■ 大ヒット邦画のDVD化は赤/白の2枚が登場
おなじみ「踊る大捜査線」シリーズの映画第2弾「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」がDVD化。6月2日に発売された。既に予約段階で100万本突破など、前評判/人気は高く、量販店のDVD売り場でも広大なスペースを割いて販促活動が行なわれている。 とはいえ、筆者は「踊る」シリーズをテレビ放送を見聞きした程度。熱心なファンとはとてもいえないのだが、今回通常版「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」に加え、邦画としてはじめてTHX公認DVDとなったという「踊る大捜査線 BAYSIDE SHAKEDOWN 2」も同日発売されたらしい。これは結構面白そうかも……。 「BAYSIDE SHAKEDOWN 2」は、インターナショナルバージョンとして編集され、昨冬に劇場公開されたバージョンで、最大の特徴はジョージ・ルーカスの「スカイウォーカーサウンド」で新たにサラウンドミックスを行なったこと。それにあわせて本編時間も通常版の138分から120分に短縮されている。 DVDパッケージは「レインボーブリッジを封鎖せよ!」が赤いデジパック仕様、「BAYSIDE SHAKEDOWN 2」白いデジパック仕様となっている(ともにデジパックは初回限定のみ)。店頭で「踊る大捜査線の新しいやつを」と注文すると、「赤盤ですか白盤ですか」との質問。どうやら世の中的には赤/白で区別しているらしい。 「レインボーブリッジを封鎖せよ!(以降赤盤)」は、本編ディスク1枚のみで約17分の映像特典と3種類+αのオーディオコメンタリを収録。一方の「BAYSIDE SHAKEDOWN 2(以降白盤)」は、本編ディスクのほか、特典ディスクを同梱。約185分の映像特典が付属する。価格は赤盤が4,725円、白盤が4,179円。特典ディスク付きの白盤のほうが安価というのがなんとも微妙なところではある。 この2枚どちらを選ぶべきだろうか? 迷っているのもなんなのでとりあえず2枚購入し、比較検討してみた。
■ 赤/白で異なる編集方針
観光地となったお台場で、交通整理や迷子の世話に追われる湾岸署の面々。事件に飢えていた青島刑事(織田裕二)だったが、所轄内で企業の要職につく人を狙った猟奇殺人事件が発生する。本庁から室井警視(柳葉敏郎)と女性管理官の沖田(真矢みき)が駆けつけ、湾岸署内に捜査本部を設置。捜査が開始される。刑事達をぞんざいに扱う沖田に、青島や恩田すみれ(深津絵里)らは大きな不信感を抱いていく。 基本的には、「殺人犯を追う」というよりは、室井や沖田などのキャリアとノンキャリアの現場の対立と調和という警察組織内のパワーゲームと、犯人グループと警察組織の違いを鮮明にしながら、物語は進行していく。正直、犯人グループの動機付けがあっさりしすぎとか、現場と上層部の対立が図式的過ぎとか、いろいろツッコミたいところはるのだが、すぐに次の展開へとテンポ良く進むので、飽きることなく楽しめる。 赤盤と白盤では、収録時間も異なっており白盤のほうが約18分短い。見比べてみても、白盤では、赤盤に収録の冒頭の「お台場紹介ビデオ」が省かれていることから始まり、和久(いかりや長介)と吉田副長官(神山繁)の会話、終盤の柏木雪野(水野美紀)と真下(ユースケ・サンタマリア)の会話シーンなどが省かれている。 削除シーンの多くは前作やテレビシリーズの連続性を重んじるユーザーにとっては、非常に興味深いエピソードだろう。しかし、逆に本作で初めて「踊る」シリーズに触れる人にとってはわかりにくいのも事実。個人的には白盤のほうがわかりやすく感じたが、シリーズやそれぞれのキャラクターに思い入れのある人であれば赤盤のほうが好ましいのかもしれない。 また、白盤では多くのシーンの差し替えも行なわれており、重要なシーンでもかなり別カットが採用されている。それぞれのバージョンの違いを楽しむのも面白いだろう。
■ 白/赤いずれも高画質。圧倒的なスカイウォーカーの音作り
白盤の本編は本編120分のみで、DVD BitRate Viewer 1.4で見た本編の平均ビットレートは8.47Mbpsと、実写映画としてはかなり高い。一方、赤盤は本編138分+特典を17分収録しており、本編の平均ビットレートは6.8Mbps。白盤ほどではないが比較的高い部類に入るだろう。 撮影は24pハイビジョンのデジタルビデオ収録。白盤はビットレートが高いこともあり、非常にデジタルビデオらしい解像度の高さを堪能できる高画質ディスクといえる。冒頭の船上のパーティシーンなど輝度差が激しく、色数の多いシーンでも破綻は見られない。 一方の赤盤も高クオリティなディスクとなっており、目立った不満は見当たらない。白盤と比較すると、SATの突入シーンなどで屋内外の明暗差のきついシーンなどで、若干白飛びが感じられるし、精細感はやや低いように感じられもするが、一生懸命比較しなければ余り差が分からないレベル。
一方音声は大きく異なっている。白盤はDTS-ES(1,536kbps)とドルビーデジタル EX(448kbps)。赤盤はドルビーデジタル 5.1ch(448kbps)。 オーディオ形式だけでなく、サウンドデザインもまったく異なっており、冒頭のヘリの降下シーンからして、白盤と赤盤ではまったく違う。まず、ヘリの飛行音は赤盤では「バタバタ」と軽快に旋回しながらレインボーブリッジを目指すという印象だが、白盤では大幅に重厚感を増し、今にも戦闘が起きそうな不安感を煽る強烈な音響となっている。移動感や音の重厚感も大幅増で、ウーファの鳴りも強烈。「何かが起こりそう」というイメージが音だけでここまで違ってくるというのが、非常に興味深い。なお、本作のサウンドを担当したのは「スピード2」や、「モンスターズ・インク」のサウンドデザイナーで、2005年に公開予定の「スター・ウォーズ エピソード3」の担当に決定しているトム・メイヤー氏。 あまり大きなアクションシーンこそ無いもののSATとの対決などの重要シーンや、1つのクライマックスともいえるすみれの銃撃シーンでの音響デザインの違いを聞き比べるのも面白い。とにかく、大迫力を求めるのであれば白盤が圧倒的にお勧めだ。また、白盤でもDTS-ESとドルビーデジタル EXで若干が違いが感じられた。音の重圧感などはフルレートのDTS-ESの方が明らかに強烈だが、セリフなどセンターチャンネルの聞き取りやすさはドルビーデジタル EXが上という印象。好みに合わせた使い分けや、アンプやプレーヤーの設定で好みの音響を作り上げてもいいだろう。
■ 特典はスカイウォーカー関連のコンテンツが欲しかった 特典は白盤、赤盤で異なっている。ひとつも被るコンテンツが無いというのは、両方買うユーザーにもうれしい配慮だろう。 白盤には特典は入っていないものの、THXのオプティマイザーを装備。収録しているテスト信号によるオーディオ/ビデオ設定が行なえる。白盤の特典ディスクは、約185分の映像特典を収録。このうち120分強は「OD2プロジェクト」と題された製作日記。製作開始からからクランクアップまでを製作日記風に紹介するコンテンツで、基本的に製作現場をビデオカメラで撮影した映像を収録している。製作現場の雰囲気をつかむには最適だ。 「VFX」では、本作で利用されたVFXについての解説が行なわれている。大々的なCG導入などは意識させない作品ではあるが、レインボーブリッジやヘリのシーンの多くはCG合成によるもの。考えてみれば、確かにレインボーブリッジを撮影のために「封鎖」できるわけも無いので、当然CG導入が必要となる。実際には、レインボーブリッジ上のシーンの多くは建設中の高速道路でのロケとCGIによる合成で、そのロケハンから実際の撮影までの苦労が語られる。 また、VFXによるヘリの飛行シーンも、ほとんど違和感がなく、改めてCG技術の進歩を感じさせられた。 そのほか、湾岸署神田署長の自伝という小品「プロジェクトK」のほか、湾岸署映画部による警官募集VTRという設定の「刑事[デカ]ウォーズ」、お台場の観光案内VTR「観光案内」など劇中で利用していたビデオなどを収録。内容的には楽屋ネタという感じで作品の熱心なファンには面白いだろう。 残念だったのはスカイウォーカーサウンドでの作業に関するコンテンツや、再編集後のシーン比較などが入っていなかったこと。スカイウォーカーサウンドを最大のウリとしていただけに残念だ。一応亀山プロデューサと本広監督によるコメントがブックレットに収録されており、主な変更ポイントなどは確認できるが、DVDの特性を生かした編集前後の映像や音響の比較ができればよかったのだが……。 一方の赤盤は、本編とオーディオコメンタリのほかは約17分のメイキング、製作/出演者紹介程度のシンプルなもの。しかし、このオーディオコメンタリが亀山プロデューサらによる「プロデューサ公開コメンタリー」や、出演者による「キャスト公開コメンタリー」、本広監督らによる「スタッフコメンタリー」が収録されている。 プロデューサ/キャストコメンタリは公開収録。プロデューサコメンタリでは、会場の笑い声とともに「冒頭のアニメよくないよね~」などの愚痴ともつかないコメントが入っており面白い。キャストコメンタリは湾岸署の神田署長役の北村総一朗と秋山副署長役の斉藤暁、本広監督らの公開対談。監督の「あれCG」などの指摘に驚いて見せたり、「深津ちゃんいいよねー」的な和み系のコメントで、ゆるーい感じのコメンタリが約2時間収録されている。 スタッフコメンタリは本広監督が製作スタッフをゲストに迎えながら、各シーンを解説するというもの。SATとの対決シーンの閃光弾(スタン・グレネード)は「見たことないからこんな感じ、と想像しながら作った」とか、「(撮影監督の)藤石さんの要求が非常に厳しく、照明に非常に気を使った。機材屋には“踊るで日本の蛍光灯の全て使った”といわれた」などのエピソードが語られている。 ちなみに、赤盤では再生中に音声が切り替えられないようになっている。コメンタリを最後まで聞くと分かるのだけれど、これは隠しコメンタリが用意されているため。全てのコメンタリを再生すると聞けるようになるので、時間があれば試してみるのもいいだろう。
■ 白盤がお買い得だが、ファンなら赤を外せない
どちらを買うべきか? と聞かれれば、「一見さん」のAVファンは、白盤でも十分だろうが、シリーズに思い入れがあればやはり赤盤の内容を押さえておくのが正しい姿だろう。ということで、シリーズの継承性から言えば赤盤、迫力あるアクション映画としては白盤がお得といえる。 価格も邦画としては標準的かやや低い設定。やはり特典ディスク点きで500円以上安い白盤のほうがお買い得なような気はしてしまうのだが……。まあ、ファンであれば両方買うでしょうが、「踊る」関連製品は書籍からはじまりいろいろあって大変そうですね。
□ポニーキャニオンのホームページ (2004年6月8日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
|
|