■ 7型ワイド液晶装備のポータブルDVDプレーヤー
サイテックの「DVP-390C」は、7型ワイド液晶ディスプレイを備えた中型クラスのポータブルDVDプレーヤー。直販価格は44,800円。同じく7型ワイドの東芝「SD-P1400」(ポータロウ)の店頭価格より高い。しかしDVP-390Cは、ポータブルDVDプレーヤーでは珍しくDVDオーディオの再生に対応する。また、カー・シガレットアダプタを同梱するのもポイントだ。さらに、このクラスには少数派のリチウムイオン充電池を採用する。 購入は同社の直販ページのほか、一部の量販店やカタログ販売の「ベルーナ」などで取り扱われている。サイテックといえば、据え置き型のDivXプレーヤーに108MHz DACを組み合わせた「DVP-550DX」など、ユニークな製品を擁するブランド。今回は主な用途として、戸外での録画番組の視聴や、MP3の再生を想定し、1週間ほど試用してみた。
■ CD-Rに記録したMPEG-2が再生可能
再生できるディスクは、DVDビデオ、ビデオCD、音楽CDといった一般的なもののほかに、DVDオーディオやHDCDにも対応する。音声DACは96kHz/24bitで、アナログ2chでの外部出力も可能となっている。 CD-Rに記録したMP3、JPEGの再生も可能(CD-RWはサポート外)。さらに、説明書には明記されていないものの、CD-Rに書き込んだMPEG-2も再生できた。CD-Rなので長尺の動画は難しいものの、テレビキャプチャカードで録画したファイルを戸外で見るなど、使い道は多そうだ。また、WMAファイルの再生も行なえた。 ただしCD-Rに記録したMPEG-2は、ファイルによっては音飛びやコマ落ちが発生するケースが何件かあった。再生要件を特定できるまでに至っていないが、概ね320×240ドットなどの低解像度で、平均ビットレート2Mbps以下なら問題なく再生できるようだ。音声はMPEGオーディオでも可能。メーカーページにも正式サポートの記述はないので、個人の責任で利用して欲しい。 本体は無駄のないコンパクトな印象で、樹脂製ながら高級感もある。axionの「AXN-2588R」の石鹸箱のような質感になじめない人でも、これなら満足できそうだ。本体のみでの外形寸法は190×142.5×27.5mm(幅×奥行き×高さ)で、ポータロウより10×17.5×5.5mmだけ小さい。
しかし、バッテリを取り付けると厚みは27.5mmから約40mmに、重量は623gから約1,100gに増す(バッテリ装着時は厚み・重量とも編集部実測)。ポータロウのようにバッテリが後方に飛び出るタイプとどちらが好みかは、ユーザーによるだろう。 さらに気になるのは、バッテリの側面から伸びるDCケーブルを本体に差し込む必要があること。本体とバッテリとの密着面に、導電用の接点がないためだ。側面に飛び出したケーブルはちょっと不恰好な上、カバンから取り出すときなど、何かに引っ掛けそうで心配になる。次期モデルでは真っ先に改善して欲しい。 バッテリはリチウムイオン充電池を採用する。約3時間30分で満充電となり、カタログ値では明るさ0(デフォルト値)、3時間のDVD再生が可能とある。実際にDVDビデオを連続再生したみたところ、3時間5分程度で警告が表示され、そこから1分ほどで再生を停止した。ポータブルDVDプレーヤーとしては、実用的なスペックだろう。 気になったのは、再生を続けると、底面と操作パネル部がかなり高温度になること。本体の底面には「長時間ひざの上に置くのは低温やけどに原因となるので、ひざの上には……」との良くある警告文に加え、「紙など燃えやすいものの上に置いて使用しないでください」という記述すらあるので、メーカーも並外れて熱くなることを認識しているのだろう。ただし、3時間近く連続再生した場合でも、再生自体に支障はなかった。
■ 視聴に十分な画質。左右の視野角も広い
搭載するディスプレイは、解像度480×234ドットの7型TFTワイド液晶。5型などと比べると細部まで見通しが良く、字幕がつぶれにくいなどのメリットが感じられる。解像度はD1に達していないものの、精細感も高く、DVDビデオなど情報量の多いソースの表示はなかなか美しい。さすがにワイドショットになるとディテールが省略気味になるが、画面サイズやパネル解像度を考えれば、視聴時に不足は感じない。 左右の視野角も思ったより広い。真横近くになるとさすがに破綻するが、ポータブルDVDプレーヤー初期の製品に比べると、格段に見やすくなっている。戸外で使うことを考えると、逆にプライバシーフィルターが欲しいくらいだ。その代わり、上下の視野角はさほど広くない。ディスプレイに正対した状態から首を動かすと、若干コントラストが低くなり、白っぽくなる。とはいえ、廉価なポータブルDVDプレーヤーとしては十分な品質だろう。 色再現性も今ひとつ。中間から明部にかけて緑にかぶっており、彩度や色合いの調節でも完全にとりきれない。ポータブルDVDプレーヤーに本格的な鑑賞品質を求めるのも酷かもしれないが、パネルメーカーには中小型パネルの画質にも配慮して欲しいところだ。 残像感は注視しないと知覚できないレベル。動きの激しいシーンでも大きなストレスを感じることはなかった。総じて画質は悪くない印象で、5型クラスのギトギトした画調に比べると、落ち着いて鑑賞できた。 外部出力端子は、S映像、コンポジット、光デジタル音声、アナログ2ch音声、ヘッドフォン端子を備えている。PAL出力も可能。コンポジットやアナログ音声の外部入力も搭載しており、映像機器を接続すれば、モニターとしても利用できる。 DVDオーディオ対応ということで、ヘッドフォン出力の品質にも期待したが、若干の残留ノイズが気になった。価格相応といったところか。そのほか、音関連ではキーチェンジ機能がユニーク。リモコンの「♯」、「♭」ボタンを押すことで、順次キーが上下する。カラオケの練習用にしか用途が思いつかないが……。また、同社のDVP-550DX同様、再生音に「ロック」、「ポップ」、「ライブ」といったイコライザや、音場モードとして「コンサート」、「リビングルーム」、「ホール」などを適用できる。効果が派手すぎるため、個人的にはあまり必要性を感じなかった。 それよりも気になったのは、音楽CD、MP3ともにランダム再生ができないこと。また、MP3だとレジューム再生に対応していないのも残念だ(DVDビデオ、DVDオーディオ、音楽CDは可能)。
■ 「バーチャルリモコン」による独特の操作体系を採用
ポータブルDVDプレーヤーの場合、必ずしもリモコンを一緒に携帯するとは限らないため、本体だけでどれだけ操作できるが重要になる。小型モデルではカーソルと再生関連のボタンが共用になっているケースも多く、リモコンなしだと基本的な操作すら難しい場合もある。 本機も再生関連のボタン(右上写真の上から4番目)と、カーソルボタンを共用するタイプ。しかし、「方向ボタンモード」と「バーチャルリモコン」に切り換えることで、リモコンなしでの基本操作に対応できる。具体的には、電源投入時のままだと、再生/停止/スキップ/一時停止が割り振られており、基本的な再生操作に対応。PANELボタンを1回押すと「方向ボタンモード」に切り替わり、DVDメニュー内でのカーソル移動などが可能になる。
さらにもう1回PANELボタンを押すと「バーチャルリモコン」が画面左に現れ、コマ送り/スロー送り/スロー戻し/再生/スキップ/早送り/早戻し/一時停止/音声言語/字幕言語/アングルの操作が可能になるという仕組みだ。 同社のDVP-550DXをはじめ、バーチャルリモコンを装備する据え置き型プレーヤーはいくつか存在する。据え置き型だと「部屋が暗くてリモコンのボタンが視認できない」ときぐらいしか使い道のない機能だが、ポータブルDVDプレーヤーに転用するというアイデアは面白い。 多少の慣れが必要だが、実際に使ったところ思ったより使いやすい。使い込むうちに、ソースに合わせて各モードを切り換えられるようになった。切り替えや操作感にも特にストレスは感じない。視線を操作ボタンに落とすことなく、操作できるのもバーチャルリモコンの利点だろう。できればバーチャルリモコンの表示位置をユーザーで変更できれば良かったと思う。 操作面で苦労したのは、バックライトの明るさを変更するスイッチ類がないこと。SETUPボタンやPICTUREボタンで調整メニューに入れるものの、ポータブルDVDプレーヤーの場合、環境光に合わせて頻繁に画面の明るさを変えることが多い。本体に専用のダイアルやボタンを設けて欲しかった。
■ まとめ
コンパクトで高級感ある外観や安定した再生品質など、廉価なポータブルDVDとしてはうまくまとめられた製品だ。ただ、最近は同価格帯にポータロウという大手メーカー発のライバル機も存在するので、DivX再生など、同社らしい特徴がもう少し欲しいところだ。 ポータロウに対する「惹き」としては、本体が少しだけ小さく軽いことと、MPEG-2再生(ただしサポート外)、DVDオーディオ再生への対応、S映像出力の装備、そしてカー・シガレットアダプターの標準添付が挙げられる。別売で購入すると3,500円(税込)なので、自家用車での利用を考えている人なら、買い得感は高い。 マイナスポイントしては、本体とバッテリをコードでつなぐ珍しい仕様と、本体にカーソルキーがないこと(ポータロウは装備)。バーチャルキーである程度補えるものの、慣れるまでとっつきにくい操作系なのは間違いない。また、ポータロウにはヘッドフォン端子が2個あり、ヘッドフォンが2個付属するという特徴もある。用途と好みで選択したい。
□サイテックのホームページ (2004年5月27日) [AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]
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