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D2出力端子を装備したポータブルDVDプレーヤー
東芝「MED900J」
発売時期/6月下旬 価格/オープンプライス(実売価格11万円弱)

■ 主な機能

 東芝が6月下旬に発売した「MED900J」は、ワイド8.9型ポリシリコンTFT液晶ディスプレイを備えたポータブルDVDプレーヤー。ワイド8.9型というサイズは、このジャンルとしては大型の部類に入る。

 さらに、パネル解像度も1,024×600ドットと高く、競合するシャープの「DV-L90TC」が800×480ドット、松下電器の「DVD-LA95」が480×234ドットだということを考えると、大画面の迫力に加え、精細感の面でも期待ができる。

 再生可能なディスクは、DVDビデオ、DVDオーディオ、ビデオCD、音楽CD、DVD-R、CD-R/RW。CD-R/RWに記録したMP3ファイルの再生にも対応している。さらにテレビチューナも内蔵しており、地上波放送(VHF/UHF)の視聴も可能。ただし、RF端子が専用形状のため、同梱の専用RFケーブルを使用する必要がある。専用RFケーブルは、室内用のものと、クリップつきの屋外用の両方が同梱されている。

右側面には、ボリュームダイヤル、ヘッドフォン端子、アンテナ入力を装備。アンテナ入力は3.5mm径なので、同梱の専用RFケーブルを使用する D端子とS映像には、一般的な形状の端子を採用している。特にD端子は珍しい。特殊な変換ケーブルを用意することなく使用できるので使い勝手は良い ボディのほとんどはプラスチック。高級感はあまりない

 また、再生内容をテレビなどの外部ディスプレイに出力することができる。映像出力は、コンポーネント、S映像、コンポジットを装備。このうち、コンポーネントは一般的なD端子となっている。ポータブルタイプのDVDプレーヤーで、D端子をそのまま搭載した例は珍しい。また、D2端子なので、外部ディスプレイへはプログレッシブ出力も行なえる。

 逆に、MED900Jの液晶ディスプレイでビデオデッキなどの外部機器の映像を見ることもできる。ただし、この場合はコンポジット入力のみ。一時的なモニタ代わりとして役立つだろう。

 スピーカーは、ディスプレイ下の両脇に設置。通常のステレオ再生のほか、サラウンド感が得られるという「N-2-2スペシャライザー」や、セリフを強調する「ムービーボイス」も選択できる。なお、本体のみでDTSの再生は行なえない。

 また、丸型ミニジャックタイプの光/同軸デジタル音声出力を装備し、ドルビーデジタルやDTSをビットストリームで出力できる。デジタル出力とは別にアナログ出力も搭載しているが、2chのみの出力になる。したがって、5.1ch収録のDVDオーディオの場合、2chのみが出力される。

 8.9型ワイド液晶ディスプレイを搭載するため、ポータブルDVDとしては比較的大きく、外形寸法は217.3×163.8×35.1mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は本体のみで約870gとなっている。なお、本体のほとんどがプラスチック製ということもあり、少々安っぽい印象を受けた。ただし、ディスク設置部のふたは金属製となっており、少々力を加えたとしても、再生に問題が発生することはないだろう。

 なお、本体にバッテリは内蔵せず、戸外で使用するには別売りのバッテリパックが必要になる。バッテリパックは本体下部に装着するタイプで、連続使用時間は約5.5時間。ただし、バッテリ駆動時には省電力のため、液晶画面が暗くなる。


■ 操作性と画質

 DVDビデオの再生機能は、コマ送り、スキップ、スローモーション、リジューム再生、音声およびアングル切り替えと、一般的なものは網羅している。加えて、タイムサーチ、ズーム再生、マルチアングルのサムネイル表示にも対応。また、再生や停止などのアイコンが画面に現われ、リモコンの十字キーと決定キーだけで基本操作が行なえる「Vリモート」も使用できる。

 視聴者に近い位置で使用するポータブルプレーヤーだけに、リモコンに加え、主な操作ボタンは本体上にも設置されている。このうち、メインで使用する「再生」、「一時停止」、「スキップ」などのボタンは手前に配置。右利きであることが前提だが、これらのボタンは大きめで、クリック感も適度にあるため押しやすい。

ディスクカバーはアルミ製。ある程度強い振動を与えたり、逆さにしても再生が飛ぶことはなかった。回転音は大きめ。内蔵のスピーカーで楽しむ場合、少し気になるかもしれない 本体操作部。ほとんどの操作がここで行なえる

 反面、リモコンはシフトキーとの同時押しを要求される場面がいくつかあり、慣れないうちはとまどうことが多かった。とはいえ、同時押しが必要なのはセットアップやVリモート、入力ソースの切り替えぐらいなので、映画やアニメなどのDVDビデオを普通に楽しむだけなら、それほど気になることはないだろう。

リモコンはカード型。テンキーがついた本格的なものだ。右は同梱のACアダプタ

 本体の設定メニューを呼び出すのは、奥にある「NAVI」ボタンだ。これを押すと、再生中、停止中の区別なく「NAVI MENU」が表示される。画面アスペクト比の切り替えなど、ほとんどの設定はここで行なえる。設定以外にも、ストロボビューアや静止画キャプチャなども可能で、DVDビデオ内の10分ごとの画像をサムネイル表示する「プレビュー」も使用できる。

外部出力時のアスペクト比設定や、画質設定時に使用する「NAVI MENU」。ストロボ表示などの特殊機能もここで利用できる

 画質設定もNAVI MENUから行なう。調整できる項目は、「コントラスト」、「明るさ」、「色の濃さ」、「色あい」、「エッジエンハンス」の5項目。「エッジエンハンス」のみON/OFFを指定し、そのほかは7段階で調整できる。ガンマや色温度を変えられないのは残念だが、設定を3つまで本体内に記憶できるのば便利だ。各部屋ごとの「外部ディスプレイ用設定」を記録しておくなど、ポータブルDVDプレーヤーならではの使い道ができる。

 外部ディスプレイへの切り替えは、「MONITOR」ボタンで行なう。押すごとに「内蔵液晶ディスプレイ」→「上下反転」→「外部インターレース」→「外部プログレッシブ」と順次切り替わる。このうち不思議なのは「上下反転」だ。ディスプレイ部が180度開口するわけではないので、対面プレゼンテーション用にも使いづらい。

 内蔵液晶ディスプレイでの画質は、画面の大きさの割りには高精細で、背景にある細かいものなども描写できている。

 また、プログレッシブ信号をそのままLCDコントローラに出力する「デジタル・シネマ・プログレッシブ回路」が貢献しているのか、液晶ディスプレイにしてはパンニング時のブレなども目立たない。精細感、フレームの自然さについては、これまでの8型以上のポータブルDVDプレーヤーに比べて優位性がある。

 ただし、輪郭の不安定さや原色系の不自然な発色など、液晶ディスプレイらしい欠点は依然として認められる。また、白ピークは高いものの、ダイナミックレンジの狭さからか、白飛びも起きやすい。階調も浅く、擬似輪郭も頻繁に見られた。

 また、800×480ドットのシャープ製「DV-L90TC」に比べると、輪郭の崩れ具合が若干激しく感じる。動きの追従性の良さを除けば、ノートパソコンでDVDビデオを見ている感覚に近い印象を受けた。とはいえ、白飛びをはじめ、設定次第である程度解決できる問題も多い。

 外部ディスプレイへの出力については、コンポーネント(D2)出力の効果が高い。日立のW32-PD2100にプログレッシブ出力してみたが、階調が豊かで、すっきりとした絵づくりとなっていた。確かに、ノイズや斜め線の処理など、据え置きの専用プレーヤーより見劣りする点もあるが、自然で好感の持てる画質だった。なお、今回の試聴は全てACアダプタで行なった。


■ まとめ

 やはり、画面サイズの大きさからくる迫力は、小型のポータブルDVDプレーヤーでは得られない利点だ。加えて、MED900Jには、解像度の高さという強みがある。とはいえ、DVDビデオを視聴するなら1,024×600ドットという解像度はオーバースペックかもしれない。

 また、テレビチューナも利用度が高い。画面サイズが大きいことで、「部屋間を移動できるサブテレビ」として使っても便利だ。ただし、217.3×163.8×35.1mm(幅×奥行き×高さ)と大柄なため、戸外での持ち歩き用途にはあまり向かない。バッテリでの連続使用時間も約5.5時間と、ライバル機より少なめだ。

 現行の競合機は、松下電器の「DVD-LA95」、シャープの「DV-L90TC」といったところだろう。DVD-LA95は、バッテリを標準で内蔵する上、別売りバッテリを装着することで約8時間の連続再生が可能。DVD-RAMの再生にも対応している。ただし、解像度は480×234ドットと頼りない。一方DV-L90TCは、800×480ドットと、DVDビデオに十分な解像度を持ち、ドルビーヘッドフォンも内蔵する。なお、テレビチューナは3機種とも内蔵している。

 解像度と外部プログレッシブ出力、DVDオーディオをとるならMED900J、持ち歩きとDVD-RAM再生を重視するならDVD-LA95、バランスとのとれた画質とドルビーヘッドフォンが必要ならDV-L90TC、という選択が妥当だろう。

【8型ワイド以上のディスプレイ搭載モデル】
型名メーカー発売時期画面サイズ解像度重量
(本体のみ)
DV-L90TCシャープ2001年8月8.7型ワイド800×480ドット約980g
DVD-LA95松下電器2001年9月9.0型ワイド480×234ドット約999g
MED900J東芝2002年6月8.9型ワイド1,024×600ドット約870g

【主な仕様】
再生対応ディスクDVDビデオ、DVDオーディオ、ビデオCD、音楽CD、DVD-R、CD-R/RW、MP3
画面サイズ8.9型
解像度1,024×600ドット
駆動方式ポリシリコンTFTアクティブマトリックス
入出力映像入力コンポジット×1系統
映像出力D2、S映像、コンポジット(各1系統)
音声入力アナログ×1系統
音声出力光/同軸デジタル、アナログ、ヘッドフォン(各1系統)
外形寸法217.3×163.8×35.1mm(幅×奥行き×高さ)
重量870g

□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2002_06/pr_j0301.htm
□製品情報
http://www.toshiba.co.jp/mobileav/video/med900j/products.htm
□関連記事
【6月3日】東芝、プログレッシブ出力が可能なポータブルDVDプレーヤー
―液晶は8.9型ワイドXGA、テレビチューナも内蔵
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020603/toshiba.htm
【2001年8月3日】松下、業界最大9型液晶搭載DVDオーディオ/ビデオプレーヤー
―TVチューナとバッテリを内蔵、DVD-RAMにも対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010803/pana.htm
【2001年6月20日】シャープ、業界初の8.7型ワイド液晶搭載ポータブルDVDプレーヤー
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010620/sharp.htm

(2002年6月27日)

[orimoto@impress.co.jp]


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