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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第175回:動画も再生できるフォトストレージ「EPSON P-2000」
~ 液晶のイメージを変える「Photo Fine」の威力 ~


■ フォトストレージがアツい?

 デジタルカメラで写真を多く撮る人の間では、徐々にフォトストレージが注目されつつあるようだ。特にデジタル一眼レフではRAWデータで撮影するケースも多く、データ量もハンパじゃない。いずれは値下がりする大容量メディアを今5万円で買うぐらいなら、同じぐらいの値段で買えるHDD搭載のフォトストレージに小まめに転送した方がマシ、と考える人が現われても不思議ではない。

 そこで決め手になるのは、単に記録できるだけのストレージではなく、そこになんらかの付加価値があるか、というところ。エプソンのPhoto Fine Player「P-2000」(店頭予想価格5万円前後)は、そんなところを狙った商品だ。

 実はエプソンのフォトストレージは、昨年「P-1000」というモデルが発売になっている。だが発表が早かったわりには発売日が遅く、また一度発売延期にもなっているため、あまり市場には大きなインパクトを残さなかったようだ。前モデルではフォトビューワー機能に終始した感があったが、今回のP-2000では動画や音楽の再生も可能など、ポータブルAVプレーヤーとも近い製品に仕上げてきた。

 もちろんP-2000の本業はフォトストレージ&ビューワーなので、あくまでもAV機能は付加価値ではあるのだが、それでもどれぐらいのことができるのか気になるところだ。そこで今回のElectric Zooma! では、若干偏った見方ではあるが、このP-2000をポータブルAVプレーヤーとしての視点で見ていこう。

 なお今回お借りしたのはまだ試作モデルのため、製品版の仕様とは異なる可能性がある。また本来付属するマニュアルやソフトウェアも完成していなかったため、レビュー内での使用方法は、推奨される方法とは異なっているかもしれないことをお断わりしておく。



■ 見た目はまさにポータブルAVプレーヤー

AVプレーヤーっぽいルックス

 まずは外観から見ていこう。予備知識なしでP-2000を見ると、多くの人はポータブルAVプレーヤーだと思うことだろう。本体はまさにそのサイズで、黒いフロントパネルにシルバーの縁取りといった色使いも、多くのプレイヤーに共通するテイストだ。

 P-2000最大の特徴である、3.8型透過型低温ポリシリコンTFT液晶の「Photo Fine」は、212ppiという高解像度になっている。プリンタで言えば、1,600dpiクラスの解像度だと言うから、ビデオ用とは比べものにならない。またバックライトには従来方式の冷陰極管ではなく、白色LEDを採用している。

 コントロール部はすべて右側に集中している。縦に並んだボタンは、Print、Menu、Display、Homeの4つ。一般的なAVプレーヤーと比べると、ずっとシンプルだ。その中央に、十字キーとCancelボタンがある。十字キーは、中央のOKボタンが大きく、外枠の金属部分が上下左右キーの役目を果たすという、ちょっと変わったスタイル。

 両脇に見える微細な穴はダミーで、スピーカーは背面にある。左側にあるLEDは、USB接続時に青く点滅する。バッテリは、昔富士写真フイルムなどのデジタルカメラで使われていたようなカマボコ形のリチウムイオンバッテリだ。

ボタン類はすべて右側 スピーカーは背面にある

 上面には、SDとCFカードスロットがある。マイクロドライブにも対応しているが、それ以外のメモリを使用するには、市販のCFカードアダプタを使用することになる。内蔵HDDは、2.5インチの40GB。

バッテリは着脱可能 上部にはSDとCFカードスロットがある

 本体左側は、コネクタ類が集まっている。上からAV出力、ヘッドホン端子、DC IN、USB 2.0端子。右側にはホールド兼用の電源ボタンと、リセットスイッチがある。

左側はコネクタ類が集まっている 右側には電源スイッチ

立てて使うためのスタンドが付属 ロゴ入り布製キャリングケースが付属する

 付属品としては、スタンドが付属している。形はクレードルみたいだが、端子類が何もない、本当に本体を立たせておくだけのスタンドだ。

 キャリングケースやストラップも付属している。


■ 写真に特化したメニュー構成

 続いて中身のほうを見ていこう。Homeメニューは最上段がコンテンツの格納場所、中段がアルバムのショートカット、下段が最新データのショートカットと設定メニューになっている。

 もしこれがAVプレーヤーなら、写真、動画、音楽といったメニューになるところだが、あくまでもファイルベースの操作になっており、写真本位といった感じだ。

トップメニュー。AVプレイヤーとはだいぶ趣が違う 「保存データ」では、保存日一括、メモリーカード単位といった表示方法がある

 「保存データ」には、本体HDD内に格納されているコンテンツが表示できる。だがHDD内の隅々まで見られる、いわゆるエクスプローラのような表示ではなく、特定の場所にきちんと格納されたデータしか表示されない。

 メモリーカードから転送していく分にはそれでも困らないが、PCとP-2000をUSB接続すると、単なるリムーバブルHDDとして認識されるため、どんなディレクトリにもファイルを転送できてしまう。そういうファイルはP-2000本体で見えなくなってしまうので、HDDの中味が全部見えて、ファイルの移動などができる機能が欲しいところだ。

 「アルバム」は、画像のリンクを集めたグループという解釈でいいだろう。メモリーカードからの取り込み時に作成するか、「保存データ」から作成することができる。また写真を探して、特定のアルバムに登録することもできる。OKの写真だけをアルバムに集めて、スライドショーにするといった使い方を想定しているのだろう。

本体をUSB接続したところ。階層構造はかなり複雑 「アルバム」は、自由に作成することができる

メモリーカードの動作は、3つの動作から選択する

 だが、PCからの転送では、このアルバムのフォルダに実ファイルを転送してもアルバム内に認識されるなど、ファイルシステムとしてはかなりユニークな作りになっている。

 メモリーカードを差し込んでボタンを押すと、3つの選択肢が表示される。基本的には全部を丸ごとHDDに転送すると言う考え方のようだ。画像を取り込んだらメモリーカードから自動消去するかどうかは、設定メニューから選ぶことができる。


■ 評判どおりの高精細な表示

 ではコンテンツをいろいろ試してみよう。まず写真だが、本機はJPEG、RAW、TIFFに対応している。ただしTIFFは、同社製フィルムスキャナ「F-3200」で作成したサムネイルのみ対応、ということだ。

「Display」ボタンで Exif情報が参照できる

 さすがに写真表示が本業だけあって、ぎゅーっと画素の詰まった精細感はすごい。近くで見ても液晶画素はほとんど気にならないほどだ。派手に見せるわけでもなく、写真本来の発色がそのまま出てくるといった印象。残念なのは、液晶を保護しているアクリルパネルがノングレア加工されていないので、反射をバッチリ拾ってしまうところだろうか。

 OKボタンを押すと、画像を6段階にズームできる(RAWはズームできない)。ズーム倍率は、元の画像解像度によって適宜変化するようだ。拡大すれば、表示範囲の移動もできる。細かいところのフォーカスなども確認できるだろう。

 写真の表示中に「Display」ボタンを押すと、Exif情報を表示させることもできる。この表示のまま次の写真を見ることもできるので、絞りやシャッター速度を変えて数テイク撮影した写真の比較なども、やりやすいだろう。

 アルバムを作成してのスライドショーもなかなか凝っていて、拡大してのPANなどを織り交ぜながら、BGMも加えて再生することができる。エフェクトパターンやBGMは、設定メニューで数種類選択できる。

 前面に「Print」ボタンがあるように、本機ではUSBでプリンタと直結して、ダイレクトに写真を印刷することができる。最近はデジカメをダイレクトに繋いでも印刷可能だが、フォトストレージとして同じ機能を積んでいるということだろう。前モデルのP-1000では、一部のCD-RライターとUSBで直結してデータをバックアップする機能もあったが、本機ではなくなっているようだ。

スライドショーの動作は、なかなか凝っている
ez16.wmv(約5.64MB)
選んで一括印刷などの機能も揃っている

動画再生中の画面。画面下の再生バーは、時間が経つと消える

 次に動画を試してみよう。本機はMotion JPEGとMPEG-4の再生に対応している。対応解像度は640×480ドットのVGAサイズまで可能ということで、期待が持てる。一口にMPEG-4といっても範囲は広いわけだが、筆者が試した範囲では、三洋のXacti C1で撮影した動画はそのまま再生することができた。

 ただ、しばらく再生させておくと、映像が音声に対して遅れていく。インターリーブされているところでまた同期が取れるのだが、動画の再生能力はそれほど高くないのかもしれない。ディスプレイが美しく、映画などは、高コントラスト、深みのある色表現も非常にイイ感じなだけに、惜しい。

 試しにDivXのファイルも転送してみた。これも正式に対応を表明しているわけではないが、一応再生はできるようだ。やはりこれも映像と音声の同期がずれはじめ、場合によっては映像の再生が止まって音声だけ先に進むといった現象が見られる。無理は禁物ということか。

 製品版では、動画変換ソフトとして「EPSON Photo! 4」が付属してくる。これで変換した動画であれば、問題なく再生されるのだろう。

 続いて音楽を再生してみよう。対応ファイルはMP3とAAC。この手のプレーヤーで、AACの対応は珍しい。これも専用の転送ソフトなどがあるわけでもなく、USB接続などでPCからコピーしただけで再生できる。

 再生は音楽ファイルを選択してOKボタンを押すだけで、フォルダ内のファイルは順番に再生されていく。再生中の画面もなかなかシブく、かっこいい。残念ながら曲間ではいったんポーズになってスキップ、再生、という動作が行なわれるため、6~7秒空いてしまう。

音楽は直接ファイルを選んで再生する 音楽再生中の画面。背景がシブい

 肝心の出音だが、いつもの「Expo 2000テスト」では、歪みは全く起こらなかった。確かにオーディオは歪まないものの、全体的に低音が抑えめで、中音域にクセがある、独特のサウンドだ。機能としてEQなどがあるわけではないので、音楽プレーヤーの代用にはならない。ちょっとした時間にBGMとして楽しむ、といった用途だろう。

 なお音楽再生画面から抜けると、再生も止まってしまうため、BGMを聴きながら別作業ということはできないようだ。


■ 総論

 写真の撮れ具合を確認するのに、カメラにくっついてる液晶では確認しづらい。筆者もイベント会場などで記事用の写真を撮るのだが、現場で確認したときはちゃんと撮れてるように見えても、うちに帰ってPCで見ると、全然フォーカス来てないじゃん、ということはよくある。それがある程度現場でわかれば、取り直しするなどの方法もとれるわけなんである。

 デジカメの液晶モニタも最近は大型化しているが、P-2000のような高精細のフォトストレージは、確認用外部モニタとしても使えるわけだ。なお、このPhoto Fine液晶を搭載したカメラもリリースされている。

 今回はそれ以外の用途でどうなのか、その可能性を探ってみたわけだが、P-2000はCPUやDSPなど、ハードウェアの潜在的な能力は高いんだろう。だがソフトウェアがそういうマルチな用途に主眼を置いていない。

 現状では、ポータブルAVプレーヤーは液晶モニタにあまりいいものを採用しておらず、コストダウンの対象という扱いになっている。だがこのような高精細液晶がポータブルAVプレーヤーに載るようになると、すごいことになるだろうという可能性は十分に感じる。

 エプソンは最近、リアプロでテレビ事業に参入したりと、AV製品の強化を図っている。その流れで、この液晶を採用した純粋なポータブルAVプレーヤーを作ってくれないだろうか。

□エプソンのホームページ
http://www.epson.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.epson.co.jp/osirase/2004/040928_6.htm
□製品情報
http://www.i-love-epson.co.jp/products/photofine/p2000/p20001.htm
□関連記事
【9月28日】エプソン、MPEG-4/AAC/MP3再生に対応したフォトストレージ
-212ppiの3.8型液晶採用。40GB HDD内蔵
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040928/epson.htm

(2004年10月13日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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