気になるグッズを衝動買い


【バックナンバーインデックス】


第34回:デコーダなしの珍しい5.1chスピーカーシステム
「クリエイティブメディア Inspire 5.1 5300」


 AV製品はピンからキリまでいろいろありますが、いわゆるメインストリーム以外にはいろんなおもしろいアイテムがたくさんあります。ここでは思わず衝動買いしたくなるけど、冷静に考えるとどうかな~? と、気になる「モノ」に積極的なアタックを繰り広げていきます。

せっかくだから、格安に5.1chシステムを

 こないだ自作したPCには5.1ch出力対応のサウンドチップ「CMI-8738 6ch MX」が乗っております。しかし、現状ではステレオスピーカーに繋いでいるだけ(しかもパッシブ)。かなり手を抜いたシステムとなっております。

 けれども、せっかくシステムがあるのに「活かせないのはもったいない」との思いもありました。けどねぇ、お金はそんなにかけたくないわけですよ。かなり頑張っているとはいえ、マザーボード搭載チップ。ヘッドフォンで聞くと内部ノイズをうっすらと拾っており、お金をかけたシステムを組んだとしても出力の段階でアウト。

 が、世にある「格安5.1chシステム」は、デコーダを搭載して、3万円程度から、というものが中心。まあ、確かにデコーダ搭載のほうが使い勝手はいいのだけれども、アナログ5.1ch入力がないものばかりなんだよね。我が自作PCは光デジタル出力はあるものの、光デジタルでの5.1ch出力には対応していないご様子。それに3万円も出すのははちと痛い。

 しかし、捨てる神あれば拾う神あり。そんなニーズに応えている5.1chシステムがあったのでございます。それがクリエイティブメディアの「Inspire 5.1 5300」。

 どちらかというと、同社の5.1ch出力対応サウンドカード「Sound Blaster Audigy」シリーズのオプションという扱いのようだけれども、「CMI-8738 6ch MX」も5.1ch出力対応。まあ、親戚関係みたいな訳で、使っても罰はあたらんでしょう。

 え~、ブツの仕様を確認してみると、まず大前提はアンプ内蔵の5.1chスピーカーセット。しかし、当然のようにデコーダは内蔵せず、ドルビーデジタルなどは「PC側でデコードしてね」という姿勢。入力はアナログ5.1ch×1系統オンリーという潔さもポイント高し。いやぁ、サウンドカードによるわけですな。これは。

 なんといっても魅力的なのがその価格。標準価格はオープンプライスになっているけれども、店頭価格で17,000円程度。アンプ内蔵、5.1chスピーカー付きでこの価格なら納得のお値段。これは試してみなくてはなるまいて。


巨大な外箱に比して本体サイズはコンパクト

同梱品一覧。内容は必要最小限

 外箱は長辺が1m、短編でも60cm程度の巨大なサイズでちょっとビビリました。デカイ箱だな、これは……。当然手持ちでは持ち運べず、カート使うにしてもこれだけ巨大だと駅などで迷惑がかかりそう。重量的には6~7kgといったところで、運べないこともないけれども、結局配送にしました。……これを手持ちで運ぶ人は勇者だと思います。ご購入の際には外箱サイズのチェックもお忘れなく。

 で、翌日。チャイムの音で玄関に出ると、目の前に「Inspire」の箱がででーんと構えておりました。つまり、箱が大きくて抱えている配送のお兄さんの姿が見えなかったのね。ともあれ、無事に到着いたしました。では、中身を改めるとしましょうか。

 箱を開けると、中には発泡スチロールの緩衝材に囲まれたサブウーファと、段ボールの小箱が6つ。緩衝材は少々大きめで、エコロジーを意識した小さな紙製の緩衝材が多くなった昨今では伝統的ともいえるタイプ。っつうか、この緩衝材で結構スペース食ってたのか。まあ、しっかりと梱包してあって、安心といえば安心ですが。

 小箱の中身は当然5ch分のサテライトスピーカー。こちらは箱を緩衝構造にした程度の簡単な梱包。けど、5本もあるからこれはこれで取り出しやすくてよいかと。フロント/センター用と、サテライト用でコード長が違うだけで、ユニット自体は同じものを使用しているようです。そうそう、差し込み式のスタンドもついておりました。

 6つめの小箱には、その他の部材が収納されてます。サイズは6つとも全く同じ。その他部材は、ACアダプタ、ステレオミニプラグケーブル×3本、そして、ワイヤードのボリュームコントローラ兼電源スイッチ、といったところ。

 基本的に、同梱物はこれだけ。つまり、サブウーファ×1、サテライトスピーカー(+スタンド)×5、ステレオミニプラグケーブル×3本、ボリュームコントローラ×1、という構成。ううむ、シンプル。でもスタンドついているのはポイント高いッスね。オンキヨー「Hollywood Station」は付いてなくてすわりが悪かったからなぁ。


サランネット取り外し可。意外としっかりしたユニット

 それでは、個々のユニットを細かく検証してみましょう。

 最初に驚いたのが、各スピーカーユニットのサランネットが取り外し可能なこと。もちろん、サブウーファもです。サテライトスピーカーの容量は0.47l、フルレンジ×1で、典型的な「5.1chセット用コンパクトサイズスピーカー」のジャンルに分類されるわけですが、このジャンルでサランネットが取り外し可能なのは珍しい。

 サイズ自体も、他の「格安5.1chスピーカーシステム」と比較するとひと回り大きな感じ。外形寸法96×92×112mm(幅×奥行き×高さ)で、容量0.47lと、数字だけを見ると少々頼りなさげな印象を受けるが、実際に手にとってみると、結構な重量感があってなかなかよさげ。キャビネットは樹脂製だが、重量約470gとしっかり重く、密度がつまった印象を受ける。

 で、サブウーファですが、こちらは外形寸法220×250×222mm(幅×奥行き×高さ)と、思ったよりもコンパクト。重量も3.6kgと、設置性も高いと思われます。

 キャビネットを触ってみると、なんと木製でございます。コンコンと小突いてみた限りでは、MDFより少々密度は薄めだけれども、なかなか締まった感触がしていい感じ。ユニットも14cm程度のしっかりしたものを使っております。鳴りにも(それなりに)期待できそうですよ。ポートのついたバッフル型だし。

 さて、サブウーファにはアンプが内蔵されております。注目すべきはインターフェイス部。入出力端子は、サテライトスピーカー用のRCA×5と、ステレオミニジャック×3。あとはボリュームコントローラ用のDIN端子のみ。わお、なんと割り切った造り。ちなみに、ステレオミニジャックはフロントL/R、サラウンドL/R、センター/サブウーファ、という構成。そのほかについているのは、ACアダプタと、BASSコントロール用のボリュームだけ。そっか。サブウーファの出力は、サブウーファそのもので調節するわけね。

 ところで、サブウーファの入力部にはクリエイティブのエフェクト機能「EAX」のロゴがありますが、本体には何の機能も付いてません。っつーか、完璧アナログアンプだよ、コレ。つまり、「クリエイティブのサウンドカードを使って"EAX"の再生するときでも対応してますよ」ってことなのでしょう。あくまで「対応してる」と言いたいのかと。う~ん、クリエイティブ製サウンドカードユーザー以外は使っちゃダメ、という意思表示なのだろうか? もちろん、そんなことは無視して使いますが。

サブウーファのインターフェイス部。至ってシンプル スピーカー正面 サブウーファ正面

ACアダプタ。相変わらず大きいが、目立たないところに置けば…… スピーカーのサランネットを外した状態 サブウーファのサランネットを外した状態


セッティングは簡単ワンタッチ

 ちゅうことで、セッティングにかかることにします。ターゲットは、ロフトベッド下を作業スペースとしているマイ自作PC(特に愛称はありません)。ん~、そうさねぇ、フロントはディスプレイ両脇に、センターはディスプレイ上に、リアは後ろに置いた書棚、って感じでしょうか。

 うむ、問題はリアの設置だね。書棚の上には少々荷物があるし、幅が狭い上に左に偏って置いてあるんだよね。その後ろにはパーティション用の格子があるので、そこに壁掛け設置できればベストなのだけど。

 フロント/センターは、スタンドを使ってベタ置きすればOKですが、リアは壁掛けできるかどうかがミソですな。サブウーファも意外とコンパクトとは言え、それなりのサイズ。とにかく、置いてみることにします。

 設置してみると、意外と簡単に事が進み、フロント/センターは所期の計画どおりディスプレイ回りに設置。ちなみにスタンドに角度調節機能がついていなかったので、スタンドに消しゴムなどをかまして、適当な角度をつけております。サブウーファは、1年前にブチ壊れて以来、テーブルの下でオブジェと化している「PowerMacintosh 8500」の上に鎮座させることで解決いたしました。

 自宅の環境では、PC/ディスプレイは棚に置き、その棚の前にテーブルを設置しております。で、テーブルの高さは約70cm。高さ約36cmの8500に、サブウーファが22.2cmなので合計約58cm。何の問題ありません。36cmといえば、ミドルタワーのケースに相当するので、テーブル、デスクの下にミドルタワーPCを置いている人でも同じように設置できるかと思います。

 さて、迷いどころのリア。壁掛けにできるのならばベストなのだけれども……と、リアの背面をふと見てみる。あら、壁掛けフックに対応してるじゃないですか。背面には、1cm程度の穴があり、その上に向かってスライドさせる約5mm幅の溝が1cm程度掘られております。

 要するに、ボタン状の突起を穴に入れ、上へスライドさせることで固定するタイプ。ふむ、ボタン状のフックは手持ちにないけれども、よさげなフックがパーティションの格子にかかっておりました。確か東急ハンズで300円くらいで買ってきたヤツ。

 このフックは針金1本が飛び出したタイプで、カバンなどの紐を掛けるのに適しているのだけれども、紐が落ちないように針金が上を向いており、リアスピーカーの溝に入れたところ、何とか安定いたしました。しかも、いい感じに俯角がついて、ちょうど頭の位置に向けられております。ふ~、リアもこれで完璧、っと。コードが直出しなので、テーブルの隙間に通すのに手間取るなど、ケーブルの取り回しは少々面倒ではあったけれども、所要時間は約10分。セッティングも簡単といえるでしょう。では、電源入れてみますか。

フロント/センターはディスプレイ周りに設置 リアはベッドのパーティションに壁掛け サブウーファはテーブル下に置いたPCの上に

スピーカー背面。フックを中央の穴に引っ掛けて壁掛けできた 設置位置全景。ベッドの下に一応のシステムを構築


音質はそこそこ。リモコンはかなり使える

ワイヤードのボリュームコントローラ。L/Rのバランス調節もコントロールできる

 ということで、使ってみましょう。最大出力は、サテライトが6W、サブウーファが18W。少々出力が小さいようだけれども、狭い狭いロフトベッド下、という環境であれば、スピーカーからの位置も近いので音量的には充分。逆にいえば、音量を上げるとPCからのハムノイズ拾いまくってどうにも……、という状況に。ま、これはPC側の責任なので「Inspire」に罪はありません。同じ端子にヘッドフォンを挿してリスニングしても同様でしたんで。……「Audigy」はどうなのかな?

 んで肝心の音の感触はというと、「やっぱりコンパクトスピーカー」という印象。サテライトが密閉型なので、すっきりした音にはなっていないご様子。けれども、コンパクトスピーカーにしてはなかなか。サブウーファは、そこそこ効果を感じるものの、こちらも「サイズに比して」という感覚。低音は感じるけれども、迫力としてはイマイチ、といった所でしょうか。う~ん、ま、サイズ、価格を考えればこんなもんか。ソースもPCだしねぇ。でも、悪くはないですよ。MP3の音と、CD-DAの音の区別はつく程度、としておきましょう。

 DVD「U-571」を試聴したけれども、サラウンド効果は通常の5.1chシステムと変わることなくぐるぐる音が回ります。爆発時の低音の迫力や、飛行機のプロペラ音などの高音域の切れの良さには少々物足りなさを感じましたが、映像と一緒に聴く分には問題ありません。映画の雰囲気にすんなりと馴染めました。

 そうそう、意外と便利だと感じたのがボリュームコントローラ。当初は「ワイヤードリモコン」なんて、と思っていたけれども、「テーブル上」というPC環境ならば、コントローラもテーブル上に置いておけるし、キーボードやマウスからの移動に苦痛を感じることもないし。もちろん5ch一括コントロール(ただし、サブウーファ出力はサブウーファ側で調整)。

 それに、電源スイッチも一体化しているのもポイント高し。アンプはサブウーファに内蔵されているのだけれども、手の届きにくいところに置かれることの多いサブウーファにアクセスすることなく電源を入れることが出来るのがよろしいかと。L/Rのバランス調節機能も付いているけれども、スピーカーを納得して設置できた自分は使いませんでした。が、スピーカー位置がどうしても偏ってしまう方には便利かと思われます。どうせならトーンコントロールもつけてくれれば完璧だとは思うけれども、この価格で贅沢は言えないかな。


お手軽にPC用5.1chシステムを構築したい方に

 この製品のコンセプトは「5.1ch出力を持ったサウンドカード用のスピーカーシステム」。製品の目的がはっきりしているだけに、余計な機能はついておりません。シンプルにシンプルに、ただひたすらシンプルに5.1chを再生するのがこの製品。潔い……。それもこれも「何でも出来るサウンドカード」をつくった自信の現われ、といった所でしょうか。ソースはサウンドカードで何とかなるだろ、ってコンセプトだと思います。

 音も当初想像していたよりは良く鳴ってます(まあ、コンパクトスピーカーにしてはという意味で)。ディスプレイと顔の距離が近いPC環境でならば、ワイヤードのリモコンでも使い勝手は良好。サラウンドに対応するゲームはやったことないけれども、このシステムならばかなり迫力のあるプレイを楽しめそう。もちろん、DVD視聴もOK。

 5.1ch出力対応のサウンドカードも、秋葉原などを探せば3,000円程度から入手可能。その気になれば、それなりのPC用5.1chシステムを2万円ちょいで構築できるのはメリット大きいかと。もちろん、「とことん安く」というのであれば、1,000円程度のスピーカー2~3セットで5.1chシステムを組むのも選択肢のひとつ。ただしボリュームコントロールなど、システムならではの恩恵は受けられませんが。

 う~ん、それなりの音も聞こえるし、ワイヤードながらリモートでボリュームコントロールが可能。ふむ、特に利便性を考えれば、この値段を出しても納得できるな、と自分は思うのでありますよ。

□クリエイティブのホームページ
http://japan.creative.com/
□製品情報
http://japan.creative.com/products/speakers/inspire_5300/welcome.html
□関連記事
【8月24日】クリエイティブ、新チップ「Audigy」搭載のサウンドカード
―24bit/96kHzの入出力、ドルビーデジタルに対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010824/creative.htm

(2001年10月16日)

[fujiwa-y@impress.co.jp]


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