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第112回:ユニークで便利な機能を満載したUSBオーディオ
〜ローランド「UA-3FX」を検証する〜


 人気のUSBオーディオインターフェイス「EDIROL UA-3D」の後継となる「UA-3FX」が6月末に発売された。USB 1.1のオーディオインターフェイスといことで、そう目新しさはないように思えるが、一般のUSBオーディオインターフェイスと異なり、かなり面白い機能がいろいろと隠されている。

 今回はこのUA-3FXにフォーカスを当て、どんな機能が搭載されていて、何ができるのか、チェックした。


■ 一味違うミドルクラス製品

 USBオーディオインターフェイスのメーカーとしては、最も歴史があるEDIROL(Roland)。先日はUSB 2.0対応の「UA-1000」をレビューしたが、世界初のUSB 1.1対応オーディオインターフェイス「UA-100」以降、さまざまな製品がリリースされ、現在は大きく3系統に分かれている。

 1つは「UA-5/UA-700」という24bit/96kHzに対応し、ファンタム電源やマイクプリアンプを搭載したハイエンドモデル。2つ目は「UA-30/UA-3/UA-3D」とアップデートされてきたミドルドモデルだ(MIDIインターフェイスと統合されたUA-20やMIDI音源機能と一体化したSD-90などもある)。そして3つ目が「UA-1A」、「UA-1D」そして先日発表された「UA-1X」という単機能のローエンドモデルのシリーズだ。

 今回紹介するUA-3FXはミドルモデルであるUA-3Dの後継。オープン価格であるが、実売価格はUA-3Dとほぼ同じ17,000円前後となっている。そう考えると、あまり機能的に差がないもののように思えるが、実はかなり強力かつユニークで便利な機能が満載されている。そんなこともあってか、店頭では品切れで入荷待ちというところがかなりあるようだ。

 何が人気の理由なのか、まずは基本的な機能・性能について紹介しよう。前モデルからデザインが変更されているが、違いはデザインだけにとどまらない。

UA-3D(従来機種) UA-3FX

 まずUA-3Dは16bitで32/44.1/48kHzというサンプリング性能であったのに対し、UA-3FXでは24bitに対応している。もちろん従来どおりS/PDIFオプティカルの入出力を備え、これを通じて5.1ch出力も可能になっている。アナログの入力においてはライン、標準ジャック、マイクの3つがあり、マイクは電源供給が必要な小型のコンデンサ対応となっている。アナログ出力のほうはラインアウトとヘッドフォンと、従来通りである。

底面に隠された「ADVANCED DRIVER」スイッチ

 本体の底面にはUA-5やUA-700などのハイエンドモデルと同様、「ADVANCED DRIVERスイッチ」が隠されている。デフォルトではこれがOFFになっているため、一般のUSBオーディオインターフェイスと同様、単にPCやMacintoshに接続するだけで使える、標準のインターフェイスとなっている。

 しかし、これをONにすると、UA-3FXの性能が本領発揮される。本体付属のドライバを利用するようになり、ASIO 2.0ドライバやWDMドライバに対応し、よりレイテンシーの低いオーディオインターフェイスとして利用できるようになる。つまりCubase SXやSONARなどのアプリケーション利用時に大きな力を発揮できる。

 24bit対応で、ASIO 2.0/WDMドライバが利用可能になったというだけでも十分評価できるわけだが、UA-3FXが面白いのはここから。本体にはUA-3Dにはなかったつまみが4つ並んでいる。これらはエフェクトのパラメータとなっており、UA-3FX内蔵のDSPによってさまざまなエフェクトをかけられるようになっている。

エフェクトのパラメータつまみが4つ並んでいる

 工場出荷時には英語のパネルになっているが、日本語のパネルに貼り替えることも可能。なお、側面にある3段階のスイッチを切り替えることで、全11種類(4×3=12種類なのだが1つダブっている)のエフェクトが利用できる。

 具体的には、以下の11種類。

  • ノイズを取る
  • 音をシャープに
  • 低音を強調
  • 音圧を上げる
  • センターキャンセル
  • 音高を強調
  • 残響を加える
  • FXボイス
  • FXギター
  • コーラス
  • ディレイ
 いずれのエフェクトもPCの音を鳴らす際にかけることができるほか、外の音を録音する際にかける、いわゆるかけ録りも可能になっている。また、ごく一般のエフェクトが並ぶ一方、エフェクトとしてはちょっと見慣れないものもある。

 その1つが「ノイズを取る」だ。カセットテープやレコードなどのアナログ素材をデジタル化したいというニーズが高いようだが、この機能はまさにそんなユーザー向けに搭載されたもの。以前Digital Audio Laboratoryではノイズリダクションの比較実験をいろいろとやったが、このUA-3FXでどの程度のノイズリダクションが可能なのか試してみた。


■ ノイズリダクション機能を検証する

 実験に使用する素材も以前に行なったものとまったく同じ。Areareaという女性ユニットの曲にヒスノイズを入れた素材、ハムノイズを入れた素材、レコードのプチプチというクラックルノイズを入れた素材の3通り。

 これらをUA-3FXのノイズリダクション機能を使って除去してみた結果が、ここに掲載した3つのMP3ファイルだ。

サンプル
オリジナル original.mp3(469KB)
オリジナル+ヒスノイズ hiss.mp3(472KB)
オリジナル+ハムノイズ hum.mp3(472KB)
オリジナル+クラックルノイズ cracle.mp3(472KB)

適用結果
ヒスノイズ hiss.mp3(472KB)
ハムノイズ hum.mp3(472KB)
クラックルノイズ cracle.mp3(472KB)

※オリジナルに各ノイズを乗せた後、UA-3FXでノイズリダクションを適用している。

 本来はWAVファイルで掲載したほうが正確な結果となるが、MP3でもその違いが十分にわかるだろう。結論からいうとヒスノイズはそこそこ取れるが、ハムノイズやクラックルノイズには不向きなようで、ほとんど取れないという結果であった。ただし、これまで見てきた多くのソフトと異なり、リアルタイムでノイズリダクションがかけられるというのは特筆すべき点である。

 もう一つ面白いのは「センターキャンセル」というもの。まあ、これはUA-3FXがはじめてというものではなく、Roland/BOSS/EDIROLのブランドの製品に搭載されていたケースがあったが、ボーカルやリードギターなど中央に定位している音を取り除いてしまうというエフェクトだ。

 では、これで何ができるのかというと、まさにカラオケ。曲の中からボーカル部分を取り除き、カラオケを作ることができる。

適用結果
オリジナル original.mp3(469KB)
センターキャンセル center.mp3(472KB)

 先ほどノイズリダクションに利用した素材を使って、センターキャンセルをしてみた結果がこのMP3ファイルだ。見事なほどにボーカルが取り除かれているのがわかるだろう。

 サンプル曲【Arearea】マキシシングル:唄わなきゃ
 AreareaはRINO(ボーカル)、YUKI(ピアノ)の2人からなるポップスユニット。最新アルバムは2001年10月発売の「ユケオトメ」。公式サイトでは各曲をMP3形式で視聴できる

Arearea (C)REALROX
http://www.arearea.net/


■ PCが再生した音をそのまま録音可能

 UA-3FXの側面にはREC SOURCEというスイッチがあり、ANALOG/DIGITAL/LOOPBACKの3種類のいずれかが選択できる。

側面のスイッチで録音ソースの切り替えが可能。LOOPBACKはPCが再生した音をそのまま録音するモードだ

 ANALOGを選択すればラインインやマイクインなどのアナログを録音することになり、DIGITALを選択すればS/PDIFからの入力を録音することになる。では、LOOPBACKでは何をするのだろうか?

 実はこれが非常に便利な機能で、PCが再生した音をそのまま録音するという機能。何のためにあるの? と疑問に思う方もいるかもしれないが、まずはPCが出力する音にエフェクトをかけて録音することができるというのが1つのポイント。基本的にはノイズが混入することなくエフェクトをかけられるので便利だ。上記の実験はこの方法を使っている。

 また、RealAudioやWindows Meidaをはじめとする音声のストリーミング放送をデジタル録音することもできる。著作権管理上、利用には注意が必要だが、インターネットラジオを録音するなど、かなり便利に使える。

 さらにもう一つUA-3FXで搭載された新機能が「AFテクノロジー」。これは「アダプティブ・フォーカス・テクノロジー」の略で、レコーディング時の音質を向上させるために、2種類のADコンバーターを切り替えながら動作させるというもの。

 カタログには「繊細な音はどこまでも繊細に、ダイナミックな音はよりダイナミックに」と書かれているが、それを実現するために2つの24bitADコンバータを内蔵し、入力信号をもとに内蔵DSPがどちらのADコンバータを使うか判断して切り替える仕組みになっている。これに関する詳しい資料はないのだが、唯一、UA-3FXのパッケージに図での説明が載せられていた。

AFテクノロジーについては、唯一パッケージに説明が記載されていた

 もっとも、このAFテクノロジー部分に関してはユーザーは特に何かの設定をできるわけではなく、すべてUA-3FXにお任せということになる。実際、マニュアルにもAFテクノロジーに関しての記載はまったくなかった。

 ではこのAFテクノロジーを搭載したUA-3FX。そのオーディオインターフェイスの性能は、ほかの製品と比較してどんなものなのだろうか? 今までDigital Audio Laboratoryで行ってきたのと同じ実験を行なった。


■ オーディオインターフェイスとしての機能を検証する

 行なった実験は大きく3つ。1つはUA-3FXのラインアウトをラインインに直結させ、REC SOURCEをANALOGにしてレコーディングした際のノイズレベルがどの程度になっているかというもの。同じ接続状態で、2つ目は1kHzのサイン波を出した際のレコーディング結果、3つ目はスウィープ信号を流してチェックした。

 結果のグラフは以下の通り。

UA-3FXの特性チェック
未入力時のノイズレベル
1kHzサイン波
スイープ信号

波形の時間軸を拡大すると、5点のみプロットしたようになっている

 まず、未入力時のノイズレベルだが、低価格のオーディオインターフェイスとしてはかなりいい結果だ。波形の見た感じとしては、Echo MIAやPresonus Audio ElectronicsのFireStationなどと近い。試しに波形の時間軸を拡大してみると、-90.3dB、-96.3dB、それに信号ゼロの-infの5点のみプロットしたようになっている。

 次に、1kHz信号の結果。これを見るとかなり別の周波数成分が混じってしまっているのがわかる。やはりハイエンド製品と比較してしまうと厳しい状況だ。そしてもうひとつのスウィープ信号の結果は低域から20kHzあたりまではほぼフラット。20kHzを越えると徐々に減衰しているが、一般ユーザーの用途としては十分な性能だろう。

【8月19日更新】
 記事の初出時、測定時にダイレクトモニタリングをオンにしていたため、入出力を短絡させた際に発振してしまった。そのためおかしな結果となっていたが、改めて設定しなおして測定した結果、17,000円の製品としてはかなりクオリティが高いことを確認できた。


■ 総論

 96kHzに対応していないことも含め、UA-3FXはプロ用のレコーディング機器として用いるのは無理のようだが、普通のレコーディング機材としては十分な性能を持った製品といえるだろう。

 その一方で、すべてUSB電源供給だけで動作し、ASIO2.0/WDM対応でさまざまなエフェクトが使えたり、ループレコーディングができるなど嬉しい機能が満載。エントリー用・ホビー用としてはなかなか面白くて便利な機材だ。


□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
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〜EDIROL UA-3FX + DigiOnAudio2で初級篇〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030723/zooma118.htm
【5月26日】【DAL】次々と新製品を出し続けるRoland/EDIROL
〜USB 2.0対応オーディオインターフェイス「UA-1000」など〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030526/dal101.htm

(2003年8月18日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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