■ Lifeは4つのアプリケーションを統合したマルチメディアスイート
複数のアプリケーションが1つのパッケージになっているという形態は、マイクロソフトのOfficeなどがあげられる。Officeはビジネス向けのオフィススイートだが、iLifeではデジタルコンテンツを扱うマルチメディアスイートと言うべき製品。 価格は5,800円で、DVD-ROMとCD-ROM各1枚の2枚組み。DVDの書き込みが可能なSuperDrive搭載製品にはこのパッケージが同梱されている。 しかし、発売されたばかりのiLifeのパッケージは、品薄で手に入りにくく、秋葉原の店頭でも在庫を切らし、入荷未定というところも多かった。筆者は、運良く、地元の行きつけの量販家電店で最後の1個をゲットすることができた。 なお、iDVDを除く3つのアプリケーションはアップルのWebサイトからダウンロード可能なほか、Mac OS X 10.2ユーザーはシステムアップデートにより、自動アップデートが行なえる。ただし、3つのファイルをダウンロードした場合、トータルで100MBを越えてしまうため、FTTHやADSLといったブロードバンド環境を持たないユーザーにとってはダウンロードによるアップデートは難しいだろう。
■ アプリケーション間の連携は抜群
iLifeが優れている点は各アプリケーションの役割分担がきっちりしていながらも、ほかのiアプリケーションとの連携も図られている点である。 たとえば、iPhotoで作ったスライドショーのBGMに、iTunesで管理している音楽ファイルを使用したり、その作成したスライドショーをiDVDを使ってDVDに書き込むといったことが簡単に行なえる。iPhotoで取り込んだデジタルカメラの画像をiMovie上で特殊効果を与え、動画のように見せるなど、アプリケーション間を自由に行き来できる。 また、デジタルコンテンツの取り扱いが、ファイルを意識せずに行なえるという点がiLifeのメリットとも言える。Windows系のソフトではどうしても始めにファイルありきという印象になってしまうが、ファイルを意識することなくDVDタイトルが作成できる点はiLifeならではのものと言えるだろう。 各アプリケーションの操作性も良好だ。どのソフトも同じような操作感で利用できる。各iアプリケーションは「メタル」インターフェイスを採用している。従来全画面表示だったiMovieもバージョンアップに伴い、ウィンドウ表示に変更され、ほかのアプリケーションからの切り替えも簡単だ。
■ 各ソフトの操作感は良好
iLifeはアプリケーション間の連携に優れているが、当然、ここのアプリケーションの使い勝手が悪ければシームレスな操作感も台なしだ。その点に関しては問題なく、各アプリケーションの完成度は高い。 音楽管理ソフト「iTunes」はバージョンが3.0になり、「iTunes3」になった。バージョンアップに伴う機能の変化はないが、ほかのiアプリケーションとの連携も向上し、iTunes上で管理している楽曲ファイルはほかのiアプリケーションからもアクセス可能となっている。また、iPodにも簡単にデータ転送できるのもiTunesのよいところ。FireWire経由で接続すれば自動的に楽曲データのシンクロナイズが行なえる。 デジタルカメラ画像管理ソフト「iPhoto」は、iLifeへの対応に伴い、「iPhoto2」になった。iPhotoで取り込んだ画像ファイルを他のアプリケーションから活用できるようになったほか、レタッチ機能を装備するなど、機能アップを果たしている。レタッチ機能では、撮影に失敗した画像をワンタッチで補正できる。デジタルカメラの取り込みも簡単で、iPhotoに対応しているデジタルカメラは多い。USBケーブルさえあればiPhotoが自動的に起動し、データの取り込みを行なってくれる。 動画編集ソフトであるiMovieも大幅に機能アップを果たし、「iMovie3」になった。エフェクトも充実している点は見逃せない。今回のiMovie3では「Ken Burnsエフェクト」などの豊富なエフェクトをサポートし、作成するムービーの視覚効果を高めることができる。また、iPhotoで管理しているデジタルカメラの画像を利用してムービーのワンシーンとして取りこめば、DVカメラがなくてもムービーの作成が可能だ。 DVD作成ソフト「iDVD」も、「iDVD3」として生まれ変わった。これにより、ほかのiアプリケーションとのスムーズに連携が行なえるようになっている。iDVD3はiPhotoやiMovie上からも呼び出し可能で、iPhotoで作成したスライドショーやiMovieで作成したムービーもiDVDを使ってDVDに記録することもできる。それぞれのオブジェクトを組み込んで1つのプロジェクトを作り上げていくという感じで、パズル感覚でDVDが作成できるのがiDVDの良さといえるだろう。
■ Windowsでも同じことはできるが…… iLifeによるコンテンツの管理/加工はシームレスに行なうことができ、かなりイイ線をいっていると思う。ここまでできが良いとサードパーティの入り込む余地が無くなるのではと思うほどだ。では、このソリューションをWindows環境で実現できるだろうか? もちろん、豊富なアプリケーション資産を持つWindowsの場合、iLifeでできることができないということはない。しかし、それなりの機能を望む場合、どうしてもMicrosoft以外のソフトが必要になってきてしまうのがWindowsの環境といえる。 例えばWindowsに標準で入っている「Windows Media Player」では、CDの再生、リッピング、ライブラリ上にある音楽ファイルのCDの書き出しや、動画の再生が行なえる。iTunesと比較した場合、動画再生が行なえる点がアドバンテージとなっているが、音楽を聞いてリッピングするだけならシンプルな分iTunesの方が使い勝手は良い。 また、Windows XPには「デジタルカメラウィザード」機能が用意されており、簡単にPC上にデジタルカメラのデータを転送できる。ビデオ編集に関しては、Windowsでも「MovieMaker」と呼ばれる無料のアプリケーションを提供している。ただ、これらの機能は必要最小限のものであって、それなりに使うこなすにはやはり市販パッケージの力が必要だ。 また、Windows系のアプリケーションの場合、1社でiLifeでできる機能をすべて取りそろえるソフトベンダーは、ないのではないだろうか? 開発元が違えば各アプリケーションごとに操作感の違いがある。OS側の責任ではないが、各社のアプリケーションに対するスタンスの違いが感じられる。
■ シームレスな操作感はデジタルハブとしては悪くないソリューション アップルではデジタルハブというコンセプトを打ち出している。すべてのデジタル家電の中心にMacintoshを据えるという戦略だ。デジタルデバイスをすべて飲み込んでしまうWindowsと異なり、アップルの考えているデジタルハブは各デジタルデバイスとの一定の距離を置くことでデジタル家電との親和性をはかっているように見える。iLifeにも同じようなことは言えるが、各アプリケーションにそれぞれのテリトリーを持たせながら、きちんと連携できるというのはなかなかない。 パッケージ単体では5,800円と安価ではあるものの、Macintoshを所有していない、もしくはMac OS Xが動かないような旧機種のユーザーにとっては、新たにMacintoshを1台購入しなければいけないというのは厳しい。しかし、使い勝手に関しては、iLifeは誰にでもお勧めできる製品だ。 iLifeの各アプリケーションについている機能はなんら珍しいものではない。ただ、複数のアプリケーションと組み合わせることで、今までにない操作感を生み出す。そういうことを直感的に行なえるのがiLifeの真骨頂といえる。デジタルコンテンツを簡単に取り扱いたいと思っているユーザーにお勧めしたい製品だ。 □アップルコンピュータのホームページ (2003年2月28日)
[Reported by 赤坂賢太郎]
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