■ キャプチャカードで自動「CMカット」に挑む 録画機器でエアーチェックをしていると、欲しくなる機能の筆頭とも言えるのが「自動CMカット」機能だろう。しかし、DVDレコーダなどのデジタルレコーダでは、わずかではあるが再生時にCMを飛ばす機能を搭載した機種ならば存在するものの、録画時に自動的にCMをカット機能を搭載した機種はない。 そんな状況に、頼もしくも挑戦する製品が現れた。それが、長瀬産業の「TransRecorder 1.5 DVD HG Plus」というテレビ録画/編集ソフトウェアだ。 「CMカット」機能をアピールポイントとするTransRecorder 1.5 DVD Plusは、テレビ視聴ソフトの「TransTV 1.0 HG」と録画予約ソフト「TransRecorder Scheduler 1.5 Plus」、DVDオーサリングソフト「neoDVDplus 5.0」、DVDプレーヤーソフト「neoPLAYER」などから構成されるソフト。基本的に、WDMドライバ対応テレビチューナであれば動作する。対応カードについては、同社のホームページに掲載されている。 TransRecorderをバンドルし、ゴーストリデューサ機能や3次元Y/C分離機能などを搭載した、ハードウェアMPEGエンコード対応テレビチューナカード「TRANSGEAR 5000TV」も12月20日に発売された。今回は、このTRANSGEAR 5000TVで、TransRecorder 1.5 DVD HG Plusの実力を検証した。
■ GRTや3次元Y/C分離を搭載したキャプチャカード PCIキャプチャカードは、CONEXANT製のハードウェアMPEGエンコーダ「CX23416」を搭載。チューナはPhilips製で、NECのゴーストリデューサや3次元Y/C分離回路などの高画質化回路も装備する。 入力端子は、アンテナ入力のほか、S映像入力、コンポジット入力、アナログ音声入力など。
■ ソフト間の連携は複雑でわかりにくい ソフトウェアの対応OSはWindows 2000/XP。テレビの視聴は「TransTV 1.0 HG」で、録画設定は「TransRecorder Scheduler 1.5 Plus」で設定、実際の録画は「neoDVDplus 5.0」が行なう。
早速利用してみて、まず気になったのが、各アプリケーションの連携がよくないこと。iEPG録画のためには、TransRecorder Schedulerでチャンネル設定をした後、iEPGサイトで録画予約を行なう。すると、録画時間にneoDVDPlus 5.0が起動して録画するはずなのだが、最初に録画した時、どうも違うチャンネルで録画されている。 よくよく調べてみたら、neoDVDPlusのチャンネル設定を別に行なう必要があったためで、そのため、TransRecorder Schedulerで指定したチャンネルとは異なるチャンネルで録画していたわけだ。同様にテレビ録画ソフトの「TransTV」もチャンネル設定を個別に行なう必要がある。 ユーザーからみて、設定用のフロントエンドとなるアプリケーションと、実際の録画を行なうアプリケーションが違うというだけでもわかりにくい。さらにフロントエンドの設定が共有されないというのは、理解の範疇を超えていると思う。
また、TransTV 1.0を起動していると録画時間になっても、neoDVDPlusが起動せず、TransTVを閉じるよう促すダイアログが出るのみ。そのため、何度か録画に失敗することがあった。他のキャプチャカードの付属ソフトでは再生ソフトと録画ソフトが統合されていることが多く、再生ソフトを立ち上げていても問題が生じることはないので、最初はかなり戸惑った。 同社によれば、DirectXの制限で、2つのアプリケーションで同時にDirectXのプレビューウィンドウが開けないことからこうした仕様となっているというが、録画の数分前にTrans TVを閉じるよう警告を出して、録画前にはTrans TVを強制終了する仕組みなどあってもいいのではないだろうか? それぞれのアプリケーションの操作性や動作速度には大きな不満は無く、特にTrans TVのチャンネル切り替えの早さなどは特筆に価する。しかしTrans TVでは、視聴している番組の録画ができるが、予約録画は行なえない。予約録画にはTrans Scheduler/neoDVDPlusが必要となるが、それぞれの操作体系がバラバラなので操作を覚えるまでにはかなり時間がかかるだろう。アプリケーションの連携も今ひとつで、あまりユーザーフレンドリーな操作性といえないところが残念だ。 ■ CMカット可能な番組は少なめ。ダイレクトDVD記録も可能
録画設定は、TransSchedulerで設定し、iEPGサイトから、EPG情報をクリックして取得すると自動的にスケジュール設定画面が立ち上がる。スケジュール設定画面では、録画時間や音声方式などの設定が可能。 画質は高/中/低の3段階で、ビットレートは約6.8Mbps(720×480ドット)/3.9Mbps(352×480ドット)/1.8Mbps(352×480ドット)。 また、出力先を選択することで、DVD+R/RWへ直接録画も行なえる。記録形式はDVD+VRもしくはDVDビデオ形式が選択できる。 音声は、リニアPCMとAC3(ドルビーデジタル)、MPEG-1 LayerIIが選択できるが、HDDへの記録はMPEGオーディオのみとなっている。また、最大6箇所までの自動チャプタ設定も行なえる。
最大の特徴とも言える、「CMカット」機能は、放送音声のステレオ/モノラル、音声多重を識別し、CM部分をカットするというもの。たとえば、モノラル放送の場合は通常、CMのみステレオとなるので、そのポイントを識別し、ステレオ部分では録画を行なわないことで、CM部分の無い録画が行なえる。 CMカットには、以下の4パターンが用意される。
早速録画を試みるものの、EPG番組表を見ると、思いのほかCMカットができる番組が少ないことに気づく。長瀬産業が公開しているCMカットできる番組の割合は以下のとおり。
要するにCMカットの対象となるのは、洋画と、古めの邦画/ドラマ、バラエティー番組ぐらい。ただ、実際にiEPGの番組表を見る限り、アニメに関しては2割ぐらいはCMカットできるように思える。実際に利用したところ、時折やや唐突な繋ぎになることもあるが、大抵の場合さほど違和感なく、綺麗に繋がっている。とにかく、いちいち編集ソフトを立ち上げて、CMカットしなくていいというのは非常に楽だ。 また、面白いのは【CMのみ】で録画した場合。モノラル放送の場合、CMのみにしておくことで、CMをひたすら取り続けることができるので「CMファン?」には注目の機能だ。例えば深夜の通販番組などは大抵モノラル放送なので、一晩中ひたすらCMを撮り続けるといったことも可能。ただし、深夜CM枠は似たような企業のCMが延々続くことが多いが……。 やや残念なのが、チャプタ分割機能とCMカット機能が連動しないこと。チャプタ数が最大6というのも寂しいところだ。また、録画番組の間に3分以上の間隔が必要なため、連続した番組の予約を行なう際は、前の番組を3分早く録画終了とするなどの対策が必要となる。 DVDに直接記録できるのも大きな特徴で、DVD+RWにDVDビデオ/DVD+VRで記録可能となっている。なお、サポート外となるが、DVD-RWへのDVD+VR記録も行なえた。また、ディスク容量ちょうどに収まるよう、最大ビットレートで記録できる「ぴったり録画」機能も搭載している。
ぴったり録画は、映画のテレビ放送など、iEPGサイトにCMを省いた本編の放送時間が記載されているものの時間を参考に、記載されている本編時間にあわせて録画指定を行なうと、CMをカットして本編のみを最高ビットレートで記録できるというもの。 iEPGに本編時間が記載されている番組はさほど多くないのだが、一度設定するだけで、ディスク容量の最大限まで利用して録画できるので非常に便利な機能だ。また、サスペンドや休止状態からの復帰にも対応している。
■ 画質は良好 画質については、以下のサンプルを参照して欲しい。ややネムく感じることもあるが、発色は素直で好印象だ。ただし、詳細なビットレート設定や、高画質化回路の利用選択などが行なえないのが、残念なところ。
■ ソフトの使い勝手の向上に期待 TRANSGEAR 5000TVは、CMカットに代表される高機能なキャプチャカードとして、非常に個性的な製品に仕上がっている。録画中のCPU利用率も20%程度と低く、パソコンへの負荷は少ない。直販価格で2万円弱と、高画質化回路をフル搭載したハードウェアキャプチャカードとしては比較的安価ながら、高機能/高性能と言えるだろう。 しかし、やはりアプリケーションの連携にはかなり難があるといわざるを得ない。パソコンを利用したテレビキャプチャの経験が豊富なユーザーでなければ、基本機能を利用するのにも一苦労という感じで、万人に勧める製品には、まだ遠いという印象だ。ソフトの使い勝手が向上すれば、より魅力的な製品となるのは間違いないと思うのだが……。 □TRANSTECHNOLOGYのホームページ (2003年12月25日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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