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第90回:アーキテクチャ面でも大きく進化
~「Sound Blaster Audigy2 Platinum eX」を検証する~


 1月下旬、クリエイティブメディアからSound Blasterシリーズの最新機種で、最高峰に位置する「Audigy2 Platinum eX」が発売された。

 これまでの「Audigy2 Platinum」と名称的にはあまり変わっていないが、実は大きくアーキテクチャが変更され、機能、性能的にも向上している。今回はこのAudigy2 Platinum eXを紹介したい。


■ ADコンバータを外付けに変更

Sound Blaster Audigy2 Platinum eX
 Sound Blasterシリーズも色々なモデルがリリースされ、完全に把握できているという人はほとんどいないのではないだろうか。ごく簡単に流れを追えば、サウンドカード型の製品はPCIバスになって登場した「Live!」シリーズ以降、「Audigy」シリーズ、「Audigy2」シリーズと進化してきた。

 Audigy2シリーズは、24bit/192kHzに対応したサウンドカードで、ドルビーデジタルEX(6.1ch)にも対応。またS/PDIFのオプティカルおよび、コアキシャルの入出力を装備するとともに、IEEE 1394(クリエイティブではSB1394と呼んでいる)の端子も装備している。

 今回紹介する「Audigy2 Platinum eX」は、その名前の通り、Audigy2シリーズの最新版ということになる。しかし、Audigy以降、ハードウェアの進化が速くなり、別の名称がふさわしいのでは? 思うこともしばしばある。Audigy2 Platinum eXではさらに進化し、そのAudigy2の従来のモデルとも一線を画すものとなっている。

 Audigy2の前バージョンのAudigy(今でも現行モデルとして販売されている)には、「Audigy Platinum」という5インチベイに入る入出力端子のボックスが用意されたバージョンと、「Audigy Platinum eX」という外部のブレイクアウトボックス型のバージョンがあった。

 そして、Audigy2ではすでに5インチベイタイプのAudigy2 Platinumが存在しており、新発売のAudigy2 Platinum eXはブレイクアウトボックス型のバージョンである。ただし、ブレイクアウトボックスのデザイン、形状はAudigyのものとは異なり、その見た目はUSBタイプのSound Blaster Extigyとそっくりだ。

 一見、前モデルと同じような関連性を想起させるAudigy2 Platinumと、Audigy2 Platinum eXだが、その関係はAudigy Platinum時代とは異なる。Audigyでは単にPC内部なのか外部なのかという違いに過ぎなかったのだが、Audigy2では、アーキテクチャ自体が変わっているからだ。

 まず、一番注目すべきところはADコンバータが、サウンドボード上ではなくブレイクアウトボックス上に設置されたことだろう。これまでのSound Blasterシリーズは、Audigy2 Platinumを含め、すべてサウンドカード上に、ADコンバータを実装していた。結果として、例え5インチベイやブレイクアウトボックスに外部アナログ入力を接続しても、レコーディング時にPC内部のノイズを受けやすくなっていた。しかし、Audigy2 Platinum eXでは完全に外部化されたので、ブレイクアウトボックスをPCから離すことにより、ノイズの影響を非常に受けにくくなっている。

 試しに、前回までで行なっていたノイズレベルの計測を行なってみたところ、ノイズレベルはAudigy2 Platinumと比較して、ハッキリと小さくなっている。この結果を見る限り、ほかのオーディオカードと比較しても、かなり良好といって問題ないだろう。ただし、DAコンバータは従来どおりサウンドカード上に搭載されており、アナログ出力もサウンドカードのステレオミニジャックからとなる。できれば、ステレオだけでもいいので、ヘッドフォン端子とは別にブレイクアウトボックスにも搭載していると、もっとよかったと思う。

ノイズレベル 1kHzのスペクトラム分布 スウィープ信号

 また、1kHzにおけるスペクトラム分布、スウィープ信号による周波数特性についてもチェックした。このスペクトラム分布を見ても、Audigy2 Platinumと比較して圧倒的に向上しているし、周波数特性もかなりフラットになっている。


■ 44.1kHz出力が復活

44.1kHzの出力が可能になった
 アーキテクチャの変更はADコンバータばかりではない。実はこの製品、Audigy2 Platiumでは対応していなかった44.1kHzに対応したのだ。「44.1kHzに対応した」というとやや語弊があるかもしれないので説明しておくと、Audigy2 Platiumでも44.1kHzのサウンドを再生することはできたが、S/PDIFからは48kHzもしくは96kHzしか出力することができなかった。そのため、44.1kHzのサウンドを再生しても、内部のサンプリングレートコンバータが48kHzなどへ変換した上で出力していた。

 Sound BlastersシリーズはPCIバスのLive!になって以降、48kHzのみのサポートで、Audigyになって44.1kHzに対応した。これは44.1kHz用のクロックを搭載したからだが、なぜかAudigy2になって、その機能がなくなってしまった。それが、Audigy2 Platinum eXで復活したということになる。

 ただし、Audigyと同様44.1kHzのスルーキャプチャには対応していない。もちろん、従来から44.1kHzを入力することができたが、一旦48kHzにコンバートした上でPCに取り込まれており、直接そのまま取り込むことはできない。この流れは今回も同じようだ。

 ドライバ側も進化している。メインとなるのはASIO 2.0に対応したことだろう。AudigyからASIOには対応していたが、このAudigy2 Platinum eXではASIO 2.0に対応するとともに24bit/96kHzでのレコーディングも可能となっている(これについてはドライバのアップデートによりAudigy2シリーズすべてで対応)。

 ASIOがどんなものであるかについては、ここでは割愛するが、Audigy2における入力およびASIOドライバの特性が、一般のものと比較してやや変わっているので、簡単に紹介しておこう。まず、Audigy2では出力は24bit/192kHzまで対応し、入力は24bit/96kHzまでとなっている。しかもASIOは1.0で48kHzでのレコーディングしかすることができず、ユーザーにとってかなり不満を感じるスペックだった。

 しかし、Audigy2 Platinum eXの最新ドライバでは、ASIO 2.0に対応するとともに、24bit/96kHzでのレコーディングまできちんとサポートされた。ただし、ちょっと妙なのが、24bit/48kHz用のSB Audigy ASIOというドライバとSB Audigy ASIO 24/96というドライバの2つが存在するということ。普通は、1つのドライバで周波数が切替可能だが、これはそれぞれ別のドライバとなっており、ドライバを切り替えない限り周波数の変更ができない。また、せっかく44.1kHzをサポートしたのに、ASIOで44.1kHzが扱えるドライバは存在していない。


■ Cubasis VST 4.0など最新ソフトをバンドル

 以上、ハードのスペックを見てきたが、バンドルソフトも強力だ。まずはクリエイティブオリジナルソフトである「Creative MediaSource」というソフト。これは様々なファイル形式をサポートする再生ソフトなのだが、DVD-Audioもサポートしている。現在のところ、民生用ソフトでDVD-Audioを再生できるソフトウェアプレーヤーはこれ以外はないと思われる。ただ、このソフトも1つ問題がある。それはDVD-Audioの画面表示ができないということ。メニュー利用が基本となるソフトの場合、再生しづらいという難点がある。

再生ソフトのCreative MediaSource。DVDオーディオを再生できる

 一方、市販のDTM・デジタルレコーディング関連のソフトが多数バンドルされているのも特筆に価する。具体的にはMIDI&オーディオのレコーディングが可能なDAWソフトとして、Steinbergの「Cubasis VST 4.0」がある。これは24bit/96kHzでのレコーディングも可能なソフトなので、Audigy2 Platinum eXの機能を存分に発揮させることができる。同じく、Steinbergの波形編集ソフト「WaveLab Lite2.0」も付属する。これも単独で使っても、かなり強力な機能を発揮するソフトであるが、Cubasis VSTとも連携して動作させることができるので、Cubasis VSTユーザーには重宝するツールである。

 音楽制作ソフトとしては、もう1つループシーケンサ「Sonic Foundry ACID Style DJ 3.0」もバンドルされている。これを利用すれば、さまざまなループサウンドを組み合わせて簡単に曲を作ることが可能だ。さらに、いまDJソフトとして非常に人気の高いNative InstrumentsのTRAKTOR DJも付属する。このソフトを使えば、曲のテンポを自由に変えながら2つの曲をつなげていったり、ループポイントを見つけ出して、繰り返し演奏させたり、スクラッチ感覚で遊べるなど、面白い機能がたくさん搭載されている。

Cubasis VST 4.0 ACID Style DJ 3.0 TRAKTOR DJ

 そして、もう1つはパターンベースのシーケンサ、Image Lineの「Fruity Loops Pro 3.5」。これはソフトシンセ内蔵で、VSTiにも対応。VSTエフェクトやDirectXエフェクトを利用したプレイも可能となっている。

 これだけの人気ソフトがバンドルされているというのは、なかなかすごい。いずれも、まさに今発売されている(ACIDは4.0に移行したが)ソフトばかりで、これらソフトの価格だけを計算しても5万円以上する。それが、標準価格38,800円の製品にバンドルされているのだから、その価値は大きいだろう。


□クリエイティブメディアのホームページ
http://japan.creative.com/
□ニュースリリース
http://japan.creative.com/company/press/2003/030120-audigy2ex.asp
□関連記事
【1月20日】クリエイティブ、ブレイクアウトボックスを備えたAudigy2
-ADCの外部化によりノイズを低減
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030120/creative.htm

(2003年3月3日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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