■ ホラーアクション? それとも怪獣映画?
ハリウッド発の怪獣映画といえば、ハリウッド版「GODZILLA」を思い出す。日本人の視点では「?」な部分も多かったが、別モノだと思えば、リアル路線もなかなかのもの。上映中に「なんてこった」と面食らいつつも、本家にはないスピード感とド派手な音響効果にノックアウトされた方も多いと思う。 実のところ、「サラマンダー」は公開中もDVD発売時もほとんど食指が伸びなかった作品だ。しかし、ふと「要するにこれはGODZILLAのようなリアル系怪獣映画なのでは?」と邪推した途端、気になってしようがない存在に。価格も3,800円とそれほど高価ではない。取り急ぎ、ほかの新作と一緒に購入してみた。 もっとも、英米合作のこの作品、監督のロブ・コウマンは「ホラー映画」と紹介しているし、日本公開時でのプロモーションでも、怪獣映画だとは一言も触れられていない。買ったはいいものの「期待したノリと違ってたらどうしよう」と、不安にかられたのも確かだ。もとより、怪獣映画というジャンルが彼らの世界に存在するのかどうかが怪しいのだが……。 パッケージは紙製アウターケース付きのデジパック仕様。黒をバックに赤い炎やサラマンダーを配したデザインで、中央には原題の「REIGN OF FIRE」。最近、単品タイトルでもデジパックを採用するケースが増えているが、アウターケースは必需品だろう。
かつて、アウターケースのないデジパックの「少林サッカー」を購入したとき、中の封入物がケースからすべり落ちて大変だった。そのため、「印刷はきれいだけど、DVD-BOX以外にデジパックを使ってほしくないな」と考えていたのだが、なるほど、アウターケース付きなら何の問題ない。また、最近は封入物用のポケットをデジパック内に備えている製品が多い。今回の「サラマンダー」でも、カラーの解説兼チャプタリストがポケットに入っており、ケースメーカーの創意工夫には感心してしまう。
■ ドラゴンvsスカイダイビング兵 ロンドンの地下鉄工事現場で発見された1頭の巨大竜。それは、6,500万年前に生物の頂点として君臨し、恐竜を絶滅に追い込んだサラマンダーだった。1頭から瞬く間に繁殖した彼らにより、絶滅寸前にまで追い込まれる人類。サラマンダーの影に怯えながら、人々は肩を寄せ合って暮らしていた。 ロンドン郊外の古城に仲間たちと隠れ住むクイン(クリスチャン・ベイル)も生き残りの1人。ある日彼らの元に、戦車と装甲車からなる一団が現れた。指揮をとるのはアメリカ人ヴァン・ザン(マシュー・マコノヒー)。彼はクインに、竜を殺すためロンドンに同行するよう求める。 作品の見所は多い。まず、CGによる空飛ぶサラマンダーが秀逸だ。製作には「ダイナソー」、「ミッション・トゥ・マーズ」のザ・シークレット・ラボ(TSL)が関わっており、「神秘的で知的な存在」という西洋人が持つドラゴンのイメージを、緻密なVFXで壊したかったという。目指したのはリアルで残忍な捕食動物。そのため、サラマンダーの動きにはとことんこだわったそうだ。 確かに、空を飛ぶサラマンダーのスピード感や、動きのリアルさはかつてないもの。サラマンダーがものすごいスピードで地表に迫り、炎とともに人間を襲う映像は鳥肌ものだ。ショットのほとんどは人間側の視点なので、サラマンダーがめったにクロースアップにならないのもミソ。たまにアップになったときは、誰かが死ぬときだったりする(ラスト近辺を除く)。怪獣映画というより、どちらかといえばモンスター映画の王道かもしれない。 ほかにも、戦車やヘリでドラゴンと戦うというミリタリーチックな展開もユニークだ。なんとなく怪獣映画っぽいが、部隊が小規模なので「完全包囲で集中放火、でもあっさり突破」というお約束はない(もちろん突破はされる)。実際は特殊部隊vsサラマンダーといったノリなので、怪獣映画らしいカタルシスは薄い。 ただしこの特殊部隊、上空からスカイダイビングでサラマンダーに迫る「アークエンジェルチーム」を擁するなど、派手な見せどころにはこと欠かない。また、「文明崩壊後の終末世界」というジャンルも、好きな人にはたまらない点だろう。怪獣映画としては期待外れだったが、アクション映画ファンとしては気になるポイントがてんこ盛りだ。
■ 画質・サラウンド音声とも上質 本編は、シネマスコープサイズをスクイーズ収録。音声は、英語をドルビーデジタル5.1chとDTSの2種類、日本語をドルビーデジタル5.1chで収めている。最近の作品としては標準的な仕様だ。 DVD Bitrate viewerで見た本編の平均ビットレートは7.38Mbps。本編103分という収録時間の短さが効いているのだろう。高ビットレートといっていい。 実際の画質も上々。薄暗い室内シーンが多く、屋外も常に薄暗い。しかし、階調の豊かな今風の画質のためか、圧縮ノイズが気になることはほとんどなかった。サラマンダーが吐く炎の描写についても、動きのスムーズさやきめ細かさは十分再現されている。炎と闇によるコントラストの美しさも特筆すべき点だ。 音声のビットレートは、英語、日本語のドルビーデジタル5.1chが448kbps。英語のDTSは768kbps。聴かせどころはなんといってもサラマンダー関連の効果音だろう。後方から右側を旋回し、速度を上げながら前へといった具合に、サラウンドによる移動音がはっきりしている。音も分厚いので、5.1ch環境なら圧倒されること間違いなしだ。 また、作品の売りとなっている炎の効果音もすごい。LFEを伴いながら全周囲に広がる様子は、思わず恐怖を感じるほど。ただし、ショットガンのコッキング音など、多少後方からの音にわざとらしさとくどさを感じる場面もあった。ドルビーデジタルとDTSでは、音の切れやダイナミックレンジの広さでDTSに分がある。
特典はメイキング、プロモーション、監督インタビュー、予告編など、計44分を収録している。メイキングでは、特殊効果担当のデイブ・ゴーディエ氏によるパートが楽しい。彼が解説するのは作品の売りとなるファイヤーエフェクト。 たとえば、畑が炎で埋め尽くされるシーケンス(チャプタ3)は、クレーンの先端に直径8cmのノズルを2つ先端につけた改造ショベルカーによるもの。ここだけで何千リットルもの液体プロパンを使用したそうだ。確かに、ビルほどの高さの炎と大量の黒煙が一瞬で吹き上がり、思わず「この人たちは地球の環境を確実に破壊している」と思ったほどだ。作品全体を通して、約8トンの液体プロパンを使ったというからすさまじい。こうしたファイヤーワークに関しては、その規模からもっと評価されて良いと思う。
■ また新たなリファレンスディスクが誕生した 画質、音質とも上質で、アクション映画ファンならとりあえず持っていて損はないタイトル。少し大味だが、サラウンドの派手さ・わかりやすさから、リファレンスディスクとしても活用できるだろう。接客用としてもうってつけだ。 個人的には怪獣映画らしさが薄かったので、少しだけがっかり。まあ英米合作のアクション映画に怪獣映画のノリを期待するほうが間違っているのだろうが……。 (C)BUENA VISTA PICTURES DISTRIBUTION AND SPYGLASS ENTERTAINMENT GROUP, LPK
□ポニーキャニオンのホームページ (2003年9月30日) [AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]
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