、やはり専用キーボードを外すわけにはいかない。米Post-Op Videoでは、編集専用のキーボード、「EZ Keyboard」を作っている。国内でもビデオに力を入れているパソコンショップで販売されており、今回はPremiere用のものを秋葉原のUSER'S SIDEで26,800円で購入した。キーボードとしては破格の値段だが、他に潰しが利かないモノなので致し方あるまい。


 専用といっても作りはまったく普通のキーボードで、パソコンのPS/2ポートに繋いで英語104キーボードとして使える。違いはキートップにPremiereで使うショートカットが刻印されている点だ。機能グループごとに色分けされており、わかりやすい。プロ用編集機のキーボードもこういうカラーリングなので、玄人好みだ。キーのタッチは良くも悪くもなく、一般的に売られているキーボードと同じくカチャカチャしたタイプ。

 さっそく繋いでPremiere 6.0を使用してみた。なるほど、Premiereでは特にCtrlキーと併用せずにそのまま文字をタイプするショートカットが多いので、それがそのままキートップに刻印されているという感じだ。キートップのイラストは非常にわかりやすく精密に描かれているので、文字を読まなくても絵柄だけで機能が想像できる。これなら膨大なショートカットを暗記する必要がないし、ショートカットを使うことに対して積極的になる。

 またWindowsの普通のショートカット、例えばCtr+Wでウインドウを閉じるなんてのも併用して使える。いったん編集作業に入ってしまえばマウス操作でメニューや機能を選ぶ必要がないため、ものすごく効率アップするのだ。単純なカット編集ならマウスを使うのは素材クリップの選択ぐらいで、ほぼキーボードだけで行なえる。これはかなりプロ用編集機に近い感覚だ。



■ ショートカットにもの申す

 専用キーボードでの作業が思いのほか快適なので、もっといろんなショートカットを使ってやろうと思い、キートップを丹念に見ていくと、どうも妙なことに気が付いた。Play/FFキーが3つもあるのだ。「~」「5」「L」が同じ機能。なんで? なんぼなんでもそんなにはいらないだろう。またMark IN、OUTも2つずつある。いや1個ずつでいいって。しかしこれはEZ Keyboardが悪いんじゃなくてPreiereがそういうショートカットなので、しょうがないのだ。こうしてキートップに並べてみると、Premiereのショートカットはあまり効率的に配列されているとはいえないようだ。

再生/一時停止が同じキーというのがイヤ。Premierの仕様なのだが。

 それにこれは前々から思っていたのだが、特にスペースバーがPlayとPauseのトグルになっているのは良くないと思う。キーを押して何らかの動作をさせると言うことは、視覚的にキッチリ確認できない。だから1キー1機能という原則が大事なのではないだろうか。これはFFからPlay、またはRevからPlayという、編集では最もよく使う動作が流れるようにできないという問題を引き起こすのだ。つまりFFからスペースバーを押すと、Pauseになっちゃうのである。ノンリニア編集では物理的にテープを回しているわけではないので、早送りからいったんPauseになる意味は全くない。PlayとStop(Pause)はそれぞれ専用キーを割り当てるべきだ。

 Premiereはビデオ編集アプリケーションとして老舗なので、後発のアプリケーションもPremiereのこのショートカットを模倣する例が多い。しかし、どうせ何かを参考にするのであれば「CMX-340」や、「SONY BVE-9100」など、本物の編集機の効率的なキーアサインを研究した方がずっといいと思う。


■ 確かに便利だお助けグッズ!

 しかしまあアレだ、なんだかんだ言っても、この専用キーボードとジョグ・シャトルコントローラを組み合わせて使うPremiereは、かなり強力だ。実は正直な話、「プロがPremiere使うか? 使わねえよ(笑)」みたいな偏見が今まであったのだが、こういうお助けグッズがあれば、プロ用ノンリニアシステムと大差ない環境が構築できる。

 パソコンでのビデオ編集がなーんかかったるいと思っているあなた、こういう専用コントローラはかなり効きますゼ。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□「PCDA-J1」製品情報
http://www.sony.co.jp/sd/ProductsPark/Consumer/PCOM/PCDA-J1A/index.html
□カノープスのホームページ
http://www.canopus.co.jp/
□「JD-1」製品情報
http://www.canopus.co.jp/catalog/jogdisk/jd1_index.htm
□Post-Op Videoのホームページ(英文)
http://www.postop.com/
□「EZ Keyboard」製品情報(英文)
http://www.postop.com/html/EZproducts/SelectEZproduct.htm
□関連情報
【3月14日】カノープス、CDジャケットサイズのUSB接続DV編集用ジョグシャトル
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010314/canopus.htm
【4月16日】カノープス、USB接続のジョグシャトル「JD-1」の仕様を一部変更
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010416/canopus.htm

(2001年5月2日)


= 小寺信良 =  無類のハードウエア好きにしてスイッチ・ボタン・キーボードの類を見たら必ず押してみないと気が済まない男。こいつを軍の自動報復システムの前に座らせると世界中がかなりマズいことに。普段はAVソースを制作する側のビデオクリエーター。今日もまた究極のタッチレスポンスを求めて西へ東へ。

[Reported by 小寺信良]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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