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第186回:2005 International CESレポート【ヘッドフォン&デザイン編】
~ KOSS/SHURE/SENNHEISERの新モデルほか ~


■ 今ラスベガスで一番笑えるショー?

LVCCのほぼ正面にできたモノレールの駅

 CES 2005の2日目は、なんと朝から降り出した雨が雪に変わるという悪天候。そもそも雨が降ること自体珍しい砂漠の街ラスベガス。一見新しそうに見える歩道の屋根も、雨が降ることを想定していないためか、そこら中おびただしい雨漏りである。

 昨日あれほど快適だったモノレールも、大量の乗客を乗せきれずに停車駅を飛ばしたり、駅への入場制限をしたりと、かなりの混乱が見られた。結局、ふきっさらしのホームで寒さに震えながら1時間も待つ羽目に。

 シャトルバスの毒舌運転手に言わせれば、このモノレールが今ラスベガスで一番笑えるショーだというが、それもまんざらジョークに聞こえなくなってきた。結局のところこの新モノレールは、平時には便利だがショー開催時は全然ダメということで、謹んで訂正させて頂く。

 さてそんなこんなで、会場到着前にHPとMPの50%を奪われた本日は、ヘッドフォン関係と、デザインの話題を中心にお送りする。



■ KOSSに期待の新モデル

セントラルホール奥のKOSSブース

 セントラルホール奥にあるKOSSのブースでは、いくつかの新製品が展示された。最近KOSSのポータブルヘッドホンは、低域が40Hz程度止まりのものが多くあまり触手が動かないが、その中でも比較的低域が充実しているモデルを2つご紹介する。

 「KSC75」は、ハイポリマーにチタンをコーティングした新ダイヤフラムを採用した、イヤークリップ型の最新モデル。口径は小型ながら、周波数特性は15~25kHzと、PORTAPROなどで採用されているユニットと同様の特性を持つ。

 イヤークリップ型は過去に「KSC50」というモデルがあったが、現在はカタログからも消えている。これはクリップ部の出来が悪く、フィット感が良くなかったのだが、今回のKSC75は弾力性に富む金属の芯を柔らかい樹脂でカバーした新クリップ、「SportClip」を採用しており、フィット感が格段に向上している。

 実際に試聴してみたところ、PORTAPROタイプのユニットと比較すると、さほど大げさな低域表現ではなく落ち着いたバランスで、低域重視ではない人にとっても聞きやすいモデルに仕上がっている。実売価格19.99ドルと価格的にもリーズナブルで、日本での発売が待たれる。

□「KSC75」の製品情報(英文)
http://www.koss.com/koss/kossweb.nsf/02ProductFeatures/KSC75

イヤークリップ型の新モデル「KSC75」 改良されたクリップで、装着感がかなり良くなった

 もう一つ、遮音性と低域の充実で日本でも多くのファンを獲得したあの「The Plug」に、新モデルが登場した。その名も「SPARK PLUG」。

 ユニット部のデザインが変更になったほか、コードの中間部にミュートスイッチが設けられた。このシリーズはフォームラバーをかなり耳の奥まで差し込むため、こまめな付け外しが面倒だったのだが、これで急に話しかけられたときなどいちいち耳から引っこ抜く必要がなくなったのは、うれしい改良ポイントだ。

 残念ながらブースには試聴モデルがなく、ブリスターパッケージのみの展示であったが、周波数特性はThe Plugと同じ10~20kHz。価格はブース内のパネルでは、据え置きの14.99ドルとあったが、プレス用資料ではキャリングポーチが付属して19.99ドルとなっていた。ディーラーによっては、ポーチの有無で2種類のパッケージが存在する可能性もあるだろう。これも国内発売が待たれるモデルだ。

The Plugの新モデル「SPARK PLUG」 本体部が段差のあるデザインとなっている



■ コンシューマ市場に目覚めた? SHURE

例年より大きくなったSHUREブース

 2003年に「E5c」と「E2c」でコンシューマのイヤホン市場に参入したSHURE。昨年はiPodのブレイクに当て込んだ「E3c」がかなりヒットして気をよくしたのか、今年は例年のようなベンチャーっぽい長屋展示ではなく、ブース面積を拡充して展示を行なっていた。

 今年はさらにE3cの上位モデルと目される、「E4c」がデビューした。ドライブユニットを若干改良して、E3cよりもさらに奥行きが短くなっている。ケーブルが白いのも、かなりiPodを意識したものだろう。

 実際に試聴してみたところ、まだ試作モデルだというが完成度は十分で、E3cよりもさらに張りのある、E5cのイメージに近いサウンドに仕上がっている。従来どおり、遮音性の高いフォームラバーなど数種類のフィットラバーが付属して、予価は299ドル。設定価格がだいぶ高くなっているのが残念だが、今年の3月から4月を目処に出荷したいということであった。

 今回のE4cの発表で、SHUREのコンシューマ用ラインナップとしては、E5cからE1cまでの番号がすべて埋まったことになる。来年はさらにスーパーハイエンドなE6cが出るのか。質なイヤホンがほしい人には、また一つ悩みが増えたということになる。
今年のSHUREの新モデル「E4c」 パッケージのサンプルも展示されていた

□ニュースリリース(英文)
http://www.shure.com/news/pressreleases/pr-ces05_010505.html


■ 製品は多いがブースは縮小のSENNHEISER

例年に比べてかなり小さくなったSENNHEISERブース

 老舗ヘッドホンメーカーとして人気の高いドイツの名門SENNHEISERは、サウスホール1Fにブースを構えた。例年のようなゆったりとしたブースではなく、本当にただ製品のショーケースがあって若干の試聴モデルが展示されているだけという、かなり絞り込まれた出展となっている。面積としては、SHUREと同じぐらいだろう。

 発売開始されたものの、まだ日本にあまり入ってきていない「MX450/550」の新ラインナップを試聴しようと思ったのだが、パッケージすらまったく見あたらなかった。

 今年はワイヤレス型などの新製品もあるが、個人的に注目したいのがノイズキャンセリングヘッドホン。一昨年「PXC 250」がデビューし、昨年は新モデルが出なかったが、今年はこれを挟む形で上位、下位モデルが発表された。

 「PXC 300」は、ノイズキャンセリング機能をさらに改良した「NoiseGard Advance」を搭載した上位モデル。80%のノイズキャンセリング効果が得られるという。またキャンセリング特有のヒスノイズも減少し、携帯電話や放送波の影響も受けにくく改良されている。

 デザインはほぼPXC 250そのままで、ユニットの一部やモデル名の銘板がシルバーになった程度。日本では評判の悪い、巨大なバッテリケース部もそのままなのは残念だ。

 実際に試聴してみたところ、現行モデルのPXC 250がノイズキャンセリング率が65%であったのに対し、確かに80%という数字は誇張ではない。周囲にはスピーカーメーカーが多くかなりうるさいのだが、スイッチをONにすると魔法のように音楽が浮き上がってくる。イヤークッションが改良され、密着度が高くなったこともポイントのようだ。周波数特性は8~21.5kHzと、PXC 250よりも上下ともに若干拡張されている。

 製品には従来の布製ではなく堅めのキャリングポーチが付いて、予価219.95ドル。市場価格がこなれてくれば、現行のPXC 250とほぼ同価格で入手できるかもしれない。

□「PXC 250」の製品情報(独文)
http://www.sennheiser.com/sennheiser/icm.nsf/root/press_aktuell_pxc300

ノイズキャンセリングヘッドホンPXCシリーズの上位モデル「PXC 300」 バッテリーケースには「Advance」の文字が

 一方PXC 150は、ノイズキャンセリング機能こそ従来モデルと同方式だが、70%以上のキャンセリング効果が得られるというエントリーモデル。これもデザイン的にはほぼ同じで、違いといえばスピーカーユニットが黒1色となっているところぐらい。

 周波数特性は15~21kHzと、低域の伸びが若干劣るが、通常のポータブルヘッドホンとしてみれば十分。キャリングポーチはビニール製となり、価格は129.95ドルとかなり安い。現行モデルのPXC 250が、日本国内で実売価格17,000円前後であることを考えれば、PXC 150なら実売価格で1万円台前半となる可能性もある。PXC 250の価格に躊躇していた方には、待ってて良かったうれしい新モデルだろう。なお、両モデルとも、米国では近日中に出荷される予定。

PXCシリーズのエントリーモデル「PXC 150」 エントリーモデルということで、ブリスターパッケージでの販売となる


■ PHILIPS Design

ブースデザインが幾何学的なフィリップス

 ヨーロッパを代表する総合メーカー、フィリップス。その製品デザインには、大胆な中にも繊細さを感じさせる高度なテクニックが凝縮されている。今回は単体の製品云々よりも、そのデザイン性についてまとめた。

 まず目に飛び込んできたのが、Blu-rayレコーダのプロトタイプ。サイズや性能に関しては他社製品と抜きん出るところはないが、天版の面積を無駄にせず、表示系を美しくまとめたセンスが新しい。ラックにしまい込むのではなく、ガラステーブルの下などに置きたくなるデザインだ。

フィリップス製Blu-rayレコーダ 天版にくぼみを付け、3つの円形表示をユーザー側に向けて斜めに配置 天版の奥には、対応フォーマットとロゴを大胆にレイアウト

 同じくPC用BDドライブの展示に使用されていたデスクトップPCのプロトタイプを発見。プロモーション用にロゴが大きくレイアウトされている点はややクドいが、肉厚のアルミをふんだんに使ったフロントパネルは、大胆で美しい。

フィリップスがデザインすると、無骨なミドルタワーもこうなる 青色LEDの間接光をアルミ曲面に流し込み、立体的な陰影を強調

 HDDを搭載したミュージックセンターは、CDをMP3にしてため込んだり、インターネットラジオや他のPC内の曲を楽しんだりするという、今世紀のラジカセみたいな製品。平置きを前提としたデザインは、なかなか日本のメーカーからは住宅事情をそれを許さないため、出てこない種類のものだ。

 同タイプで、縦置き型も用意。スピーカーを搭載しないため、本体はなにもここまで大きい必要はないのだが、アクリルパネルを大胆に使って、ゆったりした空間を作り出している。

天版からフロントパネルまでを一体化させた平置きのデザイン 手前にCDのスロットインドライブがある 縦置き型のミュージックセンター

正面からみれば主張のないデザインだが…… 背面にはRGB3色の照明が両脇に設置されている

 最後にフィリップスが提案するフラットテレビの新しい試みをご紹介しよう。正面から見ると一見よくあるフラットテレビだが、背面の両脇にはRGB 3色の細長い照明が仕込まれている。これがどう役に立つのかというと、壁掛けで設置したときにこのバックライトが壁に反射して、間接照明の役割を果たすわけだ。

 この「Ambilight」というバックライト技術は、テレビ画面が現在表示している色のトーンをリアルタイムに解析して、そのトーンに近いカラーを自動的に照射するようになっている。壁中にこのAmbilightのフラットテレビを貼り付けたデモは、まさに圧巻。

パネルが表示している色をリアルタイムで解析して、同系色のバックライトを照射するAmbilightのデモ

 単におもしろいというだけでなく、テレビ画面と同系色を部屋という空間に照射することで、視聴者はより映像の持つ世界観に入り込めるというメリットがある。

 現在は各メーカーとも、ディスプレイパネルのみのコントラスト比や発色数などを競っているが、テレビによって部屋という空間自体を丸ごと演出してしまうという考え方はユニークであるとともに、今まで見落としていた重要なポイントに気づかせてくれる。

 デザインや個性といった付加価値は、時には機能や技術を凌駕してしまうだけの力を持っていると、改めて認識させられた。

□2005 International CESのホームページ
http://www.cesweb.org/
□関連記事
【2004年1月12日】2004 International CESレポート 【オーディオ小物編】
~ SHUREがイヤフォンの新モデル「E3c」を出品~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040112/ces15.htm
【2005 International CES レポートリンク集】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/link/ces2005.htm

(2005年1月8日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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