■ アルバトロスがまたやった!
「ホネツギマン」は、日本で2004年10月に“世界初”公開された。配給会社はあのアルバトロス株式会社だ。アルバトロスといえば、カルト・ホラーだと思い込んで買い付けた「アメリ」が、単館系としては思わぬ大ヒットを記録。注目を集めた配給会社だ。DVDも大ヒットして、DVDをリリースしたパンドもホクホクだったと聞く。 そんなアルバトロスが、再び注目されたのがイギリス映画「えびボクサー」。映画の内容そのものより、「巨大エビが人間相手にボクシングする」という話題性だけの宣伝方法で一部で話題を集めた。主人公は本当はえびではなく、シャコだったというアルバトロスらしい落ちがあったが……。
しかし、公開当時に白骨温泉の「入浴剤問題」が話題になっていたことから、協賛に白骨温泉が参加し、違う側面からも注目されたといえば、思い出す人もいるかもしれない。そんなこともあって、DVDには特典として、乳白色入浴剤「ホネヌキの湯」が封入されている。初回限定となっているが、おそらく増産がかかることはないだろう……。 また映画のPRにコメントを寄せているのが、我修院達也(怪優)、堤幸彦(演出家/映画監督)、板尾創路(135R)、ゆでたまご(漫画家/「キン肉マン」「キン肉マンII世」原作者)、小池栄子(タレント)、小日向義男(白骨温泉組合長)、小橋健太(プロレスリング・ノア)、ザ・グレートサスケ(みちのくプロレス)、プリンセス天功(イリュージョニスト)、森谷博之(イケメンカイロプラクター)と、ツボにはまった人選なのは、アルバトロスならでは(ちなみに、肩書きは原文ママ)。
ちなみに、売れ筋しか置かない新宿のヨドバシカメラのDVDコーナーには在庫がなく、それほど広くはない売り場になぜかマニアックタイトルも揃えるビックカメラに在庫があった。
■ 「悪の根源は背骨のゆがみ!」 by ホネツギマン 昼は整体師、夜はプロレスラー。「完璧な肉体は完璧な背骨に宿る」ことを信条とする整体師、エドワード(マイケル・ラパポート)は、意見の違いから薬剤師で薬局を開業する父親と勘当状態。そんなエドワードが白衣を脱ぐと、実は無敵の強さを誇るレスラー「ホネツギマン」でもあった。 人体模型柄のボディスーツを着込み空中殺法や関節技をくり出す、人気レスラーであったが、出産間近の妻キム(アリヤ・バレイキス)と、生まれてくる子供のためにレスラーを引退。故郷に帰って独立開業しようと決意する。 故郷の戻ったエドワードは、父親と再会し和解。家族が再び一つになろうとしたその時。父親の薬局を買収し巨大チェーン展開を企てた一味が、エドワードの両親と妻を皆殺しにする。それを知ったエドワードは、再びボディスーツを身にまとい、復讐の戦士「ホネツギマン」へと姿を変えた……。 この映画の一番の話題は、「ファーゴ」でアカデミー脚本賞受賞をしたコーエン兄弟の弟であるイーサン・コーエンが共同脚本に名を連ねていることだろう。企画がスタートしたのは、J・トッド・アンダーソンがストーリーボード・アーティストしてコーエン兄弟製作・監督の「ミラーズ・クロッシング」('90年)に取り掛かっていたころだという。 アンダーソンは、そのころ腰痛のため、カイロプラクチックに通っていた。そこで、大好きなプロレスと関連づけて考えるようになり、そのアイディアで脚本を書き上げ、長編劇場公開用映画の製作資金を得るため、5分の短編を製作。イディペンデント系のスタジオに売りこんだ回ったが、全てのスタジオから「へんすぎる」と却下された。 そこで、アカデミー脚本賞受賞の「ファーゴ」('96年)が完成後のイーサン・コーエンに持ち寄ったところ、奇抜なアイディアに触発され、アーダソンとともに脚本に手を加え、改訂脚本が書き上げたという。そして、'98年に撮影が開始され、映画が完成した。 しかしその後は、陽の目を見ることなく月日が流れ幻に作品になっていたが、6年後の2004年の日本で世界初公開された。原題「THE NAKED MAN」(直訳すれば、「裸男」だろうか)から、邦題「ホネツギマン」と名を変えて……。イーサン・コーエンとしては、米国で公開されずにホッとしているかもしれない。 この映画のためにラパポートは、3カ月の準備期間でウェイトトレーニングで体重を15kg近く増やし、何十人ものカイロプラテッィック療法士と話したという。ちなみに、悪役のジェッターは、薬剤師から転身した俳優で、まさにうってつけの役を演じている。 ストーリー展開は、B級映画の基本路線をちゃんと押さえている。全体的なストーリーはブツブツときれ、まとまりがない。例えば、エドワードと父親は考え方の違いからかなり深い仲違いをしたように見えるのだが、和解は出会ってすぐで唐突。孫ができたら仲直りしたようにも見え、まるで吉本新喜劇の人情話のようだ。
ネタバラシになるので細かくは書けないが、ラストのオチも「えっ……?、オイ、オイ。そんなアホな」という言葉しか出なかった。B級映画らしく鑑賞後にほとんど何も残らない映画だが、唯一エドワードの「悪の根源は背骨のゆがみ!」というのが、名言(?)として心に残った。
■ 片面1層。ビスタサイズを非スクイーズ収録 DVD Bit Rate Viewerでみた平均ビットレートは5.81Mbps。97分と長い作品ではないが、片面1層のためビットレートは低めになっている。映像はビスタ版を、今時珍しい非スクイーズ収録。最近は、スクイーズ収録ではない映画DVDを見る機会がほとんどないので、しばらくプロジェクタの設定をスクイーズを横に引き伸ばす「フル」で鑑賞してしまった……。 ただ解像度の面では、スクイーズではない分、不足を感じるが、4:3のモニターでレターボックスで観る限りは、最近の映画('98年製作)ということもあって、発色もよくノイズも少ない。ハッキリ/クッキリ系の画質で問題は感じなかった。 音声は英語と日本語を収録。このクラスの映画で日本語吹き替えまで用意しているのは、立派といえば立派。しかし、どちらもドルビーデジタルステレオ仕様(ビットレート192kbps)というところで、やっぱりかと思い直した。もう一つ気になったのが、音声も字幕も再生中に切り替えられず、メニューから設定することしかできないところだ。ちなみに、チャプターは12個設定されていた。
特に取り立ててすごい特典はないが、劇場予告のナレーションが肝付兼太で、予告編のクレジットが入っているのが目を引いた。なお、キープ・パーフェクト・バックボーンには、3種類のストレッチが収録されているが、映画の公式サイトで公開されているのと同じ内容だった。
■ 出オチ狙いで買うには高すぎるか……? 基本的に出オチのDVDなので、4,935円を出せる人は少ないだろう。大作と違い、出荷本数が見込めないという状況での価格設定ということはわからないではないが。とはいえ販売元がパンドなので、すぐに低価格で再販されるとは考えにくく、気になった人は店頭に並んでいるうちに購入しておくしかないだろう。
アルバトロスでは、「他の追随を許さぬ、究極のワン・アンド・オンリー作品!!」、「プロレスファン必見!コーエンファン必見!整体マニア必見!」とコピーをつけている。コーエン兄弟がさらに出世すれば、カルト映画としてマニアックな人気を呼びそうだが……。
□パンドのホームページ
(2005年3月8日) [AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]
AV Watch編集部 av-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
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