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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第64回:出た!待望のエントリーモデル
~ HDD&DVDビデオレコーダ「東芝 RD-X2」~


■ エントリーモデル登場

 2001年末発売になった東芝のHDD&DVDビデオレコーダ「RD-X1」はセールスもまずまず好調のようで、この手の高機能レコーダを楽々使いこなすタイプのユーザーには魅力の商品となったようだ。ビットレートを細かく調整してメディア1枚に綺麗に収めることが可能なRD-X1の特徴は、HDDで録ってDVD-RAM/Rに保存、という流れを定着させた。RD-X1に関しては以前のZooma!の記事も参考にして頂きたい。

 そして2002年5月末には、HDD&DVDビデオレコーダのエントリーモデル「RD-X2」が発売になった。東芝によれば、先のRD-X1の下位モデルになるという。発売から少し日が経ってしまったが、今回のElectric Zooma!は、このRD-X2を取り上げてみたい。

 RD-X2はエントリーモデルという位置付けであることから、当然廉価での販売が予想されていた。事前の予想では店頭価格15万程度とされていたが、実際には6月半ばにしてすでに11万円台で販売している量販店も出てきている。去年までこの手の製品は18~20数万円ぐらいしていたわけだから、1年足らずで値段が半額近くにまで下がったことになる。メーカー側もユーザー側も、ここにきてぐぐっと力が入ってきた。ただしRD-X2の上位モデルであるRD-X1のほうも実売12万円台まで下がってきており、ああこの非情の家電業界、「エントリーモデルだから安い」という図式が崩れてしまっている感がある。

 もちろんモノは安いに越したことはないわけで、ユーザーは財布の中身と相談する前にRD-X1なのかいやいやRD-X2なのかという自由な選択が可能になっている。はたしてRD-X2は買いなのか。そのあたりを製品特徴から探ってみよう。


■ デザインは庶民派

 RD-X2を目にしたときにまず飛び込んでくるのが、新鮮なパネルデザインだ。本体自体は長方形なのだが、両端を半円にカットしたミラーパネルを採用した点は面白い。高級感を損なわずに本体を小さく見せるという、なかなか上手いデザインだ。ボタン類は小さな円柱型で、以前レポートした「TransCube」に採用されているものとほぼ同じではないかと推測する。

 正面ディスプレイは白のFL管表示で、いたって普通ではあるが、視認性は良い。フロントパネル右下の扉を開くと、本体でメニュー操作を行なうためのボタン類がある。また左下にはビデオ2入力端子がある。

ユニークな前面パネルデザインが目を引く ミラー越しだがディスプレイの認識性も良い ボタン類の品質も悪くない

 上位モデルであるRD-X1が、ガキーンとゴールド仕上げで扉なんかも電動で開閉しちゃうよといった、なーんかシャワーのあと素っ裸にガウン来て葉巻きくゆらしながらブランデーグラス手の中で回しちゃってるオヤジかおまえは、みたいな高級感ってどーでしょうと引いてしまっていたユーザーから見れば、X2のこのシンプルさは好意的に映るだろう。文が長いですかすいません。いや筆者が言いたいのはだ、正直言って最初にX1を見たときには、自宅のAVラックに収まっている姿が想像できなかった。しかしX2ならいいかな、という気がする。庶民派デザインとでもいいたくなる感じだ。そういうところにかかるコストを良しとしないユーザーにとっては、X2は実に妥当なデザインなのである。

 背面に回ってみよう。信号系でX2最大の特徴となるのは、D1端子の入力を備えたことだろう。出力でD端子は珍しくもないが、入力では珍しい機能だ。ただD1というのは、480iといういわゆる普通のテレビ信号でしかない。メリットといえば、コンポーネント入力が可能というところだろう。もちろんコピーガード信号が入っているもの、例えばほとんどの市販DVDソフトからの録画はできない。

D1入力を搭載したのは、DVDレコーダ初 背面パネル全景。端子類は右側に集まっている

 背面全体の特徴と言えるのかもしれないが、X1が背面左側に端子類が集中していたのに対し、X2では逆、右側に集中している。このことから想像するに、内部的にもX1とはかなり違った設計になっているのだろう。

 そのほか外観からわからないハードウェアの変更点といえば、ゴーストリダクションチューナ(GRT)を搭載していないところ。現在多くのテレビに搭載されているGRTだが、現状ゴーストが出ている場合には効果が期待できる。現在ゴーストリデューサーチップを作っているのは国内では東芝とNECだけで、せっかくの東芝製品でこれがなくなった点はデメリットと言える。ただ現状ゴーストが出ていない環境では必要ない機能であるため、コストダウンのターゲットとしては妥当なところだろう。

 またX2の動作音だが、完全無音とまではいかないものの、電源部のファン音もDVDメディア回転音も、X1に比べて若干静かになったようだ。普通にAVラックに収めて気にならないレベルだろう。




■ ソフトウェアはかなり進化

 ハードウェア的な部分でコストダウンが図られたとしても、ソフトウェア面ではむしろX2のほうが進化している。X1で気になったレスポンスの遅さはずいぶん軽減されている。例えばX1では電源投入後やディスク認識までなんにもできなかったのだが、X2ではチャンネル変更程度の操作は可能になっている。ディスクの認識まで30秒弱とかなり遅いが、そこを除けば全体的な動作はストレスを感じない程度に向上している。

 こういった据え置き型機器の操作性で重要になるのがリモコンだ。X2のリモコンはX1のものと大きく変わっている。ダイアルやジョイスティック、側面のレバーコントローラなどが削減され、一見操作性が後退したようにも思える。確かにフレーム単位での編集操作などでは、アナログコントローラの操作性は有利だ。しかしマストではない。ボタン操作だけでも、それなりに可能なものだ。このあたりはユーザーの器用さ、カンの良さといった不確定要因に依存するため、人それぞれ感じ方が違うことだろう。

 誰もが納得できる変更点として、X1のリモコンでは背面の電池蓋の中にあったGコード予約用のボタン類が、前面のフリップ内に移動した点だろう。電池蓋の中に機能を持たせるというのは、アイデアとしては面白いが、使いやすくはない。X2のリモコンは普通といえば普通だが、オーソドックスなスタイルになったことで予約は便利になった。

リモコンはボタンのみのシンプルな作りになった Gコード予約ボタンはフリップ内にある

 X2のソフトウェア面でのアドバンテージとして、DVD-Rへ書く際にメニューの作成が可能になった点は、DVDレコーダとしての大きな進歩。録画した番組単位、または手動で作成したチャプター単位でサムネイルが作られ、メニューが作成される。デザインの選択肢は8種類の色違いのみだが、機種依存の単なるライブラリデータではなく、DVDビデオフォーマットに対応したオーサリングメニューが家電で作成できるようになった意味は大きい。

DVD-R作成中の画面。チャプター登録後、メニュー作成となる メニューデザインは8種類から選択する

 録画モードの仕様は、基本部分はX1と同じだが、新たに1.4Mbps(352×240ドット)が追加された。おそらく長時間連続録画を想定しての機能かと思われるが、連続録画は最大9時間までという制限がある。また画質を見てもらうとわかると思うが、このモードでDVDに保存しよう、という用途のものではない。

 素材にはカノープス株式会社の、プロ向け高画質動画素材集「CREATIVECAST Professional」をDVテープに書き出して使用。なお、サンプル版なので、画面右端にロゴが焼きこまれている。

 そのDVテープをDVデッキ「ソニー WV-DR5」で再生し、内蔵のRFコンバータで2chのTV信号として出力。それを内蔵HDDに記録した後、DVD-Rに記録した。

 なお、サムネイルは「PowerDVD XP」で再生し静止画キャプチャを行ない作成した。その際、 LP、SP、1.4Mbpsは他のモードと記録解像度が異なるため、全モードとも800×600ドットで再生し条件を揃えた。下の各サムネイルは、左の画像の赤枠内を拡大したもの。各モードの画像をクリックすると再生が始まる。

(c)CREATIVECAST Professional

【MPEG-2形式】
LP(2.0Mbps)
(352×480ドット)
(DD1)

lp.mpg(7.51MB)
【MPEG-2形式】
SP(4.4Mbps)
(352×480ドット)
(DD1)

sp.mpg(14.2MB)
【MPEG-2形式】
MN(1.4Mbps)
(352×240ドット)
(DD1)

1_4m_dd1.mpg(4.97MB)
【MPEG-2形式】
MN(4.6Mbps)
(720×480ドット)
(DD2)

4_6m_dd2.mpg(14.4MB)
【MPEG-2形式】
MN(8.0Mbps)
(720×480ドット)
(リニアPCM)

8_0m_pcm.mpg(26.0MB)
【MPEG-2形式】
MN(9.2Mbps)
(720×480ドット)
(DD1)

9_2m_dd1.mpg(25.7MB)
※製品版に近い試作機のため、画質などが製品版では変わる可能性があります

MPEG-2の再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載したMPEG-2画像の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。




■ D1端子の効果とは

 X2の特徴であるD1端子による録画だが、用途としてはBSデジタルチューナや、CSチューナとの接続が一般的だろう。しかしD1端子が対応しているのは480iのみであり、当然1080iといったHDTV出力が直接録れるわけではない。

 筆者手持ちのDVDソフトのうち、メーカーサンプルのものでマクロビジョンがかかっていないものがあったので、D1端子とS端子の入力を録画比較してみた。原理的にはY/C分離よりもコンポーネント接続のほうが品質面で勝るはずだが、結果は残念ながら、はっきりモニタ上で認められるほどの違いは感じなかった。

 もちろん、情け容赦なくアナログ特性の優れた超高級D端子ケーブルを使って理想的なコンポーネント入力を行なえば結果が違うのかもしれない。またソースもかなりいいものを用意すれば違うのかもしれないが、普通のケーブルで普通のソースを入力しただけでは、エンコーダを通ることで差がほとんどわからなくなってしまったようだ。


■ 総論

 DVD関係の技術というのは、フォーマットや参入メーカーの多さから、ものすごい勢いでいろいろな方面が進化している。今と半年前の状況が全然違うという場面に遭遇することも珍しくない。RD-X2は、半年前に発売されたRD-X1の下位モデルに当たるわけだが、内容から見ればリニューアルモデルと言っていいだろう。HDD容量やDVD-RAM/Rドライブの仕様などは半年前のものと変わっていないことを考えると、X1からコストダウンしたというよりも、同じ部材を使って今の状況でもう一度最初から考え直した、という印象がある。下位モデルという位置付けながら、劣っている部分がほとんどなく、また製品デザイン的にも「安くしたからダメダメ」的なところがほとんど感じられない。操作のもたつきなども軽減されているし、いわゆる2号機としてなかなかいい出来だと言える。

 惜しいのは追加機能の中で、目玉と呼ぶのにふさわしいものがなかったことだ。例えばD1入力が思ったほど効かなかったのは意外だった。またEPGによる番組予約なども欲しいところだ。これだけの高級録画機(こういった機械で10万超えたら高級の部類だろ)を買っても、まーだ新聞の裏見つめながらちまちま数字打ち込むってんじゃ、なーんか未来感とか次世代感とかがんばって買ったヨ偉いなオレ感とかといった高揚する気持ちが一気に半減するような気がするのだ。もっとも噂によるとEPGのライセンス料ってのが結構なお値段らしいので、デジタル放送が目の前にぶら下がっているこの時期に搭載するのもアホラシイということなのかもしれないが、なーんか、な。

 まあいずれにしても、X2の投入でDVD系録画機としては今のところ、松下と東芝のDVD-RAM陣営が一歩リードした格好になった。これからDVD-RW陣営がどう切り返してくるのか、DVD-Multiの録画機は出るのか、あるいはどこからかDVD+RWの録画機が出るのか。まだまだ書き込み型DVDのソリューションで出てきていないモノがたくさんある。

 今年はどうやら電器店AVコーナーがかなり面白いことになりそうだ。今までDVD+HDDハイブリッド録画機に対して様子見を決め込んでいた人も、そろそろ腹をくくる時が近づいていると思った方がいい。


□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2002_05/pr_j0901.htm
□製品情報
http://www3.toshiba.co.jp/dvd/j/recorder/rdx2/rdx2.htm
□関連記事
【2001年12月26日】管理機能充実のハイブリッドレコーダ
 ~ 東芝はRD-X1で信頼回復なるか!
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011226/zooma41.htm
【5月9日】東芝、実売15万円のHDD+DVD-RAM/Rビデオレコーダ「RD-X2」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020509/toshiba.htm

(2002年6月19日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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