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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語” |
第13回:百花繚乱!! 変なスピーカーを集めてみた
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新製品のニュースリリースをマメに読んでると、なんだかまじめなんだかふざけてんのかよくわからない製品に出くわすことがある。なかでも、どうもスピーカってのはいじりがいがあるのかどうかわからないが、昔からポータブルオーディオ用途として、いろいろと妙な工夫を凝らしたものが多い。
近頃はMP3やMDなど再生機もコンパクトになってきたが、こういったプレイヤーを利用してオーディオシステムにしちゃおうという方向性の製品が人気のようだ。こういうのってどんな音するのかなぁ、というわけで、街で見つけたおもしろそうなスピーカーを一同に集めてみた。
半透明ボディのクラフトスピーカー。発売は平成9年からというから、意外にロングセラー商品だ |
まず手始めにご紹介するのが、「PIONEER DESiGN PCR-30」、通称「クラフトスピーカー」だ。これはすでに数年前から店頭で見かけるが、プラスティックの箱を自分で組み立てて使う、ポータブルプレーヤー用ミニスピーカーである。
組み立ては簡単で、あらかじめ折り線の入ったところをぐいぐいと折り曲げていけば完成する。小学1年生の付録の組み立てよりはるかに簡単である。
音はまあ見た目どおりというかそれほど良くはないが、BGMとして軽く流しておく分にはいいだろう。製品のスリーブには「軽い・小さい・折りたためる」とあるが、確かに軽いし小さい。しかし「折りたためる」はどうだろう。いったん組み立てちゃったものはプラスティックに折り癖がついちゃうので、また元のようにまっすぐにするのは難しい。無理すればまた袋に入れることは可能だが、なんかふんわりふくれがちである。それに出先でいちいち組み立てるのもちょっと面倒かなぁ。
組み立て前のスピーカー。この時はかなり平たい | 一度組み立てしまうと、もう一度平たくするのはちょっと無理 |
□組み立て式スピーカー「PCR-30」の製品紹介
http://www.pioneer.co.jp/portable/pcr-30.html
色がかわいいミュージックポーチ。シースルーなので中のプレイヤーの曲名も確認できる | スピーカー背面部。中身まで見えそうで見えない程度の透明度 |
「これさあ、この箱。これで持ち歩くのはちょっと無理があるんじゃないの? それにこの箱んとこってさ、あってもなくても変わんないよ。もうさ、いっそのことこの入れ物ごとスピーカーにしちゃったらどうよ? な、そうだろそう思うだろナカムラちゃん(仮名)」。
とパイオニアの偉い人が言ったかどうかは全くサダカではないが、そのビニール製のポーチにそのままスピーカーをくっつけたのが「PCR-MP10」、通称「ミュージック ポーチ」である。227×11.7×41mm(横×縦×奥行き)のポーチに、さきほどのキューブスピーカーと同等と思われるスピーカーが内蔵されている。
この中にプレーヤーも入れちゃって持ち運ぼう、というわけである。大きさから言って、これにはCDプレーヤーはちょっと無理。MDかMP3プレーヤーならちょうど入る感じだ。音質は、低音がほとんど出ず、高域が耳につく感じ。良くも悪くも、昔のスピーカー付きラジオを彷彿とさせる。
スピーカーを固定するためのアクリル板スタンドが底面までしっかり延びているので、意外に倒れにくい。シースルーな感じがなかなかかわいいので、女性の好みに合わせてある感じ。持ち歩くスピーカーとしてはプレーヤーも同梱できるのは便利だ。持ち歩きたいのは山々だが、これは外に向かって音が出るわけだから、これを持って街で鳴らすわけにもいかないし、どう使ったもんか難しいところではある。
□ミュージックポーチ「PCR-MP10」の製品紹介
http://www.pioneer.co.jp/portable/pcr-mp10-w.html
空気を入れた状態。直径は約20cmほどになる |
「いやこないだのミュージックポーチ? あれはあれで良かったんだけど、なんかこうスピーカーがさ、どっかに固定できないもんかね? あのユニットならできるでしょ軽いしさ、吸盤でペタッと。どうよその辺どうなってんのよタナカちゃん(仮名)」。
と、パイオニアの偉い人が言ったかどうかは全くサダカではないが、快進撃を続けるパイオニアデザインから出たのが「PCR-AR10」、通称「エア クラフト スピーカー」なのである。なになに、「空気でふくらます、カワイイスピーカー」とな。なるほど。……えと……そんだけかい! カワイイってだけで空気入れんのかい! んもーしょうがねえなぁ。というわけでフーフーと一所懸命空気入れました。
スピーカーはミュージックポーチと同等品であるのがわかる |
うっ、かわいい(笑)。裏についている吸盤で窓とかに貼り付けると、空気のお花咲いてるみたいな感じですな。
スピーカー自体はミュージックポーチのものと色違いという感じで、特性などはほとんど同じ。しかしこれ、別に空気入れても入れなくても変わらないんじゃ……あっダメダメ、そんなこと考えちゃダメなのっ。空気入れた方が「カワイイ」ではないか。
□エアクラフトスピーカー「PCR-AR10」の製品紹介
http://www.pioneer.co.jp/portable/pcr-ar10-w.html
空気を入れると意外に大きい。最長部で50cmほどになる |
「こないだのエア クラフト スピーカー? あれどうせ空気入れてふかふかにするならさ、あれそのままマクラにならないの? なんかあの手触りって、マクラってイメージなんだよなぁ。なあ君もそう思うだろスズキちゃん(仮名)」。
とパイオニアの偉い人が言ったかどうかは全くサダカではないが、スピーカーにマクラが付いたのかマクラにスピーカーを埋め込んだのか微妙な線なのが、独自路線を爆走するパイオニアデザインの「PCR-PL10」、通称「ミュージックピロー」だ。
コーンはアルミのような金属が使われているようだ |
ビニール製の本体にこれまた一所懸命空気を入れると、たれぱんだの顔のようなマクラができあがる。実際に使ってみると、真ん中のへこみで頭が固定され、マクラとしてもなかなかいい感じだ。音としてはやはり低音がほとんど出ていない感じ。スピーカー自体はエアクラフト スピーカーで採用されたものと同寸だが、どうもコーン部分はアルミのように見える。音質もかなり違い、こちらのほうが中音域がよく出るようだ。
耳のすぐ真後ろで鳴るので、なんだか頭の中を音が通り抜けるような、斬新な音場ができあがる。。音質を度外視して、これはかなり気持ちいい。アンニュイな午後の昼寝には最強のシステムと言えよう。
ぜひ夏のキャンプあたりに持っていきたいグッズである。スピーカー部は防沫処理のため密閉されているが、背面に穴でもあけてバスレフにしたらもうちょっと低音がでるかも、と思った。
□ミュージックピロー「PCR-PL10」の製品紹介
http://www.pioneer.co.jp/portable/pcr-mp10-w.html
横幅は20cmほど。パッキンでしっかり密閉されるようになっている |
「こないだのミュージックピロー、あれ気持ちいいね。気持ちいいついでにさ、お風呂でも使えるスピーカーとかどう? だめか? いってみようよ。なあタカハシちゃん(仮名)どうよその辺」。
とパイオニアの偉い人が言ったかどうかは全くサダカではないが、もはや他社の追従を許さず独自の領域に踏み込んで帰ってこない(帰ってこないのかよ《笑》)パイオニアデザインの「Happy AQUA」は、バスルームで使うためのスピーカーである。
ポリプロピレンの入れ物の中にスピーカーを内蔵し、内部はシリコンゴムのパッキンで密閉できるようになっている。プレーヤーもこの中に入れてしまうわけ。スピーカーはミュージックピローとは違ったタイプの防沫のものになっている。
音質はさすがに期待できないが、シャワータイムやバスタイムに、ゆっくり音楽でも聴きながらリラックスする用途には一役買うことだろう。内部でプレーヤーがガタガタしないように、吸水スポンジのシートが同梱されている。
これでプレーヤーを包んでおくわけだ。タオルフックに引っかけておくためのS字フックも本体と同じカラーのものが付属しているのも、異様に細かいところまで気が利いている。なおシャワーがかかる程度には問題ないが、浴槽に浮かべて使うほどは密閉されていないので、使う際には注意していただきたい。
内部からみたスピーカー部。ユニットは防沫型で、コーンはビニールのようだ | プレーヤーを入れた状態。普通のポータブルCDプレーヤーぐらいは入ってしまう |
なおこの製品はいわゆる電気屋さん系では流通しておらず、東急ハンズやロフトのバス・トイレタリーコーナーなどを中心に販売展開されているようである。
なんだか専用ホームページまでできていて、ハッピー感がぎゅぎゅぎゅーんと加速している感じである。
□お風呂スピーカー「Happy AQUA」の製品紹介
http://www.pioneer.co.jp/happystyle/happyaqua/
ふたを閉じた状態。横幅は12cmと、かなりコンパクト |
さてそんなパイオニア独走状態を阻止すべく、かどうかはわからないが、他社でも面白いスピーカーを販売しているので紹介しよう。
まずはオーディオメーカーの老舗、オーディオテクニカからは、AT-SP202「Pactis(パクティス)」。まあ名前から察するに、化粧品のコンパクトみたいなスピーカーということだろう。フタ部分に鏡が付いていて、言わずもがなである。
女性にとって鏡はどのぐらいの頻度で必要になるのかよく知らないが、テーブルの上に置いて顔が映る程度にフタを傾けると、後ろに倒れてしまうということだけ申し添えておく。てかそれ、ダメなのでは(笑)。鏡を使わない人はフタをぐるっと後ろに回して、スピーカーを立てて使うこともできる。
電源を使用する分、結構大きな音が出る | 底面にケーブルがすっきり収納される |
電源として単4電池2本が必要だが、その分電源なしのパイオニア製品に比べて大きな音量にすることができる。本体にはボリュームがないので、プレイヤー側のヘッドホン出力で音調を調節することになる。本体から直接生えているオーディオケーブルはちょっと短めだが、本体底面にすっきり収納できるのは便利だ。
音質は、パイオニアの一連の製品よりは若干良いようだ。まあ良いと言ってもコンパクトスピーカーなので、ハイファイを期待するのは野暮というものだ。左右のスピーカーの距離が狭いので、ステレオ感が希薄になってしまうのは残念だが、スジは良いスピーカーなのでもうちょっと工夫したらいい音がしそうに感じる。
□「Pactis AT-SP202」の製品紹介
http://www.audio-technica.co.jp/products/cable-acc/at-sp202.html
ドライブユニットのケース部分がアンプになっている |
三栄ハウスのセラミックス スピーカー「CEMI」は、どこでも好きなところへ貼り付けて、その貼り付けたものを振動させ、音を出すというユニークなスピーカーだ。振動板にはセラミックスを使い、マグネットを使用していないので、磁気の影響が心配なところ、例えばパソコン本体とかに貼り付けても使用できる。
2つのスピーカーユニットが収納ケースに収まっているが、このケース自体がアンプ機能を持つ。単三電池4本を使用し、横には電源ボタンとボリュームも付いている。
ずいぶん昔にこういうスピーカーがあったのだが、その時の知識によると、貼り付けるものによって音がかなり変わるという話だったと思う。
まずは硬いものがいいのかと思って、窓ガラスに貼り付けてみたが、思いのほか音が鳴らない。タンスや机、車など色々なものに貼り付けてみた結果、低音までバランスよく鳴るのは、こういった硬いものよりも、中が空洞で薄いものの方がいいようだ。手でノックしてみて、カンカンとかコンコンといった高いことがするものは、ほとんど鳴らない。むしろドンドンとかボコボコとか低い音がするものの方がいい。
車などは、板が堅すぎるようだ | ムクの木を使ったタンスもほとんど鳴らない |
ベニヤ合板の安っぽいテーブルの方がいい音がする | 段ボール箱もかなりいい感じだ |
例えば机では、ムクの天版を使ったどっしりしたものよりも、ベニヤ合板で中身が中空の安物のほうがいい音がする。それからフスマ、これが意外によく鳴った。左右を別々のフスマに貼り付けると、ステレオセパレーションもばっちりだ。それから洗濯機。これは中が大きな空洞なので、豊かな音がする。さらに玄関にある靴箱や、果ては段ボールのようなものがなかなか健闘した。
意外と良くなかったのが、車。中身は巨大な空洞だが、鉄板が厚すぎるのかほとんど音が大きくならない。もっとも車に貼り付けてどーすんだという話もあるが。
基本的に音質が変わるということもあるが、それよりも音量が貼り付けるものによって全然違ってくるのはなかなか面白かった。常時一カ所に固定して聴くよりも、いろんなものに貼り付けて遊ぶというのが正しいかもしれない。
□「CEMI」の製品紹介
http://www.saneihouse.co.jp/cemi/index.html
今回ご紹介したこれらのユニークな製品は、最後の「CEMI」以外は3,000円以下で買える。その「CEMI」も8,000円程度。生活の中にちょっとした潤いをもたらすこれらのスピーカー、リフレッシュの小道具として使ってみてはいかがだろうか。
□パイオニアのホームページ
http://www.pioneer.co.jp/
□三栄ハウスのホームページ
http://www.saneihouse.co.jp/
□関連記事
【3月29日】パイオニア、ふくらませて使う携帯に便利なまくら型スピーカー
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010329/pioneer.htm
【4月13日】パイオニア、バスルームなどで使えるバック型防沫スピーカー
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010413/pioneer.htm
【3月30日】オーディオテクニカ、鏡付きでコンパクトな折り畳み式スピーカー
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010330/autech1.htm
(2001年6月6日)
= 小寺信良 = | 無類のハードウエア好きにしてスイッチ・ボタン・キーボードの類を見たら必ず押してみないと気が済まない男。こいつを軍の自動報復システムの前に座らせると世界中がかなりマズいことに。普段はAVソースを制作する側のビデオクリエーター。今日もまた究極のタッチレスポンスを求めて西へ東へ |
[Reported by 小寺信良]
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp