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第122回:怖いけれど、なぜか可笑しい
「呪怨2 劇場版 デラックス版」

怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ 恐怖ジャケ再び

呪怨 2
価格:4,700円
発売日:2004年2月25日
品番:GNBD-1012
仕様:片面2層1枚(本編)、片面1層1枚
収録時間:本編92分
画面:ビスタサイズ(スクイーズ)
音声:日本語(ドルビーデジタル2ch)
   日本語(ドルビーデジタル5.1ch)
   日本語(DTS)
発売元:ジェネオン エンタテインメント

 今回取り上げるのは「呪怨2 劇場版 デラックス版」。前作の「呪怨 劇場版」に続く、あのホラーシリーズの第2弾だ。

 「劇場版」とつくのは、呪怨シリーズは、オリジナルビデオ版でも「呪怨」、「呪怨2」と発売されているため。なお、オリジナルビデオ版のDVDも各4,500円で発売されている。

 DVD市場でも比較的好調だった前作を受けてか、「呪怨2 劇場版」の公開時にはかなりの宣伝も行なわれ、それなりにヒットしたようだ。2003年8月の公開を受け、2月25日にDVD発売ということで、ヒット映画らしい、すばやいDVDリリースだ。

 パッケージは、前作の青ライトで照らされた白塗りの子供ジャケよりは幾分インパクトは薄いものの、呪怨シリーズの恐怖の根源となる「伽椰子」を前面にあしらったもので、一見してホラー映画とわかるものだ。

 本編ディスクのほか、初回生産分のみ、メイキングやインタビュー、削除シーンなどを収録した特典ディスクが付属。封入特典として「伽椰子」ステッカーが同梱されている。

 監督/脚本は、前作同様に清水崇。ストーリーは、前作を引き継いでいるものの、出演者はほぼ一新(前作でほとんど死んでいるので)。主演の酒井法子のほか、新山千春、堀江慶、市川由衣、葛山信吾などが出演している。


■ 相変わらず怖いが、可笑しさもアップ

 舞台の中心となるのは、前作同様に関わった者たちが次々と死亡したり行方不明となっている「呪われた家」。今回は、この呪われた家を取材したTVクルーに次々と襲い掛かる恐怖が、それぞれの視点から描かれる。

 映画は核となる登場人物ごとに大きく分けて、「京子」、「朋香」、「恵」、「圭介」、「千春」、「伽椰子」の6つの物語から構成される。ともに、収録に立ち会ったTVクルーや出演者で、時系列ではなく、彼、彼女らの体験が、それぞれ個別に描かれながら、最後にはリンクしていくような構成となっている。

 早瀬京子(酒井法子)は、「ホラークイーン」と呼ばれる女優。番組にゲスト出演した後、京子は婚約中の石倉将志(斉藤歩)に送られて帰路を急いでいた。その間にラジオからの異音や道で猫を跳ねるなどの不吉な出来事が連続する。猫を轢いた時、京子は白塗りの子供を見かけたように感じるが、逃げるように2人は帰途を進む……。しかし、突如将志の足元でハンドルを握る白塗りの子供「俊雄」が出現。コントロールを失った車は暴走し、大破。将志は重傷を負い、妊娠中だった京子は子供の流産を知り、気を失う。

 悲劇は、彼女だけでなく、彼女の母にも及び、混乱する京子。さらに通院した京子は、流産したはずの子供について医者に「順調」と告げられる……。

 三浦朋香(新山千春)は、京子とともに番組に出演したレポータ。収録の数日前から、深夜のある時間帯に彼女の部屋で起こっていた異変。それは、収録後の彼女の身に襲い掛かる恐怖の前触れだった。

 大林恵(山本恵美)は、「霊感が強い」という番組のAD。大国圭介(葛山信吾)は、番組のディレクターで、収録日を境に連絡を絶った恵と、「家」の本当の謎を探ろうとする圭介は思わぬ形で再開することとなる。

 前作から唯一継続して登場する「千春(市川由衣)」は、呪われた家にこそ行っていないものの、友人関係から徐々に「家」の世界に引き込まれていく。

 呪いの根源である「家」で惨殺された「伽椰子(藤貴子)」と、その子供「俊雄(尾関優哉)」が、目的も理由も問わず、ただ理不尽な恐怖、死に陥れるという展開は前作と同様。個人的には、相変わらず俊雄が強烈に怖く、伽椰子はあまり怖くないという印象だが、前作よりも、怖いけれどなぜか笑ってしまうような、不思議な恐怖感に仕上がっているように感じた。

 清水監督は、前作の特典ディスクでも「“笑い”と“恐怖”の間でのバランスに気を使った」と語っていたが、「怖いのだけれど笑ってしまう」といった微妙な笑いが本作ではより強くなったように感じる。特に「朋香」のエピソードは、長い前フリから実際の恐怖シーン(オチ)にたどり着いた時は、恐ろしいことになっているにもかかわらず、笑わずにはいられなかった。

 「怖さ」に関しては十分すぎるほどの恐怖体験が得られるものの、ストーリーが終盤になると、別の「母性愛」というテーマが出てくる。前フリは長いものの、いざそのテーマが出てくると、かなり展開に無理があるように感じた。


■ 暗部ノイズも散見され、画質は今一歩。音作りのバランスは良好

 DVD Bit Rate Viewerで見た本編の平均ビットレートは7.8Mbps。92分と収録時間も短いこともあり、ビットレートは高いが、シーンによって暗部ノイズが多く、やや気になることもあった。ただし、全般的に彩度を抑えた落ち着いた色調で、特に明るいシーンでは落ち着いて鑑賞できる。

 音声は、ドルビーデジタル 2ch(384kbps)とドルビーデジタル 5.1ch(384kbps)、DTS 5.1ch(1,536kbps)を収録。冒頭の事故シーンなどでは、DTS音声が若干控えめに感じた。

 基本的に脅かすときにはきっちりと大音量で脅かすという、非常にわかりやすい音づくりなのだが、しっかり驚かされるのは、映像と音声のバランスがうまく取れているからだろう。

 また、前作から引き続き環境音や具体音の使い方も面白く、例えば事故の後に後方から小さく聞こえてくる猫の声などは、思わず鳥肌が立った。携帯電話の音声から、ノイズ交じりうめき声が聞こえてきたり、カーラジオからが途切れながちになり、おどろおどろしいノイズを発したりと、さまざまな機械を利用しつつ、リアリティを持たせる演出も心憎い。

DVD BitRate Viewer 1.4でみた本編の平均ビットレート


■ 台湾で続く酒井法子人気

 本編ディスクには、メイキングのほか、出演者のインタビューやトレーラを収録。メイキングは、本編でもっとも怖い存在だった「俊雄」が妙にかわいく、前作同様、本編で怖くなりすぎた人が、現実に戻る分にはちょうどいいかもしれない。

 監督インタビューでは、「あまりいいたくないけれど」といいつつ、裏テーマとして「母性愛」を設定。テーマに基づき、酒井法子のキャスティングを行なったことなどを解説した。また、前作で女性より男性が怖がったというエピソードも、今回母性愛をテーマに持ってきた理由に挙げていて、興味深い。

 ハリウッドリメイク版「JUON」も日本を舞台に、メインのキャストを米国人とするとしており、主演は「スクリーム2」などのサラ・ミッシェル・ゲラー。監督いわく「“ジョーズ”を見て次の年の海水浴客が減ったという話があるが、それに倣って、“JUON”を見て外国の人が日本訪問を嫌がるような作品にしたい」とのこと。

 特典ディスクには、クライマックスシーンを清水監督の音声解説で詳細に分析する「清水崇流ホラーの作り方」や「突撃現場レポート」、「監督が語る出演者」や「出演者が語る監督」、「絵コンテと本編との比較」、「舞台挨拶」などを収録。

 「ホラーの作り方」では、クライマックスシーンとなる「首吊り」や「出産」のシーンを解説。自分でも笑いながら撮影していたというくだりが、“笑い”と“恐怖”のバランスにこだわる監督らしい。

 「突撃現場レポート」は、酒井法子や市川由衣が撮影現場でカメラを回し続けて、ダベっているだけの他愛のないものだが、監督の一番好きな映画が「デカローグ」とか、面白い話も出てくるので、見ておいて損はないと思う。

 削除されたシーンでは、清水監督が音声解説で、カットの理由を説明しながら解説。特に後半はテンポよく展開するということを心がけていたというが、編集室のシーンなど、入っているとより理解しやすかったかな、という場面もあるので、作品の理解を深めたい人は見ておいたほうがいいだろう。

 面白かったのは、監督の手による絵コンテと本編の比較。もともと具体的なイメージがあるからなのかもしれないが、絵コンテの絵がかなりテキトーなので、「こんな絵がここまですごい映像になるのか……」と衝撃を受けた。

 また、舞台挨拶は、日本、韓国、台湾の3箇所分を収録。衝撃的なのは、酒井法子の台湾での人気。かつて絶大な人気を誇ったという情報だけは知っていいたが、アツい歓迎ぶりには驚かされた。


■ 怖いもの好きなら引き続き買い

 「怖い」という意味では、前作に引き続き十分過ぎる内容と思うが、やや失笑を伴うような怖さになってきたところは、評価が分かれるところだろう。

 とはいえ、怖い物好きには今回も押さえて損は無いクオリティを維持しているし、苦手な人は素直に回避しておいたほうがいいだろう。邦画DVDとしては標準的な4,700円という価格も、怖いもの好きであれば満足できると思う。また、前作を購入していない場合は、7,980円の「呪怨 劇場版SET」も用意されている。

 正直、ラスト10分ぐらいの展開はかなり謎なので、清水監督自らがメガホンを取り、2005年公開予定というハリウッドリメイク版「JUON」には、若干の不安も……。しかし、「怖さ」には相変わらず期待してもいいのかなと。

●このDVDについて
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前回の「ドラゴンヘッド」のアンケート結果
総投票数378票
購入済み
17票
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買いたくなった
18票
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343票
90%

□ジェネオンのホームページ
http://www.geneon-ent.co.jp/top_fl.html
□製品情報
http://db.geneon-ent.co.jp/search_new/show_detail.php?softid=285954
□映画「呪怨2」のホームページ
http://www.juon2.jp/
□関連記事
【2003年8月5日】【DVD】怖いだけかよ! 92分の恐怖に耐えろ
「呪怨 劇場版 デラックス版」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030805/buydvd94.htm

(2004年3月9日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]



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