2002 International CES会場レポート
~ カーオディオ編:今年のトレンドはHDD!! ソニー/富士通テン/松下 ~


会期:1月8日~1月11日(現地時間)

会場:Las Vegas Convention Center
   Las Vegas Hilton Hotel
   Alexis Park Hotel


 


■ ソニー:「Xplod」ブランドでHDD搭載機

 去年、春にパイオニアがHDDベースのカーナビゲーションを発売したのを皮切りに、車載AV機器にHDDを利用する流れが一気に押し寄せてきている。

「MEX-1HD」。パネルをあけるとトレイとメモリースティックスロットが姿をあらわす。発売は4月から5月の間を予定。価格は1,500ドルになる見込み

 ソニーは、今回のCESでカーオーディオブランド「Xplod」のブースを独立した形で展開。最新カーオーディオのプレビューを行なっていた。今年のカーオーディオ新製品群の主役は、やはりHDD搭載タイプの「MEX-1HD」ということになるだろう。

 搭載HDDの容量は10GB。音楽はATRAC3で記録され、約160時間以上分の音楽をストックできるという。また、CD Text、ID3タグに対応しており、楽曲情報を自動認識する仕組みを持つ。さらに、メモリースティックスロットを実装しており、MagicGate対応メモリースティックに、HDD内のATRAC3音楽ファイルをチェックアウトすることも可能。ただし、逆に他の機器で作成したATRAC3音楽ファイルをチェックイン(インポート)することはできない。

 ATRACフォーマットを推進するソニーの製品ではあるが、MP3の再生にも対応している。しかし、それはCD-R、RWメディアに記録したもののみ。記録されているMP3ファイルをHDDへインポートすることもできない。これらはすべて著作権保護の見地からあえてこのような仕様になっている。ちなみに、ATRAC3への変換は8倍速モードを利用すると約10分で完了できるという。

パノラマTFT液晶画面を実装したカーオーディオの新製品も発表された。MP3の再生に対応。メモリースティック経由で好きな映像を表示でき、GIFアニメにも対応している。発売時期は4月から5月にかけて。価格は1,000ドル程度を予定


■ ECLIPSE 富士通テン:HDDカーオーディオのコンセプトを展示

右が本体だが、ダミーに近い。左の液晶画面はWindowsが動いており、実際の再生はここで制御されていた。しかし、別にWindowsベースのカーオーディオと言うことではないらしい

  まだ開発途中段階のコンセプト展示にとどまっていたが、ECLIPSE(富士通テン)もHDDカーオーディオの発売を予定している。

 現在は、80GBの3.5インチHDDを搭載、3,000以上の音楽ファイルが記録可能、USB接続で楽曲の追加もできる……、といった仕様で開発を進めているとのこと。発売時期は7月を予定。価格は1,600ドル前後になる見込み。


■ 米SSI:低価格HDDカーオーディオ

発売時期は5月前後。USB接続端子を実装。
 見ての通りCDドライブがないので曲の転送にはPCを利用することになる

 日本メーカー以外のカーオーディオメーカーも、積極的にHDDを記録メディアとして採用する傾向にある。右の写真は米SSIの「NEO CAR JUKEBOX」の新バージョン。

 同社はアメリカでは最も早くHDDカーオーディオを発売したメーカーであり、展示されていたのはその次世代機。これまでのモデルは2.5インチ、30GBのHDDを採用していたが、新モデルでは3.5インチドライブを採用し、容量も40GBに増加する。

 容量が増えながらも、3.5インチHDDの安さにも助けられ価格は前モデルよりも100ドル低い599ドルとなっている。


■ KENWOOD:リムーバルHDD採用のカーオーディオシステム

MUSIC KEGの基本システム

 KENWOODが、750ドルで2月に発売を予定しているのが右の写真の「MUSIC KEG」だ。「KEG」とは英語で「樽」のこと。音楽を溜めておける「樽」ということで、「MUSIC KEG」というわけだ。

 このMUSIC KEGも、いわゆるHDDベースのカーオーディオで、容量10GBのHDDに約2,500曲のデータがストックできる。このMUSIC KEGがユニークなのは、HDDが最初からリムーバル仕様となっている点だ。

 HDDは専用カートリッジに納められており、これをファミコンカセットのように本体に差し込むことで、システムがそのデータを再生できるようになる。HDDはノートPC向け2.5インチタイプのものを採用。

 しかし、当然のことながら、ユーザーがカートリッジを分解して、別のHDDに差し替えて使うことは動作保証対象外になる。そのかわり20GB、30GBといった大容量HDDカセットを純正オプションとして提供していく予定があるという。

 本体で再生可能な音楽ファイルは、MP3/WMA/リニアPCM(WAV)だが、車載CDプレーヤーからこのMUSIC GEKに録音(エンコード)していくことはできない。楽曲のエンコーディングは、基本的に手持ちのパソコンを使って行なうことになり、エンコードしたファイルを、標準付属のUSB接続のクレードルを使って、MUSIC GEKへ転送する。

 パソコンがないと使えないのは面倒ではあるが、逆にパソコンを持っている音楽ファンには、訴求力の強い製品ではないかと思う。

USB接続のクレイドルに、HDDを差し込んだところ HDDの大きさはこんな感じ。手のひらには収まらない 写真上の方にWindowsの画面がみえる。HDDをクレードルに差し込むと、パソコン側からローカルドライブとして使えるため、あとは適当に曲データドラッグ&ドロップすればいい


■ 松下:HDDカーオーディオの試作機を展示

パネル前面に書かれている印刷から、HDD容量が10GBであることを伺い知ることができる

 まだプロトタイプだがパナソニックも、HDDベースのカーオーディオを展示していた。スペックのの詳細は、今回はいっさい公開されなかった。

 パナソニックはカーナビのメーカーとしても有名だが、現時点でこの製品は、ナビゲーションシステムとして開発しているわけではないようだ。


■ クラリオン:新しいカーナビの形「オフボードシステム」とは?

OSはWindows CE 3.5。CPUは、日立SH4を採用している

 右の写真は、現在クラリオンが今年秋の発売をめどに開発を続けているAutoPC(車載コンピュータ)ベースのカーオーディオ。コンセプト名「AutoPC CADIAS」(仮称)。

 DVDドライブを搭載、DVDビデオの再生にも対応するが、いわゆる一般的なDVDカーナビゲーションとは違う形でルートガイドを行なうという。AutoPC CADIASは地図データを自前でもっていない。

 そう、これはいわゆる最近の「新しいカーナビの形」である「オフボードシステム」の一例ということになるらしい。

 これまでのカーナビではすべての情報を車載していたが、オフボードシステムでは、必要な情報をその都度ネットワークから取ってくるというスタイルになる。たとえばある場所へのルートガイドを行なう場合、臨機応変に周辺情報をネットワークから情報を入手していくわけだ。この方式の利点は、常に最新の情報にアクセスできることにある。

 これまでのカーナビでは、地図データやその関連情報が一定期間ごとにしかりリースされず、しかもユーザーが自発的に更新しなければ常に古い情報にさらされることになっていた。オフボードシステムはそうした弱点を克服できる、というわけだ。

 現在クラリオンでは、このシステムをインクリメントPと共同で開発を続けているという。また、AutoPC CADIASは、コンピュータとしての特徴を全面に打ち出していきたいと言うことで、PDA的な機能面においても充実をはかっていく。メールやインターネットアクセスなどがタッチパネルベースのインターフェイスで行えるようになる。

 最近、流行のHDD搭載についてきいてみたところ、「現時点ではそうした大容量ストレージを本体に組み込む予定はない」という。ただし、「車載コンピュータなので、USB接続などを利用して外部ストレージを利用できるようにはなるだろう」ともいっていた。


■ ビクター(JVC):有名アーティスト監修のカーオーディオ

余談だがニッキーとドナの間にはちょうど1年ほど前に女児が誕生している ドナ・デリコ監修の女性向きCDレシーバ「KD-S700」

 JVC(ビクター)は「Signatureシリーズ」という有名人監修のカーオーディオの新製品を発表した。今回発表されたのは、モトリー・クルーのニッキー・シックス監修の車載2チャンネルパワーアンプ「KS-AX6750」。出力は定格150W×2、最大330W×2。

 また、ニッキー・シックスの妻でアメリカの人気テレビドラマ「ベイウォッチ」にも出演したセクシー派女優ドナ・デリコ監修の女性向きCDレシーバ「KD-S700」シリーズも、あわせて発表された。業界初の有名人夫婦監修の製品として、注目を集めそうだ。

 製品発表会の壇上で、JVCのブースマネージャのトム・カロニア氏は「若者はカーオーディオに対してのブランド意識というものはそれほど強くない。コンセプトがよければちゃんと売れる。その製品開発のために、若者のカリスマ的存在な人物を監修してもらったのがJVC Signatureシリーズだ」と述べた。

 今回発表された製品以外に、カリスマ・スノーボーダー、ショウン・パルマー氏や、メガデスのデーヴ・マステインを監修に起用したCDレシーバ「KD-LX333」、「KD-SH909」などがラインナップされている。

モトリー・クルーのニッキー・シックス ニッキー監修の車載2チャンネルパワーアンプ「KS-AX6750」

□関連記事
【2001年10月25日】東京モーターショー2001レポート その1
―ソニーはトヨタとコンセプトカーを共同開発
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011025/mshow1.htm

□2002 International CESのホームページ
http://www.cesweb.org/

(2002年1月12日)

[Reported by トライゼット西川善司]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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