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第45回:劇場に行く前に復習しよう!
いつの間にか再販してた「メン・イン・ブラック」

 怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ タイミングよく再販、でも価格は変わらず……

メン・イン・ブラック
コレクターズエディション

価格:3,800円
発売日:2002年6月21日
品番:TSDD-24510
仕様:片面2層
収録時間:約98分
画面サイズ:ビスタサイズ(スクイーズ)
音声:1.ドルビーデジタル5.1ch(英語)
     2.ドルビーサラウンド(英語)
     3.ドルビーサラウンド(日本語)
発売元:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント

 7月6日、日米同時に公開された「メン・イン・ブラック2(MIB II)」。皆さんはもうご覧になっただろうか。日本国内では6日、7日の2日間で、動員47万人、興行収入6億7,000万円を記録。リリースによれば、奇しくも5年前の第1作とほぼ同額のスタートだという。また、米国では5日間で8,724万ドルを達成。「スパイダーマン」に続いて絶好調のソニー・ピクチャーズ、笑いが止まらないに違いない。

 ところで、公開に先立つことおよそ1カ月と2週間、第1作の「メン・イン・ブラック」のDVDが、ひっそりと再販された。ディスクの内容について変更は特にないようで、価格も3,800円と変わりはない。ただし、ケースがジュエルケースから、映画DVDでは主流のトールケースに様変わりした。

 ということは、SPEが展開中の「Big Buy 2500キャンペーン」とは、何の関係もない再販ということになる。同キャンペーンの対象商品なら、通常3,800円の作品が2,500円になっているからだ。要するに、MIB IIの公開に合わせた単なる再プレス、再出荷なのだろう。しかし、店頭で旧盤を見つけることはほとんど不可能になっていたので、「欲しかったけど買えずにいた人」、「MIB IIを観る前に復習しておきたい人」には、うれしい企画といえる。まだ買ってなかった私も、再販のニュースが気になっていた1人だ。

 DVD「メン・イン・ブラック」の初版は、2000年9月に発売。3,800円の通常版に加え、「DTSバージョン」(4,800円)と、「リミテッド・エディション」(5,300円)の計3種類のラインナップが店頭に並んだ。

 DTSバージョンは、通常版にはないDTSトラックを収録していたのが売り。再生環境も収録ディスクも少なかった当時、DTSというだけでかなり注目されたタイトルだ。また、DTSバージョンには、「日本語吹き替えがない」、「特典に日本語字幕がない」という特徴がある。本編の日本語字幕は出るので問題ないが、特典の字幕を日本語で観られないというのは、英語が弱い人(私を含む)にとっては痛かった。

 これは、DTS黎明期のディスクのため、仕様を全世界で共通にしたためといわれている。DTSを再生できる環境の少なかった当時において、リージョンごとに出せるほどの出荷数が見込めなかったのだろう。

 なお、リミテッド・エディションは、特典ディスクとブックレットがついた2枚組みのパッケージ。さらに、画面をビスタサイズ(スクイーズ)、またはスタンダードから選択できたという豪華な製品だった。ただし、DTS音声は入っておらず、オリジナル音声は、通常版と同じくドルビーデジタル5.1chとドルビーサラウンドで収録されていた。

 さて、今回再販されたのは、最もベーシックな通常版だ。オリジナル音声は、ドルビーデジタル5.1chとドルビーサラウンドの2トラックから選択可能。日本語吹き替えはドルビーサラウンドだ。

 吹き替えはともかく、オリジナルをドルビーサラウンドで収録しているところに、発売時期の古さを感じてしまう。DTSどころか、ドルビーデジタルですら導入比率が少なかったのだろう。DVDビデオの再生環境が、ここ数年で一気に拡大したことがわかる。

 しかし、いくら欲しいからとはいえ、そんな古いDVDビデオを、しかも当時と変わらない定価で買っていいものだろうか。そう、2,500円や1,500円といった再販廉価キャンペーンが華やかなりし昨今、2年前に発売されたソフトを3,800円で購入する自分。これは正しい選択といえるのだろうか? しかし、連日にわたるMIB IIのCM攻勢にあい、日増しに高まる「MIB観たい度」が抑え切れない。ヨドバシカメラにひっそりと置かれていた「メン・イン・ブラック」を手に取り、そのままレジに並んでしまった。



■ 古さを感じさせるも、安定した画質

 さて、観る前から気になっていたのは画質だ。ご存知の通り、洋画DVDの画質は2001年から2002年にかけて格段に良くなっている。以前のような「いかにも圧縮している」という画像は、よほど大画面でもない限り簡単には拝めなくなった。その高画質な最近のディスクとのギャップが怖い。

 結論からいえば、画質についてそれほど気になるところはなかった。確かに、最近のハイビットなディスクに比べると、輪郭がしっかりしてなかったり、ノイズも目に付きやすかったりする。現在の基準からは、とても高画質といいがたい。しかし、低ビットレートながらそつなくまとめているという印象で、それほど不自然に感じる点はなかった。販売開始が2000年9月であることを考えると、十分に高画質といえる。さすが、昔からファンに定評のあるSPEだ。

 DVD Bitrate Viewerでみた本編の平均ビットレートは、5.13Mbpsだった。かなり低いビットレートだ。それでいて普通に視聴できるレベルの画質なのはさすが。

Bit Rate Viewerで見た本編のビットレート

 一方、音声はドルビーデジタル5.1chが448Kbps、ドルビーサラウンドが192Kbps。最近のディスクに比べると「少し切れがないかな」と感じる部分もあるが、アクションシーンの臨場感はすごいのひとこと。特に、税関内でボールが跳ね回るシーン(チャプタ9)や、トンネル内を逆さまで高速走行するシーン(チャプタ25)では、ディスクリート5.1chならではの移動感を楽しめる。

 また、随所で出てくる小道具「ニューラライザー」の効果音は、前後左右からの包囲感がとても気持ち良い。LFEも効いており、5.1chサラウンドらしい迫力が楽しめた。ウィル・スミスがニューラライザーの発する赤い光に対して、「副作用があるかも」、「白血病になるのでは」などと劇中で心配しているのを尻目に、AVアンプの音場シミレーションモードを切り替えつつ繰り返し見てしまった。

 なお、編集部にDTSバージョン(ただし米国盤)があったので、今回買った通常版と見比べてみた。DTSバージョン、通常版とも画質はほぼ同じ。すべてのチャプタを観たわけではないが、私には同じ絵に見えた。音質はさすがにDTSの方が鋭く、セリフや効果音がくっきりとする。ただし、BGMについてはそれほど差異は感じられない。ちなみに、DTSバージョンにおけるDTSトラックの音声ビットレートは、フルレートではなく768kbpsだった。


■ 字幕が映像に? 珍しい「ビジュアル・コメンタリー」

 特典の目玉は、バリー・ソネンフェルド監督とトミー・リー・ジョーンズのコメンタリー(音声解説)だろう。ソネンフェルドはともかく、トミー・リー・ジョーンズが内輪話を朴訥と語るのが楽しい。

 通常の音声解説に加え、「ビジュアル・コメンタリー」という趣向も楽しめる。これは、画面の下に2人のシルエットが出るというもの。画面に合わせて手や上半身を動かしているので、実際の収録風景を取り込んだものと思われる。スクリーンを見ながら、2人が感想を語り合うという雰囲気だ。

 このシルエットは、サブピクチャで作られており、日本語字幕の扱いで入っている。サブピクチャとしては縦幅が大きく、映像とあわせるとかなりの高さになる。そのためか、プレーヤーの設定を4:3にしないと表示されない。面白い試みだが、ワイドテレビで普段視聴している人には、設定の変更が少し煩わしいかもしれない。また、シルエットにサブピクチャをとられてしまうので、日本語字幕はなし。聞き取りにくいトミー・リー・ジョーンズの英語を字幕なしで理解することは、私には不可能だった。もちろん、メニュー内で「音声解説のみ」を選択すれば、シルエットは消えるものの、日本語字幕つきで楽しむことができる。

 そのほかの特典は、「トンネルのシーンの製作工程」、「メイキング・オブ・MiB」、「未公開シーン」、「アート&アニメーション」、「プロダクションフォト・ギャラリー」、「タレント・ファイル」、「オリジナル劇場予告編」、「メイキング・ドキュメンタリー」と盛りだくさん。最も気になるのは「未公開シーン」だが、5本を収録している。

 また、「トンネルのシーンの製作工程」では、ストーリーボードからブルースクリーン、CG合成を経て、ファイナルカットにいたるまでをマルチアングルで検証できる。'97年公開の作品なので製作手法に多少の古さは認められるものの、この手のCGアクションの製作過程がよくわかるつくりになっている。


■ 公開中のMIB IIにも期待

 改めて視聴して思ったのは、この作品の設定のうまさと、ソネンフェルド監督のデザイン感覚の良さだ。約1,500ものエイリアンがすでに地球に移住済みで、30年前から対エイリアン用の統括組織が人知れず存在するという設定。そこにトミー・リー・ジョーンズとウィル・スミスによる「バディもの」の面白さと、'60年代風のレトロフューチャーデザインを合わせたセンスが光る。また、「決して知られてはならない存在」が持つ悲しさが、身近でリアルなヒーロー像を構築できた要因だと思う。公開当時はコメディタッチの単なるアクション映画だと認識していたが、再度DVDで視聴して、大ヒットの原因がわかったような気がした。

 さて、この再販版「メン・イン・ブラック」だが、発売から2年たった現在でも、本編、特典ともに良質な内容だと感じた。ただし、やはり最新ディスクと比べると、画質・音質面で見劣りするのは確か。3,800円という価格も、再販であることを考えると少し物足りない気がする。2,500円のBig Buyキャンペーンで扱って欲しい、というのは無理な相談だろうか。

 もっとも、特典字幕などのローカライズを行なった「2002年版DTSバージョン」を出してもらえるなら、さらに魅力的なのだが。いまやDTS再生環境も、2000年に比べればかなり普及している。

 しかし、個人的に公開中の「MIB II」を観る予定はなかったのだが、DVDを視聴して「やはりこれは観に行かねば」と決意した次第。MIB IIでは、製作総指揮のスティーブン・スピルバーグ以下、主要スタッフが再び結集。トミー・リー・ジョーンズも復活してるし、特殊効果のリック・ベイカーやILMも再参加している。今見るとギクシャクしていたエイリアンたちも、5年の歳月を経てパワーアップしているのは間違いない。全国の松竹・東急系で8月23日まで上映しているそうだ。

 最後に、DTSバージョンとリミテッドエディションについて。SPEによると在庫が若干あるそうなので、店頭で注文すれば入手できるかも知れないとのこと。DTS環境がないため、発売当時に通常版を買ってしまった人にとって、DTSバージョンを手に入れる最後のチャンスになるかもしれない。

●このDVDについて
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前回の「ハイビジョン 謎の沖縄海底遺跡」のアンケート結果
総投票数422票
[購入済み]
8票
2%
[買いたくなった]
116票
27%
[買う気はない]
298票
71%

□SPEのホームページ
http://www.spe.co.jp/
□製品情報
http://www.spe.co.jp/video/dvd/200206/tsdd-24510.html
□メン・イン・ブラック2のホームページ
http://www.mib2.jp/

(2002年8月2日)

[orimoto@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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