【バックナンバーインデックス】



オーディオジュークボックスに進化したAVサーバー
Ethernet搭載HDDレコーダの新機能を試す
NEC 「PK-AX20」
発売日:5月22日発売
実売価格:125,000円


■ 当世HDDオーディオジュークボックス事情

 CDを大量に持っていて困ることといえば、「目当てのCDが聞きたい時に見つからない」ということ。過去には、整理をつけようと、アルファベット順やジャンル別でラックに収納して整理を試みたこともあるが、そもそもの整理能力の欠如や、所有CDの枚数が最初からラックの収納枚数を超えていたりと、うまくいったためしが無い。

 そんな人にうってつけの製品がHDDオーディオジュークボックス。しかし、ソニー「HAR-D1000」や、「DAN-Z1」、ヤマハ「CDR-HD1000」、オンキヨー「MB-S1」など、CDドライブ一体型のHDDジュークボックスが多数出ていたにも関わらず、大きな市場を築くことなく現在に至っている。理由はいろいろあると思うが、HDD容量がやや少なめだったり、比較的高額だったためと思われる。

 ところが、先日CDドライブ+ HDDといったアプローチとはまったく逆の手法でオーディオジュークボックス機能を実現できる製品が登場した。それが、今回取り上げる「PK-AX20」で、HDDビデオレコーダの追加機能として、オーディオジュークボックス機能が追加されたのだ。

 PK-AX20は、250GB HDDを搭載したビデオレコーダで、昨年11月に発売した「PK-AX10」の上位モデルとなる。「AX10」については、弊誌でもレビューを行なっているので、詳しくはそちらをご覧いただきたいが、特徴としては、Ethernetを搭載し、録画番組をパソコンに転送して編集したり、パソコン側でのEPG予約や単体での録画予約/編集などが可能。AX20のハードウェア的な変更点は、HDD容量を3倍強の250GBとしたという一点のみだが、7月22日に公開されたアップデータで、オーディオジュークボックス機能が追加された。AX10用のアップデータもあわせて公開されている。

 アップデータにより、アナログ音声出力のほか光デジタル出力にも対応。AX10/20のHDDにパソコンからMP3/WAVE/WMAファイルを転送することで、AX10/20単体でオーディオデータが再生でき、テレビやオーディオアンプなどの光デジタル/アナログ入力と接続して、オーディオジュークボックスとして利用できる。

 また、従来もクライアントソフト「SmartVision/PLAYER」により、AX10/20上のビデオをクライアントPCでストリーミング再生が行なえたが、新たに公開された「Network Audio Satellite」では、オーディオのストリーミング再生にも対応した。オーディオ配信プロトコルにはオンキヨーの「Net-Tune」を採用している。

 ということで、ビデオレコーダ側から突如実現されてしまったHDDオーディオジュークボックス。さらにストリーム配信も可能ということで、その使い勝手に期待がかかる。今回はPK-AX20のHDDオーディオジュークボックス機能に絞ってレポートする。


■ ハードウェアの変更点はHDD容量のみ

 前述の通り、ハードウェア的にはAX10との違いはHDDのみ。なお、仕様表には新たにUSB 2.0端子×2と光デジタル出力端子が追加されているが、端子自体はAX10でも備えていた。今回のNet-Tune対応アップデートにより、光デジタル出力が可能になったほか、後日のアップデートでUSB 2.0接続の外付けHDDを増設可能となる予定。

 録画機能としては、MPEGエンコーダ/デコーダ、チューナなどの中核部品はAX10と同等。3次元Y/C分離、タイムベースコレクタ、ゴーストリデューサ、デジタルノイズリダクションといった高画質化回路がそのまま採用されている。

 外形寸法および重量は、430×280×68mm(幅×奥行き×高さ)、約5.3kg。リモコンもAX10と同じものだ。入力端子として、S映像、コンポジット、アナログ音声を各2系統装備。出力端子は、S映像、コンポジット、アナログ音声のほか、光デジタル音声を各1系統備える。


本体前面 S映像入力やコンポジット入力、アナログ音声入力を装備 リモコンはAX10と同じ

背面。Ethenetのほか、S映像/コンポジット入出力、アナログ音声をそれぞれ1系統備えている カバーを取ると光デジタルやUSB 2.0端子が現れる やや大きめのファンを搭載



■ オーディオジュークボックス設定

 使用環境にブロードバンドルータなど、DHCPサーバー機能を持つ機器があれば、ネットワーク設定を行なう必要は無い。ただし、オーディオジュークボックスとして利用するためには、まず、メニュー画面を立ち上げ、[音楽モード]から[音楽設定]を選択、[HDD容量の設定]から、オーディオ用のHDD領域を確保する必要がある。MP3での利用であれば20~30GB確保すれば十分だろう。

新たに追加された[音楽メニュー]画面 HDD容量の設定画面

 AX10/20が他のHDDジュークボックスと異なるのは、CDドライブを搭載していないこと。そのため、オーディオデータはパソコン側で用意し、付属の「Network Audio Satellite(以下NAS)」で転送を行なう必要がある。


Network Audio Satelliteでオーディオをアップロード Network Audio Satellite

 NASからのアップロードは、任意のフォルダ上のオーディオファイルを一括選択して、転送するというもの。この際アーティスト/アルバムごとにフォルダを作成していたりすると、アップロードできない。アップロードできるのは、単一のフォルダのオーディオファイルのみとなる。このあたりはやや面倒なところだ。

 また、アップロードしたファイルはパソコン上からは削除される。著作権保護のためには仕方ないが、ライブラリをパソコンやポータブルHDDオーディオプレーヤーなどと共有できないという意味では、使い勝手的にはよろしくない。

 1GBのMP3ファイルを転送した際の転送時間は約15分。アップロード可能なオーディオファイルはMP3/WMA/WAVEだが、WMAの再生はAX20本体のみとなり、ネットワーク上のPCでは再生できない。

 なお、アップロードしたオーディオファイルは、パソコン上にダウンロードもできる。デフォルトでは[ \Documents and Settings\All Users\Application Data\Network Audio Satellite\MyMusic ]にダウンロードされ、AX20上から削除される。なお、転送前にはファイル名を曲名としていたものが、ダウンロード後のファイル名は[アーティスト名-アルバム名-曲名]に変更されている。これはWMA/MP3ともに同様で、転送時にAX20で利用可能な形式に変換していると思われる。試しに、新規に作ったMP3形式のアルバム(42.8MB)と、1度ダウンロードした同一タイトルのアルバム(42.8MB)のアップロード時間を比較したところ、前者が40秒、後者28秒とかなり速度に差が出た。



■ 音質は良好。ファンノイズがやや気になる

 AVアンプにデジタル出力し、アップロードしたオーディオファイルを再生。特に問題も無く、BGM程度に流す分には特にMP3だからと気になることもない。同一タイトルの音楽CDとAX20上のMP3を聴き比べてみると、小音量時はさほど大きな差を感じないが、ボリュームを上げていくと、高域の分解能や低域の量感など、それなりに違いは感じられる。

アルバム別表示

 アナログ出力/光デジタル出力との比較では、デジタル出力のほうが若干高品質と感じた。また、AX20では、WAVE(PCM)再生も可能なので、音質にこだわりたければ、PCMで転送するというのも手だろう。総じて音質は良好で、特に気になることは無かった。

 オーディオデータは、アルバム別や、アーティスト別、ジャンル別などで一覧でき、再生可能。任意の曲を選択して、リモコンカバー内の[ブックマーク登録]ボタンで、プログラム登録を行なうことでプログラム再生も行なえる。プログラムはプレイリストとして登録できる。また、ランダム再生や、リピート再生にも対応する。


アーティスト別表示 ジャンル別表示 タイトル一覧表示

プレイリスト一覧 プレイリスト編集も可能

再生設定

 概して、本体のオーディオジュークボックス機能は良くできていると思ったが、唯一残念なのはやや動作音が大きいこと。電源設定は通常の電源ON状態のほか、NAS経由でのオーディオ再生や、SmartVision/PLAYER経由でのビデオ再生が可能な可能なサーバーモードも用意されている。しかし、どちらのモードでも昨今のHDDレコーダとしてはファンノイズがやや大きめだ。

 ビデオ再生時にはあまり気にならなくても、音楽再生時、特に曲間などで静寂になった時に、ファンの騒音が聞こえると興ざめになる。ガラスカバーのついたテレビラックなどに入れれば気にならないとは思うが、オーディオ機器として考えたときには、一層の静音化が必要と感じた。


WMAはNAS経由では再生できない

 NASからは、サーバー(AX20)に接続し、オーディオデータにアクセスして再生が可能。なお、WAVEやMP3の再生は行なえるが、AX20上のWMAファイルの再生はできない。再生/停止やボリュームコントロールなどの基本操作から、プレイリスト作成/並び替えなども行なえる。

 本体と同様にアーティスト/アルバム/ジャンル別の表示が可能で、操作は非常に簡単。レスポンスも悪くない。特にプレイリストの作成は、NAS上で行なったほうが圧倒的に簡単だ。また、パソコンでの再生のほか、Net-Tune本家であるオンキヨーのNet-Tuneレシーバー「NC-500」を接続して、本格的なオーディオシステムなどで聞けば、より高音質のストリーム再生も可能となる。

 なお、本体で音楽再生中やビデオの録画中/再生中でも、NASによるストリーム再生は行なえる。ただし、ストリーム再生中はADAMS-EPGの番組表の更新が行なわれない。


■ 普通のビデオレコーダに満足できない人に

 ということで、HDDジュークボックス機能に重点を絞って検証した。使い勝手もこなれているが、忘れてはいけないのは、この機能がHDDレコーダの1つの追加機能として提供されていること。あくまで、ビデオレコーダの追加機能としてオーディオジュークボックス機能が利用できるという点だ。

 他のHDDレコーダで、こうした機能を追加している製品は、先ごろ発表された「TransCube 20(8月9日発売/実売価格15万円)」ぐらい。NECでは、「PK-AX10/20」を「HDDレコーダ」でなく、「AVサーバー」と謳っているが、家庭内のマルチメディアデータを全部この中でやってしまおうという発想は、パソコンメーカーらしい。

 ビデオレコーダ業界的には、ハイブリッド化、DVDドライブのマルチフォーマット対応、MPEG-4などの新コーデック対応、高画質化、低価格化などの数々のトレンドがあると思うが、DVD作成など、面倒な作業はとにかくパソコン任せで、サーバー機能を充実させるという発想は、家電メーカーとは正反対で面白い。

 パソコンとの強力な親和性と、オーディオジュークボックス機能。実売価格で125,000円程度と、家電メーカーのハイブリッドレコーダの上位機種と同価格帯ではあるが、付加価値を考えれば高いとは感じない。

□NECのホームページ
http://www.nec.co.jp/
□製品情報
http://121ware.com/nsserver/ax/
□関連記事
【8月7日】東芝、160GB HDD搭載ホームAVサーバー「TransCube 20」
-IEEE 802.11a/b対応、MP3ジュークボックス機能も搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030807/toshiba.htm
【7月24日】NEC、AX10/AX20に音楽配信機能を追加するアップデータ
-Net-Tuneに対応し、PCでプレイリスト再生が可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030724/nec.htm
【5月22日】NEC、250GB HDDを搭載したAVサーバー「PK-AX20」
-アップデートで外付けHDD増設や音楽サーバー機能を追加
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030516/nec.htm
【2002年11月7日】【新プ】NEC ホームAVサーバー「AX10」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20021107/npp35.htm

(2003年8月8日)

[usuda@impress.co.jp]


00
00  AV Watchホームページ  00
00


Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved.