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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第15回:アジア人の魂! とにかく全部入り!
TV/FMデジタルオーディオプレーヤー「Meism」

 なぜかアジアの国の人々というのは、1つのボディに複数の機能を盛り込むというスタイルに対して異常に燃えるようである。消費者側は、1つ買えばいろいろできるというお買い得感があるのでわかりやすく、同時にそのニーズは「こういうのはさすがに無理なんじゃないの?」という形で挑戦された開発者の熱い技術屋魂に点火してしまうのだ。きっと。

 こうしていろんな複合製品が世に放たれているわけであるが、作る方も技術的にできちゃったからってんじゃなくて、いちおう方向性みたいなものをまとめていかないと、「それでMP3聴けるからなんだってんだよおぅ」という逆説的疑問を消費者に投げかけちゃう場合もあったりする。

 セイコーエスヤードの「Meism(ミズム)」は、これ1つでテレビ、FMラジオ、ソリッドオーディオ、デジカメビューワーと、イマドキの携帯可能なメディアを全部1台で視聴できてしまうという方向性の製品である。たとえば待ち合わせなど1人で時間を潰さなければならないときのお供には、これだけ機能があればもう十分すぎる。もう待ち人が来なくてもいいぐらい楽しめるのだ。

 ちなみに、価格はオープンプライスで、店頭予想価格は5万円前後。では、そのスペックを徹底的にチェックしていこう。


■ まずはボディチェック

ゲームボーイカラーよりもちょっと小さいぐらいだ
 ボディカラーは、パールホワイトとパールブルーの2色。角が落とされ、緩やかにふくらんでいるボディデザインで、柔らかいイメージを出している。大きさは、もっとも近いものと言えば、「ゲームボーイカラー」であろうか。それよりちょっと小さいぐらいだ。厚みはゲームボーイカラーよりも薄く、厚みが平坦である。

 塗装や形成は念入りなのだが、ボディ素材はABS樹脂でちょっと安っぽい感じがするのは残念なところ。

 正面中央のシルバーのボタンを下にスライドさせると、丸いカバーが自動的にゆっくりと開いて液晶モニタが現われる。手に持ってみると、おお! かっちょええやんかこれー。なんか子供の頃テレビでありましたねこういうの。なにやら未来の通信機とか探査機みたいである。単にバネでビヨヨ~ンと開くのではなく、なかなか凝った演出である。開いたカバーの裏側は一見スピーカーのように見えるが、これはただのデザイン。

 液晶モニタは、ゲームボーイカラーなどでおなじみの反射型TFT液晶で、幅4.1cm、高さ3.1cm、280×220ドットの表示が可能である。ゲームボーイカラーのより少し小さめだ。反射型液晶はバックライトなしで見えるため、消費電力が少ないのがメリットだ。そのかわり暗いところでの視聴ができないのは、ご存じの通り。ゲームボーイカラーの液晶は、透明なパネルでカバーされているため反射がキツくて、照明の具合では明るいところでも見辛かったりする。が、Meismの液晶はノングレア加工が施してあり、どんな照明下でもキレイに見える。

手に持った感じは未来の通信機 ここから音が出るのかすげぇ、と本気で思ったのだが、違っていた。 反射のなさでは断然Meismのほうが上質な液晶モニタ。

 右サイドには、メインスイッチとメニューボタン、それからメニュー操作に使うジョグスイッチがある。頻繁に使うメニューボタンはやや固めで、ぎゅっと押す感じ。ボタンを押し続けるというアクションもあるので、もう少し柔らかめにするか、押し続けて反応する時間をもう少し短くしても良かっただろう。一方ジョグスイッチのレスポンスは非常によく、スパスパと切り替わる。

 反対側の左サイドには、スマートメディアスロットがあり、128MBまでのものが使用できる。ただし、メディアの出し入れは、電源OFFで行なう必要がある。

 ヘッドホン端子と、ボリュームボタンは上面に配置。他に付属品と言えば、インナーイヤー型ステレオイヤホンと乾電池だけで、ソフトウエア類は一切付属しない、シンプルな構成だ。

操作はダイアルの上下でメニューをスクロールし、押し込んで決定、というスタイルだ メディアの出し入れは、いったん押し込んで飛び出すノック式 内部は4つのモードに分かれている

 ではさっそくメニュー順に従って、各機能を使ってみよう。


■ オーディオモード

写真は画面再撮のため見辛いが、実際にはクリアな表示だ
 Meismのオーディオ機能であるが、本体内にはメモリも外部接続ポートもないので、パソコンを使ってスマートメディアに転送したものをこれで聴く、というスタイルである。対応しているオーディオフォーマットは、WMAのみだ。圧倒的に普及しているMP3に対応していないのは残念だが、Windows Media Playerを使えばCDなどからエンコードできるので、それほど問題ないだろう。

 オーディオメニューの先頭は、メディア内に入っている曲のリスト画面からスタートする。文字は小さいが、8曲分が一度に表示され、認識性も高い。これだけ充実した表示は、プレーヤー専用機でもなかなかお目にかかれないものだ。曲を再生すると、曲名とアーティスト名がスクロール表示される。画面表示を常に使用しない機能では、しばらくすると自動的に液晶表示が消え、バッテリー節約に貢献するようになっている。また液晶のカバーを閉じても表示が消えるようになっている。

意外にいい感じのイヤホン。これがいいというよりも、他のがダメすぎるという話も
 音質に関しては、まず付属のイヤホンが結構まともである点が評価できる。従来この手のプレーヤーに付属するものはカッコばかりで、音質的に全然ダメなものがほとんどなのに比較すると、結構奮発したと言えるのではないだろうか。変な癖がなく素直な音なので、音質設定がストレートに効くという感じだ。オーディオ再生中にメニューボタンを押し続けると、音質設定メニューに入る。選択できるのは、「ノーマル」、「ロック」、「ジャズ」、「ポップス」の4種類。ほとんどのユーザーは、「ロック」か「ジャズ」設定で満足できると思う。

 イヤホンはケーブルが細くて強度が心配であるが、まさかここでおりゃーと引きちぎってみるわけにもいかないので、強度テストは勘弁して欲しい。



■ テレビモード

 テレビおよびラジオモードでは、当然であるが受信状態は場所により左右されることをお断わりしておく。付属のイヤホンはアンテナ機能も持っているので、綺麗に受信するためにはヘッドホンを本体に接続する必要がある。

 テレビのチューニングは、ジョグスイッチを上または下に押し続けると、自動的にチャンネルをスキャンしてプリセットしてくれる。これ以降はジョグスイッチの上下でプリセットしたチャンネルを順に選択でき、電波のないチャンネルはスキップしてくれるのだ。

 筆者の住まい、見通しのいい4Fのベランダでは、非常に良好に受信できた。関東エリアでは、東京タワー方向への見通しがいいと綺麗に受信できるだろう。

 表示は、画面が小さい割には解像度はなかなかいい。画面上に出るサイドスーパーなどはさすがにちょっと小さすぎて読みにくいが、人の名前など下に出るスーパーは十分読める。

 逆に室内に入ってしまうと、チャンネルによっては見られるが、中には全く見られない局も出てくる。


■ FMラジオモード

 FMラジオのチューニングは、テレビのときと同じく、ジョグスイッチを倒し続けると自動的にチューニングが始まり、受信できた局を周波数ごとにプリセットしてくれる。これもいったんプリセットされれば、ジョグスイッチの上下でプリセットしたチャンネルを順に選択できる。もちろんステレオ受信が可能だ。

 欲を言えば、音楽中心の局を聴くときにも、オーディオモードの音質設定が有効になってくれると良かったのだが。


■ デジタルカメラモード

 モードの名前だけ見ると、一瞬デジカメにもなるのかと思われるかもしれないが、これはデジカメで撮影したスマートメディア内の映像を見るという機能である。本体横のスロットに撮影済みのスマートメディアを差し込んでデジタルカメラモードにすることで、1枚ずつ手動で送って見たり、スライドショー機能を使って自動的に表示させることができる。スライドの表示時間は、2/5/10/30秒の中から選択する。読み込める画像サイズなどには特に制限がないようだ。1,800×1,200ピクセルの画像でも表示された。また表示速度も結構早い。下手すると撮影したデジカメで見るよりも早いかもしれない。

これがオリジナルの画像。(編集部注:画像をクリックすると元画像を表示します。サイズは450KB、1,800×1,200ドット) Meismの表示。画面再撮だが、猫のヒゲが完全に点線になってしまっているのがわかるだろうか
 もちろん、液晶自体が280×220ドットしかないので、ピクセルを間引いて表示することになる。ちょっとそのアルゴリズムに独特の癖があるようで、Meismで表示される画像は、アンチエイリアスが外れたみたいにガタガタになるものがある。

 フォーカスがズレている写真ほど綺麗に表示される、といった感じだ。まあこの小さい画面でデジカメの写真が見られたからなんだヨ、という話も聞こえなくもないが、他の機能がちゃんとしているだけに、ここだけが「アレ、どうしたの?」という感じである。



■ 総評

 セイコーエスヤードという会社は、時計でおなじみのセイコーからスポーツ・トイレタリー部門が独立して去年設立された新しい会社で、ゴルフクラブとか電気シェーバーとか歩数計とかを一手に扱っている。Meism専用ホームページも開設され、なかなか気合いが入っているようである。ここでは写真や音楽の投稿も受け付けており、Meismを使ってみんなでいろいろ遊ぼうというわけだ。

 それから電池の持ち時間であるが、スペックでは単三電池2本で以下のようになる。

 やはり反射型液晶はバッテリの持ちがいいとは言え、液晶モニタを使うモードでは使用時間がだいぶ減ってしまうようだ。

 それにしても、元々の土台として液晶カラーテレビがあったとはいえ、大きさをさほど変えずにここまでいろいろ盛り込んじゃえるわけだ。できるならば、単に機能が集まっただけじゃなくて、そこからいろいろと組み合わせて派生する楽しみにまで柔軟に対応できると大変よかったのに、と思う。例えばモード別にかっきり機能が分かれちゃうんじゃなくて、写真見ながら音楽聴けるとか。いや音楽聴くのが難しいならせめてFMラジオぐらい。

 しかしこの大きさでこれだけできるんだったら、もう電話機にこのぐらいの機能が付いちゃうのはあともう少しなんじゃネエの? という予感がしないでもない。

□セイコーエスヤードのホームページ
http://www.seiko-syd.co.jp/
□「ミズム」ホームページ
http://www.seiko-meism.com/
□関連記事
【6月5日】セイコーエスヤード、WMAファイルも再生できる携帯TV
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010605/meism.htm

(2001年6月20日)


= 小寺信良 =  無類のハードウエア好きにしてスイッチ・ボタン・キーボードの類を見たら必ず押してみないと気が済まない男。こいつを軍の自動報復システムの前に座らせると世界中がかなりマズいことに。普段はAVソースを制作する側のビデオクリエーター。今日もまた究極のタッチレスポンスを求めて西へ東へ。

[Reported by 小寺信良]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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