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第179回:DVDより劇場で見たほうがよかったかも?
梅雨が明けたらサヨウナラ「いま、会いにゆきます」

怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ いま、“泣ける映画の時代”?

いま、会いにゆきます
スタンダード・エディション

(C)2004「いま、会いにゆきます」製作委員会
価格:3,990円
発売日:2005年6月24日
品番:SDV15191D
仕様:片面2層1枚
収録時間:約118分(本編)
画面サイズ:ビスタサイズ(スクイーズ)
音声:1.日本語(ドルビーデジタル2ch)
     2.日本語(ドルビーデジタル5.1ch)
発売元:博報堂DYメディアパートナーズ・小学館
販売元:東宝

 “泣ける”邦画がちょっとしたブームらしい。大ヒットした「世界の中心で、愛をさけぶ」を例に挙げるまでもなく、情報番組などを見ると、なんだか似通った映画がたくさん出てきていないか? などと思ったりする。

 そんな中でも、「いま、会いにゆきます」は、セカチュー同様に単行本のヒットを契機に映画化され、昨年暮れに話題を呼んだ。近鉄球団買収問題や、「愛は金で買える」発言で一躍時の人となっていた、ライブドア堀江社長がBLOGで号泣告白。堀江社長が「大事な人と見てください」という妙にしんみりしたコメントをするテレビCMも話題になった。

 しかも、5月には主演の中村獅童と竹内結子の結婚も発表され、12月には第一子も誕生予定。DVD発売の翌日6月25日に婚姻届を提出した。別にDVDの発売にあわせた訳では無いだろうが、いろいろな意味でタイムリーな作品であるのは間違いない。

 実際に、各所で昨週の週間売上げトップを記録しており、注目度も高いようだ。DVDは通常版といえる「スタンダード・エディション(3,990円)」と、2枚組の「DVD-BOX(8,400円)」が用意される。

 スタンダード・エディションは、本編のほかトレーラーやインタビューなどの18分の特典を収録した本編ディスク1枚。DVD-BOXはスタンダード・エディションと同じ本編ディスクのほか、オリジナルのメイキング映像を収録した特典ディスクを同梱。さらに、封入特典としてフルカラー48ページのビジュアルブック、劇中に登場した「澪のダイアリー」のレプリカ(使用可能)、「佑司の逆さてるてる坊主組み立てキット」も付属している。

 「澪のダイアリー」や、「佑司の逆さてるてる坊主組み立てキット」とかは、さすがにどう考えても必要ない。主演の2人の結婚が話題となっている昨今、メイキングは見てみたいような気もしたが、そのために2倍以上の金額を払うのもためらわれる。ということで、今回はスタンダードエディションを購入した。

2枚組み DVD-BOX 澪のダイアリー 佑司の逆さてるてる坊主
(C)2004「いま、会いにゆきます」製作委員会



■ 死んだ妻が“雨の季節”だけ蘇る

 妻の澪(竹内結子)に先立たれながらも、6歳になる息子の佑司(武井証)と2人で密かに暮らす秋穂巧(中村獅童)。

 しかし、妻を失ったショックや彼の抱える病気などの問題から、覇気の無い毎日を送っている。巧は、高校時代に突如発病した原因不明の病により、人混みが苦手で体調も優れない。職場にはそんな巧の問題を知りながら、好意を寄せる長瀬みどり(市川美和子)もいるが、巧は澪と佑司のことだけを考え、そして自分のふがいなさに塞ぎ込む以外のことができずにいる。

 巧は、母に先立たれた佑司を不憫に思い、そして自由に遊んでやれない自分の体を呪う。しかし、彼が信じ、唯一の希望と感じていることがあった。それは、生前澪が巧に言い残し、佑司の絵本にも書き残した「雨の季節に戻ってくる」というメッセージ。

 巧とともにそのメッセージを信じる佑司は、ただ雨が降ることを望んで、家の軒先や校舎のベランダなどに、逆さてるてる坊主を飾り付ける。そして、天気予報が梅雨入りを告げた頃、佑司と巧の前に、予告通りに澪が突如現れる。しかし、彼女は一切の記憶を失っていた。

 かつての2人の関係を澪に逐一説明しながらも、記憶を無理に取り戻そうとはせず、ただ、幸福な3人の生活を望む巧。仕事にも生活にもぐっと張りが出て、生気のある毎日を送る。しかし、彼らに残された時間はわずか6週間。その間に「澪に自分と結婚して良かったと思ってもらうこと」が巧の唯一の望みとなる。

 一言でまとめると、ファンタジー風味を加えた、純愛ストーリーといった趣の本作。基本的に、全然イケていない男のラブストーリなので、ちょっと唐突かつ都合良すぎない? とか言う気もしないこともないが、後で逐一2人の馴れ初めが説明される。

 ただ、やはり死んだ妻が生き返るという、本作の最も重要な部分は最初にもう少し説明して欲しかった気もする。森深い、朽ち果てた別荘のような場所で、雨に巻かれた澪が登場するシーンは、あまり唐突だったのでビビってしまった。劇場では普通に受け入れられたのだろうか?

 「雨の季節」をキーワードとした映像描写が美しく、家族団欒などの画に描いたような幸福なシーンは、その後の別れのつらさを強調する。見ていて恥ずかしいが、同時にシンパシーを感じさせるのは、2人の回想シーン。陸上にしか目のないオクテで、ぱっとしない巧と、ガリ勉風の澪。イケていない2人が、さまざまな手を駆使して、接近を図るものの、気持ちを伝えられない様は、いらいらさせられると同時に、懐かしい気恥ずかしさを存分に感じさせる。



■ 雨と緑を生かした映像美

 DVD Bit Rate Viewer Ver.1.4で見た平均ビットレートは7.32Mbps。適度な粒状感を残しつつも、暖かみのある画調で、ビットレートがそれになりに高いこともあり、大きな破綻は感じない。冒頭の湖と森のシーンなど、水と緑を印象的に使った世界観をしっかり再現したいという意志が感じられる。

DVD Bit Rate Viewerでみた平均ビットレート

 音声は日本語のみで、ドルビーデジタルステレオ(192kbps)と、ドルビーデジタル5.1ch(384kbps)を収録する。5.1chに関しては、LFEは少ないものの、室内でのドアの開閉や背後の物音などかなりリアチャンネルを活用している。映画らしい包囲感というよりはもっと具体的な物音や人の動きに対して、かなり積極的に各チャンネルを活用しており、なかなか楽しめる。

 特典は、5分程度の舞台挨拶と、中村獅童、竹内結子、武井証のインタビュー、トレーラなど。竹内結子は、「原作を読んで、“いま、会いにゆきます”の意味がわかった時には泣いてしまった。初恋のもどかしさとか、手をつなぐまでの時間の長さにはキュンとなってしまう」と語る。なお、舞台挨拶で、気にかけたポイントとして、「記憶をなくしているという設定なので、コミュニケーションをとらずに撮影に望んだ」というのは、中村との結婚を発表した今となってはなかなか趣深い。なお、結婚に関するコメントなどは当然入っていない。

 中村獅童は、「作品の世界観の中で2カ月間過ごせたのがよかった。喫茶店の初デートなど、緊張しすぎてずっとしゃべり続けてしまうなど、自分の10代の頃のいろいろなことを思い出してしまった。おはようとかの挨拶など、小さなことが幸せで大事という、普段意識していないことを作品に出来て、自分自身も考えることがあった」と話す。子役の武井証くんは「獅童さんは面白くて(仕事を)やりやすい。撮影終わったときは、寂しくて泣いちゃいそうでした」とピュアなコメント。


■ 「大事な人と見てください」

 3,990円という価格は、割安とはいえないものの、邦画のヒット作としてはまずまず手頃な価格。ヒットしたのもうなずける、良くできたラブストーリーだとは思うが、個人的には、妻が死に、そしてある期間だけ生き返るという、もっとも重要な点で入り込めなかったこともあり、ファンタジーの世界が今ひとつ遠く感じたのも事実。

 PC Watchに掲載されている山田祥平氏の映画館での体験談にもあるように、すすり泣きの聞こえるような劇場で見たら、また違った印象を抱けるのかもしれない。1人でじっとDVDを見るより、たまには映画館に足を運ぶべきかなという思いを新たにする。「大事な人と見てください」というコメントはなかなか奥が深いなと。


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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050301/toho.htm

(2005年6月28日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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