気になるグッズを衝動買い |
第71回:どこまでもバーチャルサラウンドヘッドフォン ティアック「HP-F1」 |
AV製品はピンからキリまでいろいろありますが、いわゆるメインストリーム以外にはいろんなおもしろいアイテムがたくさんあります。ここでは思わず衝動買いしたくなるけど、冷静に考えるとどうかな~? と、気になる「モノ」に積極的なアタックを繰り広げていきます。 |
■ヘッドフォン視聴時にもサラウンドを
自分の場合、ヘッドフォンは生活に欠かせません。いや、自宅の壁が薄いのでスピーカーを使うと音がお隣さんにだだ漏れなもので……。実際、お隣さんの会話音が一番の騒音源ですからなー。深夜に何かをリスニングしたいときは、ヘッドフォンで無いとダメなのです。
テレビ視聴や音楽リスニングには、現在手持ちのヘッドフォンAKG「K-501」で満足しておりますが、問題はサラウンドの効果が欲しくなるDVD視聴時。映画はやはりサラウンド効果を楽しみたいものです。
ということで、これまでもいくつか「バーチャルサラウンドヘッドフォン」製品を試してみたのですが、その効果はというと、正直なところ今ひとつ。以前にお借りした「MM GEAR」がマイランキングの中では最強なんだけど、まだ発売してないしなー。
とか思いながら量販店をうろついていたところ、ちょっとよさげな製品が目に留まりました。それがティアックのバーチャルサラウンドヘッドフォン「HP-F1」であります。
これはワイヤレスヘッドフォンとトランスミッタ部がセットになった製品で、バーチャルサラウンドの効果が得られるというもの。
実は6月1日に発売されたとのことですが、興味を引かれていたものの、店頭で確認することはできなかったんです。が、ふらふらとしながらレジの後ろを覗いてみたところ、なんとパッケージがあるじゃないですか。すいませーん、それちょっと見せてください!
パッケージを確認してみると、光デジタル入力×1と、ステレオRCA×2の入力を備えていて、もちろんバーチャルサラウンド効果アリ。ただしドルビーデジタル、DTSのデコーダは搭載しておらず、光入力はPCMのみとなる、ということですか。うーん、デコーダ積んでいないのはちょっと不満ですが、PCM入力ができるなら音質にも期待できそう。バーチャルサラウンドの方式は独自方式らしいから、その効果も気になるなー。
して、お値段はいかほどで? 18,800円? ふむ、デコーダは搭載していないものの、ワイヤレスヘッドフォンでバーチャルサラウンド効果がある製品としては、まぁまぁお買い得。では、お願いします。
■ワイヤレスヘッドフォンとしてはまずまず
ということで、まずは同梱品の確認をば。ヘッドフォン本体のほかには、アンプ兼用のトランスミッタ部、トランスミッタ用のACアダプタ、光デジタルケーブル×1、ステレオミニ→ステレオRCAケーブル×1という構成。ヘッドフォン側の電源は単4型のアルカリ/マンガン乾電池、またはニッケル水素充電池、ニカド充電池が利用可能ですが、同梱されていませんでした。
トランスミッタ部の入出力端子は、前面に標準ヘッドフォン出力×1、背面に光デジタル×1、ステレオRCA×2を装備。トランスミッタ部は縦置き型で、設置面積もそれほどとらず、テレビの脇に気軽に置けるサイズ。ふむふむ、なかなかよろしいのではないでしょうか。
トランスミッタ部をさらに確認してみると、天面後部に電池収納部カバーがある模様。マニュアルを確認してみると、どうもこれはヘッドフォン用の電池を充電するためのもの。しかし、満充電までの充電時間を確認してみると、ニッケル水素充電池で35時間、ニカド充電池で16時間。で、ヘッドフォンでの連続再生時間はニッケル水素で18時間、ニカド電池で16時間。……うーん、一応セット内で充電可能なことは評価できるのですが、これではちょっと実用的とは言えないかも。別途急速充電器が必要ですね。
トランスミッタの前面の操作スイッチには、電源スイッチ×1、入力切り替えボタン×1、3種類のサラウンドモード「MULTI.CH」、「SURROUND」、「STEREO」×各1を装備。サラウンドモードはそれぞれにボタンが配されているので、モード選択時に迷うことはなさそうです。
光デジタルケーブルには、デコーダを内蔵していないため、「音が出ない」などのトラブルを未然に回避するためか、「DVDプレーヤーの出力をPCMに設定してください」との注意書きのタグが付いております。ま、販売されているDVDプレーヤーの光デジタル出力といえば、デフォルトの設定はストリームで出力ですから。
さて、ヘッドフォンの方はというと、ハウジングがフレーム状になっている(というかハウジングは存在しないのですが、便宜上こう呼ばせてもらいます)オープンエア型。ドライバ部は耳の形状に合わせた傾斜が確保されており、普通のヘッドフォンでは耳たぶに接触するハウジングはフレーム状なので、接触面積が少なく、長時間の視聴時でも疲れは少なそう。ワイヤレスだから、当然コードは存在せず、取り回しは大変ラク。
で、受光部は左右のハウジングの上部にそれぞれついていて、どちらか一方が受光できなくても片方で受光可能。電池はL側に2本を収納し、R側に電源スイッチと、L/Rのバランスを調節する「BALANCE」と、音量調節の「VOLUME」がそれぞれ可変抵抗で付いてます。
アジャスト機構はオートで、アームのテンションも弱からず、強からずでちょうどイイ感じ。装着感もよく、特にフレーム状のハウジングは耳たぶと接触する面積が少なく、長時間の装着時でも疲れません。ただ、オープンエア型だけあって、音漏れは激しいのでご注意を。
同梱品一覧。すべての入力端子に接続できる数のケーブルを同梱 | トランスミッタ部前面。モード切り替えは1ボタンを押すだけ | トランスミッタ部背面。ワイヤレスヘッドフォンの中では入力端子は豊富 |
トランスミッタ部側面。長さはこんな感じ。テレビの脇などに気軽に置けるサイズ | トランスミッタに備えられた充電器。ただし、充電池は別売 | 充電中はインジケータが点灯して状態を知らせる |
ヘッドフォン。フリーアジャストで、装着感も良好 | L側の電池収納部。ヘッドフォンで充電できないのは残念かも | R側には操作スイッチを配置。ウェイトバランスも問題なかったです |
■サラウンド効果はかなり良好。でも……
では、接続して聞いてみることにしますかね。まずはDVDから。光デジタルケーブルを接続し、DVDプレーヤーの設定をPCMにして、電源ON。まずは一番効果が高いと思われる「MULTI.CH」ですね。お、なかなかいい感じじゃないっすか?
最初に視聴した「スペースカウボーイ」冒頭の航空機飛行シーンでは、エンジン音が通常のステレオ音声の左右への広がりに加え、縦方向への音の広がりも感じ、ステレオ音声よりも臨場感を感じます。
ただ、5.1chスピーカーシステムと比べると、単に「音が広がった」というレベルで、定位感は正直薄く、「左右のどちらに動いたかがわかる」という感じ。ただ、縦方向への音場感はかなり高く、通常のヘッドフォン再生時の音場感に加え、首の後ろ左右45度程度からも音が聞こえる、という感触ですね。すごいのは、リバーブの影響があまり感じられないこと。
「Q SURROUND」などの「2chソースをサラウンド化」する技術の多くは、自分の体験してきた限り、リバーブの影響がかなり大きかったのですが、この「HP-F1」ではそんなことは気になりません。「多少、音が柔らかくなったかな?」という感触は受けますが、セリフも聞き取りやすく、自然な印象を受けます。
モードを「SURROUND」に変更すると、サラウンドの効果は多少落ちますが、「MULTI.CH」と印象はほぼ同じ。リバーブの影響は「MULTI.CH」よりも小さく、より聞き取りやすくなります。
ただ、音楽ソフトを聞いてみると「効果が薄いかな?」と思います。ヘッドフォンそのものの音域は、映画視聴を意識してか低音を強調気味。それに、映画は効果音がよく動いているから、2chでも音の動きがよくわかるのですが、音楽ソースだと音の移動はほとんどなし。印象としては「ホールで再生されている音響機器の音」って感じ。音楽再生時は素直に「STEREO」モードで聞いたほうがいいと思われます。
ワイヤレスヘッドフォンで気になる受光範囲もかなり広く、マニュアルにはトランスミッタから90度の範囲で左右4m、正面で11mとなってますが、実際に使用したときもマニュアルの記述ほぼそのままという印象(ま、直線で11mもある部屋がないので、直線距離は試してませんけど)。
さすがに真横に移動したりすると信号が途切れますが、信号が途切れてから30秒以上経過すると、ヘッドフォンの電源を自動的にOFFにする機能がついているので、電源を切り忘れて電池が使えなくなる、という事態の頻度は少ないと思われます。
操作性については、ヘッドフォン側に「BALANCE」、「VOLUME」のボリュームが付いて、装着時でも手探りで操作できるので基本的には問題なし。ただ、ボリュームダイヤルを上に上げると音量が下がるので、慣れるまでは間違えやすかったですね。あとはリモコンが付いていて、ソースとモードの切り替えができれば「完全リモート」で使えたんだけどなー、と思いますが、そこまでは贅沢というものでしょう。お値段もお手頃だったしね。
ここまではほぼ満足デス。どうしても、どうしても気になるのは、ホワイトノイズが結構ハデに乗っているんですなぁ。
エコーの影響はないんですけれども、ささやき声での会話シーンなど、静かなシーンでは音声よりもホワイトノイズが気になることも……。まー、ワイヤレスヘッドフォンはアナログ赤外線伝送方式の製品がほとんど。アナログ伝送故に、ほかの製品でもホワイトノイズが気になっていたものです。
幸い、この製品には前面に標準ヘッドフォン出力が付いております。うーん、ワイヤレスも快適なんだけど、このサラウンド効果をホワイトノイズなしで楽しめたらなー、と思い、手持ちのヘッドフォン「K-501」を繋いでみました。
……えーと、なんというか、あまり変わらない気がするんですが。ほかのヘッドフォンに繋ぎ変えてみてもホワイトノイズの絶対量はほとんど変わらず。ワイヤレス伝送時に比べれは多少はマシですが、両者を比較してみると30%減、という感じでしょうか。アナログ伝送でのロスに加え、どうも機器本来のホワイトノイズも多いみたい。んー、サラウンド効果が高い上に、エコーの影響が少ないブツなのに、残念であります。
ところで話は変わりますが、似たような製品をどこかで視聴したような気がしてるんですわ。どれだったかなー、と記憶をたどって思い出したのがプリンストンテクノロジーのワイヤレスサラウンドヘッドフォン「REVEUR(レヴール)」。
「REVEUR(レヴール)」は現在生産終了となってますが、ホワイトノイズの乗り具合とか、「MULTI.CH」などモード名称とか、光デジタル×1、ステレオRCA×2の入力端子とか共通する項目が……。もしかして、中身は同じなのでしょうか?
■どうしてもサラウンド効果を得たいなら
んー、使ってみた感想を一言で表せば、「2chソースの臨場感を増すためのヘッドフォン」という感じですかね。「包み込まれる感覚がする」という意味でのサラウンド効果は結構高いので、サラウンド機器としては優秀だと思います。
しかし、音響機器としてみた場合は、うーん、どうなんだろうか? ワイヤードでヘッドフォンを繋いでもホワイトノイズはかなり盛大。音楽ソースでの効果が薄いことを考えても、ちょっと使いにくいかも。せっかく光デジタル/PCMでソースが入力できるのに、トランスミッタ側でそのメリットがかなりの部分オミットされているわけですから。
ワイヤレスヘッドフォンでコードのわずらわしさから解放されるメリットは大きいものの、ワイヤレスヘッドフォンは電池が必要だし、なんと言ってもホワイトノイズが気になるのが難点。自分の場合、ヘッドフォンの使用頻度はテレビ視聴→音楽リスニング→DVD鑑賞の順。この中でサラウンドの効果を求めるのは、やはりDVD鑑賞時なわけで。ということで、自分はこのヘッドフォンを「手軽なDVD用サラウンド環境」とすることにします。
□ティアックのホームページ
(7月17日現在、この製品に関する情報は掲載されていない)
http://www.teac.co.jp/
□関連記事
【6月14日】ティアック、実売2万円前後のコードレスサラウンドヘッドフォン
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020614/teac.htm
(2002年7月17日)
[fujiwa-y@impress.co.jp]
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp