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第37回:KENWOODのSupreme2を搭載したMP3ソフト

〜「MP3 Audio Magic XPサラウンド」の実力〜



 TDKから、新たなMP3ソフト「MP3 Audio Magic XPサラウンド」(標準価格6,800円)が、11月22日に発売された。MP3 Audio Magicシリーズとしては初代の「MP3 Audio Magic」、「MP3 Audio Magicサラウンドに続く第3弾となる。

 MP3 Audio Magicシリーズは、初代からKENWOODの「Supreme/D.R.I.V.E.」という再生エンジンを搭載し、一般のプレーヤーで聞くよりも高音質であることをアピールしたソフトだった。今回のMP3 Audio Magic XPサラウンドでは、Supreme/D.R.I.V.E.よりも高性能な「Supreme2」というものを搭載したのが特徴だ。いったい、これはどんなもので、どれだけの効果を発揮するのだろうか、実際に使って検証した。


■ 主な追加点は「Supreme2」

 Supreme2について実験をする前に、まずMP3 Audio Magic XPサラウンドというソフトの概略について紹介しておこう。

 このソフトは、TDK開発のソフトでMP3のエンコードからデコード、ライブラリ管理、CDへの焼き込みなどができるMPのトータルソフトである。また名前からもわかるように、Windows XPおよびWindows 2000にも対応している。

 基本的なユーザーインターフェイスは、初代のMP3 Audio Magicから共通で、アルバム管理する際、そのアルバムをビジュアルで表示させることができるのが1つの特徴になっている。ただ、今回のバージョンではその演奏画面もデザインを一新したコンポモード4種類と、イルミネーションを使ったカーオーディオモードに加え、4種類のミニプレーヤーを追加するなど、見ためも強化している。

コンポモード(ブルーデザイン) カーオーディオモード

ミニプレーヤー(クロノグラフ、コスモ)

 このソフトは、ほかのMP3ソフトと同様、CDをCD-ROMドライブにセットすればCDDB2にアクセスして、曲名やアーティスト名などをインターネット経由で取得することもできるし、それをMP3にエンコードすることもできる。

 またCD-Rドライブがあれば、手元にあるMP3ファイルを音楽CDとして焼くこともできる。必要があればそのCDのジャケットを印刷することも可能だ。

CD作成ダイアログ CDアルバムのジャケット印刷も可能

 こういった点については、ほかのMP3ソフトも機能的にはそう大きく違いはないが、今回新たに登場したMP3 Audio Magic XPサラウンドの最大の特徴は、中音域、高音域補間技術「Supreme2」と、前バージョンから搭載されたバーチャル3Dサラウンド機能「QMax for Audio Magic」の2点だ。

 Supreme2は、この後、じっくり見ていくので、まずは「QMax for Audio Magic」について、簡単に紹介しておこう。QMaxというのははQSound Labosのバーチャル3Dサラウンド・エンハンサーで、国内でもイージーシステムズジャパンがシェアウェアとして単体を1,900円で販売している。そのQMaxをAudio Magic用にカスタマイズしたものが、QMax for Audio Magicだ。

QMax単体版(左)とQMax for Audio Magic(右)

 この画面を見てもわかるように、QMaxには3Dサラウンド効果を調整する「QXpander」、残響音効果を調整する「QVerb」、低音強調効果を調整する「QBass」、高音強調効果を調整する「QSizzle」とい4つのパラメータがある。またスピーカーモードとヘッドフォンモードが用意されており、ヘッドフォンでも、非常に広がりあるサウンドをつくり出すことができる。

 実際、これをONにして試してみると、広がりのあるサウンドになり、ヘッドフォンでも立体感を味わうことができた。ただし、最強の状態にしても、極端に音は変わらないため、なんとなく広がりのある音にしたいという程度で利用するもののようだ。残響音効果(=リバーブ)も一般のエフェクトの効果に比較すると非常に緩やかなものになっている。

 このQMax for Audio Magicは、次に説明するSupreme2と組み合わせることで、「相乗効果により、臨場感あふれる3Dサラウンド・サウンドを体験できる」とパンフレットにあったが、確かにいろいろなMP3のサウンドを聞いても、心地よく聞こえる。プリセットの設定で「MP3を最適化」というものがあるので、これを選択すると簡単にMP3のサウンドを変えることができる。


■ 再生音は格段に向上

 さて、ここからが本題。Supreme2でどこまでMP3の音質を、原音に近づけられるのかという実験だ。

 Supreme技術はもともとケンウッドが開発したものだが、現在子会社の株式会社ケンウッド・ジオビットに移管されており、他社に対しても積極展開を図っているところ。その第一弾がこのMP3 Audio Magic XPサラウンドというわけだ。

Supreme2の設定項目は、ON/OFFしかない

 パンフレットなどによると、Supreme2は前の技術であるSupreme/D.R.I.V.E.に対してより原音に近づけたとある。Supreme/D.R.I.V.E.が16kHz以上の高音域だけを補間していたのに対し、Supreme2では中音域も補間することによって、より自然な音にしているという。

 このMP3 Audio Magic XPサラウンドでは、単にSupreme2をオンにするかオフにするかの設定しかない。しかし、内部的には人間の耳の感覚に合わせて設定した「聴覚パラメータ」により、補間のバランスが向上したとしている。

 以前のSupreme/D.R.I.V.E.については、このDigital Audio Laboratoryでも第13回でチェックしている。改めてこのときの実験を振り返ると、このような手順を踏んでいた。

 まず手元にあった2つのMP3ファイルを用意して、Supreme/D.R.I.V.E.をオンの場合とオフの場合の2つで再生し、その結果を周波数分析した。その2つのファイルというのは、ジャストシステムのMP3 BeatJam XX-TREMEでエンコードした128kbpsのデータと96kHzのデータ。使ったのはTINGARAの夜間飛行という曲の一部である。

【オリジナルデータ】 【128kbps】 【96kbps】

(C)TINGARA
「夜間飛行」(作詞:名嘉睦稔 作曲:名嘉睦稔、TINGARA)
□TINGARAのホームページ
http://www.tingara.com/

 それぞれオリジナルのCDと比較すると、明らかに高音がカットされている。96kbpsのデータでは12kHz以上が、128kbpsのデータでは16kHz以上がスバッと欠けていることがわかるだろう。ちなみに、赤の線は45秒間演奏した際の最高のレベル、青の線は曲の最後の部分300ポイントの平均値をあらわしている。

 それに対し、これらのデータにSupreme/D.R.I.V.E.をオンにして再生した時の周波数分析結果を見ると、確かに高音域が出ていることがわかる。ただし、96kbpsのデータを見てもわかるように、完全に高音域を補間しているわけではなく、12〜14kHzあたりはまったく効果がないし、16kHz以上もダメだ。

【Supreme/D.R.I.V.E.による補間後】
【128kbps】 【96kbps】

 128kbpsの場合は比較的良好だが、やはり原音とは異なる波形であることがわかるだろう。実際聞いてみると、確かに音のニュアンスは変わっているし、聞いた感じはよくなっているのだが、だからといって原音に近いというわけではない。あくまでも、音の雰囲気をよくするエフェクトとして考えるべきものであった。

 それがSupreme2ではどうなるのだろうか?

 同じデータをSupreme2をオンの状態で再生させた結果が、以下のグラフになる。見た感じでは、128kbpsのものなどは、かなり原音に近い波形になっている。また96kbpsも12kHz〜14kHzでは、かなりレベルが落ちておりおかしい結果になっているものの、それ以上の音域は比較的オリジナルに近い。いずれにしてもSupreme/D.R.I.V.E.に比較すると格段によくなっていることがわかる。

【Supreme2による補間後】
【128kbps】 【96kbps】

 波形だけがよく見えても、実際に聞いた音がおかしければ意味はないが、これもかなりよくなっている。128kbpsのデータにおいては原音ソックリとまではいえないものの、かなり近いニュアンスが出ている。また96kbpsのデータもSupreme2がオフの場合に比較して、非常にいい音になった。

 現在、一般に使われているMP3ファイルのほとんどが128kbpsなので、128kbps用に最適化されていると考えれば、これで十分なのかもしれない。今後、このSupreme2がTDK以外のプレーヤーにも採用されるのかはわからないが、お勧めできる技術である。

 今度もし機会があれば、Supreme技術の開発に携わった方に、その手法などを伺ってみたいところである。

□TDKのホームページ
http://www.tdk.co.jp/
□ケンウッドのホームページ
http://www.kenwood.com/jhome.html
□Supremeのホームページ
http://www.supreme-sound.com/
□製品情報
http://www.tdk.co.jp/tjbbi01/bbi20100.htm
□関連記事
【11月12日】TDK、圧縮音楽データ補間技術を強化したMP3統合ソフト
―中音域も補間する「Supreme 2」を搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011112/tdk.htm
【11月5日】ケンウッド、圧縮音楽の補完技術「Supreme」を子会社に移管
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011105/kenwood3.htm

(2001年12月3日)

[Text by 藤本健]


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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