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第111回:「PC接続」がキーワード。2003年夏のRoland発表会
~ USB接続可能なBOSSのギターエフェクトなど ~


発表会場の様子
 2、3カ月おきに新製品発表会を開いているRolandグループ3社だが、8月4日にも発表会が開催された。

 ハード、ソフト合わせて13製品がリリースされたのだが、特に面白かったのはRoland、BOSSブランドの製品にもUSB端子が搭載されるようになり、もはや楽器の世界においてPCは切っても切り離せない存在になりつつあることだ。では、今回も主な製品の概要について紹介していこう。


■ USB対応のテーブルトップ型ギター・エフェクト・システム「GS-10」

 BOSSといえばギター用のエフェクトというイメージが強いし、従来のギター用エフェクトは006Pの9V電池で動作するコンパクトエフェクターが中心だった。しかし、BOSSにもパワフルなデジタルエフェクトが増えてきており、今回登場したテーブルトップ型の「GS-10」はその集大成ともいうべきもの。発売は8月下旬で、店頭予想価格は5万円前後の見込み。

 テーブルトップ型のエフェクトとはあまり聞き慣れない言葉だが、ノートパソコン程度の大きさにBOSS/Rolandお得意のCOSMアンプモデリング機能をはじめ、オーバードライブ、ディストーション、ディレイ、コーラス、リバーブ、コンプレッサ……と、様々なエフェクトを詰め込んだもの。またステレオのモニタースピーカーが内蔵されているので、アンプやヘッドフォンなしでもモニターできる。とりあえず、これ1つあれば、ギターおよびベース用のエフェクトとしては十分といえるだろう。

GS-10 パソコンのオーディオインターフェイスにもなる

 また、USB端子を搭載しており、GS-10をオーディオインターフェイスとして利用できる。もちろん、GS-10のさまざまなエフェクトをかけた上でレコーディングすることも可能だ。さらにGS-10には、SONARの下位バージョンである「Cakewalk Music Creator」(Windowsのみ)がバンドルされているので、DTM未経験者でも購入したその日から楽しむことができる。

 もう1つ面白いのはUSBでPCと接続した際、GS-10の各エフェクトを画面上でコントロールできるということ。アプリケーションの見た目はまさに従来からのBOSSのエフェクトといった感じものので、非常にわかりやすくコントロールできる。こちらはWindowsおよびMac OS 9で利用可能。

□製品情報(GS-10)
http://www.roland.co.jp/products/boss/GS-10.html


■ USBキーボードにオーディオ機能を搭載した「PCR-A30」

 USBバス電源供給で動作する32鍵のMIDIキーボード「PCR-30」が2002年秋に発売されたが、見た目上ほぼ同じ筐体のボディにオーディオインターフェイス機能を搭載した「PCR-A30」が登場した。発売は10月で、店頭予想価格は35,000円前後の見込み。

PCR-A30 本体のスピーカー

 M-Audioが「Ozone」という製品を発表しているが、PCR-A30はそれと非常に近いコンセプトの製品。型番からも想像できる通り、PCR-30にオーディオ機能を搭載し、ボディカラーが変更されて、パネル面の青色LEDがボリュームに置き換わった以外はまったく同じ。27系統のフル・アサイナブル操作子が装備されており、機能的にもPCR-30と同様だ。

 オーディオ機能としてはWDM/ASIO 2.0に対応し、24bit/96kHzまで扱うことができる。またアナログの入出力とともに光出力も装備。またOzoneとの違いは、本体にステレオのスピーカーが搭載されていることで、USBからの電源供給だけで動作する。かなり貧弱なスピーカーではあるが、とりあえず音を確認できるのは便利だ。

□製品情報(PCR-A30)
http://www.roland.co.jp/products/dtm/PCR-A30.html


■ ハンディタイプのMIDIおよびオーディオインターフェイスも登場

 これまでもコードタイプのMIDIインターフェイスおよび、オーディオインターフェイスはそれぞれラインナップしていたが、これらもラインナップを一新した。

 MIDIインターフェイスとしては直接MIDI機器と接続できるタイプの「UM-1X」と、MIDI端子を装備した「UM-1SX」の2種類。いずれも9月発売で、店頭予想価格は4,000円前後の見込み。

 また、1系統のステレオ入出力を装備し16bit/48kHzまで扱えるオーディオインターフェイス「UA-1X」も8月末に発売する。価格は8,000円台後半の見込みだ。

UM-1X UM-1SX UA-1X

 UM-1XおよびUM-1SXが従来のUM-1およびUM-1Sと違うのは、入出力用のインジケータが搭載されたこと。これにより一目で信号の状態がわかるようになった。

 一方、技術的に大きいのは安定したMIDI送受信ができる「FPT」(Fast Processing Technology of MIDI Transmission)に対応したことだ。一方、UA-1Xは従来モデルからデザイン変更されるとともに、ヘッドフォン用のレベル調整つまみが追加されている。

□製品情報(UA-1X)
http://www.roland.co.jp/products/dtm/UA-1X.html
□製品情報(UM-1X/UM-1SX)
http://www.roland.co.jp/products/dtm/UM-1X.html


■ 下位製品ながらオリジナルプラグイン搭載の新「Cakewalk Home Studio」

Cakewalk Home Studio 2004 XL
 ソフトとしては「Cakewalk Home Studio 2004」と「Cakewalk Home Studio 2004 XL」の2本が発表された。価格は標準価格で前者が28,000円、後者が35,000円となっている。

 この2本は画面を見てもわかるとおり、「SONAR 2」の下位モデルという位置付け。正確には最新版「SONAR 2.2」の下位モデルで、DXi2、ReWire 2.0、ASIO 2.0に対応している。気になるのはSONAR 2.2との違いだが、機能的にはほとんど同程度になる。

 最大の相違点は、同時に利用できるエフェクトおよびDXiソフトシンセの数。SONARではCPUパワーのある限り制限無く利用することができるが、Cakewalk Home Studioは24個までとなっている。しかし、通常ならこれで十分だろう。そのほかにもOMFファイルが扱えないとか、プラグインの数が少ないといった面はあるが、主だった機能については、ほぼ同等だ。

 一方、2004と2004 XLの相違点だが、これはバンドルされているプラグインの数の違い。XLのほうにはDXiプラグインやDirectXプラグインがいろいろと入っている。

 まずはSoundFontを読み込むことができるサンプラー「Dyad Dxi Sampler」。これは結構高機能なサンプラーで、さまざまなシンセパラメータを装備し、数多くのSoundFontのライブラリも用意されている。またSONARには従来からバンドルされていたDreamStationやVirtual Sound Canvasも同梱されている。

 エフェクトでもPLASMAにも入っていたFXPad、空間系、歪み系などのエフェクトの組み合わせをあらかじめプリセットしたマルチエフェクト「Cakewalk Spectra FX」、さらには「Cakewalk Audio FX1/FX2」がバンドルされている。

Dyad Dxi Sampler Cakewalk Spectra FX

 SONARユーザーなどにも付属のプラグインが魅力的に映るが、現在のところ単体発売される予定はないようだ。

 2004/XLと並んでもう1つSONAR系列のソフトが発表されている。それは「今日からはじめるパソコンミュージックPRO」(標準価格15,800円)というもの。ここには「Cakewalk Music Creator PRO24」というさらに下位モデルのソフトのほか、DreamStation、Virtual Sound Canvas、FXPadなどがセットとなっている。

Cakewalk用のVSTアダプタ
 また、今回の発表会で口頭でのみ発表されたニュースがある。それは、今春にCakewalkがFXpansion Audioから買収した「VSTアダプタ」の取り扱いについてだ。SONARをはじめとするソフトで、もともとはシェアウェアで発売されていたもの。これにより、VSTプラグインを利用できるようになる。

 しかしCakewalkの買収後は単独発売がなくなり、「Project5」のバンドルソフトという扱いになっていた。そのVSTアダプタを間もなく国内でも発売されるという。販売方法や発売時期、価格などは正式発表されていないが、これはちょっと嬉しいニュースだ。

□製品情報(Cakewalk Home Studio 2004/XL)
http://www.roland.co.jp/products/dtm/CW-HS04.html
□製品情報(今日からはじめるパソコン・ミュージックPRO)
http://www.roland.co.jp/products/dtm/CW-MC04PRO.html


■ 作曲からCD化までトータルな機能を備えた「MV-8000」

MV-8000
 Rolandブランドからは、非常に高性能なサンプリングマシンが発表された。素材となるオーディオやデータの取り込みから編集、音作り、ミキシング、マスタリング、そしてCD制作まですべてを完結できるサンプリング・ワークステーションで「MV-8000」という製品。発売は10月で店頭予想価格は20万円前後の見込みだ。

 一見、ドラムマシン風のパッドを16個持ったこの機材。9.8kgもあるかなり大きなものだが、ここには強力な機能が凝縮されている。64ボイス、128MBメモリ標準搭載で、一般のDIMMも増設可能。40GBのHDDにCD-R/RWドライブも搭載するなど、ほぼコンピュータといってもいいスペック。サンプラーとして機能するとともに、約15万イベント、8オーディオ+128MIDIトラックのリニア・シーケンサとしても利用できる。もちろんエフェクト機能も独立3系統が搭載されているなど、これ1台ですべてをこなすことも可能だ。

 すべての操作は液晶パネルを見ながら行なうことになる。ただし、2004年には外部ディスプレイへの表示に対応し、さらにマウス操作が可能になるオプション・ボードの発売も予定されている。


 以上、主だった製品を紹介したが、これ以外にもBOSSのアコースティックギター用エフェクトやオクターブ・エフェクト、エフェクトを収納するためのペダルボード、EDIROLのパッケージ製品でUSBフィジカルコントローラの「UR-80」と「HomeStudio 2004」をセットにした「PCレコーディング・パックSTUDIO BOX」(9月発売、店頭予想価格55,000円前後)なども発表されている。

 誰でも思いつくような製品は、これで出揃っているようにも思えるが、今後も2,3カ月おきの発表会は続くのだろうか? 「UA-1000」よりも低価格でコンパクトなUSB 2.0対応のオーディオインターフェイスなどが出ると面白いのだが、今のところ予定はないとのこと。これからも驚くような製品の登場を期待したい。


□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□関連記事
【5月26日】【DAL】次々と新製品を出し続けるRoland/EDIROL
~USB 2.0対応オーディオインターフェイス「UA-1000」など~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030526/dal101.htm

(2003年8月11日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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