気になるグッズを衝動買い |
第69回:サラウンドヘッドフォンの新定番になるか? LGジャパン「MM GEAR」 |
AV製品はピンからキリまでいろいろありますが、いわゆるメインストリーム以外にはいろんなおもしろいアイテムがたくさんあります。ここでは思わず衝動買いしたくなるけど、冷静に考えるとどうかな~? と、気になる「モノ」に積極的なアタックを繰り広げていきます。 |
■ 韓国から来たサラウンドヘッドフォン
我が家は木造モルタル造りのアパートです。床はフローリングになってて、一応洋風の内装になってますが、間違ってもマンションとはいえません(不動産屋ではマンションとして紹介されましたけど)。
そんな住環境でもっとも気を使うことといえば、なんと言っても騒音。はっきり言って、壁、薄いです。どれくらいかというと、深夜には隣人のいびきが聞こえるくらい……。オーディオビジュアルファンとしてはなんとも心もとない住環境ですが、予算的にこれ以上のところはちょっと無理。我慢するしかありません。
しかし、このたびLGジャパンからかなり気になる製品が発売されることに。それは韓国のベンチャー企業「MM GEAR」のヘッドフォン。一見するとただのヘッドフォンに見えますが、ポイントはドライバが片耳に2つ装備されていること。つまり、4chヘッドフォンなのであります。
ヘッドフォンにはステレオミニプラグ×2を装備。つまり、これでフロントとサラウンドに入力することで、ドライバをそのままフロント/サラウンドスピーカーとして再生する、というコンセプト。うーん、これまでも「ヘッドフォンでサラウンド再生」という製品は多々ありましたが、バーチャルドルビーデジタルなどの規格は基本的に2ch出力でのエミュレーション。エミュレートした音だけに、エコーなどが気になるんです。
対して、こちらはフロント、サラウンドをそのまま再生。うーん、これならヘッドフォンでリスニングしても、高いサラウンド感が期待できそう。
ヘッドフォン「MCH-MMS100-B」の仕様は、重量175g、コード長3mのネックバンド型。用途としてはPCでの使用をメインに想定しているそうで、IP電話などでも使えるよう、コードにクリップできるマイクも同梱されてます。
インピーダンスは32Ω、再生周波数帯域は150Hz~20kHz。出力音圧レベルは91dB(±2dB)。ネックバンド部にアジャスタはないけれども、フレキシブルな素材でできていて、ある程度の調節は可能。で、ハウンジングには布製の耳かけを備えていると。ふむ、ネックバンド型にしては少々大きめですが、ドライバが4つ入ってればこの大きさも仕方ないですね。
気になる価格のほうは、ヘッドフォンの価格は12,000円、ヘッドフォンアンプが6,000円。実はこのたびこのヘッドフォン「MCH-MMS100-B」とヘッドフォンアンプ「MCA-MMH100」のサンプルをお借りしたので使ってみたいと思います。
ヘッドフォン本体。一見オーバーヘッド型だが、実はネックバンド型 | ハウジングの内側。ゴム製のハンガーで耳たぶに掛ける。結構重い |
アーム部はフレキシブルな素材で、この程度展開しても大丈夫 | 入力端子はステレオミニプラグ×2。色分けでフロント/サラウンドの入力を区別 |
■で、その実力はどうなのよ?
ということで、まずはPCに接続して試してみますかね。我が家のマシンはオンボードにC-MEDIA製「CMI8738-6ch-MX」を搭載しているので、こちらのフロント/サラウンド端子に直接挿してっと。DVD再生ソフトはDTS、ドルビーデジタルの5.1ch再生が可能な「PowerDVD XP Pro」を使用。ふむ、とりあえずこれで問題ないでしょう。ソフトは「グラディエーター」、「パールハーバー」、「U-571」などを見てみました。
で、その印象はというと。……うん、これいいんじゃないですか? サラウンド感はかなり良好。「グラディエーター」の虎に襲われるシーンでは背後からの虎の咆哮が背後から響き、「U-571」では飛行機の旋回シーンでエンジン音の位置が感じられ、「パールバーバー」の真珠湾攻撃シーンでは零戦の機銃掃射の弾着音が周りで響きます。
真後ろの音の定位感はスピーカーシステムに比べると多少薄く感じますが、左右の広がりはスピーカーとタメ張るんじゃないかと。定位感と共に、広がりも感じられて、ヘッドフォントは思えないほどのサラウンド感。おまけに、バーチャルサラウンドヘッドフォンで感じられるようなエコーはまったくなし。
しかし、残念なことに、このシステムは4ch。センターチャンネルの音声はフロントにミックスダウンされたものなので、会話シーンでのセリフの定位感はいまいち。たとえば、騒がしいなかで会話が進行するシーンなどは、フロントの音声にセリフが混じり、セリフが聞き取りづらくなる上に、フロントの音声にも濁りが乗ってしまうのが残念。
まー、視聴するソフトのほとんどは洋画だから、セリフはさほど重要ではないんだけどね。それでも心理描写などは声の調子で心情を読み取る必要があるわけで。ミックスされていないサラウンドの音声がクリアなだけに、かなり気になります。
あとはそうですなー、ネックバンド型という形状には、175gという重量は少々重いかも。2時間ほど連続して装着してましたが、やはり耳たぶへの負担は大きく、映画1本見終わった後では耳をマッサージする必要がありました。うーん、オーバーヘッド型のラインナップも計画中ということですから、早く発売して欲しいものです。
音質は、ちょっと低音強調気味。高音域はあまり伸びず、「ヘッドフォンでも迫力を感じる」ことを重点にした音作りのように感じました。まあ、映画視聴用ならば、それほど問題はないでしょう。試しにフロントだけを通常のアンプに接続してCDをリスニングしてみましたが、傾向は同じ。DVD視聴時には気になりませんでしたが、CDリスニングでは輪郭が少々ぼやけ気味かもしれません。
PCでのDVD視聴時の問題といえば、やはり内部ノイズを拾ってしまうことでしょうな。これは、よりよいサウンドカードを導入することで解決できますが、マイマシンのオンボードサウンドではかなーり気になりました。
とはいえ、ヘッドフォンでこれだけのサラウンド感を、エコーのないクリアな音声で味わえるの驚き。これまでのサラウンドヘッドフォンに用いられる、いわゆる「バーチャルサラウンド」とはアプローチが違い、ドライバを4つつけて4ch再生するという考えは単純。しかし構造が単純なだけに、耳への到達距離やドライバの角度、ハウジングの形などの調節はかなり微妙と想像できます。が、このシステムは音声もクリアで、しかも音の定位感がかなり高い。うん、深夜のリスニングには最適ではないでしょうか。
■ ヘッドフォンアンプでのリスニングは?
では、続いてヘッドフォンアンプを使って、テレビのほうで視聴してみますか。ヘッドフォンアンプは、背面にフロント2ch、サラウンド2chのアナログ入力を備え、前面にフロント/サラウンド出力×4系統を備えている。これはどちらかというと、「PCからの出力を、4人同時に楽しむため」というコンセプトに思えますが、DVDプレーヤーとAVアンプ、という構成で楽しむことの多い(と思われる)日本市場では、AVアンプの5.1chアナログ出力に接続するのが一般的になると予想します。
うーん、韓国やアメリカではPC上でDVDを楽しむというニーズも多いようですが、正直日本ではあまりメジャーではないからなー。DVDプレーヤーも5.1chアナログ出力を搭載したものってほとんどないし。かく言う自分はAVアンプは持ってません。代わりに1万円ちょっとで衝動買いしたドルビーデジタル/DTSデコーダ、フリーウェイ「Cinema Decoder D2」に接続してリスニングすることに……。
それはそれとして。ボリュームコントローラは4系統すべてに装備。小柄なボディながら、アンプ出力は20mW。音量的にも十分かと。ただ、SN比は81dBとスペック上はちょーっと低め。実際にリスニングしてみても、心持ちノイズ感が強めで、正直「音楽リスニング用に」とは言いがたいです。が、これはサラウンドを楽しむことを目的にした製品。映画の視聴中は画面に意識が集中するため、あまり気にはなりません(少なくとも自分は)。
ヘッドフォンアンプの前面に装備された「MODE」は、4chをそのままスルー出力するモードと、2ch用のモードの切り替えに使用します。さらに2ch用モードは2種類あり、フロントを2chをスルー出力する「2 Channel Input Bypass Mode」と、2chを4chに出力する「2 Channel Input Virtual Mode」が用意されてます。
「Bypass Mode」は、まー、そのまま2ch出力ですね。で、「Virtual Mode」の感覚はというと、ぶっちゃけ単なる4chステレオモードです。ただ、ヘッドフォンで4chステレオを聞くことがなかっただけに、この感覚はなかなか新鮮。耳の近くで、いつものヘッドフォンリスニング時にはない音源があるため、最初は慣れませんでしたが、慣れてくると音に広がりを感じます。
「MODE」ボタンの隣には「EFECT」ボタンが用意されてますが、これはそうですなー、単にエコーを増して音の広がりを出す、という感覚。好みの問題ではありますが、これだとせっかくクリアな音声なのに、その特徴がオミットされてしまうため、あまり使わないと思います。
で、サラウンド感はというと、うーん、PCでの再生時との違いはあまり感じません。が、ノイズはPC再生時よりもかなり減った感じですね。ただ、通常のアンプに接続したノーマルのヘッドフォンよりはノイズ多め。もともとノイズの多いPC出力の音よりは、という前提がつきます。
しかし、PC再生時には視聴に差しさわりのあるほどだったのに対して、こちらはよほど注意深く聞いていれば、というレベル。「ソードフィッシュ」などのアクション映画はほぼ全編が見せ場なので、のめりこんでノイズはほとんど気になりませんでした。
ヘッドフォンアンプ。出力はフロント/サラウンド×4系統 | ヘッドフォンアンプの背面。入力はフロント/サラウンド×各1系統 | 「MODE」/「EFECT」切り替えスイッチは中央に配置 |
■環境が整っていればかなりイケてる製品
サラウンド感は、ほかのヘッドフォン製品と比較してもかなり高いです。何よりも他製品にあるエコーがほとんどなく、音がクリアに聞こえるのがよろしい。聴感上の難点といえば、センターチャンネルの音が聞きづらいため、セリフの低位感だけが薄いことだけ。この製品の実力の高さとともに、改めてセンターチャンネルの重要性は感じましたね。
あとの不満点といえば、ヘッドフォンアンプにノイズが多少乗ってしまうことと、耳掛け型にしては少々重めの重量175gというウェイトくらいですかね。それ以上にサラウンド感の高さ、クリアな音声などのメリットのほうが高いと感じます。
しかし日本市場での展開を考えると、ヘッドフォンアンプにデコーダが搭載されていないのはつらいかも。自分の場合は5.1chスピーカーシステムがPC用にしかセットアップされていないので、PCでDVDを視聴することも多いけど、解像度の高いPCモニタで見るとエッジが利きすぎて視聴に疲れたり、モニタの輝度が圧倒的に不足していたりと、満足に視聴できない要素もありますからなー。
対してテレビでの視聴は、普段から見慣れているだけに、DVDでの視聴時も気軽。一度見た映画は頭から通して見ることは少なく、お気に入りのシーンをたまに確認する程度なので、ぶっちゃけサラウンド環境がなくても楽しめるし。
もちろん、テレビ側にもサラウンド環境を導入したいとは思っているけど、セットアップに問題となるのは機器の設置スペース。サラウンドスピーカーとサブウーファを設置する場所を確保できない故にシステムを撤去した過去を持つ自分としては、このサイズでデコーダが付いていれば、テレビでもラクにサラウンドが楽しめるのに、と思うわけであります。
ともあれ、「ヘッドフォンでサラウンドを楽しみたい」というニーズには、現状で最も適している製品だと感じました。価格もヘッドフォンが12,000円、ヘッドフォンアンプが6,000円と比較的お手軽。少なくとも5.1chスピーカーを導入するよりは安いと思います。DVD-ROM搭載のデスクトップPCを持っている方ならば、4ch出力対応のサウンドカードを増設するだけで、かなりナイスなリスニング環境を得られるのではないでしょうか。
テレビで視聴する場合も、5.1chアナログ出力搭載のAVアンプさえあれば、ヘッドフォンアンプで4chサラウンドを楽しめます。自分の場合はデコーダを持っていたのでそれを利用しましたが、今後の展開でデコーダを内蔵したヘッドフォンアンプが出てくれば日本市場でもかなり話題になる製品かも、と想像してみたりします。
□LGジャパンのホームページ
(7月3日現在、この製品に関する情報は掲載されていない)
http://www.lg-japan.com/
□MM GEARのホームページ(英語/韓国語)
http://www.intervideo.co.jp/
□関連記事
【6月25日】LGジャパン、片耳2ドライバのサラウンドヘッドフォン
―4ch入力対応のヘッドフォンアンプも発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020625/lg.htm
(2001年7月3日)
[fujiwa-y@impress.co.jp]
00 | ||
00 | AV Watchホームページ | 00 |
00 |
ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp