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第25回:2大スターが競演! でもマイナー?
我々は6年待った! 「12モンキーズ<dts EDITION>」

 怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ DVD化されるのに時間のかかった作品

12モンキーズ
<dts EDITION>

(C)1995 UNIVERSAL CITY STUDIOS. INC. All Right Reserved
価格:4,700円
発売日:2002年2月21日
品番:DZ-0012
仕様:片面2層1枚組み
収録時間:約130分(本編)
      約20分(特典)
画面サイズ:ビスタサイズ(スクイーズ)
字幕:日本語字幕、英語字幕、吹替用字幕
音声:英語(ドルビーデジタル5.1ch)
    英語(DTS)
    日本語(ドルビーデジタル2.0ch)
発売・販売元:松竹株式会社ビデオ事業室

 自分が好きな監督の1人に、テリー・ギリアムがいる。テレビ放映された「未来世紀ブラジル」をたまたま視聴。それ以降すっかりハマってしまった。しかし、この監督の作品、どうもマイナー路線のようで、ハリウッド的な売り方をされたものといえば「12モンキーズ」とロビン・ウィリアムズ主演の「フィッシャー・キング」くらい。

 ほかにもジョニー・デップ、ロバート・デ・ニーロが出演する作品もあるのだけれども、作品自体はどうもマイナーな印象がぬぐえない。しかし、「12モンキーズ」はブルース・ウィルス、ブラット・ピットという2大スターが競演。公開時にもある程度話題になったように記憶している。しかし、その後の展開はパッとせず、'96年日本公開という時期も悪かったのか、今までDVD化されることはなかった。しかし、このたびめでたくDVDが発売された。

 ギリアムの最新作は、''98年公開の「ラスベガスをやっつけろ」(それもミニシアター系上映……)。一応、次回作の予定もあるようなのだが、最近では続報もとんとご無沙汰。そんな飢餓感の中、6年越しとはいえ(おそらく一番有名な)ギリアム作品が発売されたのだ。価格は4,700円と少々お高めの設定ではあるが、購入してしまった。


■ ブラッド・ピットの演技が秀逸

 ジャンルとしては、サスペンスを含むSFに分類されるだろう。舞台設定は、'96年から流行しはじめた未知のウィルス。時は流れ21世紀、人類は滅亡から逃れるため地下に潜伏している、という内容。主演のブルース・ウィルスは、この未来世界の囚人で、ウィルスに関連すると思われる「12モンキーズ」の謎を解くべく、特赦を条件にして'96年に送られる。が、彼は「未来から来た」と騒ぎたてたため精神病院送致に。

 ブラット・ピットは、この精神病院にいる患者という役どころ。当時はアイドル的な役者であったけれども、この作品での役どころは精神病患者。多分にデフォルメされた演技だとは思うが、あまり精神病患者と接点のない私の想像する患者の姿そのままに映るのである。

 話しているうちに次第に興奮したり、頭を小刻みに振ったりと細かいところまで演技をしているが、特に印象的なのがその目。アップのシーンでは「普通ではない」雰囲気をありありと感じ取れた。アカデミー賞にノミネートされたのが納得できる名演技である。

 ストーリーは、この2人と、マデリーン・ストウ演じる女性精神科医を軸に展開。現代、未来を行き来し、「12モンキーズ」の謎を少しずつ解明していく。この「謎解き」の展開も見所のひとつではあるが、より大きなテーマとして扱われているのが「自我の確立」であろう。

 主人公は精神病の患者の中に放り込まれ、医師からも「お前は精神病だ」と宣告されて薬物まで投与されて意識もうつろ。さらに現代と未来を行き来する中で現実感を失ってゆく。この自我の崩壊に悩むブルース・ウィルスの演技もまた見所。大量の情報に晒される現代に生きる我々にも思い当たる節があるテーマだと思う。

 そして、オチがまさに「ギリアムならでは」。原作はフランスの短編映画「ラ・ジュテ」なのだが、監督の持ち味に合ったストーリーだったのだろう。これまでの伏線をすべてひっくり返し、かなりのカタルシスを得られた(ブラジルほどではないが)。

 大団円的な映画がお好きな方だと不満感を覚えることと思う。が、この虚脱感がギリアム作品の持ち味。エンディング曲はラストシーンにそぐわない曲調なのに、なぜがその曲がぴったり合って聴こえてしまうから不思議である。

 ストーリーの展開も独特なら、その映像もまた独特。ざっと見たところ、SF作品なのにいかにもCGっぽいシーンが見当たらないのだ。未来の地下社会のシーンは、薄汚れ、地上に出れば雪の中に寂れた町並みがたたずんでいる。精神病院もまた古く、格子のペンキはひび割れだらけ。エレベーターの扉も手動開閉だ。現代、未来を描いているのに、もっと昔のように感じてしまう。

 現実の世界を描きながら、どこか現実感のない映像。この独特な映像世界もこの作品の魅力の一端をになっていると感じた。


■ 画質、音質は標準レベル

 画質は輪郭部にじらついたり、字幕と重なる部分が揺らぐ部分もあるが概ね満足できるレベル。未来の地下世界など暗いシーンが続く作品であるが、コントラストも良好で、判別も容易。十分鑑賞に堪えうる画質である。

 音声トラックは、英語音声がDTS、ドルビーデジタル5.1chを収録。日本語吹き替え音声は2.0chのドルビーデジタル。字幕は日本語字幕に加え、英語字幕、吹き替え用字幕も収録している。あまり音が頻繁に動く作品ではないので、サラウンドの効果を感じるシーンは少ないが、冒頭の鳩が飛び立つシーンなど、ここぞという場面でサラウンド効果が現われるので、より印象的に響いてくれる。

 また、ディスク挿入して最初に表示されるのは動画メニューだが、本編再生中(後)にDVDメニューに移動すると静止画メニューが表示される。本編再生中にDVDメニューに切り替えても延々と動画メニューを垂れ流すソフトが多い中で、視聴に気遣った仕様になっていると思う。


■ 収録時間は少ないが特典映像も満足

 映像特典は20分と少なめだが、日本公開時の特報、予告編と、トレーラー映像、さらに出演者、監督のインタビュー映像と、「Featurette」と題されたメイキングを収録。

 予告編を見たことはなかったが、「アカデミー賞最有力候補」と謳っているのがなんとも……。ちなみに、ブラッド・ピットが助演男優賞にノミネートされたが、受賞したのは「ユージュアル・サスペクツ」のケヴィン・スペイシー。

 さて、このテリー・ギリアムという監督、実はコメディグループ「モンティ・パイソン」の元メンバー。主にアニメーターとして活動していたようだが、所々で出演しており、特に「スペイン宗教裁判」のアホ顔(ホメ言葉)さらしてたのが印象的。インタビューでは、最近(といっても6年前だが)のギリアムの姿を見ることができた。ああ、ずいぶんとお太り……でなくて、恰幅がよくなられましたね、監督。

 インタビュー中で「説明ばかりしている映画は作りたくない」という旨の発言をしていたが、「12モンキーズ」は確かに現代と未来を飛び交うストーリーは少々難解ではあるものの、1回目の視聴から大筋を理解できる「わかりやすい」作りになっていると思う。さらに、DVDには「THE FUTURE IS HISTORY」と題された劇中で移動した年表も収録。万一時間の流れに翻弄されても改めて確認できるので、未見の方にも是非オススメしたい。


■ 他作品のDVD化も望みたい

 現在の所、「12モンキーズ」以外にDVD化されているギリアム作品は「バロン」、「フィッシャー・キング」、「ラスベガスをやっつけろ」の3作品だけ。

 「12モンキーズ」は本編、特典ともに待ちに待った飢餓感を満足させてくれる内容であったが、2月はギリアムファンにとってサイフに厳しい月になる予定だった。ハズだった。

 「12モンキーズ」のほかにも初期作の「バンデットQ」、さらにパイソンズのテリー・ジョーンズと共に撮った「モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル」のDVDも発売される予定だったのだ。が、「ホーリー・グレイル」は3月21日に延期。「バンデットQ」に至っては「発売日未定」に変更……。

 ギリアムが活動していたのは'80年代が中心で、DVD化するには微妙な時期の作品が多い。理由は理解できる。が、心情としては「欲しいものは欲しい」が本心。ああ、それにつけても「未来世紀ブラジル」をDVD化してほしいことよ。


●このDVDについて
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[買う気はない]
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21%

□松竹ビデオ事業室のホームページ
http://www.shochiku.co.jp/video/
□「12モンキーズ」の製品情報
http://www.shochiku.co.jp/video/dvd/dz0012.html

(2002年2月22日)

[orimoto@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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