■ 「おまかせ録画」搭載の新SmartVision やや、飽和状態というか停滞感のあるテレビキャプチャ市場。ほんの1年程前まで各社が懸命に取り組んでいた高画質化への機運はぴたりと収まり、高画質をウリにしていたカノープスがDivX対応を大々的に打ち出すなど市場の変化の兆しが、そこかしこに感じられる。 各社とも、テレビ出力機能を追加してHDDビデオレコーダとしての利用を提案したり、ネットワークサーバー機能の追加など、さまざまな試みにより差別化を図っている。そうした状況を受けて、NECも「SmartVision」シリーズの新製品「SmartVision HG2」を投入してきた。 もっともNECは、ビデオサーバー「PK-AX10/20」で、SmartVisionのソフトウェアを利用したパソコンとの連携機能を実現するなど、ネットワーク配信には最も早い時期から取り組んでいたメーカー。そんなNECが今回新たに追加した機能が「おまかせ録画」機能。読んで字のごとく、アーティスト/タレント名などのキーワードや、スポーツなどのジャンルごとに、あらかじめ設定しておくことで、該当番組を自動録画する機能だ。 こうした機能は民生用HDDレコーダなどでは実現している機器もあるが、キャプチャカードとしてはSmartVision HG2がおそらく初めて。新しくなったSmartVisionの実力はいかに? ■ ハードウェアの大きなアップデートは無い
パッケージは小型で、キャプチャカードのほか、CD-ROMやマニュアル、オーディオケーブルが同梱されたシンプルなもの。 カード本体は、ハードウェア的には、前モデル「SmartVision HG」から大きなアップデートは無い。SmartVision HGに同梱していたリモコンを省き、低価格化され、実売価格は18,000円弱となった。 基板を見てみるとチューナは小型のアルプス電気製。NEC製のエンコーダ「μPD61051」や、CONEXANT製のビデオデコーダチップを搭載する。S映像入力とコンポジット入力端子、アナログ音声入力端子を装備。カードサイズは154×107mm(PCIハーフサイズ)となっている。上位モデル「SmartVision HG/V」に搭載している3次元Y/C分離回路や、GRTは省かれている。 CD-ROMには、視聴/録画ソフトの「SmartVision」のほか、サーバーソフト「SmartVision/SERVER」、クライアントソフトの「SmartVision/PLAYER」などが付属。また、DVDオーサリングソフト「DVD MovieWriter2 for NEC」がバンドルされる。SmartVision HG2を購入すれば、キャプチャからDVD作成まで一括で行なえるようになっている。
■ かなり便利なおまかせ録画機能 SmartVisionの対応OSはWindows 2000/XPのみで、DirectX 9が必須となる。インストール後は視聴地域設定を行なうだけで、自動的にチャンネル設定が行なわれる。 SmartVisionは、フルスクリーン/スリム/ノーマル/アドバンストの4つの画面モードが用意されている。録画予約などの主な操作は、ノーマルもしくはアドバンストで行ない、それなりにきびきびと動くが、起動時間はやや遅めで、Celeron 1.7GHz搭載機では約9秒程度かかる。
SmartVisionの大きな特徴として地上波EPGの対応が挙げられる。地上波EPGのADAMS-EPGに対応するので、iEPGサイトに接続する必要がなく瞬時に番組表が表示されるのは大きなメリットだ。 EPG録画は非常に簡単。番組表を開き、録画したい番組をダブルクリックすると、録画設定画面が表示され、録画品質などの設定が行なえる。録画モードは高画質/標準/長時間の3モードが用意されるほか、ユーザー設定モードも備えている。
最大の特徴と言える「おまかせ録画」機能の利用も非常に簡単。予約リスト画面を開き、おまかせボタンを選択。表示される設定画面で、キーワードや放送時間、ジャンル、放送局などを指定し、[検索]をクリックするとEPGデータの中から、適合する番組が自動表示される。表示されたリストの中から任意の番組を選択することも可能だが、そのまま[OK]ボタンを押せば、リストの全番組が登録される。EPGデータをローカルに持っているために検索も1秒以内と非常に高速だ。 おまかせ録画は、3日先の番組まで予約が自動登録される。予約リストの更新は、番組表データ受信時や設定した時刻などに番組表をチェックして、自動的に行なわれる。そのため、一度ルールを設定すれば、解除するまで自動的に録画が行なわれる。 おまかせ設定は10ルールまでの設定が行なえ、それぞれに優先度を高/普通/低と設定できる。やや気になったのは、キーワード設定でor検索が行なえず、全て絞込検索(and検索)となってしまうこと。1ルールで3つまでのキーワードが登録可能なのだが、例えば、「モーニング娘。」の番組を録画したい時に、「モーニング娘」、「モー娘」、「ハロプロ」のように複数キーワードを利用した検索条件を指定し、1ルール内で完結させたいのだが、これができずに最初のキーワードの「モーニング娘」からの絞込検索しか行なえない。そのため、先の3つのキーワードを使っておまかせ録画を行いたいときは、3つのルールを設定しなければならない。or検索が利用できれば、もう少しスマートに設定が行なえると思うのだが……。
※7月31日追記
また、従来機からの特徴であるネットワーク配信機能も搭載している。SmartVision/SERVERソフトで、マシン設定を行ない、別のPCにクライアントアプリケーション「SmartVision/PLAYER」をインストール。SmartVision/PLAYERを起動すると、サーバー側に録画してある番組の視聴や、録画設定などが行なえるというもの。 録画した映像をそのままストリーム再生するほか、MPEG-4に変換してストリーム出力する機能も搭載している。例えば、高ビットレートMPEG-2ファイルをIEEE 802.11bの無線LAN環境で再生する際などに利用できる。MPEG-4の転送速度は1.7Mbps、1Mbps、700kbpsの3つが選択でき、早送りなどの特殊再生も行なえる。実際にIEEE 802.11b環境で、15MbpsのMPEG-2データをMPEG-4 1.7Mbpsで再生したところ、特に問題も無く視聴できた。 PLAYER側からの録画予約も、サーバー側での録画とほぼ同様に簡単に行なえるが、おまかせ録画の設定には対応しない。 少し不満が残るのは、配信サーバーでSmartVisionを起動していると、クライアント側のSmartVision/PLAYERでサーバー上の情報にアクセスできないこと。サーバー側のSmartVisionを立ち上げっぱなしにしていると、いざクライアント側で見ようと思ったときにも利用できないのでやや不便だ。また、サーバーが録画中にはストリーム配信も行なえない。
なお、クライアントから放送中のテレビを視聴する「リモートTV」機能も搭載しており、テレビチューナを備えていないPCでもテレビを見ることができる。 ■ 画質は良好 録画サンプルを以下に掲載した。高画質/普通/長時間の3モードが用意されるほか、MPEG-2では、解像度が720×480/352×480/352×240ドット、ビットレートは、MPEG-2のCBRでは2~15Mbps、VBRでは1.2~7.5Mbps(平均)まで設定できる。
■ 手堅いアップデートで利便性は向上 今回のバージョンアップの最大の特徴である「おまかせ録画」の利用価値はかなり高い。現状、キャプチャカードでこの機能を備えているのは、「SmartVision HG2」だけ。ADAMS-EPGによる検索の高速化も含め、従来機の特徴を生かしつつ、ユーザーにとってもメリットの大きいバージョンアップが行なわれたと感じる。 リモコンなどを省き、低価格化したことで、実売も16,000~18,000円程度とハードウェアエンコーダ搭載製品ではかなり安くなっている。ハードウェア的なアップデートはあまりないが、ソフトウェアの強化によりかなり魅力的な製品になっている。 □NECのホームページ (2003年7月25日)
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