長瀬産業から、突如リリースされたDivX再生対応のDVDプレーヤー「DVD-V880」。DivX再生に対応に加え、DVI端子装備など国産機には見られない魅力的な機能が満載だ。開発はMOMITSUという会社。筆者は知らなかったが、編集部で「知ってます? 」と聞いてみたところ「CDプレーヤーを自作する人達の一部では有名」との答えが。どうやら、知る人ぞ知るといったメーカーのようだ。
DivX再生に対応したDVDプレーヤーと言えば、バーテックスリンクが販売する、Kiss Technologiesの「KiSS DP-450」が記憶に新しい。しかし、同機は実売49,800円程度と、DVDオーディオやSACD再生に対応した国産メーカーの中級機が買えてしまう価格帯。 一方この「DVD-V880」は、直販価格で25,700円とかなり安価。DivX再生のほか、DVI端子も搭載してデジタル出力も可能となっているというのは大きなセールスポイント。特に低価格帯でDVI端子を備えたプレーヤーが大々的に売られるのは、おそらくこれがはじめて。ということで、いやがおうにも期待は高まる。 今回、長瀬産業から、製品出荷前の評価バージョンをお借りできたので、早速テストしてみた。なお、今回の試用機は出荷版のファームウェアより一世代前のものとのことで、出荷版とは若干仕様が異なる場合がある。あらかじめご了承いただきたい。 ■ DVD再生品質は必要十分。操作性にはやや難有り まずは、普通にDVDプレーヤーとして使ってみる。出力端子は、DVI端子のほか、コンポーネント出力やS映像、コンポジット出力を各1系統備えている。プログレッシブ出力にも対応している。
早速、三菱製の28型ワイドテレビ「28W-HR1」とコンポーネント接続し、DVD「スパイダーマン」を鑑賞。ちょっと彩度が低いような気がするが、目に見える破綻などは無い。2年前に発売されたビクター製のプログレッシブ対応プレーヤー「XV-D721」と比較してもそんなに遜色は無い。例えば、スパイダーマンのチャプター17を見てみたところ、動きの激しいシーンでもちらつきやノイズは見られず、特に気にならずに視聴できる。同じシーンをNExtWaveの「Win3023DH」で視聴するとあきらかに輪郭線の強調や、ノイズが目立つ。印象としては、2ランクぐらい「DVD-V880」の方が勝っていると感じた。
この価格帯ではかなり満足できる画質といえるだろう。ただし、同時出力には対応していないため、例えばDVIとコンポーネントの2系統で接続している場合は、リモコンで出力端子を切り替える必要がある。
また、本機の大きな特徴と言えるDVI端子についてもテストした。DVIでの出力は480p/720p/1080i/DVI 768 60Hz/DVI 1024 60Hz/Custom/OFFの6つのモードが用意されていた。 SamsungのPC用液晶ディスプレイ「SyncMaster 172T」とDVI接続したが、DVI 768 60Hz以外のモードでは出力できなかった。[Custom]モードでかなり細かい設定が行なえるのだが、それでもDVI出力することができなかった。 ただし、「DVI 768 60Hz」で出力した映像は高クオリティ。デジタル出力の魅力の一端は感じられた。本来はDVIを備えたプロジェクタなどで利用すると最適なのだろうが、今回手配できなかったので、他のモードについては機会を見つけて再度テストしてみたいと思う。 操作性については、おおむね良好だが、納得できない部分もちらほらある。通常、DVDプレーヤーではセンタートレー右脇に開閉ボタンを備えているものが多いが、「DVD-V880」では左側となっている。右脇は、再生ボタンとなっているため、トレーを開けたいのに誤って再生してしまうことがあった。
また、リモコンの仕様も独特だ。中央部に十字キーとエンターボタンを配しているため、基本設定などはこれらのキーとその下の[RETURN]、[SETUP]で行なえる。このあたりは問題ないのだが、再生ボタンが右端の一番下にあるというよくわからないボタンレイアウト。使用頻度の高いボタンが一番操作しづらい場所にあるという時点で解せないのだが、早送り、チャプタ送りなど、他の操作系ボタンに関しても、全て同じ大きさで密集しているので、暗い場所などでは操作に戸惑うだろう。 低価格DVDプレーヤーとしては珍しくヘッドフォン端子(標準)を備えているのも特徴。しかし、今回試用した個体では、接触が悪くて片チャンネルしか聞こえなかったり、常にヒスノイズがのっているなど品質は低かった。 ■ DivX再生能力を検証
もう一つの大きな特徴は、DivXデコードに対応していること。DVDデコーダチップはSigma Design製の「EM8500」を搭載している。このチップは、Kiss Techonologiesの「DP-450」でも採用しているものだ。 特に気になるところは、先ごろリリースされたDivX 5.03への対応。5.03ではプロファイル導入など大きな仕様変更もあり、互換性の問題も発生している模様。同社のFAQによれば、DivX 5.03もサポートしているとのことなので、早速試してみたところ、特に問題なく再生できた。 また、DivXの早送り/戻しなどもサポートしているが、ボタンを押すと60秒後の映像にスキップするという仕様。普通のDVD再生と比較すると使いやすいとは言えないが、DP-450は早送り/戻しができなかったことを考えれば、かなり使い勝手は向上している。ただし、一部のDivXファイルで早送り/戻しが行なえないことがあった。 WMAの再生については、FAQで、「WMA5までサポート」としている。とりあえず、WMA8(64~160kbps)、WMA9(128kbps)のファイルをCD-Rに焼いて再生を試みたところ認識されなかった。最近のWMAファイルは再生できないと考えてよさそうだ。 ビデオやオーディオのファイルタイプについては、拡張子で判断しているようで、Audio、Video、Photo Picturesの3タイプに自動的に振り分けられる。DivXとMP3の混載CD-Rを試したところ、問題なく、各カテゴリに振り分けられた。なお、日本語フォントの表示には対応せず、ファイル名が[??]と表示と表示されてしまうが、ファイルの再生自体は行なえた。
再生互換性についてもテストしてみた。なお同社では、DVD+Rの再生について「動作確認はしているが、サポートはしない」としている。実際にDVD+Rを再生してみたところ特に問題なく再生できた。
【再生互換性一覧】
同社の製品情報ページでは、「リージョンは2です」と書かれている。しかし、海外メーカー製のプレーヤーは、実質的にリージョンフリーになっているケースも多いので、やや期待しながら、リージョン1の「マイノリティ・レポート」の再生を試みたところ、エラーメッセージが表示され再生できなかった。なお、PAL/NTSCの選択も可能で、PAL収録のフランス版「千と千尋の神隠し(LE VOYAGE DE CHIHIRO)」の再生も行なえ、NTSCに変換して出力もできた。 ■ まとめ ここまで触れてきたように、DivXやDVIなど、現在最も注目度の高い機能を取り込んだオールラウンドプレーヤーとして、非常にコストパフォーマンスの高い製品だ。 細かい仕上がりや操作性には気になるところもあるが、肝心の再生画質もなかなかのクオリティで、数年前の低価格プレーヤーを使っているユーザーであれば、リプレース時のひとつの選択肢として面白い。PCベースでDivXキャプチャなどを行なってDVD-Rなどにバックアップしているユーザーにも魅力的な製品だろう。 また、DVI出力を手軽に試してみたいという人でも、この製品の価格設定は大いに魅力的。個人的には、リージョン固定でなければ、なんでもできて低価格という条件を満たす「最強のセカンドプレーヤー」となったのだが、そのあたりはやや残念。とはいっても低価格オールラウンドプレーヤーに強力な選択肢が増えたということは歓迎したい。 ■ 分解してみた
では、内部がどんな構造になっているだろう? と気になったので早速分解。中身は至ってシンプルなもの。ドライブと電源、小さなメイン基板の3つのコンポーネントで構成されている。NExtWaveの「Win3023DH」を分解したときはそのシンプルさに驚いたが、それより各コンポーネントがやや大きい程度。今時の低価格プレーヤーは大抵このくらいシンプルにできるということなのだろう。 DVDデコーダチップは、Sigma Designs製の「EM8500」。「DP-450」でも採用していたチップで、DivX機能を含むほぼ全てのDVDプレーヤーの機能が統合されている。またメイン基板に使われていない横長のコネクタを有しているが、おそらくSCART出力端子用のものと思われる。
□長瀬産業(Transtechnology)のホームページ (2003年3月7日)
[Reported by usuda@impress.co.jp]
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