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第80回:エフェクトなどが強化された
「DigiOnSound3」を検証する


 デジオンから新たな波形編集ソフト「DigiOnSound3」が発売になった。名前からもわかるとおり、以前紹介した「DigiOnSound2」の後継に当たるものだが、ASIOドライバやVSTプラグインに対応するなど、さまざまな機能強化が図られている。DigiOnSound3で何ができるのか、実際の使用感を交えて紹介する。


■ ソフトも発売元も新しくなったDigiOnSound

 当連載では、これまで何度かデジオンのソフトを取り上げている。波形編集ソフトの「DigiOnSound2」、DVDオーディオ用オーサリングソフト「DigiOnAudio」についても先日紹介したばかりだ。また、ジャストシステムの「MP3 BeatJam XX-TREME」もデジオンが開発したソフト。このソフトも以前取り上げた。

 そして、今回発売された「DigiOnSound3」は、価格も45,000円と前バージョンよりも3,000円アップ。また、ジャストシステムが発売元だったDigiOnSound2までとは異なり、今回は自社発売に変わっている。

 起動させた雰囲気は、前バージョンとあまり差を感じない。スペック的に見れば、32bit/192kHzにまで対応するとともに、オーディオのトラック数は無制限。またエフェクトについては、オリジナルのエフェクトを装備しているほかにDirectXプラグイン、VSTプラグイン、DMO(DirectX Media Object)に対応している。さらにビデオファイルにも対応していたり、グラフィカルなミキサー機能を持っているなど、なかなかのもの。しかし、ここまでは前バージョンとまったく変わらない。

 大きな変更点といえるのは、まずASIOドライバに対応したこと。ASIOの詳細は省略するが、これはSteinbergが規格化したオーディオインターフェイスのドライバ規格であり、音楽制作の世界ではWindowsでもMacでも標準として使われている。このASIOドライバに対応したことで、マルチポート対応のオーディオインターフェイスと組み合わせることで、マルチトラックを同時録音することができるようになる。ただし、出力はステレオ2ch固定のみで、トラックごとに別のチャンネルで出力するということはできない。

DigiOnSound2とインターフェイスに大きな違いはない VSTプラグインに対応。DirectXプラグイン、DMOもサポートする ASIOドライバの設定画面

 また、従来と同様、MP3やWMA、RealMediaなどに対応しているのに加え、mp3PRO、Ogg Vorbisなどの読み書きが可能になった。さらに、元来あったヒスノイズに加え、ハムノイズおよびクラックルノイズの除去ノイズリダクションとして追加されている。

 せっかくなので、いつものようにノイズリダクションのテストを行なってみた。いずれも、設定は比較的単純で、ヒスノイズは効果の大小とノイズゲートの設定、ハムノイズは効果の大小と、ノイズが種別(50Hz、または60Hz)を自動判断させるかという設定。そしてクラックルノイズには効果の大小というパラメータが用意されていた。

mp3PROに対応 品質優先(VBR)と平均ビットレート優先(ABR)が選択できる ヒスノイズの除去では、効果の大小とノイズゲートの設定をする

ハムノイズの設定。効果の大小に加え、50Hz、60Hzの自動判断機能も装備 クラックルノイズの設定は、効果の大小のみ


使用したNR機能 ファイル
ヒスノイズ hiss.mp3
(1,178KB)
ハムノイズ hum.mp3
(1,177KB)
クラックルノイズ cracle.mp3
(472KB)

 それぞれで試してみた結果をMP3化しておいたので、聴いてみていただきたい。ノイズリダクションソフトとしては、あまりいい結果とはいえないようだ。単純に50Hzの音を引くだけのハムノイズにしても、かなりのノイズが残っている。ヒスノイズ、クラックルノイズともに同様で、効果を上げると音が痩せるし、下げるとノイズがほとんど消えないという状況。ノイズリダクション機能をつけるなら、もう少し機能強化してもらいたいところ。


■ そのほかの追加機能について

 そのほか、音楽CD作成機能利用できるようになった。特別にすごい機能ではないが、CD作成が目的の人には便利だ。

 従来のバージョンもそうだが、実際に各機能を使ってみた操作感は悪くない。筆者の場合、あまりビデオ編集用としてこの手のソフトを扱うことがあまりないが、DigiOnSound3ではAVIファイルやMPEGファイルを読み込むことができる。ビデオのBGMやナレーションを追加するといったニーズであれば、マルチトラックであるし、結構使いやすいだろう。

 また、単純に波形編集ソフトとしてとらえてみても、サンプル単位でのエディットもできたり、ほぼすべてのプラグイン形式に対応しているなど、盛り込める機能はほぼすべて搭載されているといった感じだ。このプラグインに関してはDigiOnSound2と同じではあるが、エフェクトチェインという機能があり、DigiOnSound3オリジナルのエフェクトに加えDirectXもVSTもDMOも含めたすべてのプラグインを組み合わせて1つのエフェクトとして利用する機能なども用意されている。

 さて、ではこれをマルチトラックレコーダーとして評価してみるとどうだろうか? 比較対象はどうしても、CubaseやLogic、SONARといったDAWソフトとなってしまうのだが……。

音楽CDの作成も可能になった すべてのプラグインを組み合わせ、1つのエフェクトとして利用するエフェクトチェイン機能

 まあ、MIDI機能が搭載されていないというのは当然としても、音楽制作用の環境として捉えると、ちょっと機能的には弱い。マニュアルを見ると、テンポを作り出すために、CD-ROMにいくつか収録されているリズムデータを読み込み、それをメトロノーム代わりに使うようにとあるが、当然決まったテンポしかなく、あまり実用的とはいえない。また、ASIO対応で、複数チャンネルの同時レコーディングが可能になったのは大きいが、このレコーディング時や再生時にリアルタイムエフェクトがかけられるというわけでもない。エフェクトはあくまでも波形を編集する機能として搭載されているだけなのだ。一般のDAWソフトの場合、リアルタイムにエフェクトをかけることができ、それをすぐにモニタできるからこそ、レイテンシーの小さなASIOドライバの価値も出てくるというものなのだが……。

 またミキサー機能も、見た目はそこそこいいデザインではあるが、マルチトラックレコーダーとして考えると改善の余地はかなりありそう。たしかに、こちらはリアルタイムで操作ができるようになっているのだが、その操作はリアルタイムで行なう限りであって、フェーダーの動きを記録するといった機能は持っていない。グルーピングはできるのだが、オフセット値があると、そのトラックを完全にゼロにまで落とすことができないなど、ほかのソフトを使っていると、やや妙に感じる部分もあった。また、できればマウスだけの操作ではなく、外部接続のフィジカルコントローラから操作できるようになると、より使いやすくなるのだが……。こうした点を考えると、まだまだ機能追加、バージョンアップ可能な領域はいろいろありそうだ。

 とはいえ、各トラックともに、波形編集ソフトとして完全なエディットができるため、DAWソフトよりも、より細かな音作りが可能であるということも確か。つまり現在のところは、DAWソフトとして期待するよりも、波形編集ソフトで、マルチトラックも扱うことが可能と考えたほうがいいのだろう。

 現在のところ、こうしたサウンド関連のソフトは海外勢が圧倒的に強く、日本のソフトが少ない中、これだけ機能豊富に仕上げていることは十分評価できる。ぜひ、これからも海外ソフトに負けることなく、よりよいソフトへと成長していくことを期待したい。



□デジオンのホームページ
http://www.digion.com/
□ニュースリリース
http://www.digion.com/news/20021016.htm
□製品情報(DigiOnSound3)
http://www.digion.com/pro/ds3_main.htm
□製品情報(DigiOnSound3 Express)
http://www.digion.com/pro/ds3ex_main.htm
□関連記事
【10月16日】デジオン、対応フォーマットやエフェクトを充実した「DigiOnSound3」
―ヒスノイズや針飛び音、ハムノイズなどの除去機能も搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20021016/digion.htm
【2001年10月11日】ジャストシステム、マルチトラック波形編集ソフト「DigiOnSound2」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011011/just.htm

(2002年12月2日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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