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全て偶然に任せられる? iPodブランドの格安オーディオプレーヤー アップル 「iPod shuffle」 |
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発売日:1月15日 AppleStore価格:10,690円(512MB) 16,980円(1GB) |
■ 「すべて、偶然に任せよう。」
かねてからの噂どおりMacworld Conference&Expo 2005で発表されたアップルのフラッシュメモリプレーヤー「iPod shuffle」。なにより驚かされたのはその価格だろう。AppleStore価格で512MBモデルが10,980円、1GBモデルが16,980円というのは、他社製品と比較しても圧倒的に低価格。HDDオーディオプレーヤーのトップ企業が戦略的な低価格でフラッシュ市場に参入ということもあり、市場に与えるインパクトは相当大きい。
グリーンを基調にしたパッケージ |
しかし、気になる点が無いわけでもない。まず、液晶ディスプレイが無いという点。液晶が無いということは、つまり「再生している曲目がわからない」、「本体で収録曲を確認しながら選曲できない」ということだ。今日のデジタルオーディオプレーヤー市場はよほどのローエンド製品で無い限り、液晶ディスプレイを装備していることを考えれば市場の流れに逆行しているようにも感じる。
そうした疑問へのAppleの回答は“シャッフル”だ。つまり、転送ソフトの「iTunes」のライブラリからオーディオデータを転送するので、「そこでランダムに選択された曲を楽しもう」というわけだ。Appleによるキャッチコピーは「すべて、偶然に任せよう。(Enjoy uncertainty)」。
コンセプトはわからないでもないが、それで本当に音楽を楽しめるのか? 液晶無しの使い勝手は? 市場へ与えるインパクトは? と製品情報を見るだけでは疑問は膨らむばかり。ということで、512MBモデルを1週間程度使用してみた。
■ シンプルな本体デザイン
同梱品 |
付属品はイヤフォンとネックストラップ、iTunesなどを収録したCD-ROMなどシンプルなもの。
本体はガム型の薄型筐体で、外形寸法25×85×8.5mm(幅×縦×厚み)、重量22gと非常に小型で軽量。ほかのフラッシュプレーヤーに比べるとやや縦が長いようにも思えるが、8.5mmという薄さは魅力的。
プラスチックを基調とした外装は、素材感こそやや安っぽいものの、機能を削ぎ落としたことによるシンプルなデザインは「iPodシリーズらしさ」を確かに感じさせる。特に薄型のため、ポケットなどに入れてもほとんど持っていることを意識せずに動けるのは非常にありがたい。
操作系もシンプルで、本体前面に再生/停止ボタンを中心に、上下にボリュームアップ/ダウン、左右に曲戻り/送りを割り当てた丸型の操作ボタンを装備。背面にはスライド式のスイッチを備え、電源ON/OFFのほか、転送リスト順の再生、シャッフル再生の再生モード選択が行なえる。
上部にはヘッドフォン出力を装備。下部にはUSB 2.0端子を備え、ここにプラスチックカバーが被せてある。付属のネックストラップはこのUSB端子に被せるカバー型になっており、ネックストラップで首掛けが可能となる。
ただ、首掛けにすると、iPod shuffleの上下が逆になるほか、上からはネックストラップ、下からはヘッドフォンケーブルが出て、ケーブルが鬱陶しくなってしまう印象もある。上下が逆になるのは操作時に自分に向けて逆手に取るので問題はないかもしれないが、あまりスマートでないような気もする。ただ、キャップのロックはしっかりしているので、首から掛けていて外れてしまう、といったことは無さそうだ。
本体前面に丸型の操作ボタンを備える | 上側にヘッドフォン出力を装備 | 背面。アップルロゴと電源/再生モード切替スイッチを備える |
プラスチックのキャップを外すとUSB端子が現われる | キャップを付け替えるとネックストラップになる | ネックストラップの装着例 |
iPod/iPod miniとの比較 |
■ オートフィルで一発同期のシンプルな転送
パソコンとUSBでダイレクトに接続 | オートフィルを選択しiTunesから転送 |
それでは早速オーディオデータを転送。iPod shuffleのUSBキャップを外し、パソコンのUSB端子に接続する。iPod shuffleを認識すると自動的にiTunesが立ち上がる。
あとはiTunes 4.7.1で新たに追加された「オートフィル」ボタンをクリックするだけで、iTunes上の全ライブラリの中からランダムに曲を選択し、iPod shuffleの容量にあわせたプレイリストを作成、転送してくれる。
この自動作成される再生リストは、適度に再生回数の多い曲目をピックアップしているようで、“ほとんど聴いたことがない曲ばかり”ということにはならなかった。また、WAVEやMP3、AACなどのファイル形式を問わず再生リストに追加されていた。
一度作成した再生リストに飽きたら、再度パソコンに接続して、再びオートフィルをやり直すと、新たな再生リストが作成される。ここで全ての曲を差し替えることもできるし、iTunes上のiPod shuffleのアイコンに表示される自動作成したリストから、曲を削除したり、iTunes上のライブラリから追加することも可能だ。iPod shuffleに498MBのライブラリを転送した際には約5分40秒かかった。HDDを搭載したiPodに比べるとだいぶ遅いように感じるが、フラッシュプレーヤーとしてはそれほど遅いというわけでもない。
プレイリストを選択して転送することもできる |
オートフィルのほかにも、作成したプレイリストやiTunesが自動作成したスマートプレイリストなどを選択して転送もできる。アルバムの曲順で聞きたいとか、自分で作成したプレイリストを再生したいときなどはこちらを選べばいい。また、iTunes上のiPod shuffleに任意の曲をドラッグアンドドロップするだけで、曲の追加も可能になる。非常にシンプルかつシームレスに転送できる。
また、USBメモリとしても普通に活用できる。そのままUSBメモリとして利用できるし、iTunesのiPodオプション設定からUSBメモリとして使用する容量を確保しておけば、iTunesでのオートフィル時でも、確保した容量分を残して自動的に再生リストを作成/転送するようになる。
ただし、転送速度は遅めだ。USB 2.0のサポートを謳っているものの、227枚のデジタルカメラ画像を収めたフォルダ(226MB)を転送した際は約5分10秒(5.8Mbps)と、iTunesでオーディオ転送したとき以上に遅く、USB 1.1(理論値12Mbps)以下の結果になった。ファイル数が増えると転送速度がかなり遅くなるようで、同じフォルダをZip圧縮(219MB)し、1つのファイルとして転送した場合は、1分47秒(16.4Mbps)と約1/3で転送終了した。
おそらく搭載しているフラッシュメモリの世代が若干古いのだろうが、このあたりがiPod shuffleの低価格の秘密の一因ともいえそうだ。とはいえ、iriver「iFP-890」(2004年5月発売)では226MBのフォルダ転送時に6分22秒とiPod shuffleより遅かった。最新のフラッシュプレーヤーの中では遅い部類かもしれないが、ほかのオーディオプレーヤーと比べてすごく遅いというわけではない。
512MBのUSBメモリの相場が大体6,500円ぐらいから、高速転送を謳ったタイプで9,500円程度。1GBで12,000~18,000円程度なので、単純なUSBメモリに対しても十分に価格競争力があるといえる。そういう意味では世界で一番売れるUSBメモリとなり、USBメモリという製品ジャンル自体が、iPod shuffleによって広く一般に認知されることとなるかもしれない。
ディスク領域を確保しておけばUSBメモリとして利用できる |
■ 再生操作は単純
スライドスイッチで電源OFFと再生モード切替が可能。下のバッテリボタンを押して、緑色に点灯するとバッテリは十分。赤に光るとバッテリ不足の警告となる |
操作ボタンは本体の前面に丸型のボタンを備えるのみ。再生/停止を中心に、上下にボリュームアップ/ダウン、左右に曲戻り/送りを割り当てている。電源のON/OFFは、背面のスライドスイッチで行なう。
電源を投入した後、再生/停止ボタンを押すと、再生がスタートする。あとは、丸型ボタンの左右で曲送り/戻し、上下でボリューム調整を行なうのみという非常にシンプルなものだ。左右ボタンを長押しすることで、曲の早送り/戻しも可能となっている。
再生モードはリスト再生とランダム再生が行なえる。リスト再生時はiPod shuffleに転送した際の再生リスト順に、ランダム再生はそのリストの中からランダムに再生する。自分で作成したプレイリストやアルバム順の再生を希望するのであれば、リスト順を選択、オートフィル機能を利用している場合は、いずれにしろランダムに再生リストを作成しているので、どちらを選んでも大差なさそうだ。
HOLDスイッチはないが、3秒以上再生/停止ボタンを長押しするとボタン上のLEDがオレンジに点灯し、HOLD状態になる。解除するときには同様に再生/停止ボタンを長押しする。
HOLDでオレンジに点灯 | 丸ボタンの操作一覧 |
電源OFF後の電源再投入時にも、停止した曲の停止した箇所から再生を行なうレジューム機能も備えている。再生操作については、非常にシンプルで戸惑うようなことはない。何しろ曲送り/戻し以外の曲選択方法は存在せず、そもそも液晶が無いので曲名を確認して操作を行なうということもできない。この上なくシンプルな操作体系なので使い勝手も動作レスポンスもいいのだが、この割りきりには賛否両論あるだろう。
まず、液晶ディスプレイが無いので、自分が聞いている曲がわからない場合がある。自分でiTunesに登録したとはいえ、数10GBあるiTunes上の楽曲を全て覚えているとは限らないので、「この曲なんだっけ」という時に、曲名などを確認できない。また、プレイリスト再生時にも、10曲飛ばしたいときなどは、10回右ボタンをクリックする必要がある。今までのiPodなどのHDDオーディオ製品になれたユーザーであれば不満を感じるところだろう。
ただ、とにかくBGM的に使いたいという用途であれば、非常に身軽かつ簡単に音楽を楽しめる。約1週間使ってみたところ、当初は曲情報が見られなかったり、好きな曲に飛ばせなかったりと一つ一つに不満を感じたが、慣れてくるとシンプルに聞き流すというのも悪くないと思い直した。もっとも、「大量の曲を蓄積し、好きな曲を好きな時に聞ける」というデジタルオーディオプレーヤーの最大のアピールポイントはそがれてしまっているので、従来型のiPodとは別系統の楽しみ方とはいえるだろう。
写真はD-Snapに付属のミュージックソムリエ。気分に合わせた自動プレイリスト作成機能を装備していた |
また、聞き手のアクティブなアクセスを排除することで、とにかく楽なリスニング環境を提供する、というコンセプトは面白く、iTunes+オートフィル機能を含めシンプルでわかりやすい使い勝手はiPodとは違った魅力が確かにある。例えばスポーツをしている時のBGMなどで気に入らない曲が出てきたときに、液晶を見ながらクリックホイールをクルクルまわして、曲を選ぶよりは、曲が気に入らなければ1クリックで次の曲に飛ばす方がよっぽどスマートだ。
いっそ、この「全てiTunesまかせ」な方向をどんどん進めて、D-Snapなどに付属する「SD-Jukebox」の「ミュージックソムリエ」機能のように、その日の気分や天気にあわせて自動的にプレイリストを作成するような機能をつけてくれると面白い。ミュージックソムリエでは、“切ない感じ”、“癒し系”などの気分に応じてプレイリストを自動作成していたが、“ジョギング”などのスポーツの種類に加え、“雨の日”みたいな気候や気分に合わせた自動プレイリスト機能が加わると“全ておまかせ”の世界がより広がるのではないだろうか。
■ 音質は良好。イヤフォンも地道にアップデート
上がiPod shuffle付属イヤフォン。新たにコードのアジャスタがついた(下はiPodの付属ヘッドフォン)。 |
付属のイヤフォンは、従来のiPodと同様に白を基調にしたデザイン。音の傾向もほぼ同じだが、コードの弛みを調整するアジャスターが新たに追加されている。地味な変更だが、コードの絡みなどはだいぶ低減できるし、特に首から掛ける際は、ネックストラップとヘッドフォンのコードが2重に下がることになるので、弛みを抑えるとだいぶスマートに見えるようになる。
本体の音質は、基本的にはiPodシリーズと同傾向だが、バランスはやや高域よりで、iPodより中低域の押しは若干弱く感じる。音作りに違いからか、特に付属イヤフォンで聞いた時は、iPod shuffleのほうがクリアで気持ち良い。
イコライザ機能などは本体に備えておらず、iTunesで各楽曲に設定したイコライザ設定もiPod shuffleでは反映されないようだ。なお、いわゆる「ギャップレス再生」には対応しておらず、ライブ盤などで本来曲間が繋がっている楽曲で、曲間が開いてしまうのが残念なところ。
充電はUSB経由でフル充電までの時間は約4時間。別売のACアダプタも用意される。バッテリ駆動時間はカタログ値で約12時間。MP3ファイルを中心にシャッフル再生したところ、約14時間以上の連続駆動が行なえた。なお、USB充電中は操作を受け付けず、充電しながらの再生はできない。
■ “全部おまかせ”の気軽なオーディオプレーヤー
「液晶無し、曲順はiTunesにおまかせ」という思い切った割りきりにより、低価格かつ新しい楽しみ方を提案したiPod shuffle。正直、当初は「いまさら液晶無しのプレーヤー?」と懐疑的だったが、確かにiPod shuffleならではの楽しみ方はきちんと実感できるし、改めてiTunesというプラットフォームの魅力も感じさせてくれる。
スマートプレイリストやOn-the-Go機能など、よりアクティブに音楽を楽しみたい人はiPod/iPod miniを、手軽かつ安価に音楽を楽しみたいという人にiPod shuffleと考えると、確かにiPodの製品ラインでうまく住み分けはできていると感じる。
iPod shuffle用のスポーツケース。AppleStore価格3,570円 |
もちろん、ヘビーなユーザーとってもスポーツ用途などのサブ機としては面白いし、実際にオプションのスポーツケースなども用意されている。なにより512MB/1GBのUSBメモリとほぼ同等の価格という安さを考えれば、デジタルガジェットとして話題作りに購入しても悪くないだろう。そうした意味では従来のiPod同様、オーディオプレーヤーの枠を超えた魅力を有した製品といえそうだ。
iPodなどのHDDオーディオプレーヤーでアクティブに音楽を楽しんでいるヘビーユーザーの代替機にはならないが、iPodの出荷1,000万台という数字を考えると、そうしたユーザーには一通り行き渡ったという判断もあるかもしれない。発売からそろそろ一週間経つが、かなりの品薄状況が続いており、「iPodで切り開いた市場をiPod shuffleによってローエンドまで拡大する」というアップルの狙いは順調のようだ。
PC Watchの速報レポートで矢作晃氏が書いているように、他社から同様のコンセプトの製品を出しても、話題にもならなかっただろうが、iPodとAppleのブランド力とiTunesを含めたトータルな製品としての完成度は、これを新たなスタンダードに押し上げかねない可能性を感じさせる。
ただ、ユーザー層が拡大されるのは素晴しいことではあるが、“いつでもどこでも好きな音楽を”という、デジタルオーディオプレーヤーの大きな魅力のひとつが薄くなっていくのも寂しい。今後、デジタルオーディオプレーヤーの市場がどういった方向に向かうのか、iPod Shuffleが市場動向を占う重要な製品となるだろう。
□アップルのホームページ
http://www.apple.co.jp/
□製品情報
http://www.apple.com/jp/ipodshuffle/
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050112/apple3.htm
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-512MBが10,980円、1GBが16,980円。USB端子を一体化
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【1月12日】来た!見た!買った! 「iPod shuffle」レビュー(PC)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0112/mw03.htm
(2005年1月21日)
[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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