■ 高級ノイズキャンセリングフォンがリニューアル 今回取り上げるのは、BOSEのノイズキャンセリングヘッドフォン「QuietComfort2」。前モデルの「QuietComfort」はもともと飛行機での利用を想定し開発され、アメリカン航空のファーストクラスに採用されるなど、航空会社の採用例も多い。 個人的にも2003 International CES取材の機中(エコノミークラス)にて同行のライター氏に「QuietComfort」をお借りしてその効果を確認。特に長時間の移動時には大幅なストレス低減が図れることが実感できた。しかし、価格もそれなりにお高く直販価格で39,800円。
以前は、音質が悪かったり、携帯電話と干渉したりと、欠点の多かったノイズキャンセルヘッドフォン。しかし、最近になって、このコーナーでも取り上げたSennheiserの「PXC 250」など、実売で2万円弱と価格も手ごろで、基本性能も高くなっている。 そんな折、リリースされた新製品「QuietComfort2」は、前モデルから大幅な改善が図られている。もっとも大きな改善点は、ハウジング内に消音回路と電池を内蔵したことで、前モデルでケーブルの中間にあったバッテリーケースが必要なくなった。ケーブルの取り回しや、モバイル用途を考えれば大きな前進と言えるだろう。 さらにハウジングも一回り小型となったほか、軽量化も図られ、ケーブルも片出し方式になるなど、使い勝手は大幅に改善している。価格は引き続き39,800円と個人ユースで買うにはやや高めだが、この機能強化は大いに魅力だ。 ■ 回路と電池をハウジングに内蔵 ヘッドフォン本体のほか、延長ケーブル、ステレオ標準変換プラグ、航空機内オーディオ対応のデュアルプラグなどが同梱され、付属の専用のキャリングケースに収納できる。
密閉ダイナミック方式で、ドライバ口径は35mm。電源と電子回路を左右のハウジングに独立して配置(配線はヘッドバンド内に設置)し、マイクもハウジング内に内蔵。ただし、右側のユニットに単4アルカリ電池を収納するため、電池内蔵時の重量は従来比で10g重い170gとなっている。ケーブル長は178cm。 ボディカラーは従来機のイメージを引き継いだブラウンゴールド。ケーブルも脱着式となっており、接続部に感度のHI(1,600Ω)/LO(350Ω)切り替えを行なうスイッチを備えている。 また、イヤーカップが90度回転し、キャリングケースにしっかり収納できるように配置されている。
■ 装着感は良好。長距離移動には最適 早速装着してみると、ホールド感は非常にソフトで心地よい。耳をすっぽり覆いつつも、圧迫感はなく非常にソフトな触感。本体の質感はややプラスチッキーなところもあるが、装着感はさすがは39,800円といったところだ。 前機種より小型化されたとはいえ、大振りなハウジングは通勤電車ではやや恥ずかしい気もするが、付けている本人は快適。各駅停車でもグリーン車気分というか、ちょっと上級な気分になるかも。 ノイズキャンセル機構は、イヤーカップ内に侵入してくる全ての音をハウジング内蔵のマイクでモニターし、再生音と比較して騒音を識別、逆位相の音波を作り出して、音響的に騒音を打ち消すというもの。また、独自のトライポート技術の採用などにより、「大容量ヘッドフォンに匹敵する高音質を実現」とのこと。
まずは、ノイズキャンセルをOFFにして再生…… と思いきや、ノイズキャンセルOFF状態のでは音が出力されない。必ず、電源スイッチをONにしなければならない。ヘッドフォンの素の能力を試せないだけでなく、電池が切れると音楽を聴くことができなくなってしまうので、やや不満の残る仕様だ。なお、電池の持続時間はカタログスペックで約35時間、実際に20時間ほど使用したが、ノイズキャンセル効果に大きな変化は感じなかった。 音質的には、バランスが良好で装着感の良さもあって好印象。聴き込むと、高域の解像感や、音場感などはやや乏しいが、低域の量感は結構ある。新幹線で利用してみたが、走行音などが大幅に低減され、かなり快適だ。車内アナウンスなどは聞こえづらくなるが、近くの人の動きや話し声などがそれなりにわかる程度には周辺情報を感知できる。長距離移動にはかなりストレス軽減効果がある。
通勤時の地下鉄でも利用してみたが、遮音性に加えノイズキャンセル性能も高く、地下鉄の「ゴー」という共鳴音もかなりの部分をカットしてくれて快適。もちろんある程度の周辺音は聞こえるのだが、耳をすっぽりと覆うため、耳穴周辺だけをカバーする「Sennheiser PXC 250」と比べると、車内空調のファンノイズなども遮断。相対的なノイズ低減効果はQuietComfort2のほうが高いと感じた。 ノイズキャンセルヘッドフォンにありがちな、携帯電話との干渉についてもテストしてみたが、手持ちのCASIO「A5302CA」を音楽再生中に近づけてみても、音質変化はほとんど感じられなかった。 ただし、通勤時に利用するにはややサイズが大きすぎるのも事実。イヤーカップが回転式となり携帯性は大幅に向上しており、コードが片出しとなったことで取り回しは容易なのだが、電車の窓に映った、つり革につかまって大きなヘッドフォンをした自分の姿はやや間抜け。個人的には通勤時に使うにはやや大げさすぎると思う。やはり長距離移動での利用が最適だ。例えば出張が多い人などには最適のヘッドフォンだろう。 機能に大きな不満は無いが、唯一気になったのは、ノイズキャンセリングの電源を切り忘れてしまった場合。入力信号が10分ほど無いと、自動的に電源が切れる機能があれば使い勝手は向上すると思うが、飛行機で寝るときなど、音を出さずに騒音だけをカットする、といった用途もあるので、こうした仕様もしかたがないだろう。 ■ 通勤より出張向け。長距離移動用ヘッドフォンとして独自の存在 音質的には、さすがに通常のヘッドフォンと同等とはいかないが、ポータブル用途としては満足のいくものだろう。特に取り回しが大幅に向上したのは大きな魅力。個人的な改善希望点としては、先述の電源OFF時のスルー再生と、自動電源OFF機能ぐらい。 39,800円という価格は、それだけの金額を出せば、前述のPXC250と2万円程度の高級ヘッドフォンを購入できる。ポータブル用途ではPXCを、家庭では普通のヘッドフォンを利用したほうが、QuietComfort2だけで全てこなすよりは満足度は高いだろう。しかし、長距離移動時の快適性という意味ではPXC250に比べて大幅に良好で、別ユニットが無くなったという点において、大きな外付けユニットがあるPXC250より圧倒的に取り回しもいい。またキャリングケースもよく考えてデザインされており使いやすい。出張の多いビジネスマンや、飛行機に頻繁に搭乗する人には最良の製品といえるだろう。 □BOSEのホームページ (2003年8月22日)
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