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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第46回:全然OKじゃん! 54,800円のHDDビデオレコーダ
~大宇電子の「DHD4000K」を試す~


■ 気になる一品

 去年の暮れからNECの「SmartVision Pro HD40」を妻専用録画機として使っているのだが、どうも今ひとつ調子がよろしくない。というのも、削除しても削除してもゾンビのように生き返って(あ、あれは元々死んでるのか?)くる謎のファイルが発生したり、再起動したら綺麗さっぱりHDDの中身がフォーマットされていたりということが2、3回あったため、本格的にヤになって来ちゃったのである。もちろん、一度分解しているので、NECの責任ではないと思うのだが……。

 そしてそのタイミングで追い打ちをかけるように、事実上製造中止のアナウンスが。ダメか? HD40ダメなのか? それでは何か違うものを妻の人にあてがわなければならない。

 そんな折りも折り、編集部で面白いブツを発見したとの連絡が。大手家電販売チェーン「コジマ」の通販サイト「コジマネット」で、韓国は大宇電子製DHD-4000Kなるハードディスクビデオレコーダーが54,800円にて販売中であるとのこと。

 現在国産メーカーの単体HDDレコーダといえば、SONYの「Clip-on」、Panasonicの「DIGITANK」などが思い当たる。しかしこれらのHDD録画製品は、全体的に記録型DVDドライブと合体する方向へと進んできており、まーそこまではなーというユーザーにとっては、価格的にもちょっと割が合わなくなってきているのである。

 40GB HDD搭載ゴーヨンパー。安いですなこれは。紙のカタログによると「TOTT@MI」(録った見)というニックネームらしい。わかりにくいですな。そんな大宇電子製「DHD-4000K」54,800円也は、果たしてどのぐらい使えるのか。早速検証してみよう。


■ やっぱり編集部の餌食

■■ 注意 ■■

・分解/改造を行なった場合、メーカーの保証は受けられなくなります。
・この記事を読んで行なった行為(分解など)によって、生じた損害はAV Watch編集部および、メーカー、購入したショップもその責を負いません。
・内部構造などに関する記述は編集部が使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません
・AV Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。

 いやだから検証してみようって言ったじゃないのどーしてそうバラしちゃうかな。こういう面白そうなものを編集部に5分も放置しておくと、どこからともなくドライバーを手に手にワラワラ人が集まってあれよあれよと分解されちゃうってのはどーよ。甘いものにたかるアリさんかキミタチは。

 まー開けちゃったもんはしょーがないんで中身を見てみよう。蓋を開けると、ごらんのとおり中身はスカスカ。本体はいわゆるVHSデッキと同等のサイズだが、固めて実装したら1/4ぐらいになりそうである。まあ他のデッキと合わせて積むことを考えてこのサイズなのだろう。

蓋を外したところ。中身はほとんど空間である HDDはSeagateの「ST340810ACE」を搭載

 HDDはSeagateの「ST340810ACE」で、UltraATA/100 5400rpm 40GB流体軸受けモデル。これはアキバでも1万円ちょいで市販されており、実は筆者が個人的にMTV-1000の録画に使っているのもコレである。それほど速いモデルではないが、MPEG-2録画では十分だ。

 編集部がHDDの載せ換えをトライしてみたようだが、HDD内に何らかのプログラムが入っており、単に生ディスクを繋いだだけではダメだった模様。まあそれならそれでいろいろやり方はあろうかと思われるが、ここでは触れないでおく。

 MPEG-2 エンコーダ/デコーダはStreamMachineの「SM2210」、これを採用したPC用のキャプチャカードにはバーテックス リンクの「PixelView Video Maker」がある。

MPEG-2チップはStreamMachineの「SM2210」 チューナユニットにはメーカー名がなく、詳細は不明

 全体的な外観を改めて見てみると、意外に悪くない。フロントパネルには時間表示や残量表示などは一切なく非常にシンプルだが、光沢のあるパール地で安っぽい感じもなく、普通の国産家電と比較しても遜色ない感じである。もっともビデオデッキと年中にらめっこするわけではないので、好き嫌いの好みがあっても外観はあまり問題にならないだろう。

正面には電源とリセットボタン。LEDは電源とスタンバイ表示のみ 中央部にあるLEDと赤外線受光部。一番右の穴は、ただの穴である

 次に入出力を見てみよう。アンテナの入力とスルー、ビデオ入力2系統(S映像1系統)と出力1系統(S映像1系統)、以上である。ヒジョーにシンプル。これはまさに今まで地上波録画に使っていたVHSデッキのリプレース的位置づけと考えていいだろう。

 本体にはボタン類がほとんどないので、操作はリモコンで行なうことになる。操作は十字キーと決定ボタンを中心として、その他の補助キーで成り立っている。メーカー設定すれば、他社のテレビもコントロールできる。これもシンプルで使いやすい感じだ。

入出力は、必要最低限のものだけ 十字キー操作が使いやすいリモコン


■ 機能的に十分いける

 では電源を入れて、ソフトウェア面を見てみよう。最初にウィザードで設定を行なうようになっているが、各メニューともしっかりした日本語表示で、海外製品だからといった不安は全くない。自動チャンネルチューニングや時刻合わせ(これは手動)を行なったのち、すぐに使用できる。

 番組予約は、GコードやEPGといった援助機能には対応しておらず、すべて手動で設定を行なうところは若干煩わしく感じる。しかし常に残量が表示されたり、重複予約は確定しないなど基本部分は、手を抜かずしっかり作られている。ただ予約件数が最大で8というのは、HDD容量の割にちょっと少ない。確かにそのあたりもVHS相当ではあるのだが、ここはもう一歩踏み込んで欲しかった。

初期設定も実にそつがない 予約の入力は完全手動で、若干煩わしい

 録画モードは、HQ、SP、LPの3種類。ほとんど何も録画していない状況で、残量はそれぞれ12.5時間, 22時間, 35時間と表示される。マニュアルにもビットレートに関するの記述がない(VBRである、とは書いてある)のだが、録画残量から計算するとだいたいHQで7Mbps, SPで4Mbps, LPで2.5Mbpsという感じではないだろうか。いつもの映像をそれぞれの録画モードで録画したが、いかんせんデジタル的に取り出す手段がないので、今回は静止画のキャプチャで我慢して欲しい。

 TVチューナの画質評価も同時にするためRF入力からの録画を行なった。

 素材にはカノープス株式会社の、プロ向け高画質動画素材集「CREATIVECAST Professional」をDVテープに書き出して使用。なお、サンプル版なので、画面右端にロゴが焼きこまれている。

 そのDVテープをDVデッキ「ソニー WV-DR5」で再生し、内蔵のRFコンバータで2chのTV信号として出力。それをHDH-4000Kで録画した。

 下の画像は、左の赤枠内を実寸で表示したもの。クリックするとキャプチャした静止画(640×480)を表示する。

(c)CREATIVECAST Professional

【HQモード】 【SPモード】 【LPモード】

 画質だが、HQはさすがに十分な画質で、圧縮ノイズはほとんど出ない。SPでは、実写映像で輪郭部分に圧縮ノイズを感じる。同時に動きの速い部分に対しても、ブロックノイズが出る。その反面、動きのおとなしいアニメなどには十分な画質だ。もっとも同じアニメでもアクションシーンの多いものやコマ数の細かいものに関しては、若干圧縮ノイズを感じるシーンもでてくる。LPモードは、一昔前のVHS3倍モードといった印象。画質が重要でないものには使えると思う。しかし40GBの容量があるので、1週間分の録画を週末にでも確実に消化していけば、LPモードはほとんど使う必要はないのではないかと思う。

 その他の録画機能としては、電源を入れた時点から特に録画しなくても、常時スリップ再生が可能になる。これはSmartVisionなどにも搭載されている機能だが、単体のハードで実現しているため、起動待ちといったこともなく非常に使いやすい。ただし初期設定でHQモードを指定すると、スリップ再生はできない。

 またクイック録画は、ボタンを押すとすぐに現在から30分間の録画ができるというもの。これはVAIOのGigaPocketにも搭載されている機能だ。ボタンを押すごとに録画終了時間が30分延長される。テレビを見ている間に眠くなっちゃったときなどに便利だろう。

録画した番組にはサムネイルが登録できる

 録画されたプログラムに関しては、自分でサムネイルを設定することができる。録画日時だけでは内容が瞬時にわからないが、サムネイルを付けることでわかるようにしようということだろう。自動でサムネイルを付けてくれる製品もあるが、そのポイントがCMだったりして、結局再生してみないとわからないということも少なくない。それならば最初から自分で好きなポイントを選ぶというのは悪くない。

 再生時の機能としては、独自の「チョット見バック」機能が便利だ。これは再生中にこのボタンを押すことで、10秒だけバックして再生してくれる。テレビを見ているときに家族に話しかけられて、「あっ、今セリフなんて言ったの?」ということがあるだろう。そのようなときに使うというわけ。

 その他にもCMジャンプ機能や5分ジャンプ、スロー再生機能もあり、再生機能は国産メーカー品に負けていない。


■ 総論

 DHD-4000Kは、韓国製品でさらに国内ではコジマでしか買えないとあって非常に情報が少なく、買うのを躊躇している人も多いのではないだろうか。国産品に比べて低価格故にその品質が気になるところだろうが、実際に使ってみても国内製品と遜色なく、また画質もビットレートなりの品質がちゃんと得られている。気になるマニュアルも、少々日本語的に危うい箇所もあるが、記述が丁寧なので理解に困ることはないだろう。

 一番使うモードであろうSPが、もうちょっとビットレート高くても良かったかとも思うが、普段VHSで録画しているのであれば、このぐらいの劣化は許容範囲ではないだろうか。アナログテープ録画はすべてのシーンでまんべんなく劣化しているが、SPモードではシーンによって劣化したり感じなかったりといったバラツキがあるから、最初のうちは気になるかもしれない。しかし今後はユーザー側も、MPEG-2特有の画質に慣れていくことだろう。

 HDDオンリーのレコーダを使い方を考えてみると、本体内に別メディアに保存する機能がないので、録画したものを保存したいというCSやBS視聴者向けとは言わない。やはり大量に放送され、消費される「地上波放送の予約録画&視聴」というのがメインであろう。

 地上波デジタル放送は、計画では2003年から。各局のフォーマットがBSデジタルとまったく同じという確証はないし、まだ具体的に何月何日スタートという話もない。そろそろデッキ買い換えたくても、今更VHSもなーといった感じで、今が一番中途半端な時期と言える。そんな現状の繋ぎとしてDHD-4000Kは値段も手頃だし、VHSデッキのリプレースには非常にいい感じにハマるのではないだろうか。

 我々日本人は同じアジアにありながらも、アジア他国製品に対して懐疑的な先入観を持って見てしまう。しかし今やその製造技術の向上は、家電業界において無視できない存在になりつつある。認識をそろそろ改めていかないと、安くていいものを買い逃がしてしまうことになりかねなくなってきた。少なくとも、DHD-4000Kはそう思わせてくれる製品であった。

(2002年2月6日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]


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