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第83回:PC用オーディオデバイスの音質をチェックする
〜 序章:ノイズ、レベル、波形変化の検証法 〜


 明けましておめでとうございます。本年も、よろしくお願いします。さて、昨年末の12月23日が祝日だったため、Digital Audio Laboratoryは年をまたいで3週間ぶりの再開ということになる。年も改まったことで、今回から新シリーズに移行したいと思う。

 内容は、さまざまなオーディオインターフェイスの音質・性能をテストするというもの。感性に頼ったテストではなく、具体的に数値で結果でるテストを行なっていく。しかも多くの人が自分の手元の環境でも同様の実験できることを重視する。今回はその序章として、実験方法などポイントを紹介したい。


■ USBオーディオはノイズレス? 4つの検証方法を考える

 私はこのコラム以外にも、All About JapanというサイトでDTM・デジタルレコーディングのガイドも行なっている。これらの読者の質問で多いのは、オーディオインターフェイスの音質やノイズについてだ。

 たとえば、「USBのオーディオインターフェイスを使っているのですが、かなりノイズが入ります。USBならばPCの外部にインターフェイス部分があるので、ノイズは無いと聞いたのですが……」というものや、「サウンドカードの購入を考えているのですが、USBタイプのものとPCIカードタイプのものでは、どちらが音質がいいのでしょうか」といったもの。

 もちろん、好みの問題もあるので一言で、「これがいい」というような結論は出せないが、経験上、どうも「USBなら無条件でノイズレスである」というのは間違いだと実感している。やはり安い機材ではUSBケーブルを通じてもノイズが伝播することもあるだろうし、そもそもアナログ回路部分の設計が悪くノイズが混入することもあるはずだ。一方でPCIカードなら良いとか、悪いということも一概には言えない。確かにPC内部に置かれるので、外部に置かれるUSB接続デバイスよりも条件は悪いが、シールドをキッチリし、オーディオ機器としても十分利用可能な製品も少なくない。

 そこで、これらさまざまあるオーディオインターフェイス、サウンドカードなどを一定の方式でテストをし、同じ条件下で比べてみたい。具体的には、以下の4つの実験を考えた。

  1. 入出力を直結し、無音をレコーディングする。発生したノイズレベルを計る
  2. 入出力を直結し、矩形波を再生・レコーディングする。信号の形がどのくらい正確に再現されるのかを見る
  3. 入出力を直結し、スイープ信号を再生・レコーディングする。原音とのレベルの変化を調べる
  4. 入出力を直結し、サイン波を再生・レコーディングする。歪みがどのくらいあるのか元波形と比べる
 これらの実験にはいくつかのポイントがある。まず入出力を直結しているが、使用するケーブルにより、ケーブル自体が外部ノイズなどの影響を受ける可能性がある。そこで、なるべく短いケーブルを使用し、できるだけ信頼性の高いケーブルを用いることにした。

 いろいろなブランドのいろいろなケーブルがあるが、ここではレコーディングスタジオでも利用されている、フックアップ取り扱いの「Vital Audio Professional Cable Series」から3種類を購入した。長さはいずれも50cm。ステレオなので各2本ずつ、価格は計14,000円程度だった。

RCA−RCA バランスTRSフォン−バランスTRSフォン RCA−アンバランスTRSフォン


■ 24bit/48kHzのチェック用データを生成、WaveSpectraのFFT設定も変更

 1番目の実験では、PC内部の雑音が影響する可能性を考え、あまりドライブ類(CD-ROM、HDDなど)が動いていない状態と、ドライブ類が動いている状態の2種類を試したい。そこで、ドライブ類の作動時のチェックは、CD-ROMドライブからHDDへのリッピングをすることにした。また、リッピングに使うソフトはWindows Media Playerを選んだ。

 さらに、ノイズレベルを見るとともにDCオフセット値がどのくらいあるかも一緒に確認する。なおレコーディングにおけるサンプリングレートおよびサンプリングビット数は多くのオーディオインターフェイス、サウンドカードが対応している48kHz/24bit/ステレオとした。

実験2で使う-20dBの矩形波

 2番目の実験はあくまでも波形を見るだけであるが、そのレベルがオリジナルと比較してどうなのかも確認してみる。当初、1kHzで-6dBの矩形波を使って実験してみようとしていた。しかし、レベルが小さいほうが差が出やすいのではないかと考え、-20dBのデータを生成。こうしたデータの生成もすべて48kHz/24bit/ステレオのデータで作った。

 そして3番目の実験は、-6dBのサイン波を120秒かけてスイープさせる信号を用い、周波数によってどのくらいの減衰があるのかをチェックする。この結果を視覚的に見るために、以前、MP3などのオーディオ圧縮技術の比較記事でも扱ったefu氏のフリーウェア、WaveSpectraというソフトを用いる。ただし、以前のオーディオ圧縮の比較記事のときとは異なり、横軸をリニアではなくLog表示させることにした。

 4番目の実験もWaveSpectraで結果を確認する。ただし、こちらもより精度を上げた表示にするために、FFTのサンプルデータ数を最高の65536に引き上げる。

本連載ではおなじみのフリーウェア「WaveSpectra」。次回からは横軸をリニア表示からlog表示に変更する スペクトラム表示の設定メニュー。ここで縦軸と横軸をdB、Logへと切り替え可能 精度を高めるため、FFTのサンプルデータ数を「65536」に

 いずれの実験もノイズや歪みなどは、出力側と入力側の2つの影響を受ける。そのため、ノイズなどは倍増される可能性もあり、当然メーカーが公表している数値などよりも悪い結果にはなるだろう。また、あくまでも筆者の手元のマシンを用いた小規模実験なので、この点でもメーカーの公表値などと比較して悪い結果になると思われるが、より実際の使用環境に近い実験といえるかもしれない。


■ 家庭では難しい? それでもノイズを確認

Sound Engine
 さて試しに、以前よりEDIROLから借りていたUSBオーディオインターフェイス「UA-700」を用いてテストした。まず、テストには波形編集ソフトが必要となるが、「Sound Forge」をはじめとする多くの波形編集ソフトでは、再生しながら録音することができない。そこで、フリーウェアである「Sound Engine」をダウンロードし、これで再生し、Sound Forgeで録音することにした。

 続いてはレベル調整。本来は出力も0dB、入力も0dBに設定して行ないたいのだが、多くのオーディオインターフェイスでは、こうした設定ができない。たとえば、UA-700では出力、入力ともに操作パネル上のボリュームをコントロールして設定する。仕方ないので、テスト信号として1kHzのサイン波を-6dBで出力し、それの入力レベルが約-6dBになるように、各ボリュームを設定することで、基準値とすることにした。

 各実験の詳細については、次回掲載したいと思うが、さわりだけを紹介しておこう。たとえば、一番気になる無音時のレコーディング状態、つまりノイズレベルがどの程度あるかだが、UA-700の場合、最高で-75dB程度のレベルでノイズが発生しており、平均的に見ると、-85dB前後のDCオフセットが発生していることがわかる。ただし、CD-ROMドライブとHDDを動かしながらでの測定でも、この結果はほとんど変わらなかった。

 疑り深く考えると、ノイズゲートを設置し、一定レベル以下のノイズをカットしているという可能性も考えられるが、それならば、このように表示されるノイズもすべて0レベルになっているはずなので、この結果が実際のところなのだろう。

 では、次回以降、代表的なオーディオインターフェイス、サウンドカードなどをチェックしていきたいと思う。


□フックアップのホームページ
http://www.hookup.co.jp/
□製品情報(Vital Audio)
http://www.hookup.co.jp/products/music/vital/vital.html
□関連記事
【2002年8月26日】【DAL】波形編集ソフトの性能とは?
〜 その3:Sound ForgeとWaveLabを比較する 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020826/dal68.htm

(2002年12月16日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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