■ PCディスプレイでTVを見たい
PCベースのTVキャプチャの流行からしばらく経過し、どのメーカー製PCにもTVチューナユニットが付いている昨今。当然自分の仕事場でもテレビを見たい時があるわけで、そんな時には、大抵PCに組み込んでいたTVキャプチャカードを利用していた。 しかし、筆者が使用しているPCは、2年以上前に組まれたPC。初代Athlon(Slot A)用のVIA KT133チップセットを採用したIwill製の「KV200」というマザーボードを使用している。最近はサードパーティ製チップセットでも不具合が発生することは少ないのだが、このマザーボードは、当時の新アーキテクチャに対応した第1世代チップセット採用モデル。キャプチャ関連の機器には結構シビアで、例えば、エルザジャパンの「EX-VISION 500TV」やAOpenの「VA1000MAX」といったキャプチャカードではトラブルが多く、しばらくは職場でTVなし生活を送っていた。 そんなわけで、「もっと気軽にPC用ディスプレイでTVが見られるようにならないかな~」などと思っていたところ、なにやらちょこちょことTVチューナつきスキャンコンバータが発売されている模様。「これだったら、PCをいじらずにTVが見られる」ということで、購入を検討するためノバックからTVチューナ付きのスキャンコンバータ「EntaVision(NV-ET768)」を借りてみた。 ■ ちょっと安っぽい筐体
このEntaVisionを簡単に説明すると、PC用ディスプレイをTV化するTVチューナ内蔵スキャンコンバータ。チューナは音声多重/ステレオ対応。プログレッシブ回路を搭載し、特に液晶ディスプレイでの使用を前提に設計したとのこと。秋葉原では11月に発売されており、実売価格は15,000~17,000円といったところ。 まず、編集部に届いた箱を見てみると、予想に反して結構でかい。PCのマザーボード用の箱とほぼ同じくらいのサイズはありそうだ。「もしかして本体も凄くでかいものなの?」などと若干不安になるが、箱を開けてみると、ほぼ予想通りの大きさで、本体サイズは200×120×27mm。重量は250g。外装はプラスチックで、ちょっと安っぽい。 同梱品は、本体のほか、赤外線リモコンや専用のVGAケーブル(ループバック用のD-Sub15ピン-DIN)、AV分岐ケーブル、S映像ケーブル、オーディオケーブル、FM用アンテナ、ACアダプタ。 インターフェイスは、入力側が、AV入力(専用分岐ケーブルによるコンポジットビデオとステレオミニ)、S映像、FMアンテナ入力と、VGA入力端子(PCのVGA出力と専用ケーブルで接続)。出力はD-Sub15ピンとオーディオ出力を装備する。
■ 使用前のちょっとしたトラブル
早速、PCとディスプレイの間に設置して、それぞれとEntaVisionを接続。三菱製の17型CRTディスプレイ「RDF171S」に接続してみたが、幅広なため置き場にやや困る。縦置きに対応していると良かったのだが……。 とりあえず、PC出力が正常かを確認するために「EntaVision」を電源OFF状態でPCにスルー出力してみると、1,024×768ドットであれば、PCとの直接接続と比べて少しだけフォーカスが甘くなったかなと感じるぐらい。このまま常用しても普通に使えそうだ。ただ、1,280×960ドットに上げるとゴーストこそ目立たないが、フォーカスもより甘くなり、目が疲れそう。常用するにはちょっと難しい感じだ。もっともXGAを超える解像度だと、EntaVisionの特徴の1つである「ピクチャインピクチャ」機能が使えなくなってしまうので、XGAで使うのが一番いいだろう。 この製品の第1のセールスポイントは、TVチューナの内蔵により、PCの電源を落としていてもPCディスプレイをTV化できるということ。早速TVチューナ機能を使ってみようと思ったのだが、チャンネル設定でトラブルが……。 リモコンの[scan]ボタンを押して、オートスキャンを行なうと自動的にチャンネルを設定が行なわれるはずなのだが、うまくチャンネルを検出しない。電源を入れなおしても症状は回復せず、編集部の環境に問題があるのか良くわからなかったのだが、1日ほどあけて、電源を投入したところなぜかスキャンを行なわなくてもきちんと設定されていた。 ■ 「ながら視聴」には満足の表示品質 まずは、TV出力をCRTディスプレイに出力してみる。対応出力解像度は1,024×768(XGA)/800×600(SVGA)/640×480(VGA)ドットで、本体の設定ボタンか、リモコンの[AV Settings]ボタンでOSDメニューから解像度を選択できる。とりあえずVGAで出力すると、まずまずのクオリティで見える。ジャギーや不自然な輪郭線も時折覗くが、もともと受信感度のよろしくない環境にしては満足できる画質だ。
ちなみに、チャンネル切り替えは本体のチャンネルボタンのほか、リモコンでも行なえる。リモコンは、テンキーで番号を入力したあとに[Enter]ボタンを押すという仕組みで、たとえば、10チャンネルだと[1]→[0]→[Enter]と入力することになる。パソコンに内蔵のキャプチャカードなどだと、チャンネル切り替え時にタイムラグが数秒あったりするが、EntaVisonでは1秒以内に切り替わり、チャンネル変更時のストレスは感じない。 なお、VGA表示時にはなかなか高画質だったが、SVGA/XGAと解像度を上げていくに従い、ジャギーや滲みが目立った。CRTで使うときはVGAで見るのが良いと思う。 TVチューナ入力のほか、コンポジット端子や、S映像などの外部入力端子を利用して、DVDプレーヤーやゲーム機などを接続することもできる。とりあえず、ソニーの低価格DVDプレーヤー「NS-515」とS映像で接続し、DVD「スパイダーマン」を見てみると、普通にTVに表示した時に比べて、色抜けの悪さが若干目立つものの、まずまず使える印象。ただし、スパイダーマンのチャプター17など、動きが激しく、様々な色調の交じり合うシーンにおいては、描画の遅れや滲みなどが気になった。
CRTでのインプレッションはこの辺にして、液晶ディスプレイでもテストしてみる。製品情報ページには、「特に液晶ディスプレイでの使用を前提に開発」、「XGA出力に対応し、液晶ディスプレイ特有の画像伸張処理によるジャギーの発生を抑えました」と書かれており、液晶ディスプレイでの表示品質は期待できそう。 まず、日本サムスンの17型液晶ディスプレイ(パネルはSXGA)で、VGA、SVGA、XGAでリアル解像度表示してみると、たしかに、解像度を上げても不自然なジャギーは少なく、CRTの時よりちゃんと見える感じだ。XGA表示でもTV映像を見る分には満足できる画質だと思う。また、XGAパネルのNEC製15型液晶ディスプレイ「MultiSync 1525M」でフル画面表示した際も、CRTのときより好印象だった。 もちろん、専用パネルに専用回路を組み込んだ液晶テレビなどとは、画質差は大きいが、安価に液晶ディスプレイをTV化できるという点では悪くない画質だと思う。DVD再生時にも、CRTよりも画面の破綻が少なく、かなり使える印象を持った。
また、もうひとつの特徴として、PC画面に小さなTV表示用のウインドウを表示するピクチャインピクチャ(PIP)機能がある。PIPモードの選択は、本体の表示モードボタン、もしくはリモコンのModeボタンで行なう。表示モードボタンでは[フルスクリーンテレビ]→[フルスクリーンコンポジット]→[フルスクリーンSビデオ]→[FM受信]→[PiPテレビ]→[PiPコンポジット]→[PiP Sビデオ]→[VGA背景でのFM受信]→[VGA表示]の順に切り替えが行なわれる。 PIPの動作条件は、XGA以下の解像度で、リフレッシュレート70Hz~75Hz。PIPは、キャプチャカードなど様々な機器でおなじみの機能。PCでメールを書きながら同画面でテレビを見るといった時にはかなり便利だ。ただ、表示箇所が画面右下固定であることや、表示時に緑色の枠線が消せないことがやや気になった。 また、FMチューナも内蔵しており、こちらとTV同様にリモコン入力で局選択を行なう。例えばFM81.3MHzであれば、[8]→[1]→[3]→[Enter]といった具合だ。また、本体のチャンネル上下ボタンで0.1MHzずつ設定することも可能だ。 ■ まとめ
チャンネル設定などでやや戸惑ったが、操作系はよくまとまっており、きちんと設定できれば気楽にPCディスプレイでテレビ視聴を楽しめるお手ごろな製品といえそうだ。 ただ、設置スペースを考えると、縦置きができるとより快適になったと思う。特に液晶ディスプレイだと本体をディスプレイ上部に置くわけにはいかないわけで、次の製品あたりでは考慮して欲しいところ。画質についても、もう一歩品質が上がればいいかなという印象をもった。 また、試用機特有の問題かもしれないが、電源コネクタが抜けやすく、利用時に少し移動させようとするとコードが抜けてしまったりということがあった。このあたりの工作精度がもう少し向上してくれると安心して使えると思う。 もっとも、TVでゲームをしながらPCディスプレイでTV放送を見るといったように、2画面を利用して同時に別々のことをやりたいといったユーザーは結構多いと思う。そうしたユーザーにとっては手軽に手を出しやすい価格と性能をうまくまとめた製品だと思う。
□ノバックのホームページ (2003年1月24日)
[ AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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