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第157回:アクションも青臭さもパワーアップ!
軟弱ヒーローがソニーを救う! 「スパイダーマン 2」

怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ ソニーを救った? スパイダーマン
スパイダーマン 2
デラックス・コレクターズ・エディション

価格:4,179円
発売日:2004年12月3日
品番:TSDD-34801
仕様:片面2層2枚組み
本編収録時間:約127分(本編)
画面サイズ:16:9シネマスコープ(スクイーズ)
音声:英語(ドルビーデジタル5.1ch)
    英語(ドルビーサラウンド)
    日本語(ドルビーデジタル5.1ch)
    日本語(ドルビーサラウンド)
字幕:日本語/英語
発売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテイメント

 映画「スパイダーマン 2」は、アメリカンコミックを原作とするトビー・マグワイア主演のアクション映画。2002年5月に公開され、大ヒットを記録した前作「スパイダーマン」から2年。製作費220億円を投じた大作で、全米公開8日で興行収入2億ドルを突破。世界66カ国で初登場No.1を記録した。

 前作のDVDの出荷数は4,000万本を突破。日本でも「かなりの大作」という印象はあるが、特に米国での人気は圧倒的で、「劇場でスパイダーマンのタイトルが現われた際にはロックコンサートのように盛り上がった(製作担当のアビ・アラド)」という。

 もちろん、ソニーピクチャーズならびにソニーがかける期待も高く、実際ソニーの決算発表などでも「スパイダーマンスパイダーマンスパイダーマン」と、映画公開、DVDリリース時には必ず言及され、期待のほどが語られる。特に「スパイダーマン 2」のヒットで、映画部門が270億円の利益をたたき出した2004年の第2四半期決算では、「スパイダーマンがソニーを救う」などの報道もあったほど。

 映画の興行収入的には「スパイダーマン 2」は、既に十分な結果を出しているといえる。しかし、DVD発売のプロモーションにも非常に力が入っており、テレビCMのほか、発売日の12月3日には地上波で前作「スパイダーマン」を放送するなど、後押しは充分。店頭での売れ行きも好調のようだ。

 映画「スパイダーマン」シリーズが人気を集めているのは、単にコミックの人気に依るものではないだろう。前作から引き続き、単なる勧善懲悪ものではなく、主人公ピーターの日常とスパイダーマンであるために、捨てなければいけないものとの葛藤、友人や家族との友愛と対立が丁寧に描かれる。そうした「普通の人間」とスペシャルな能力を持った「スパイダーマン」との間で引き裂かれそうになる主人公ピーターの存在が本作の支持されるもうひとつの理由といえるのだろう。

 DVDは本編と特典ディスクの2枚組みで4,179円。大作にしては若干割高にも感じるが、2枚組みなので納得できるレベルではある。赤を基調としたパッケージは前作を踏襲しているが、今作では紙製のアウターケースも付属する。



■ アクションも青臭さもパワーアップ!

 グリーン・ゴブリンとの死闘から2年。スパイダーマンであるピーター・パーカー(トビー・マクガイア)はアルバイトと大学の授業に追われながら、正義のために戦う多忙な日々を過ごしていた。おろそかにしていた学業への復帰を図り、親友ハリー(ジェームズ・フランコ)の紹介で、尊敬する物理学者Dr.オクタビアス(アルフレッド・モリーナ)に出会い、その研究と人間性に感銘する。

 しかし、Dr.オクタビアスは新核融合エネルギーの実験に失敗。自身が作業用に開発した、知能を持つアームに心と体のコントロールを奪われてしまう。そして、病院の手術室で目覚めた彼は、人造アームを持った怪物「ドック・オク」となって生まれ変わる。

 一方、ピーターが思いを寄せるメリー・ジェーン(MJ/キルスティン・ダンスト)は、女優として成功。何時までも態度が煮え切らず、約束も守れないピーターからやがて気持ちが離れていく。また、親友のハリーも親の敵のスパイダーマンとの関係を問い詰め、3人の関係に微妙な距離が生まれていく。

 最強の敵「ドック・オク」の誕生がなんとも荒唐無稽なのはさておき、スパイダーカムを多用した摩天楼を背景にしたアクションの迫力は前作を遥かに上回る。また、MJとうまくいかなくなったピーターがスパイダーマンとしてもスランプに陥ってしまうあたり、独特のユーモアも健在だ。

 さらに、いちいち青臭いというか古臭さすら感じさせる、ピーターとMJとの関係も相変わらず最高にもどかしい。劇の開演時間にすら間に合わないスパイダーマン、さんざん留守電にメッセージを吹き込んで、ようやくMJが受話器を録りかけたその時、通話時間が切れてしまう公衆電話。こうした二人の行き違いに加え、Dr.オクタビアスに感化されたピーターは、なんと、“詩の朗読”まで披露するなど、勘違いぶりもいちいち痛々しい。

 アメコミヒーローの大作アクションの側面はもちろん、恥ずかしさが逆に気持ちよくなってしまうほど執拗な二人のすれ違いもまた感動的。そして、いよいよ対決の予感を漂わせる親友ハリーも……。

 前作のコンセプトを引き継ぎながらも、アクションもユーモアも格段にパワーアップしている。前作のファンであれば文句無く気に入る作品となっているし、本作から見ても充分楽しめるだろう。しかし、親友ハリーとグリーン・ゴブリンだった父、そしてスパイダーマンという3者の関係と、パーカーとおじさんなどの家族、仲間に関する人間関係は前作を引き継いでいる。そのあたりを重視する向きには前作をセットにしたツインパック(BP-195 6,279円)がお勧めだ。



■ ビットレートは低めだが画質は良好

 DVD Bitrate Viewer Ver.1.4でみたビットレートは5.81Mbps。オーディオコメンタリを収録しているにしても、特典ディスクとの2枚組みにしてはやや低めのビットレート。ただし、画質はビットレートの低さをまったく感じさせない仕上がりで、非常に明瞭だ。

 ノイズもほとんど感じられない。前作でもビットレートはほぼ同等の約5.8Mbpsで、チャプター17の戦闘シーンなどはかなりノイズが確認できた。そのため、低価格プレーヤーのノイズリダクション性能測定用のディスクとして利用していたのだが、本作ではそうした利用はできなそうだ。

 また、印象的なのは人肌の表現。顔の影側は通常だとバッサリと落としてしまうようなところまで、しっかりと肌の陰影をつけて表現されている。エンコード云々というよりも、撮影時のライティングなどに起因すると思われるが、表情の陰影をはっきりと表現するという意図が感じられる。それゆえか、あまり美人風ではないMJ役のキルスティンの表情がシーンに応じて、印象ががらりと変わるのが面白い。揺れ動くピーターとの関係性が表情からもしっかり確認できる。

DVD Bit Ratge Viewerでみたの平均ビットレート

 音声はドルビーデジタル5.1chで、ビットレートは448kbps。スパイダーマンのビル間移動シーンの躍動感は前作にもまして強力。横方向はもちろん、スパイダーカムの上下動とあいまって、垂直方向の移動感がかなり強く感じられ、爽快だ。ドック・オクの誕生シーンや戦闘シーンでもマルチチャンネルを生かした音作りが楽しめるので、全編にわたって「聞かせどころ」は多い。テストディスクとしても魅力的なタイトルだ。

 本編ディスクにも特典を収めており、キャストやスタッフのオーディオコメンタリーを収録。さらに、本編再生中に表示されるアイコンをクリックすると、詳細な解説が表示される「飛び出すインフォメーション2」や、ミュージックビデオ、NGシーン集などを収めている。

 特典ディスクには、特殊効果、音響などを3時間に渡って紹介するメイキング・ドキュメンタリーを収録。また、キャラクター設定を紹介する「ピーターを取り巻く人々と環境」や、撮影風景「ウェブの世界へ」、オープニングにも使われた画家・アレックス・ロスの絵を紹介するギャラリーコーナーなどと非常に充実している。

 メイキングは126分と長いが、良くまとまっている。コミック版スパイダー・マンの熱心なファンとしても知られるサム・ライミ監督は「スパイダーマンはあの格好で出てくるだけで拍手が起きる。だから敬愛に値するヒーローを作る必要がある」という。また、監督による俳優、スタッフいじめなども収録。多分遊びでやっているのだろうが、そのいびり方が堂に入っていて、スパイダーマンのユーモアの源泉が節々に感じられる。

 また、ピーター役のトビー・マグガイアの自信に満ちた表情も印象的。リラックスしてインタビュー答えるトビーは、オクテでもぞもぞとしたキャラのピーターとはおよそ似ても似つかない、余裕と自信を感じさせる。

 興味深いのはクレーンなどを使って、ビルの屋上などからの降下シーン用素材などを撮影した「スパイダーカム」について。前作でも取り入れられていたが、今回はニューヨークで2,400フィート、ロス・アンゼルスで3,200フィートの撮影を行なったという。またスピード感を出すために、フレームレートを6fpsとし、それらを早回しすることで、スピード感を高めているという。


■ スパイダーマン・ファン必携

 画質的にも前作を大幅に上回り、特典も充実している。もちろんアクションやVFXの質も高いのだが、なにより、うんざりするほどナイーブな青春ドラマとB級感を漂わせるユーモアが健在なのがうれしい。前作のファンであれば間違いなく買いだろう。

 なお、続編の製作が予定されており、「スパイダーマン 3」の公開までは12月14日現在「あと870日」とのこと。シリーズは何作まで続くのかわからないが、気になるのは最終的にはコンプリートボックスが出るのでは? ということ。もっともその頃のパッケージソフトがDVDであるかどうかは定かでないので、今から心配してもしようがないのかもしれないが。

●このDVDについて
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前回の「マッハ! プレミアム・エディション」のアンケート結果
総投票数1,036票
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389票
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買う気はない
47票
8%

□ソニー・ピクチャーズ エンタテイメントのホームページ
http://www.sonypictures.jp/
□「デラックス・コレクターズ・エディション」の製品情報
http://www.sonypictures.jp/homevideo/catalog/catalogDetail_JPDVDTSDD-34801.html
□「ツインパック」の製品情報
http://www.sonypictures.jp/homevideo/catalog/catalogDetail_JPDVDBP-195.html
□「デスティニーBOX」の製品情報
http://www.sonypictures.jp/homevideo/catalog/catalogDetail_JPDVDBP-196.html
□「SUPERBIT」の製品情報
http://www.sonypictures.jp/homevideo/catalog/catalogDetail_JPDVDSB-34801.html
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(2004年12月14日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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