第9回:特典の嵐!! 恐るべき物量攻勢の |
怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。 |
スペシャルコレクション ターミネータ2 特別編 |
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価格:7,800円 発売日:2001年9月21日 品番:PIBF-1323 仕様:片面2層/2枚組 収録時間:約156分(本編) 画面サイズ:スコープサイズ(スクイーズ) 字幕:英語、日本語 音声:1.英語(ドルビーサラウンドEX) 2.英語(DTS-ES) 3.日本語(ドルビーサラウンドステレオ) |
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発売元:パイオニア・エル・ディー・シー株式会社 |
今回のお題は「スペシャルコレクション ターミネータ2 特別編」。さて、すでに劇場公開版をもとにした「ターミネータ2」が'97年11月に、そのDTS版が2000年3月24日に国内発売されている。さらに未公開映像を収録した「特別編」が2000年12月20日にリリース。この特別編は、米国盤の「The Ultimate Edition(究極版)」('91年発売)をベースにしているというのが売りだったのだが、これが国粋主義者ならずとも噴飯ものの、いわば卑屈なまがいものだった。
なにより、米国盤「究極版」の片面2層2枚組(あるいは、両面2層1枚)に対し、国内盤「特別編」は、単なる片面2層1枚組でのリリース。「究極版」にあったゴージャスな特典映像がまったく収録されなかった。取り急ぎ、ドルビーサラウンドEXとDTS-ESに対応したものの、当時は再生できる家庭がほとんどなし。日米におけるDVDに対する温度差をはっきりと感じたものだ。
まあ、劇場公開以来10年も経っているため、今さら高価な2枚組の商品とするのも難しかったに違いない。今回の「スペシャルコレクション」の発売も、3月にパイオニアLDCから発売がアナウンスされたものの、「DTS音声と字幕の一部に問題があった」との理由で延期。その後夏発売の発表があったものの、結局9月21日に落ち着いたという経緯がある。
実際のところ、待ち望んでいた人はそれほど多くはなかったかもしれない。なんといっても作品自体古いし、「マトリックス」以来、ドンパチもののハリウッド作品は低く見られがちだ。「肉体派俳優」なぞ死語といっていい。「これを機に、改めてT2を見たい!!」と思う人が、日本にどれくらいいるのだろうか。
■ 文字通り圧巻!! 鬼のような量の特典
しかし、あえて私は訴えたい。DVDコレクターならやっぱりこいつを「買っとけ!」と。そう、今や中級AVアンプにもデコーダが内蔵されるようになったドルビーサラウンドEXとDTS-ESを試すためにも。そして、「映画DVDにおける特典はどうあるべきか」の問いに応えたかのうような、圧倒的物量の特典を体験するためにも。
特典の多くはDisc2に収められており、そのボリュームは半端ではない。その物量投下度がどれくらいすごいかを理解してもらうため、以下にリストアップしてみた。
コンテンツ | 物量投下のほど |
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音声解説 | ジェームズ・キャメロン監督、アーノルド・シュワルツェネッガーなど26名が参加 |
フィルモグラフィ | キャストとスタッフ8人分 |
THXテスト信号 | THX基準による音声と映像の最適化メニュー |
メイキング | 3本(計75分) |
特報&予告編 | アメリカ公開版、国内公開版 |
オリジナルストーリーボード | 700枚以上 |
究極T2辞典 | 図版760枚以上、インタビュー映像30本以上 |
封入ブックレット | 152ページ(表紙周りを含む) |
「音声解説」から「THXテスト信号」までがDisc1、その下がDisc2に含まれている。AVマニアにとってたまらないのは、Disc1の「THXテスト信号」だろう。
これは、ウィザード形式のメニューにしたがって音声と映像を調節し、THX基準にセットアップしていくというもの。説明書きにはTHXらしく、「指示にしたがってここまでこられた場合、適切に調整されているはずです。それでは、監督の意図した通りの映画をご覧下さい」などと書かれており、作業中はいやが応にも期待をしてしまう。
しかし、音声は要するにAVアンプに入っている「テストトーン」と「極性チェック」だし、映像はPhotoshopに付いてくる「Adobe Gamma」だと思えば良い。それほどすごいことをするわけではない。とはいえ、「これで俺のヤマハのAVアンプとシャープのテレビもTHX基準か」と、なんとなくうれしかったりする(全然違う)。また、サブウーファのクロスオーバーを検証するテストもある。200Hzから20Hzまでを約5秒間再生し、音が途切れなければOKというものだが、これがどう設定してもうまくいかなかった。私のシステムがダメだということだろう。
圧巻なのは、「究極T2辞典」だ。これは、同タイトルの企画立案から劇場公開までを、静止画による紙芝居形式で説明するコンテンツ。その枚数は凄まじく、途中で数えるのを断念したほどだ。したがって、上の表には静止画そのものの枚数は記述していない。
この「究極T2辞典」、実に詳細に制作過程を説明しており、例えば、「T-1000(液体金属のターミネーター)の化けたリンダ・ハミルトンは、急遽出演した双子の姉妹」とか、「ハーレー・ダビッドソンのエンジン音が物足りないので、虎の吠える声を混ぜた」など、面白い逸話が紹介されている。また、ポストプロダクションやプリントの作成、マーケティングについても細かく触れられており、映画業界を目指す人なら一度は目を通しておく価値があるコンテンツだ。
ビデオ版のテレシネについて紹介した個所もある。それによると、劇場公開版は上下に余裕のある「スーパー35」というフォーマットで撮影されており、パン&スキャン編集やスクイーズに落とし込むときも、問題なく行なえたという。同じシーンを使い、スーパー35、スコープサイズ、スタンダード(パン&スキャン後)の各画角を見比べるというコンテンツもあった。
また、DVD版についてはTHXのデジタル・マスタリング・プグラムのチェックを通ったという、新しいマスターを使用したそうだ。さらに未完成だった特殊効果ショットをMacintoshで修正。完成度をさらに高めたという。
■ 画質、音質も「究極版」。ただし操作に難あり
そのためか、画質については何ら問題はない。改めて見ると夜間や屋内といった暗いシーンの多い作品だが、ノイズはほとんど確認できなかった。ただ、劇場での記憶からすると、彩度が低く、物足りないほどあっさりとした絵柄に感じた。しかし今回は「THXテスト信号」でバッチリ調整済み。これが監督の意図した絵なのだろう。おそらくは。
音質も文句なし。確か公開当時、「後ろに飛び出した薬莢の落ちる音が、自分の後ろから聞こえる!!」と話題になったと記憶している。それが家庭で再現できるとは感無量だ。銃声やヘリのローター音など、低音が物足りないケースもあった。しかしそれは、私の所有するスピーカーがダメなだけ。なんといっても今回はTHX基準で調整済みなのである。ソースは悪くないのだろう。多分。
ドルビーサラウンドEXとDTS-ESを聞き比べるのも楽しい。ドルビーサラウンドEXは落ち着いた感じで、台詞も聞きやすい。片やDTS-ESは描写が生々しく、SEも真に迫って聞こえる。ただし、私のAVアンプではDTSのダイナミックレンジ圧縮ができないため、突然大音量に見舞われてびっくりすることも多々あった。このタイトルは特にレンジが広い。それほど大きな音の出せない私の環境では、ドルビーデジタルで我慢するしかないという結論に達した。
なお、上記した「究極T2辞典」をはじめ、ストーリーボードなどの静止画特典のほとんどは英文のまま収録されている。封入されている152ページのブックレットに対訳があるものの、思いっきり直訳風の日本語なので、気軽に読むにはつらいものがある。
また、メニュー体系がわかりにくく、目的の特典に行きつくためにかなりの試行錯誤を要した。これは私だけかもしれないが、「THXテスト信号」への入り方はほとんど裏ワザに近い。直感的にたどり着ける人は少ないと思う。
特典として「資料性」に重きをおいた同タイトルだが、せっかくのデータベース「究極T2辞典」も、この操作性の悪さでは途中であきらめる人が出てきてもおかしくない。しかし、権利の関係上、国内向けにあれこれいじることは難しいのだろう。また、米国盤ではアルミ製だったケースも、安全のためペーパーボックスとなったとか。微妙なところでスケールダウンしている。
と、色々と妥協せねばならない点は多いものの、(日本での)DVDというパッケージの限界に挑戦したこのタイトル、コレクターなら必携といえよう。
□パイオニアLDCのホームページ
http://www.pldc.co.jp/
□製品紹介
http://211.5.138.75/pldcgoods/FMPro?-db=pldcgoods&-format=record_detaile-dvd.htm&-lay=data&-recid=12616720&-find=
□関連記事
【2月22日】「スペシャルコレクション ターミネータ2特別編」が発売中止
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010222/pldc.htm
【7月25日】DVD「スペシャルコレクション T2 特別編」が9月21日に発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010725/ldc.htm
(2001年10月5日)
[orimoto@impress.co.jp]
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