【バックナンバーインデックス】



録画機能を内蔵したテレビの進化形
世界初Ethernet経由のデジタル録画に対応
東芝 「液晶face 32LZ150」
発売日:11月上旬発売
価格:オープンプライス
実売価格:50万円前後


■ 画質/価格だけでないテレビの訴求ポイント

 薄型テレビが、「新3種の神器」の1つとしてもてはやされる昨今。量販店でも広大なスペースを確保し、拡販に努めている。しかし、その訴求ポイントは画質やデザイン、価格などで、「機能」で差別化を図った製品はなかなかない。

LAN HDDと組み合わせてデジタル放送録画に対応

 今回取り上げる東芝の液晶テレビ「face 32LZ150」は、そうした市場の中で出色の存在だ。最大の特徴は、「デジタルハイビジョンネットワーク機能」を搭載し、同一ネットワーク上のLAN HDDとEthernet接続し、地上/BSデジタル放送のハイビジョン映像をそのまま録画できるということ。つまり、faceと3万円程度のLAN HDDを購入するだけでデジタル放送録画環境が構築できるというわけだ。

 i.LINKでなくEthernet経由でデジタル放送録画ができるのもfaceがはじめて。そのほかにもインターネット機能やRDシリーズとの連携機能、地上アナログ放送のMPEG-4録画機能など機能の豊富さでは、他メーカーの追従を許さない充実ぶり。

 もちろん、画質や使い勝手などのテレビとしての機能にもぬかりはなく、液晶パネルは32V型のシャープ製。新搭載のデジタルテレビエンジン「メタブレイン」を採用し、中間階調表現を豊かにする“次世代魔方陣アルゴリズム”や階調表現を向上させた“ヒストグラム・ダイナミックガンマ”などの高画質化機能を搭載している。

 価格は約50万円と32V型液晶テレビとしてはやや高めにも感じるが、ハイビジョンレコーダ機能など各種の機能を鑑みれば割高というほどでもないだろう。なお、ハイビジョン録画機能を省いた「32LZ100」は実売価格で5万円ほど安い。また、同じLZ150シリーズの37型モデル「37LZ150」は63万円前後となっている。


■ HDMI端子を装備。新型リモコンは使いやすい

 デザインはシルバーを基調としたアンダースピーカータイプのシンプルなもの。正面から見ると充分高級感が感じられるが、上部の主電源スイッチ周辺は、樹脂の素材感がやや安っぽく、50万円の製品と考えると寂しくもある。もっとも普通にテレビを見る分には視界に入らないのでほとんど気にならないだろう。

 地上/BS/110度CSデジタルチューナを内蔵し、スタンドも装備。ディスプレイ部は左右にスイベル可能。入力端子は本体背面下部にBS/110度CSアンテナ入力、地上デジタル/アナログアンテナ入力、D4端子、光デジタル音声出力、i.LINK×2、LAN×2(1系統はLAN HDD専用)、モジュラージャックを装備。背面の左側面に3系統のビデオ入力とデジタル放送用の出力端子、オーディオ出力、HDMI端子などを装備する。

 また、右側面にもゲーム向けのビデオ入力とヘッドフォン端子、USB端子を備えるほか、SDメモリカードやB-CASカードスロットを装備している。

本体前面 側面。カバー内にビデオ入力やHDMI入力などを装備する
背面下部にチューナ入力やEthernet×2、i.LINKなどを装備。EthernetはLAN HDD用の専用端子を1系統備える 右側面。B-CASカードスロットやSDメモリーカードスロットを上部に装備する。下部にはUSB端子などを装備する 上部の主電源周辺。樹脂の質感に安っぽさを感じてしまう

リモコン

 リモコンはBS/CSデジタル用のチャンネルボタンを上部に配し、BS/CSボタンで両放送を切り替え可能。その下に地上デジタル/アナログ用のチャンネルボタンを配し、地上デジタル/アナログの切り替え用ボタンも装備する。

 中央下部に方向キーを中心に円形のボタンレイアウトで、番組表や戻るボタン、新UIのface netを呼び出して、録画番組視聴や写真再生、インターネット機能などを利用可能とする「face ネット」ボタンも装備する。その上には削除ボタンや一発ネットボタン、2画面表示が可能な「二画面ボタン」、裏番組情報を表示する「裏番組」ボタンなども備えている。

 データ放送用の青/赤/緑/黄のボタンやチャンネル切り替え/音量切り替えボタンなどを下部に、下のカバーを外すと各種設定が行なえるメニューボタンや3桁チャンネル番号指定を行なう「3桁入力」ボタンなどがある。

 BSデジタルのチャンネルボタンがNHK1、スター、BSフジなど各チャンネルに割り当てられているほか、BS/CSや地上デジタル/アナログの切り替えも容易で、個人的に好みの操作体系。わかりやすく使いやすいリモコンと感じた。



■ 起動も充分高速。画質も良好

 電源投入から映像が出画までの時間は、主電源OFFから電源を入れると約13秒と、若干待たされる。一方、主電源がONからリモコンで電源を投入した場合は4秒弱で起動するので、さほど遅いという印象は無い。

 デジタルチューナ搭載テレビの弱点として、起動時間の遅さがしばしば指摘されるが、通常リモコンで電源をON/OFFし、あまり主電源を切らないようにすれば、約4秒の起動時間は充分高速といえる。また、リモコンのチャンネル切り替えやBSデジタル/地上デジタルなどのチューナ切り替えも瞬時に行なえる。

 早速デジタル放送を中心に視聴してみた。「標準」モードでさまざまな番組を見てみたが、輝度は500cd/m2と充分で、階調表現も豊か。応答速度はカタログ値で15msで、ハイビジョンのサッカー中継など、高速のパンを伴うソースでも残像はほとんど感じられない。

 地上アナログ放送に関しては、ゴーストの存在を意識させられ、階調表現や細部の描写の正確さにおいてはデジタル放送に及ばないものの、高解像度な固定画素パネルへの表示と考えると満足の行くレベル。デジタル放送対応テレビではアナログ放送の画質が明らかにおろそかになっているものもあったが、本機ではそうした心配はいらないと言えそうだ。

 画質モードは「あざやか」、「標準」、「映画」、「メモリー」が用意され、「メモリー」でカスタマイズしたものを「映像プロ1」、「映像プロ2」に保存できる。画質調整項目は「ユニカラー」、「明るさ」、「黒レベル」、「色の濃さ」、「色あい」、「画質」、「詳細調整」などが用意される。さらに、テレビ画面に表示している色から気になる色を選択して、好みの色に変える「カラーパレットコントロール」も搭載している。最近のプロジェクタなどでは類似機能を見かけるが、テレビへの搭載は珍しい。

画質メニューで標準、映画などを選択できる カラーパレットコントロール
(c)DISNEY ENTERPRISES,INC./PIXAR ANIMATION STUDIOS

 DVDビデオを視聴してみると、アニメ以外のソースでは「標準」モードでは明るすぎる印象。「映画」にするとかなり輝度が押さえられ、しっくりくる。液晶テレビの特性上、完全に黒浮きが無いわけではないが、液晶テレビとしてはかなり締まった黒の表現が可能だ。それでも気になる人には調整項目で「黒レベル」も用意されているので、利用してみるのもいいだろう。

 黒を締めても暗部階調の表現はしっかりしており、液晶プロジェクタの松下「TH-AE500」でうまく表現できなかった、DVD「CASSHERN」のキャシャーンとバラシンの決闘シーンでは、AE500では見えなかった背景の細部もきっちりと確認できた。

 テレビとしての機能も充実しており、2画面表示機能も装備。異なる放送の2画面表示のほか、face netのインターネット機能や外部入力機器の映像の2画面表示も行なえる。また、裏番組ボタンを押すと、視聴中の放送の裏番組情報を画面下部に表示することもできる。

2画面表示機能も装備 インターネットとテレビ表示を2画面で表示するネットダブルウィンドウ機能 裏番組表示機能。ボタンを押すだけで画面下部に裏番組の情報を表示する


■ シンプルなLAN HDD録画。録画機能は充実

 続いてネットワーク録画機能をテストしてみた。LAN HDDへの録画の前に、本体の初期設定→外部機器設定から機器登録を行なう必要がある。LAN HDDは最大8台まで登録可能だが、同時に録画/再生に利用できるのは1台だけとなる。

アイ・オー・データ機器のLANDISK(HDL-120) LAN HDDの登録画面

 複数台のLAN HDDを利用する場合には、LAN HDD専用のEthernetポートにスイッチングハブを接続し、そこにLAN HDDを順次接続する。

 対応するLAN HDDについては、「基本的に100BASE-TX以上のEthernetに対応したものであれば利用できる」とのことだが、同社ではアイ・オー・データ機器のLANDISK(HDLシリーズ、HDL-URシリーズ)が正式対応製品としてアナウンスされている。

 録画予約は番組表を立ち上げ、希望の番組を選択し、決定を押すだけで行なえる。録画機器の選択やレート変更もここで行なえる。録画モードはTS(HD)とTS(SD)のほか、XP (9.3Mbps)/SP(4.8Mbps)/LP(3.0Mbps)も用意される。


番組表から予約録画を実行。録画モードの設定や録画機器の選択も行なえる

 なお、放送中の番組を番組表から録画することはできない。そのため、放送中の番組録画の際にはリモコンのクイックボタンから時間指定で録画予約を行なう必要がある。

face netの[録画番組]から見たい番組を選択 再生操作用のOSDから録画番組の操作が行なえる

 録画した番組は新UIのface netの[録画番組]から再生できる。デジタル放送のMPEG-2 TS HDの画質がきれいなのは当然だが、SD放送でもクリアな映像が楽しめるのはデジタル放送ならでは。なお、32型とディスプレイが大型ということもあり、LPモードではノイズが非常に目立つ。画質的にはSPモードまでが実用範囲といえるだろう。

 再生操作はリモコンの決定/カーソルキーの上下左右にある矢印ボタンで行なえ、再生/停止や早送り/戻しが行なえる。また、リモコン上部の機器操作ボタンを押すと、機器操作用のOSDが現れ、ここで操作が行なえる。基本的にはRec Potなどのデジタル放送用HDDと同等の操作ができると考えていいだろう。

 注意しておきたいのは、録画実行中は録画番組の視聴や番組表の表示、機器操作などが行なえないこと。そのため追いかけ再生なども行なえない。いまどきのDVDレコーダのマルチタスク動作と比較すると、使い勝手の面で不満が残るところだ。

 また、例えば地上デジタル放送の録画を行なっている場合は、地上デジタル放送のチャンネルを変えることはできない。スルー出力を装備しているDVDレコーダでは当たり前にできることではあるが、このあたりはテレビのチューナを利用するが故の制限事項だ。

 ただし、その場合でもBSデジタルや110度CSデジタル、地上アナログ放送の視聴は可能だ。そのため地上デジタル放送の録画時であれば、地上アナログ放送に切り替えて見れば、地上波に限っては実質的なチャンネル切り替えが可能といえないことも無い。

 また、i.LINKも2系統搭載し、D-VHSやRec-Potなどをつなぐだけで認識される。録画/再生時の操作もLAN HDDと同様だが、複数の録画機器を利用している場合には、face netから機器選択を行なう必要がある。

i.LINK接続のHDDなども利用可能

 パソコンのHDDにも同様にデジタル放送が録画できる。Windowsの共有機能で共有領域となっていれば、LAN HDDと同様に機器登録するだけでHDDへの録画が行なえる。ただしデジタル放送録画の場合はfaceからのストリーミング視聴のみとなる。

 地上アナログ放送録画の場合はface側で暗号化をOFFにしていればパソコンからの視聴も可能。ユーザー名/パスワードによるアクセス制限にも対応する。

 また、将来的にはDTCP over IPにアップデート対応する予定で、これによりLAN HDDやPCに記録したデジタル放送の映像もDTCP over IP対応の端末やPCからストリーミング視聴できるようになるという。

 さらに、SDメモリーカードへのMPEG-4録画機能も搭載している。記録モードはファイン/ノーマル/エコノミーの3モードが用意される。しかし、faceで録画したMPEG-4動画はface上では再生できない。拡張子.3g2となっており、PC上ではQuickTimeなどで再生可能なほか、対応携帯電話などでも再生できる。

PCでの視聴の際には初期設定のLAN HDD設定から暗号化をOFFにしておく必要がある SDメモリーカードへの録画 インターネット機能やEメール機能も搭載する


■ 新faceは平面テレビ市場の転換点となるか?

取扱説明書は分厚く重い。454ページもあるので必要な項目を探すのも一苦労。PDFも公開されている

 このほかインターネット機能やメール機能も装備。USBキーボードにも対応し、LAN HDDやSDカードからの写真再生も行なえる。テレビとしては驚くほどの機能の多さだが、face netをはじめとしてインターフェイスはシンプルなのでさほど戸惑うことなく利用できる。

 LAN HDDについては追いかけ録画やムーブ対応などの課題はあるものの、テレビを買うだけで小額の投資で録画機能を追加でき、さらにその選択肢も多いという点は非常に魅力的。初のEthernet経由のデジタル放送録画という話題性もあるが、専用のハイビジョンレコーダを持っているユーザーも裏番組を録画するなどで活用の幅は広がるだろう。

 これだけ機能が付いていて使いこなせるのか? という気もするが、RDシリーズのネットワーク配信機能などとあわせて、今後の東芝のネットワーク家電戦略の方向性が伺える非常に意欲的な製品だ。

 それでいてテレビとしての機能もスキが無いので、他社製品との差別化という意味では並み居る競合製品から抜きに出ている。「テレビの高機能化」、「ネットワーク化」というポイントで、今後のテレビ市場の動向を左右する試金石となりそうだ。

□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/
□製品情報
http://www.toshiba.co.jp/product/tv/product/beautiful/32lz150/index.htm
□関連記事
【9月28日】東芝、“デジタル頭脳”搭載の37/32V型液晶テレビ「face」
-LAN HDDやPCにデジタル放送録画が可能に
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040928/toshiba3.htm

(2004年11月5日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

Copyright (c) 2004 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.