【バックナンバーインデックス】

Net MD対応・6GB HDD搭載のデスクトップオーディオシステム
ソニー「DAN-Z1」
発売時期/2月 価格/オープンプライス(店頭予想価格:73,000円前後)

■ 主な機能

 ソニーの「DAN-Z1」は、6GBのHDD、CDプレーヤー、MGメモリースティックスロット、2.5W×2chのアンプなどを内蔵した本体部と、小型のスピーカー2本を組み合わせたデスクトップオーディオシステム。愛称は「Sound Gate」。機能的には2001年11月にパイオニアが発売した「X-HD1」とほぼ同じだが、DAN-Z1のみNet MDに正式対応するのが特徴だ。本体前面に「Walkman端子」と呼ぶ一種のUSB端子を備えており、ここでNet MD機器、またはネットワークウォークマンなどのソニー製メモリオーディオプレーヤーを接続できる。

 また、MGメモリースティックへの転送や、MGメモリースティック内の曲データの再生もできる。その場合の再生ビットレートは、ステレオが176/146/132/105/94/66kbps、モノラルが47/33kbpsとなっている。そのほか、本体に備わっているインターフェイスとしては、AUX IN(アナログ、光デジタル共用)、LINE OUT、スピーカー端子、サブウーファ端子がある。

本体部
本体部の外形寸法は、約130×130×110mm(幅×奥行き×高さ)。幅と奥行きはCDジャケットより少し大きい程度とコンパクト。ゴム足は4点支持だ
CDトレイ部。CDを斜めに装着しなければならいないのが気になる 本体前面のMGメモリースティックスロットとWalkman端子。Walkman端子のフタの裏にはUSB 1.1のコネクタがある 背面のインターフェイス部。左からAUX IN、LINE OUT、スピーカー端子、サブウーファ出力、DC IN

スピーカー
スピーカーは同社のPCスピーカーと同じ形状。エンクロージャは一部金属製で、フルレンジコーンは口径90mm。本体とは専用ミニジャックで接続する。外形寸法は約80×80×175mm(幅×奥行き×高さ)

 本体、スピーカーともサイズは小型。そのため、机の上に設置してもそれほど場所をとらない。また、本体上面に並べられたボタン類は、上方からアクセスしやすい。デスクトップでのニアフィールド視聴を主な目的としていることがうかがえる。

 記録・再生フォーマットはATRAC3のみ。ビットレートは132kbpsと105kbpsの2種類が選択でき、105kbps時には最大でCD約100枚分をHDD内に記録できるという。また、コピー時には、最大8倍速(平均5倍速)でコピーできる「高速録音モード」と標準速の「通常モード」が選択できる。録音操作は、CDを入れて「HIGH SPEED REC」ボタンを押し、再生ボタンを押すだけ。

 HDD内には、約8万件のアルバムデータがあらかじめ収録されており、該当CDをセットすると自動的にアルバム名、アーティスト名、タイトル名を取得できる。ただし、収録されているのは2001年秋頃までの国内盤に限られている。そのため、新譜や輸入盤の場合は、ユーザーによる手入力が必要。また、洋楽のアルバム名、アーティスト名、タイトル名は、アルファベットではなく、すべてカタカナで表示される。

 なお、手入力は本体からのほか、リモコンでも可能。リモコンでの入力方法には、携帯電話と同じ方式を採用している。新譜の録音が中心の場合はこの手入力に頼ることになるが、慣れている人ならそれほど苦痛を感じることはないだろう。英数字、ひらがな、カタカナのほか、漢字の入力も行なえる。なお日本語変換には、オムロンソフトウェアのモバイルWnnが使用されている。

 HDD内はフォルダで区分けされ、特に指定しなかった場合は「Tempフォルダ」に記録される。出荷状態では10個のフォルダが用意されており、フォルダ名を変更することも可能。アーティストやジャンルでフォルダ分けするのが一般的な使い方だろう。フォルダは99個まで作成でき、1つのフォルダに録音できるのは最大200曲。HDD全体では1,000曲の録音が可能。

 さらに、通常のフォルダとTempフォルダのほかに「MY SELECT」という名のフォルダも用意されている。これはいわゆる「プレイリスト」にあたり、好きな曲を集めておける。このほか、編集機能としてMDレコーダでおなじみのDIVIDE、COMBINEもある。AUX INから録音したソースに威力を発揮するだろう。

フォルダ内のあるアルバムを開いたところ。下に表示された「SLOT」は、HDD全体のシャッフルモードを意味する CDからHDDへの録音設定。録音先のフォルダや記録ビットレートの指定が行なわれる。この後、再生ボタンを押すと録音が開始される再生画面は多彩。再生曲の残り時間表示といった基本的なものから、グラフィックイコライザまで表示できる

 再生機能はかなり充実している。リピートやシャッフルといった機能はもちろん搭載し、シャッフルの範囲はアルバム、フォルダ、HDD全体から選択可能。なかでもHDD全体をシャッフルする場合は「スロットマシン再生」という特別なモードとなる。これは再生前に、フォルダやアルバムの名前がスロットマシンのようにディスプレイに表示され、自動的に選ばれるというモードだ。

 また、HDD内の曲をソートして表示させることできる。アルバムタイトル順やアーティスト名順のほかに、再生回数順の「Top 100」、最近聴いた順の「再生タイムスタンプ順」、聴いた回数の少ない順「Bottom 100」が用意されている。

■ 音質と操作性

リモコンでの手入力は携帯電話方式を採用。ちょうど親指がくる位置に文字キーが配置されている
 この手の製品で気になるのはHDDの動作音だろう。ファンクションをHDDに切り替えると、かすかだが回転音が聞こえる。ロックやポップスを聴くには問題のない音量だが、周波数の高い音質のため、小音量のパートだと多少耳につくかもしれない。なおHDDは2.5インチのものを使用している。

 HDDの再生音質は、ナローレンジで解像感が薄く、何となくもっさりとした印象を受ける。これは本体部のDA変換やATRAC3に起因するものというよりは、付属のスピーカーが原因だろう。ヘッドフォン(MDR-CD900STとHD-600)を直接本体に挿して聴くと、それなりに解像度の高い音が聴けた。本体内蔵の音質補正は、低音増強のMEGABASSのみと少しさびしい。また、MEGABASSをONにすると中高域の輪郭がかなりぼけてしまう。代わりにサブウーファをつなぐことで、しっかりした低音を確保できた。

 付属スピーカーの品質はいまひとつで、ボリュームを上げると、とたんに歪みだす。部屋一杯に音を満たすという使い方にはとても向いていない。また、スピーカーを取り替えようにも、本体に装備されているスピーカー端子は丸型のピンジャック。一般的なスピーカー端子ではないため、別のスピーカーをつなぐには工夫が必要になる。

 なおCDプレーヤーでの再生は、作動音が非常に大きいため実用的とはいえない。印象としては、一昔前のPCの外付けCD-ROMドライブと同じ程度の騒音だ。とはいえ、HDDでの再生がほとんどだと思われるので、実用上の問題はないだろう。ただし再生音自体は、ATRAC3よりも高域が良く伸び、さすがに解像感も高くなる。ちなみに、HDD再生時にはトップカバーを開けたままでも再生できる。

 ディスプレイは大型で6行の表示が可能。5°ほど前傾して設置してあり、デスクトップでの視認性も高い。使用フォントは恵梨沙フォントだ。PC画面にはかなわないものの、他の単品オーディオやミニコンポに比べれば、情報量はかなり多い。ただし、日本後表示が可能なディスプレイを使用していながら、メニューのいくつかは英語表記なのが気になった。オーディオ機器的なメニューともいえる。

 メニュー構成も、PC的というよりはミニコンポに近い。HDD、CD、メモリースティックなど各ファンクション毎に設定メニューが用意され、録音などの操作もファンクション移動後に行なう必要がある。

 本体には、ほぼすべての操作ボタンが取り付けられている。リモコンの必要性を感じることはなかった。ただし、良く使うENTERやMENU/CANCELをもう少し大きなボタンにして欲しい。また、操作パネルが光沢のある樹脂製のため、指紋が残りやすいのも気になった。また、リモコンのボタンが小さく、文字入力時にカーソルボタンとERASEボタンを同時押しすることが良くあった。とはいえボタンそのものの反応は良く、2度押しすることはなかった。

 編集などで待たされることはあまりない。ただし、画面やファンクションが切り替わるときなどに「BUSY」と表示され、5秒くらい操作不能になることが何度があった。


■ Net MD機器との接続性

ソニーのNet MD対応ポータブルMDレコーダ「MZ-N1」。DAN-Z1やPCとは専用クレードル経由で接続する。MZ-N1の実売価格は4万円前後
 現在、DAN-Z1との接続に対応しているNet MD機器は、ポータブルMD録再機の「MZ-N1」、デスクトップMDシステムの「LAM-Z1」、LAM-Z1からスピーカーを省いた「LAM-1」の3機種。その中からMZ-N1を選び、DAN-Z1からのチェックアウトを試してみた。

 Net MD機器へのチェックアウト/チェックインは、WMファンクション内で行なう。接続するとすぐにMZ-N1を認証し、MD内にチェックアウトした曲があればディスプレイに曲名を表示する。チェックアウトするためにはMENU/CANCEL→編集→曲の指定と、多少煩雑な操作が必要になる。

 試しに4分12秒の曲(132kbps)をチェックアウトしたところ、約28秒で完了した(MDへの曲の書き込み、TOCの書き込みを含む)。ちなみに、1月7日に掲載したシャープの「IM-MT880」の場合、4分17秒の曲(132kbps)をPCから転送するのに、1分5秒かかった。

【訂正とお詫び】掲載当初、4分12秒のチェックアウト時間を「約2分28秒」としていましたが、「約28秒」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。

 MZ-N1へは最大で254曲までを同時にチェックアウト可能。ただし、グループの指定は行なえない。転送した曲をグループにしたい場合は、転送後にMZ-N1側で指定する必要がある。なお、DAN-Z1に録音した曲は132kbpsもしくは105kbpsだが、どちらをMDに転送してもLP2になる。また、同じMDに同じ曲をチェックアウトすることも可能で、その場合、チェックアウト回数に応じてチェックアウト回数制限も1つづつ減っていく。

HDD内の曲のチェックアウト状況を表示したところ。チェックアウトは3回まで行なえ、チェックインするとカウントが戻っていく
 転送自体は十分高速で、音質が劣化しているようにも感じられない。USBにしては少し時間はかかるが、ほとんどPCからMP3プレーヤーへの転送と同じ間隔で扱える。MD側でも曲名が自動的につくのも便利だ。

 なお、DAN-Z1とMZ-N1を常に接続しておき、再生中に気に入った曲をボタン1つで転送するといった使い方はできない。その代わりNet MD機器からのチェックインと、最後聴いたHDDのアルバムを同時にチェックアウトする「エクスチェンジ」という機能が用意されている。新譜を中心に聴くには便利な機能だ。

 Net MD規格そのものはOpenMGを踏襲しており、既にネットワークウォークマンなどを使用している人には機能もわかりやすいだろう。

■ ポータブル機器との親和性は高い

 PCを核にBGM再生を楽しんでいた人が、PCを起動することなく音楽を楽しみたい。これがHDDオーディオシステムのニーズだが、それに加え、Net MDなど他の機器との接続性を強めているが本機の特徴。特にポータブル機のユーザーにとっては、オーディオシステムの中心的な存在として使用できるだろう。

 また、タイトルデータが既にHDDに記録されているのも、非常に便利だった。また、メニュー内には「Soft Version Up」という項目が用意されている。説明書には、CD-ROMやメモリースティック経由で内部ソフトウェアをバージョンアップするためのものとあり、アップデータはユーザー登録者を対象に配布されるという。パイオニアのカーオーディオのように、タイトルデータの追加が行なわれることに期待する。

 購入比較対象となるのは、パイオニアの「X-HD1」とオンキヨーの「MB-S1」だが、前者はスピーカーがDAN-Z1より凝っており、拡散板の効果でよりBGM再生に適してるという。しかし、Net MDには正式対応しておらず、価格も2万円ほど上になる。また、後者はフルサイズの据え置き型で、20GBのHDDを搭載、リニアPCMでの記録が可能で音質も良いが、価格はDAN-Z1より1万円ほど上だ。ポータブル機器の母艦として使用するなら、Net MD対応のMDプレーヤーやネットワークウォークマン、MGメモリースティックなどに対応した本機が一番適した選択になるだろう。

【主な仕様】

本体部

スピーカー部


□ソニーマーケティングのホームページ(Sony Drive)
http://www.sony.co.jp/sd/
□DAN-Z1の製品情報
http://www.sony.co.jp/sd/products/soundgate/DAN_Z1/
□関連記事
【1月22日】ソニー、Net MD対応の卓上HDDオーディオシステム
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020122/sony.htm
【2001年10月23日】パイオニア、メモリースティック/HDD内蔵オーディオシステム
―HDD 6GB、ATARC3で最大110時間録音
パイオニア、メモリースティック/HDD内蔵オーディオシステム
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011023/pioneer.htm
【2001年9月21日】ソニー、「Net MD」対応MD機器5製品を発表
-USB経由で最大30倍速転送が可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010912/sony.htm

(2002年1月31日)

[orimoto@impress.co.jp]


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